エジプト航空こうくう804便びん墜落ついらく事故じこ

エジプト航空こうくう804便びん

2011年ねんに撮影さつえいされた事故じこ機き
出来事できごとの概要がいよう
日付ひづけ	2016年ねん5月がつ19日にち (2016-05-19)
概要がいよう	コックピット内ないのたばこと酸素さんそマスクから酸素さんそが漏もれたことによる機内きない火災かさい
現場げんば	地中海ちちゅうかい 北緯ほくい33.6757度ど 東経とうけい28.7924度ど / 33.6757; 28.7924
乗客じょうきゃく数すう	56
乗員じょういん数すう	10
負傷ふしょう者しゃ数すう	0
死者ししゃ数すう	66（全員ぜんいん）
生存せいぞん者しゃ数すう	0
機種きしゅ	エアバスA320-232
運用うんよう者しゃ	エジプト航空こうくう
機体きたい記号きごう	SU-GCC
出発しゅっぱつ地ち	パリ＝シャルル・ド・ゴール空港くうこう
目的もくてき地ち	カイロ国際こくさい空港くうこう

エジプト航空こうくう804便びん墜落ついらく事故じこ（エジプトこうくう804びんついらくじこ）は、2016年ねん5月19日にちに発生はっせいした航空こうくう事故じこである。フランスのパリからエジプトのカイロへ向むかっていたエジプト航空こうくう804便びんが地中海ちちゅうかいに墜落ついらくし、乗員じょういん乗客じょうきゃく66人にん全員ぜんいんが死亡しぼうした。

機体きたい

当該とうがい機きはエアバスA320-232（機体きたい記号きごう：SU-GCC、製造せいぞう番号ばんごう：2088）で、2003年ねん7月がつ25日にちに初はつ飛行ひこうし、2003年ねん11月3日にちにエジプト航空こうくうに引ひき渡わたされた。

経過けいか

左ひだり：804便びんの飛行ひこう経路けいろ（緑みどり線せん）。黄き線せんは予定よてい飛行ひこう経路けいろ、赤あかい★はADS-B信号しんごうが途絶とだえた位置いち 右みぎ：飛行ひこう速度そくど（オレンジ色しょく）と高度こうど（青色あおいろ）

804便びんは5月18日にちの現地げんち時間じかん午後ごご11時じ9分ふんにパリ＝シャルル・ド・ゴール空港くうこうを離陸りりくした。その後ご、午前ごぜん2時じ30分ふんにエジプト沿岸えんがんから約やく280km北きたの地中海ちちゅうかい上空じょうくう37,000フィートを飛行ひこう中ちゅうにレーダーから消失しょうしつした。当時とうじ、天候てんこうは良好りょうこうであった。

カイロには午前ごぜん3時じ15分ふん頃ごろに到着とうちゃく予定よていであった。当初とうしょ、失踪しっそうから約やく2時じ間あいだ後ごの午前ごぜん4時じ26分ふんにエジプト軍ぐんが航空機こうくうきに搭載とうさいされている無線むせん機きから発信はっしんされた遭難そうなん信号しんごうを受信じゅしんしたとも報ほうじられたが、エジプト軍ぐんやエジプト当局とうきょくは報道ほうどうを否定ひていした。

5月19日にち、ギリシャのパノス・カンメノス国防こくぼう相しょうは事故じこ機きはまず左ひだりに90度ど、そして右みぎに360度ど旋回せんかいし、高度こうど37,000フィート (11,000 m)から15,000フィート (4,600 m)まで急降下きゅうこうかしたと述のべた。しかし5月がつ23日にち、エジプト国営こくえい航空こうくう管制かんせい当局とうきょくの責任せきにん者しゃは事故じこ機きは失踪しっそうするまで高度こうど37,000フィートを維持いじしており、異常いじょうな動うごきはなかったと述のべた。エジプトのレーダーは事故じこ機きから遠とおく離はなれており、ギリシャのレーダーと同おなじ精度せいどで追跡ついせきできなかったためとの見方みかたもある。6月14日にち、エジプト当局とうきょくはギリシャ当局とうきょくの声明せいめいを認みとめた。元もと調査官ちょうさかんによると、最初さいしょの左ひだり旋回せんかいの際さいに機体きたいの構造こうぞう限界げんかいを超こえていた可能かのう性せいがある。

乗客じょうきゃく乗員じょういん

乗客じょうきゃく数すう（国籍こくせき別べつ）

国籍こくせき	搭乗とうじょう者しゃ数すう
アルジェリア	1
ベルギー	1
カナダ	1
チャド	1
エジプト	30
フランス	15
イラク	2
クウェート	1
ポルトガル	1
サウジアラビア	1
スーダン	1
イギリス/  オーストラリア	1
乗員じょういん	10
一部いちぶの乗客じょうきゃくは二に重じゅう国籍こくせき者しゃであった。

804便びんには12か国こくから66人にんの乗客じょうきゃくが搭乗とうじょうしており、うち1人にんは子供こども、2人ふたりは乳幼児にゅうようじであった。二に重じゅう国籍こくせき者しゃが数すう名めい搭乗とうじょうしていたため、当初とうしょ69人にんが搭乗とうじょうしていたとも報道ほうどうされた。

また、804便びんには10人にんの乗員じょういんが搭乗とうじょうしており、うち3人にんは航空こうくう保安ほあん要員よういんであった。エジプト航空こうくうによると、機長きちょうの飛行ひこう時間じかんは6,275時じ間あいだで、うちA320では2,101時じ間あいだ飛行ひこうしていた。また、副ふく操縦そうじゅう士しの飛行ひこう時間じかんは2,766時じ間あいだだった。

捜索そうさく

捜索そうさく開始かいし

シゴネラ海軍かいぐん基地きち（シチリア）から離陸りりくするアメリカ海軍かいぐんのP-3C、5月19日にち撮影さつえい

エジプト民間みんかん航空こうくう省しょうは失踪しっそう機きの捜索そうさくが行おこなわれていると述のべた。エジプト軍ぐんはギリシャと協力きょうりょくして捜索そうさくを行おこなっている。エジプト民間みんかん航空こうくう省しょうのスポークスマンは、当該とうがい機きは海面かいめんに墜落ついらくした可能かのう性せいが最もっとも高たかいと述のべた。ギリシャはC-130と早期そうき警戒けいかい機きEMB-145-Hを1機き、そしてエリ級きゅうフリゲート「ニケフォロス・フォカス」 (Nikiforos Fokas) を派遣はけんした。フランスもファルコンを派遣はけんしたほか、艦船かんせんを派遣はけんする用意よういができているとも語かたった。イギリスはベイ型がた補助ほじょ揚陸ようりく艦かん「ライムベイ」を派遣はけんした。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくはアメリカ海軍かいぐん所属しょぞくのP-3Cを1機き派遣はけんした。

5月19日にち、フランス海軍かいぐん海軍かいぐん航空こうくう隊たい第だい24F海軍かいぐん航空こうくう隊たい所属しょぞくのダッソー ファルコン 50が1機き派遣はけんされた。

捜索そうさく範囲はんい

5月がつ20日はつか、エジプト海軍かいぐんがエジプト・アレクサンドリアの北きた290キロメートル (180 mi)で座席ざせきを含ふくむ航空機こうくうきの残骸ざんがいの一部いちぶや遺体いたいの一部いちぶ、乗客じょうきゃくの荷物にもつなどを発見はっけんしたと発表はっぴょうした。週末しゅうまつにはアメリカ海軍かいぐんのP-3Cが2か所しょで残骸ざんがいの一部いちぶなどを発見はっけんし、一方いっぽうは半径はんけい3海里かいり (5.6 km; 3.5 mi)の範囲はんいに散乱さんらんしていた。当時とうじ、捜索そうさく範囲はんいは約やく5,300平方へいほうマイル (14,000 km²)であった。

画像がぞう外部がいぶリンク
失踪しっそう場所ばしょ付近ふきんでESAが検知けんちした油膜ゆまく

5月がつ20日はつか、欧州おうしゅう宇宙うちゅう機関きかんは前日ぜんじつの16時じ (UTC) に Sentinel-1A が撮影さつえいした画像がぞうから、北緯ほくい33度ど32分ふん 東経とうけい29度ど13分ふんの地点ちてんで約やく2kmにわたって油膜ゆまくを検出けんしゅつしたと発表はっぴょうした。この地点ちてんは804便びんが最後さいごに確認かくにんされた位置いちから約やく40km南東なんとうに離はなれていた。

5月26日にち、航空機こうくうき用よう救命きゅうめい無線むせん機きから送信そうしんされた遭難そうなん信号しんごうを衛星えいせいが受信じゅしんしていたと報道ほうどうされた。これにより捜索そうさく範囲はんいが半径はんけい5kmになった。なお、ブラックボックスから発信はっしんされる信号しんごうとは異ことなる。アメリカ海洋かいよう大気たいき庁ちょうの職員しょくいんは失踪しっそうから数すう分ふん後ごには衛星えいせいが遭難そうなん信号しんごうを受信じゅしんしていたとも述のべた。5月19日にち時点じてんで、失踪しっそうから2時じ間あいだ後ごには航空機こうくうき用よう救命きゅうめい無線むせん機きから発信はっしんされたと思おもわれる遭難そうなん信号しんごうが受信じゅしんされていたという報道ほうどうもあったが、エジプト航空こうくう側がわは否定ひていした。

6月がつ上旬じょうじゅん、2つあるうちの1つのブラックボックスのアンダーウォーター・ロケーター・ビーコンから発信はっしんされた「ピン」 ("pings") を探知たんちしたことにより、ブラックボックスの捜索そうさく範囲はんいは半径はんけい2kmになった。

6月15日にち、調査ちょうさ船せん「ジョン・レスブリッジ」 (John Lethbridge) で残骸ざんがいがある複数ふくすうの主要しゅよう位置いちを特定とくていしたと発表はっぴょうした。7月9日にち、エジプト政府せいふは「ジョン・レスブリッジ」による遺体いたいの回収かいしゅう作業さぎょうを延長えんちょうすると発表はっぴょうした。7月16日にち、「ジョン・レスブリッジ」は全すべての遺体いたいを回収かいしゅうし、アレクサンドリア港こうに戻もどった。アレクサンドリアに到着とうちゃく後ご、DNA分析ぶんせきなどのため遺体いたいはカイロに運はこばれた。

ブラックボックス

5月22日にち、エジプト石油せきゆ省しょうの無人むじん潜水せんすい機き (ROV) が捜索そうさくに加くわわった。アブドルファッターフ・アッ＝シーシー大統領だいとうりょうはこのROVは水深すいしん3,000mでの運用うんようができると述のべた。エジプト民間みんかん航空こうくう省しょうの主任しゅにん調査官ちょうさかんアイマン・アル＝モカデム (Ayman al-Moqadem) によると、このROVはブラックボックスから発信はっしんされた信号しんごうを探知たんちできない。

5月23日にち、ブラックボックスから発信はっしんされた信号しんごうを探知たんちできるソナーを搭載とうさいしたフランス海軍かいぐん所属しょぞくのデスティエンヌ・ドルヴ級きゅう通報つうほう艦かん「アンセーニュ・ド・ヴェソ・ジャクベ」が現場げんばに到着とうちゃくした。「アンセーニュ・ド・ヴェソ・ジャクベ」は最大さいだい潜航せんこう深度しんど1,000mのROVも搭載とうさいしており、このROVはブラックボックスから発信はっしんされた信号しんごうを探知たんちできる。

5月26日にち、エジプト当局とうきょくはフランスやイタリアの企業きぎょうにブラックボックスの捜索そうさくへの協力きょうりょくを依頼いらいした。水深すいしん3,000mで捜索そうさくを実施じっしできることを条件じょうけんとし、その中なかにはALSEAMARやモーリシャスに拠点きょてんを置おくディープ・オーシャン・サーチ (Deep Ocean Search) も含ふくまれていた。

フランス航空こうくう事故じこ調査ちょうさ局きょく (BEA) によると、5月27日にちにフランス海軍かいぐん所属しょぞくの測量そくりょう艦かん「ラプラス」 (Laplace) がコルシカ島とうのポルト＝ヴェッキオ港みなとを出港しゅっこうし捜索そうさく現場げんばへ向むかった。「ラプラス」はブラックボックスから発信はっしんされた信号しんごうを探知たんちできるALSEAMARの曳航えいこう式しきソナー（探知たんち距離きょり4-5km）を3つ搭載とうさいしていた。6月1日にち、エジプト民間みんかん航空こうくう省しょうは「ラプラス」がいずれかのブラックボックスのアンダーウォーター・ロケーター・ビーコンから発信はっしんされた「ピン」を探知たんちしたと報告ほうこくした。BEAのレミ・ジュティ (Remi Jouty) はこれにより重点的じゅうてんてきに捜索そうさくすべき範囲はんいが判明はんめいしたと述のべた。

エジプト当局とうきょくはディープ・オーシャン・サーチの調査ちょうさ船せん「ジョン・レスブリッジ」を借かりる契約けいやくを結むすんだ。「ジョン・レスブリッジ」は最大さいだい潜航せんこう深度しんど6,000mのROVを搭載とうさいしており、海底かいてい地形ちけい図ずの作成さくせいなどができる。「ジョン・レスブリッジ」は5月28日にちにアイリッシュ海うみを出発しゅっぱつし、エジプトのアレクサンドリア港こうでエジプトおよびフランスの調査官ちょうさかんを乗のせ、6月9日にち頃ごろに捜索そうさく現場げんばに到着とうちゃくする予定よていであった。実際じっさいにはアレクサンドリアには6月がつ9日にちに到着とうちゃくし、捜索そうさく現場げんばには6月がつ12日にちに到着とうちゃくした。6月13日にち、エジプトの事故じこ調査ちょうさ委員いいん会かいはブラックボックスからの信号しんごうが6月がつ24日にち以降いこうは途絶とだえるかもしれないと述のべた。

6月16日にち、エジプト当局とうきょくは「ジョン・レスブリッジ」が水深すいしん13,000フィート（約やく4,000m）でコックピット・ボイス・レコーダー (CVR) を発見はっけんしたと述のべた。CVRは損傷そんしょうしていたがメモリーユニットは無傷むきずで回収かいしゅうされ、アレクサンドリアで調査官ちょうさかんに引ひき渡わたした後のち、解析かいせきのためカイロに移送いそうされた。翌よく6月がつ17日にち、「ジョン・レスブリッジ」がフライト・データ・レコーダー (FDR) を回収かいしゅうしたと発表はっぴょうされた。FDRは激はげしく損傷そんしょうしており、メモリーユニットを回収かいしゅうしたが、エジプト当局とうきょくは解析かいせきを行おこなう前まえにブラックボックスの修理しゅうりが必要ひつようであると述のべた。

6月19日にち、エジプトの事故じこ調査ちょうさ委員いいん会かいはエジプト軍ぐんの施設しせつでCVRとFDRから無傷むきずで回収かいしゅうされたメモリーユニットの乾燥かんそうを完了かんりょうし、メモリーユニットの電気でんき検査けんさを開始かいししたと述のべた。

6月21日にち、事故じこ調査ちょうさに当あたった職員しょくいんはCNNにブラックボックスから回収かいしゅうしたメモリーチップは2つとも損傷そんしょうしていたと伝つたえた。ブラックボックスからデータを引ひき出だすことができなかったため、6月23日にち、エジプトの事故じこ調査ちょうさ委員いいん会かいはメモリーチップに堆積たいせきした塩分えんぶんを除去じょきょするためブラックボックスをフランスのBEAに送おくったと述のべた。

6月27日にち、エジプト当局とうきょくはFDRがBEAの研究所けんきゅうじょで修理しゅうりされ解析かいせきのためカイロに送おくられたと述のべた。同日どうじつ、パリ検察けんさつのスポークスマンはAP通信つうしんに、テロを示しめす証拠しょうこはないため事故じこの予備よび調査ちょうさが開始かいしされると述のべた。また、検察けんさつ当局とうきょくは過失かしつ致死ちしの疑うたがいで捜査そうさを開始かいししたと述のべた。7月2日にちには、CVRが修理しゅうりされカイロに送おくられたと発表はっぴょうされた。

事故じこ調査ちょうさ

2017年ねん5月がつ7日にち、フランス当局とうきょくは、犠牲ぎせい者しゃの遺体いたいから爆発ばくはつ物ぶつの痕跡こんせきは発見はっけんされなかったと発表はっぴょうした。

2018年ねん7月がつ6日にち、BEAは、コックピットで急速きゅうそくに火災かさいが広ひろがった可能かのう性せいが高たかいと発表はっぴょうした。

2022年ねん4月がつ、イタリアの新聞しんぶん「コリエーレ・デラ・セラ」が、入手にゅうしゅした航空こうくう専門せんもん家かが作成さくせいした134ページの報告ほうこく書しょの内容ないようを明あきらかにした。それによると、墜落ついらくの原因げんいんは操縦そうじゅう室しつで乗務じょうむ員いんが吸すっていたタバコが、非ひ常用じょうようの酸素さんそ供給きょうきゅうマスクから漏もれた酸素さんそに不注意ふちゅういで引火いんかし、コックピット内ないで火災かさいが発生はっせいしたことだった。2016年ねん当時とうじコックピット内ないでの喫煙きつえんは禁止きんしされていなかった。

外部がいぶリンク

• EGYPTAIR FLIGHT MS 804 - エジプト航空こうくう （英語えいご）（アラビア語ご）