エベレストを滑すべった男おとこ

エベレストを滑すべった男おとこ
The Man Who Skied Down Everest
監督かんとく	Bruce Nyznik ローレンス・シラー
ナレーター	ダグラス・レイン
出演しゅつえん者しゃ	三浦みうら雄一郎ゆういちろう
音楽おんがく	Larry Crosley Nexus
撮影さつえい	金きむ宇満司し
編集へんしゅう	Bob Cooper Millie Moore
配給はいきゅう	Specialty Films
公開こうかい	1975年ねん9月がつ19日にち (1975-09-19)
上映じょうえい時間じかん	86分ふん
製作せいさく国こく	カナダ
言語げんご	英語えいご
製作せいさく費ひ	CADきゃど 410,000

『エベレストを滑すべった男おとこ』（エベレストをすべったおとこ、The Man Who Skied Down Everest）は、日本にっぽんのプロスキーヤーで登山とざん家かである三浦みうら雄一郎ゆういちろうが、1970年ねん5月にエベレストをスキーで滑降かっこうした模様もようを捉とらえた映像えいぞうをもとに、1975年ねんに制作せいさく公開こうかいされたドキュメンタリー映画えいが。映画えいがプロデューサーはカナダの映画えいが製作せいさく者しゃバッジ・クローリーであった。

三浦みうらの滑降かっこうの映像えいぞうは、日本にっぽんでは1970年ねん7月がつに公開こうかいされた『エベレスト大だい滑降かっこう』でいち早はやく作品さくひん化かされていた。クローリーは石原いしはらプロからこの作品さくひんの版権はんけんを買かって、再さい編集へんしゅうを施ほどこした。

クローリーは、この作品さくひんで第だい48回かいアカデミー賞しょうで長編ちょうへんドキュメンタリー映画えいが賞しょうを受賞じゅしょうした。アカデミー・フィルム・アーカイブは、2010年ねんに『エベレストを滑すべった男おとこ』を保存ほぞん対象たいしょうとして収蔵しゅうぞうした。

滑降かっこう

三浦みうらは、1970年ねん5月5日にちに、エベレストのノーマルルートの経由けいゆ地ちである、ローツェのサウスコル（標高ひょうこう7985m）に到着とうちゃくした。当初とうしょの計画けいかくでは、サウスコルからスキーで滑降かっこうすることになっていたが、5月6日にちにサウスコルから200mほどザイルで下くだり、標高ひょうこう7780m地点ちてんの滑降かっこうを開始かいしした。この地点ちてんは、サウスコル直下ちょっかの岩場いわば「イエロー・バンド (Yellow Band)」からの急峻きゅうしゅんな斜面しゃめんにあった。減速げんそく用ようのパラシュートや、無線むせん通信つうしん機きが内蔵ないぞうされたヘルメット、酸素さんそマスク、救命胴衣きゅうめいどういを装着そうちゃくした三浦みうらは、そこから標高ひょうこう7000m地点ちてんまでを2分ふん20秒びょうで滑降かっこうした。当初とうしょの計画けいかくでは標高ひょうこう6200m地点ちてんまでの滑降かっこうが目指めざされていたが、滑降かっこう開始かいしから1分ふん40秒びょうの時点じてんでパラシュートを操作そうさした際さいに転倒てんとう、右足みぎあしのスキー板ばんが外はずれてしまい、最後さいごは外はずれたスキー板ばんが体からだに絡からむ形かたちで止とまり、滑降かっこうはそこまでの2分ふん20秒びょうとなった。

最終さいしゅう的てきに滑降かっこうを終おえたのは、岩いわの上うえで動うごかない氷こおりと、氷河ひょうがとして流ながれ下くだり始はじめた氷こおりの間あいだにできた、ベルクシュルントと呼よばれる大おおきく深ふかいクレバスの縁えんから、250フィート (76 m)の位置いちであった。わずか先さきにクレバスがあったことになる。

これは、当時とうじ、世界せかいで最もっとも標高ひょうこうが高たかい地点ちてんからの本格ほんかく的てきなスキーによる滑降かっこうであった。

1970年ねんのエベレスト

このスキーによる滑降かっこうは、藤島ふじしま泰やすし輔を総本部そうほんぶ長ちょうとした1970年ねん当時とうじの日本にっぽんエベレスト・スキー探検たんけん隊たいが掲かかげた目的もくてきのひとつであった。この遠征えんせいではシェルパ6人にんが遭難そうなん死しした。当時とうじ、これとは別べつの日本にっぽんの遠征えんせい隊たいである日本にっぽん山岳さんがく会かいエベレスト登山とざん隊たいが、複数ふくすうのルートからエベレストの登頂とうちょうに挑いどみ、ノーマルルートからは松浦まつうら輝夫てるお、植村うえむら直己なおき 、平林ひらばやし克敏かつとしがエベレストの日本人にっぽんじん初はつ登頂とうちょうに成功せいこうし、南西なんせい壁かべ（映画えいがのポスターに、Y字形じけいに雪ゆきが溜たまった黒くろい岩いわ壁かべとして写うつり込こんでいる）のルートからの登頂とうちょうを目指めざす初はじめての試こころみであった。後者こうしゃは2人ふたりの死者ししゃを出だした。

エピソード

1977年ねんから1981年ねんにかけてアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょうだったジミー・カーターは、この映画えいがを在任ざいにん中ちゅうにホワイトハウスで何なん回かいも鑑賞かんしょうしたとされ、2004年ねんには三浦みうらを招待しょうたいした席せきで「命いのちの危険きけんを顧かえりみず夢ゆめに向むかってチャレンジするということの素晴すばらしさに感銘かんめいを受うけた。20回かい以上いじょう観みたんじゃないか」と述のべて三浦みうらを讃たたえた。

当時とうじのカナダ首相しゅしょうであったピエール・トルドーは、この映画えいががカナダの映画えいがとして初はじめてアカデミー長編ちょうへんドキュメンタリー映画えいが賞しょうを取とったことに喜よろこび、三浦みうらと複ふく数すう回かい会見かいけんしたという。

なお、1977年ねんに刊行かんこうされた、この映画えいがと同名どうめいの三浦みうらの著書ちょしょ『エベレストを滑すべった男おとこ』は、後のちにちくまプリマーブックスとして再刊さいかんされた。

関連かんれん項目こうもく

• 1970年ねんのエベレスト遭難そうなん事故じこ

外部がいぶリンク

• The Man Who Skied Down Everest - IMDb（英語えいご）