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まけかくりつ

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ある実験じっけん結果けっかとしてのかくりつけっしてまけにならないが、まけかくりつ(ふのかくりつ、えい: negative probability)やなずらえかくりつ(ぎかくりつ、えい: quasiprobability)をゆるすとなずらえかくりつ分布ぶんぷ英語えいごばん定義ていぎできる。なずらえかくりつ分布ぶんぷ観測かんそく不能ふのう事象じしょう条件じょうけんかくりつ応用おうようされる。

数理すうり物理ぶつり

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1942ねんポール・ディラック論文ろんぶん量子力学りょうしりきがく物理ぶつりてき解釈かいしゃく[1]まけのエネルギーまけかくりつ概念がいねん登場とうじょうする。

まけのエネルギーやまけかくりつをナンセンスな概念がいねんかんがえてはならない。充分じゅうぶん定義ていぎされた数学すうがく概念がいねんであるからだ、まけ金額きんがくのように。

まけかくりつ概念がいねんのち物理ぶつりがく量子力学りょうしりきがく関心かんしんをひくようになる。リチャード・ファインマンは-3のリンゴが現実げんじつ有効ゆうこう概念がいねんではないように、まけかず計算けいさん使つか物体ぶったいはない、ただしまけ金額きんがく有効ゆうこうだが、と議論ぎろんした。さらにかれまけかくりつが、1以上いじょうかくりつ計算けいさん有用ゆうようかもしれないとろんじた[2]

マーク・バーギンはことなるれいげている。

英語えいごつうじるAがテキストTをいているとかんがえてみたい。テキストTなかに「texxt」や「wrod」があらわれるかくりつはいかほどか。通常つうじょう確率かくりつろんによれば0である。しかし、弘法ぐほうふであやまり、誤植ごしょくしょうじることもある。だがすぐに訂正ていせいされるにちがいない。確率かくりつろん拡張かくちょうして、テキストTなかに「texxt」が出現しゅつげんするかくりつを-0.1とする。これは「texxt」が誤植ごしょくしょうじることがあるが、訂正ていせいされた現在げんざいのテキストTなかにはないことを意味いみする。"
Mark Burgin、Burgin, Mark (2010). "Interpretations of Negative Probabilities". arXiv:1008.1287 [physics.data-an]。

それからしばらく、まけかくりつはいくつかの問題もんだい矛盾むじゅんくために提案ていあんされた[3]。2005ねんのG.J.セーケイによる半分はんぶんまいのコインは簡単かんたんれいである[4]。このコインは無限むげんおおくの側面そくめんち、それぞれのめんに0,1,2,...と番号ばんごうってあり、せい偶数ぐうすう出現しゅつげんまけかくりつをとる。2まいはんコインをくと合計ごうけいはそれぞれかくりつ1/2で0か1であるから、通常つうじょうのコインを1まいいたのとおなじである。

非負ひふ定義ていぎ関数かんすうたた係数けいすう[5]と「代数だいすう確率かくりつろん[6]なかでルージャとセーケイは、かくりつ変数へんすうXがまけかくりつふく符号ふごうづけかくりつ分布ぶんぷまたはなずらえかくりつ分布ぶんぷをもつとき、かくりつ変数へんすうXは X+Y=Z としてふたつの独立どくりつしたかくりつ変数へんすうYとZをともなうことを証明しょうめいした。X=Z-Y であるから、Xはふたつのかくりつ変数へんすうZとYの「差分さぶん」ととらえられる。YがXの測定そくてい誤差ごさ観測かんそくがZのとき、Xの分布ぶんぷのうちのまけ部分ぶぶん誤差ごさYによってかくれるのである。

ウィグナー関数かんすう

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ほかにもれいとして、1932ねんユージン・ウィグナー量子りょうしあやま訂正ていせい研究けんきゅう[7]提案ていあんした位相いそう空間くうかんうえなずらえかくりつ分布ぶんぷであるウィグナー関数かんすうげられる。1945ねんバートレットはウィグナー分布ぶんぷまけをもつことに数理すうり論理ろんりてき矛盾むじゅんがないことを見出みいだした[8]。ウィグナー関数かんすう量子りょうし光学こうがく分野ぶんやでよく利用りようされ、位相いそう空間くうかん量子りょうし基礎きそとなっている。また、量子りょうし干渉かんしょうのある場合ばあいまけとなることから、量子りょうし干渉かんしょうがあることをわかりやすくしめすことができる。ウィグナー関数かんすうまけをとる領域りょういきは、量子りょうしろん確定かくていせい原理げんりにより直接ちょくせつ観測かんそくすることが困難こんなんなほどちいさいが、観測かんそくりょう期待きたいもとめるときに利用りようされている。

ファイナンス

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最近さいきんになってまけかくりつ数理すうりファイナンス応用おうようされるようになった。計量けいりょうファイナンスにおいてはほとんどのかくりつリスクニュートラルかくりつとしてられるせいかくりつなずらえかくりつである。確率かくりつろんじょう一連いちれん仮定かていもとで、せいかくりつだけでなくまけかくりつゆるなずらえかくりつ使つかうと計算けいさん単純たんじゅんにできることを、2004ねんにエスペン・ガーダー・ハウグが世界せかいはじめて指摘してきした[9]まけかくりつ厳密げんみつ数学すうがくてき定義ていぎ数学すうがくてき性質せいしつはバーギンとマイスナーによって2011ねんられた[10]。その論文ろんぶんではまけかくりつオプション評価ひょうかにどのように応用おうようされているか紹介しょうかいされている。

関連かんれん項目こうもく

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参照さんしょう文献ぶんけん

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  1. ^ Dirac, P. A. M. (1942). “Bakerian Lecture. The Physical Interpretation of Quantum Mechanics”. Proceedings of the Royal Society A: Mathematical, Physical and Engineering Sciences 180 (980): 1–39. Bibcode1942RSPSA.180....1D. doi:10.1098/rspa.1942.0023. JSTOR 97777. 
  2. ^ Feynman, Richard P. (1987). “Negative Probability”. In Peat, F. David; Hiley, Basil. Quantum Implications: Essays in Honour of David Bohm. Routledge & Kegan Paul Ltd. pp. 235–248. ISBN 978-0415069601. http://cds.cern.ch/record/154856/files/pre-27827.pdf 
  3. ^ Khrennikov, A. Y. (1997): Non-Archimedean Analysis: Quantum Paradoxes, Dynamical Systems and Biological Models. Kluwer Academic Publishers. ISBN 0-7923-4800-1
  4. ^ Székely, G.J. (2005) Half of a Coin: Negative Probabilities, Wilmott Magazine July, pp 66–68.
  5. ^ Ruzsa, Imre Z.; SzéKely, Gábor J. (1983). “Convolution quotients of nonnegative functions”. Monatshefte für Mathematik 95 (3): 235–239. doi:10.1007/BF01352002. 
  6. ^ Ruzsa, I.Z. and Székely, G.J. (1988): Algebraic Probability Theory, Wiley, New York ISBN 0-471-91803-2
  7. ^ Wigner, E. (1932). “On the Quantum Correction for Thermodynamic Equilibrium”. Physical Review 40 (5): 749–759. Bibcode1932PhRv...40..749W. doi:10.1103/PhysRev.40.749. 
  8. ^ Bartlett, M. S. (1945). “Negative Probability”. Math Proc Camb Phil Soc 41: 71–73. Bibcode1945PCPS...41...71B. doi:10.1017/S0305004100022398. 
  9. ^ Haug, E. G. (2004): Why so Negative to Negative Probabilities, Wilmott Magazine, Re-printed in the book (2007); Derivatives Models on Models, John Wiley & Sons, New York
  10. ^ Burgin and Meissner: Negative Probabilities in Financial Modeling Wilmott Magazine March 2012