オフショア金融きんゆうセンター

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タックス・ヘイヴンるドイツの資産しさんのドイツのGDPにたいする割合わりあい[1]法令ほうれい遵守じゅんしゅをエンフォースするため租税そぜい情報じょうほう共有きょうゆうするくににあるタックス・ヘイヴンは衰退すいたいしてきた。「Big 7」は、香港ほんこん、アイルランド、レバノン、パナマ、シンガポールおよびスイスである。

オフショア金融きんゆうセンター(オフショアきんゆうセンター、Offshore Financial Center:OFC)とは、厳格げんかく意味いみでのオフショア市場いちばである。通常つうじょうは、小規模しょうきぼかつてい税率ぜいりつ法域ほういきであって、居住きょじゅうしゃたるオフショア会社かいしゃたいする企業きぎょう商業しょうぎょうサービスの提供ていきょうとオフショア・ファンドによる投資とうしとくしたものをいう[2]。 この用語ようごは1980年代ねんだいにまでさかのぼ[3]研究けんきゅうしゃのローズ(Rose)とシュピーゲル(Spiegel)[4]ソシエテ・ジェネラル[5]および国際こくさい通貨つうか基金ききん (IMF)[6]は、オフショア・センターには、その居住きょじゅう人口じんこう比例ひれいしない金融きんゆうセクターをゆうするあらゆる経済けいざいけんふくまれるとした。

An OFC is a country or jurisdiction that provides financial services to nonresidents on a scale that is incommensurate with the size and the financing of its domestic economy.
(オフショア金融きんゆうセンターとは、その内部ないぶ経済けいざいおおきさおよびこれにたいする資金しきん調達ちょうたつにはいな規模きぼ居住きょじゅうしゃたいする金融きんゆうサービスを提供ていきょうするくにまたは法域ほういきである。)


--Ahmed Zoromé, IMF Working Paper/07/87[7]

定義ていぎ[編集へんしゅう]

ある金融きんゆうセンターが「オフショア」かかは程度ていど問題もんだいである[8][9]げんに、IMFのワーキング・ペーパーは上記じょうき記述きじゅつ引用いんようし、このオフショア・センターの定義ていぎには英国えいこくおよび米国べいこくふくまれるが、これらのくには、そのだい規模きぼ人口じんこうやG20やOECDといった国際こくさい機関きかん加盟かめいしていることから、通常つうじょうは「オンショア」とされるとしている[10]

タックス・ヘイヴン」というより不明瞭ふめいりょう用語ようごは、しばしばオフショア・センターについてもちいられることがあることから、りょう概念がいねん混同こんどうされることがある。Tolley's International Initiatives Affecting Financial Havens[11]において、用語ようごしゅう執筆しっぴつしゃは「オフショア金融きんゆうセンター(offshore financial center)」を率直そっちょくに「タックス・ヘイヴンとばれてきたものを政治せいじてきただしい用語ようご」(a politically correct term for what used to be called a tax haven)と定義ていぎする。しかしながら、つぎのような留保りゅうほしている。「この用語ようご使用しようするということは、ある法域ほういきが、いかなる一般いっぱんてき意義いぎにおいてもタックス・ヘイヴンでないまま、オフショア金融きんゆうセンターとしての一定いってい便益べんえき提供ていきょうる、という重要じゅうよう指摘してきをするものである。」(“The use of this term makes the important point that a jurisdiction may provide specific facilities for offshore financial centers without being in any general sense a tax haven.”)米国べいこく内国ないこく歳入さいにゅうちょうの1981ねん報告ほうこくつぎのように結論けつろんづける。「あるくにがタックス・ヘイヴンであることの条件じょうけんは、そのようにえ、かつ、にするものによってそのようにかんがえられることである。」(“a country is a tax haven if it looks like one and if it is considered to be one by those who care.”)[12]

金融きんゆう機関きかん守秘しゅひ義務ぎむ租税そぜい回避かいひ示唆しさするところによれば、「タックス・ヘイヴン」はかならずしもオフショア金融きんゆうセンターをしめ適切てきせつ用語ようごではない。そのおおくにおいては、法定ほうてい銀行ぎんこう守秘しゅひ義務ぎむがなく[13]、そのおおくは、租税そぜい情報じょうほう交換こうかんプロトコルを採用さいようし、しょ外国がいこく脱税だつぜい容疑ようぎについて捜査そうさできるようにしているのである[14][15]

オフショア金融きんゆうセンターにたいする見方みかた二分にぶんされている。擁護ようごしゃは、評判ひょうばんのよいオフショア金融きんゆうセンターは、国際こくさい金融きんゆう貿易ぼうえきにおいて適法てきほうかつ不可欠ふかけつ役割やくわりたしており、その非課税ひかぜい仕組しくみによってフィナンシャル・プランニングおよびリスク・マネジメントが可能かのうとなり、また、(航空機こうくうきファイナンスや船舶せんぱくファイナンス、医療いりょう機関きかんさい保険ほけんといった)グローバルな取引とりひき必要ひつようなクロス・ボーダー・ビークルの一部いちぶ可能かのうたらしめているというのである[16]擁護ようごしゃは、米国べいこく政府せいふ外国がいこく販売はんばい会社かいしゃForeign Sales Corporation (FSC))の継続けいぞくてき利用りようによりオフショア金融きんゆうセンターを推進すいしんしている。)および英国えいこく政府せいふカリブ海かりぶかい属領ぞくりょうにおけるオフショア金融きんゆう積極せっきょくてき推進すいしんしており、その目的もくてきはこれらの地域ちいきにおける経済けいざい多様たよう支援しえんと、英国えいこくユーロさい市場いちば促進そくしんである。)によるオフショア・センターにたいする黙示もくし支持しじ指摘してきする。

米国べいこく政府せいふ関係かんけい法人ほうじんである海外かいがい民間みんかん投資とうし公社こうしゃOverseas Private Investment Corporation (OPIC)は、会社かいしゃほう発展はってんくににおいて貸付かしつけをおこなさいには、しばしば、借入かりいれじんたいして、ローンによる資金しきん調達ちょうたつ容易よういにするためのオフショア・ビークルを設立せつりつすることを要求ようきゅうする。米国べいこく対外たいがい援助えんじょは、法律ほうりつじょう、オフショア・エンティティーの組成そせいなくしては実行じっこうすることすらできないとの議論ぎろん可能かのうであろう[よう出典しゅってん]

監視かんし[編集へんしゅう]

オフショア金融きんゆうは、2000ねん以降いこうますます注意ちゅういはらわれるようになっており、とくに2009ねん8がつのG20会議かいぎのちはなおさらである。どう会議かいぎにおいては、各国かっこく首脳しゅのうによって、協力きょうりょくてき法域ほういきたいして「措置そちる」(take action)ことが決議けつぎされた[17]経済けいざい協力きょうりょく開発かいはつ機構きこう(OECD)、資金しきん洗浄せんじょうかんする金融きんゆう活動かつどう作業さぎょう部会ぶかい(FATF)および国際こくさい通貨つうか基金ききん(IMF)を先鋒せんぽうとするイニシアティヴは、オフショア金融きんゆう産業さんぎょうたいして重大じゅうだい影響えいきょうおよぼしてきた[ちゅう 1]。ほとんどの主要しゅようなオフショア・センターは、相当そうとう程度ていど資金しきん洗浄せんじょうその主要しゅよう規制きせいされる活動かつどうについてその内部ないぶ規制きせいけた。げんに、ジャージーは国際こくさいてきもっと従順じゅうじゅん法域ほういき格付かくづけされており、「40+9」の勧告かんこく事項じこうのうち44を遵守じゅんしゅしている[18]

2007ねんには、エコノミストが、オフショア金融きんゆうセンターの調査ちょうさ結果けっか公開こうかいした。どう雑誌ざっし歴史れきしてきにオフショア金融きんゆうセンターにたいして敵対てきたいてきであったものの、この報告ほうこくは、オフショア金融きんゆう役割やくわりについてずっと寛大かんだい見解けんかいにシフトしたことをしめすもので、つぎのように結論けつろんづけている。

Although international initiatives aimed at reducing financial crime are welcome, the broader concern over OFCs is overblown. Well-run jurisdictions of all sorts, whether nominally on- or offshore, are good for the global financial system.
国際こくさいてきイニシアティヴが金融きんゆう犯罪はんざい減少げんしょう目指めざしていることは歓迎かんげいすべきことであるが、オフショア金融きんゆうセンターにたいするより広範囲こうはんい懸念けねん誇張こちょうされたものである。状態じょうたいのよい法域ほういきなにであれすべて、名目めいもくじょうオンショアであれオフショアであれ、グローバルな金融きんゆうシステムにとってよいものである。)[19]

チャネル諸島しょとうは、オフショア事業じぎょうによってられた資金しきんげんイングランド銀行いんぐらんどぎんこう経由けいゆしており、そのためオフショア・センターとしてのこの王室おうしつ属領ぞくりょう成功せいこうから英国えいこくがは利益りえきているのだとする。

課税かぜい[編集へんしゅう]

ほとんどのオフショア金融きんゆうセンターは元来がんらい租税そぜい負担ふたん最小さいしょう支援しえんする仕組しくみを容易よういにすることによって著名ちょめいとなったものであったが、租税そぜい回避かいひは、近年きんねんにおいては、オフショア金融きんゆうセンターの成功せいこうにおけるその役割やくわり縮小しゅくしょうしてきた。オフショア法域ほういきおおくの専門せんもんてき実務じつむは、自身じしんを「租税そぜい中立ちゅうりつてき」(tax neutral)と表現ひょうげんする。なぜなら、提案ていあんされた取引とりひきまたは仕組しくみが本来ほんらい活動かつどうする市場いちばにおいてどんな租税そぜい負担ふたんされようと、オフショア法域ほういきにおける仕組しくみはいかなる追加ついかてき租税そぜい負担ふたんをもしょうじさせないためである。

すうおおくの圧力あつりょく団体だんたいは、オフショア金融きんゆうセンターは租税そぜいまったくまたはごくわずかしかさないことにより「公正こうせい租税そぜい競争きょうそう」をおこなっているとほのめかし、これらの法域ほういき経済けいざい活動かつどう住民じゅうみん双方そうほうについてよりたか水準すいじゅんでの課税かぜい強制きょうせいされるべきであるとろんじる。オフショア金融きんゆうセンターにたいするその批判ひはんとして、精巧せいこうな(きわめて複雑ふくざつな)法域ほういきはオフショア法域ほういき利用りようによる税収ぜいしゅう減少げんしょう防止ぼうしするための租税そぜい法制ほうせい発展はってんさせているのにたいして、発展はってんくには、税収ぜいしゅう減少げんしょうにはえられないにもかかわらず、オフショア金融きんゆう仕組しくみの利用りよう急速きゅうそく進展しんてんいつくことが出来できない、というものもある[20][21]

規制きせい[編集へんしゅう]

オフショア・センターは規制きせい負担ふたんかるさによって利益りえきている。オフショアに登録とうろくするヘッジ・ファンド(その性質せいしつじょう、ハイリスク投資とうし戦略せんりゃく採用さいようする。)のうちきわめてたか割合わりあいのものは、租税そぜい負担ふたんよりもむしろ規制きせいかるさによって動機どうきづけられているものと推定すいていされている[22]おおくの資本しほん市場いちばにおける債券さいけん発行はっこうはオフショア金融きんゆうセンターに設立せつりつされたSPVもちいた仕組しくみになっており、その目的もくてきは、当該とうがい発行はっこうともな規制きせいじょうのお役所やくしょ仕事しごとりょうとく最小さいしょうするためである。

オフショア・センターは、歴史れきしてきに、違法いほう活動かつどうによる収益しゅうえき洗浄せんじょうするであるとみられてきた[21]。しかしながら、2000年代ねんだいにおける透明とうめいけたうごきと厳格げんかく資金しきん洗浄せんじょう対策たいさく規制きせい導入どうにゅうて、いまや、オフショアはおおくの場合ばあいにおいておおくのオンショア金融きんゆうセンターにくらべてよりよく規制きせいされているとろんじられることもある[ちゅう 1][23][24]たとえば、おおくのオフショア法域ほういきにおいては、あるもの信託しんたく受託じゅたくしゃとなるためには免許めんきょ必要ひつようとなるが、これにたいして(たとえば)英国えいこくおよび米国べいこくにおいては、だれ受託じゅたくしゃたりるかについてなにらの制限せいげん規制きせいもない[ちゅう 2]主要しゅようなオフショア金融きんゆうセンターは、資金しきん洗浄せんじょうかんする金融きんゆう活動かつどう作業さぎょう部会ぶかいの「40+9」の勧告かんこく事項じこうについて、OECD加盟かめいこくおおくよりも、より遵守じゅんしゅしている[25]

論者ろんしゃによっては、オフショア金融きんゆうセンターあいだ精巧せいこうさ(複雑ふくざつさ)の水準すいじゅんことなることが規制きせいアービトラージの原因げんいんとなり[26]底辺ていへんへの競争きょうそうあぶらそそぐことへの懸念けねん表明ひょうめいされてきたが、市場いちばからられる証拠しょうこによるかぎり、投資とうし規制きせい水準すいじゅんひく法域ほういきよりもよりよく規制きせいされた法域ほういき利用りようすることをこのむことがしめされているようである[27]。あるオーストラリア研究けんきゅうしゃ研究けんきゅうでは、おおくのOECD加盟かめいこくにおいては、オフショア法域ほういきくらべて、幽霊ゆうれい会社かいしゃ設立せつりつすることはより容易よういであることがしめされている。[28]グローバル・ウィットネスのレポート「Undue Diligence」では、くに資源しげん財源ざいげん私物しぶつする政治せいじは、略奪りゃくだつした資金しきんさきとしてオフショア口座こうざではなくOECD加盟かめいこく銀行ぎんこうもちいることがしめされている[29]

機密きみつせい[編集へんしゅう]

オフショア法域ほういきたいする批判ひはんしゃは、当該とうがい法域ほういきにおける過剰かじょう秘密ひみつせい指摘してきする。とくに、オフショア会社かいしゃ実質じっしつてき所有しょゆうしゃやオフショア銀行ぎんこう口座こうざかんする秘密ひみつせいである。しかしながら、おおくの法域ほういきにおいて銀行ぎんこうはその顧客こきゃく機密きみつせい維持いじしているし、主要しゅようなオフショア法域ほういきすべては、捜査そうさ機関きかんうたがわしい銀行ぎんこう口座こうざかんして情報じょうほうるための適切てきせつ手続てつづきゆうしており、そのことはFATFの格付かくづけしめされている[30]おおくの法域ほういきはさらに、たとえばアントン・ピラー命令めいれいAnton Piller order)のような私人しじん利用りよう可能かのう救済きゅうさい手段しゅだんゆうしており、これは、ある銀行ぎんこう口座こうざ違法いほう行為こうい一部いちぶとしてもちいられたと当該とうがい法域ほういき裁判所さいばんしょ説得せっとくすることができれば利用りようすることができる。

同様どうように、おおくのオフショア法域ほういき会社かいしゃ関連かんれんする情報じょうほうかぎられたりょうしか公開こうかいしていないものの、このことは米国べいこくおおくのしゅうでも同様どうようであり、株主かぶぬし名簿めいぼ会社かいしゃ口座こうざ公衆こうしゅう縦覧じゅうらんされていることはまずない。信託しんたく無限むげん責任せきにん組合くみあいについては、世界せかいにはその登録とうろくもとめる法域ほういきはごくわずかであり、その仕組しくみにかかわる人々ひとびと詳細しょうさい公開こうかいもとめるなどということについては、うまでもない。

制定せいていほうじょう銀行ぎんこう守秘しゅひ義務ぎむは、いくつかの金融きんゆうセンター、とくにスイスとシンガポールの特徴とくちょうである[31]。しかしながら、おおくのオフショア金融きんゆうセンターにおいては、そのような制定せいていほうじょう権利けんり存在そんざいしない。アルバ、バハマ、イギリスりょうヴァージン諸島しょとう、ケイマン諸島しょとう、ジャージー、ガーンジー、マンとうおよびオランダりょうアンティル諸島しょとうは、OECDモデルにもとづいて租税そぜい情報じょうほう交換こうかん協定きょうてい締結ていけつしており、これにより本国ほんごく税制ぜいせいへの違反いはんうたがいのある居住きょじゅうしゃについては財務ざいむ情報じょうほう共有きょうゆうされている[32]

国際こくさい取引とりひきへの影響えいきょう[編集へんしゅう]

オフショア・センターは、グローバルな取引とりひき導管どうかんとして機能きのうし、国際こくさいてき資本しほん移動いどう促進そくしんしている。国際こくさいてきジョイント・ベンチャー設立せつりつする場合ばあいも、そのいずれの当事とうじしゃ無用むよう課税かぜいまねくことをおそれて相手方あいてがた当事とうじしゃ本国ほんごく設立せつりつすることをのぞまない場合ばあいには、しばしばオフショア法域ほういき会社かいしゃとして設立せつりつすることになる。おおくのオフショア金融きんゆうセンターは依然いぜんとしてほとんどまたはまった課税かぜいしないが、オンショアの租税そぜい法制ほうせいがますます精巧せいこう(きわめて複雑ふくざつ)されたため、取引とりひき仕組しくみをオフショアにうつすコストにくらべて税務ぜいむじょうのメリットがほとんどない場合ばあいもある[33]

近年きんねん、いくつかの研究けんきゅうにおいて、オフショア金融きんゆうセンターの世界せかい経済けいざいへの影響えいきょうがより幅広はばひろ検証けんしょうされ、これらの法域ほういきにおける銀行ぎんこうあいだはげしい競争きょうそうが、付近ふきんのオンショア市場いちばにおける流動りゅうどうせい増大ぞうだいをもたらしていることがしめされた。ちいさなオフショア・センターに近接きんせつしていることは、クレジット・スプレッドおよび金利きんり抑制よくせいにつながることがしめされ[34]、ジェームズ・ハインズ(James Hines)のレポートはつぎのように結論けつろんづける。「オフショア・センターと密接みっせつ関係かんけいゆうするくににおいては、いかなる方法ほうほうであれより自由じゆう信用しんよう供与きょうよることができる。」("by every measure credit is more freely available in countries which have close relationships with offshore centers.")[35]

てい税率ぜいりつ金融きんゆうセンターは、新興しんこう市場いちばへの投資とうしにおける導管どうかんとしてますます重要じゅうようとなっている。たとえば、昨年さくねんのインドへの外国がいこく直接ちょくせつ投資とうしの44%はモーリシャス経由けいゆであり[36]、ブラジルへの外国がいこく直接ちょくせつ投資とうしの3ぶんの2以上いじょうがオフショア・センター経由けいゆであった[37]。ブランコ(Blanco)とロジャーズ(Rogers)は、オフショア・センターへの近接きんせつせい後発こうはつ開発かいはつ途上とじょうこくへの投資とうしあいだにはせい相関そうかんがあることをしめした。オフショア・センターへの外国がいこく直接ちょくせつ投資とうしが1ドル増加ぞうかすると、近隣きんりん発展はってん途上とじょうこくへの外国がいこく直接ちょくせつ投資とうし平均へいきん0.07ドル増加ぞうかするのである[38]

オフショア金融きんゆうのためのビークル[編集へんしゅう]

オフショア金融きんゆうセンターの基礎きそをなすのは、オフショア・ビークルの組成そせいである。典型てんけいてきにはつぎのようなものがある。

オフショア・ビークルは様々さまざま理由りゆうによって組成そせいされる。

合法ごうほう理由りゆうにはつぎのようなものがある。

  • 資産しさん保有ほゆうビークル:おおくの企業きぎょう集団しゅうだんすうおおくの資産しさん保有ほゆう会社かいしゃゆうし、しばしばハイリスク資産しさん別個べっこ会社かいしゃかれ、グループ本体ほんたい法的ほうてきリスクがおよばないようにされる(すなわち、アスベスト関連かんれんする資産しさん場合ばあいについては、イングランドの Adams v Cape Industries事件じけん参照さんしょう。)。同様どうように、船舶せんぱくをまとめて別個べっこのオフショア会社かいしゃ所有しょゆうさせることで、環境かんきょう法制ほうせいもとづくグループ責任せきにん回避かいひこころみることもきわめて普通ふつうである。
  • 資産しさん保護ほご政治せいじてき不安定ふあんていくに富裕ふゆう個人こじんが、居住きょじゅうこくにおける公用こうよう収用しゅうようのおそれや為替かわせ管理かんり規制きせい回避かいひするため、家産かさん保有ほゆうさせるためにオフショア会社かいしゃ利用りようする。この仕組しくみは、当該とうがい資産しさん外国がいこくられたものである場合ばあい相当そうとう期間きかん外国がいこくかれている場合ばあい年間ねんかん為替かわせ管理かんりじょう割当わりあてがく合計ごうけいがくについて)に、もっと有効ゆうこう機能きのうする[ちゅう 4]
  • 遺留分いりゅうぶん回避かいひフランスからサウジアラビア(さらには米国べいこくルイジアナしゅう)にいたるまで、おおくのくには、その相続そうぞくほうにおいて遺留分いりゅうぶん規定きていし、遺言ゆいごんしゃがそのさいして資産しさん分配ぶんぱいする自由じゆう制限せいげんしている。資産しさんをオフショア会社かいしゃき、当該とうがいオフショア法域ほういきほうもとづいて、オフショアにあるその株式かぶしきのために(通常つうじょうは、当該とうがい目的もくてきのための特定とくてい遺言ゆいごんまたは遺言ゆいごん補足ほそくしょについて)けんみとめおこなうことで、遺言ゆいごんしゃはその制限せいげん回避かいひすることができる場合ばあいがある。
  • 集団しゅうだんてき投資とうしスキーム:ミューチュアル・ファンドヘッジ・ファンドユニット・トラストおよびSICAVは、国際こくさいてき販売はんばい容易よういにするためにオフショアで組成そせいされる。てい税率ぜいりつ法域ほういきかれることで、投資とうし自身じしん本国ほんごくまたは居住きょじゅうこくにおける課税かぜいのみを考慮こうりょすればりることとなる。
  • デリバティブ取引とりひき富裕ふゆう個人こじんは、しばしばオフショア・ビークルを組成そせいして、デリバティブ取引とりひきなどのリスクのたか投資とうしおこなう。こういった取引とりひきは、わずらわしい金融きんゆう市場いちば規制きせいのために直接ちょくせつおこなうのはきわめて困難こんなんなのである。
  • 為替かわせ管理かんり取引とりひきビークル:本国ほんごくへの送金そうきんかんして、為替かわせ管理かんりがあり、または政治せいじてきリスクの増大ぞうだいがあるとかんがえられるくににおいては、主要しゅよう輸出ゆしゅつ業者ぎょうしゃは、オフショアに取引とりひきビークルを組成そせいし、輸出ゆしゅつによる売上うりあげを、さらなる投資とうし必要ひつようとなるときまで、そのオフショア・ビークルにいておく。このような性質せいしつ取引とりひきビークルは、すうおおくの株主かぶぬし代表だいひょう訴訟そしょうにおいて、取引とりひきビークルの所有しょゆうけん操作そうさすることで、多数たすう株主かぶぬし少数しょうすう株主かぶぬしたいする取引とりひき利益りえき公正こうせい分配ぶんぱい違法いほう回避かいひしている、として批判ひはんされている。
  • ジョイント・ベンチャー・ビークル・オフショア法域ほういきはしばしばジョイント・ベンチャー会社かいしゃ設立せつりつのためにもちいられる。妥協だきょうによる中立ちゅうりつてき法域ほういきという理由りゆうや(たとえばTNK-BP。)、かつ/または、当該とうがいジョイント・ベンチャーの本拠地ほんきょち会社かいしゃほう商法しょうほう十分じゅうぶん精巧せいこう(高度こうど複雑ふくざつ)されていないといった理由りゆうによるものである。
  • 株式かぶしき上場じょうじょうビークル:成功せいこうおさめた会社かいしゃではあるが、本国ほんごく会社かいしゃほう発展はってんであるがゆえに上場じょうじょうすることができないものは、しばしば、その株式かぶしきをオフショア・ビークルに譲渡じょうとし、当該とうがいオフショア・ビークルを上場じょうじょうさせる。オフショア・ビークルは、NASDAQAIM香港ほんこん証券しょうけん取引とりひきしょおよびシンガポール証券しょうけん取引とりひきしょ上場じょうじょうされる。香港ほんこんハンセン株価かぶか指数しすうふくまれる会社かいしゃの90%ちょうがオフショア法域ほういき設立せつりつされているものと見積みつもられている。2006ねんちゅうにAIMに上場じょうじょうした会社かいしゃの35%はオフショア金融きんゆうセンターのものである[39]
  • 資金しきん調達ちょうたつビークル:だい規模きぼ企業きぎょうグループは、しばしば、オフショア会社かいしゃを、ときとして自己じこ支配しはいおよばないかたち組成そせいし、これによって(債券さいけん発行はっこうまたはシンジケート・ローン方法ほうほうで)資金しきん調達ちょうたつおこなうとともに、当該とうがい資金しきん調達ちょうたつを、適用てきようされる会計かいけい処理しょりしたがってオフバランスとする。債券さいけん発行はっこうかんしては、オフショアSPVはしばしば資産しさん担保たんぽ証券しょうけん発行はっこうとく証券しょうけん)のためにもちいられる。

不法ふほう理由りゆうにはつぎのものがある。

  • 債権さいけんしゃからの財産ざいさん隠匿いんとく多額たがく負債ふさいかかえたものは、金銭きんせんおよび資産しさん匿名とくめいのオフショア会社かいしゃ移転いてんし、破産はさん効果こうか回避かいひしようとすることがある[ちゅう 5]
  • 粉飾ふんしょく決算けっさんエンロンパルマラットオリンパス不祥事ふしょうじにより、いかにして会社かいしゃがオフショア・ビークルをもちいて決算けっさん報告ほうこく操作そうさするかがあきらかにされた。
  • 脱税だつぜい件数けんすうめることは困難こんなんであるが、富裕ふゆう個人こじんが、その所有しょゆうするオフショア・ビークルによる所得しょとく申告しんこくしないことによって不法ふほう脱税だつぜいおこなうものと、ひろかんがえられている。また、グラクソ・スミスクラインソニーといった国籍こくせき企業きぎょうは、その本国ほんごくたるこう税率ぜいりつ法域ほういきから非課税ひかぜいのオフショア・センターにたいして利益りえき移転いてんおこなっていると非難ひなんされてきた[40]

船舶せんぱく航空機こうくうき登録とうろく[編集へんしゅう]

おおくのオフショア金融きんゆうセンターは、船舶せんぱくバハマパナマ著名ちょめい)または航空機こうくうきアルババミューダおよびケイマン諸島しょとう著名ちょめい)の登録とうろくおこなう。

航空機こうくうきは、新興しんこう市場いちば航空こうくう会社かいしゃがそのリースまたは購入こうにゅうたってオンショア金融きんゆうセンターから資金しきん調達ちょうたつする場合ばあいに、よくオフショア法域ほういき登録とうろくける。資金しきん提供ていきょうしゃ航空こうくう会社かいしゃ本国ほんごくにおいて当該とうがい航空機こうくうき登録とうろくけることを許容きょようしたがらず(これは、当該とうがいこく民間みんかん航空こうくうたいする十分じゅうぶん規制きせいゆうしていないためか、または、航空機こうくうきたいする担保たんぽけん実行じっこう必要ひつようになった場合ばあい当該とうがいこく裁判所さいばんしょ完全かんぜんには協力きょうりょくてきでないと想定そうていされるためである。)、かつ、航空こうくう会社かいしゃ資金しきん提供ていきょうしゃ法域ほういき大抵たいてい米国べいこくまたは英国えいこく)において航空機こうくうき登録とうろくけたがらない(個人こじんてきもしくは政治せいじてき理由りゆうのためか、または航空機こうくうきについてにせ訴訟そしょう差押さしおさえの可能かのうせいをおそれるためである。)。

たとえば、2003ねんには、国有こくゆう航空こうくう会社かいしゃであるパキスタン国際こくさい航空こうくうは、8ボーイング777購入こうにゅう一環いっかんとして、その保有ほゆうするすべての航空機こうくうきをケイマン諸島しょとうにおいてさい登録とうろくけた。米国べいこく銀行ぎんこう航空機こうくうきつづきパキスタンで登録とうろくけることを許容きょようせず、かつ、航空こうくう会社かいしゃ米国べいこく航空機こうくうき登録とうろくけることをこばんだためである[よう出典しゅってん]

保険ほけん[編集へんしゅう]

すうおおくのオフショア法域ほういきは、リスク・マネジメントのために当該とうがい法域ほういきないキャプティブ保険ほけん会社かいしゃ設立せつりつすることを促進そくしんしている。より精巧せいこうなオフショア保険ほけん市場いちばにおいては、オンショア保険ほけん会社かいしゃ当該とうがい法域ほういきにおいてオフショア子会社こがいしゃ設立せつりつし、オンショアの親会社おやがいしゃけたリスクをさい保険ほけんにより移転いてんすることで、準備じゅんびきんおよび資本しほん必要ひつようがく減額げんがくすることもできる。オンショアさい保険ほけん会社かいしゃもまた、オフショア子会社こがいしゃ設立せつりつして壊滅かいめつてきなリスクをさい保険ほけん移転いてんすることができる。

バミューダの保険ほけんさい保険ほけん市場いちばは、いま世界せかいで3番目ばんめおおきい[ちゅう 6]だいいち保険ほけん市場いちばがますますバミューダに集中しゅうちゅうしつつあるとの兆候ちょうこうもみられる。2006ねん9がつには、FTSE 250ふくまれる保険ほけん会社かいしゃであるヒスコックスPLC(Hiscox PLC)は、課税かぜいじょうおよび規制きせいじょうのメリットによりバミューダに移転いてんする計画けいかく公表こうひょうした[41]

集団しゅうだん投資とうしスキーム[編集へんしゅう]

おおくのオフショア法域ほういき集団しゅうだん投資とうしスキームまたはミューチュアル・ファンド組成そせいとくしている。市場いちば主導しゅどうしゃケイマン諸島しょとうであり、世界せかいのヘッジ・ファンドのやく75%、当該とうがい産業さんぎょうにおける運用うんよう資産しさん総額そうがくとして見積みつもられる1.1ちょうドルのうち半分はんぶんちかくをかかえているものと見積みつもられており[42]、そのうのがバミューダだが、市場いちば動向どうこうとしてはすうおおくのヘッジ・ファンドがいまイギリスりょうヴァージン諸島しょとうにおいて組成そせいされている。2005ねんまつ時点じてんで、ケイマン諸島しょとうには7106のヘッジ・ファンドが登録とうろくされ、イギリスりょうバミューダ諸島しょとうには2372、そしてバミューダは1182である[43]。これらの数字すうじは、種類しゅるい集団しゅうだん投資とうしスキームをふくんでいない。Hedgeweekにおけるデロイトによる近年きんねん調査ちょうさ参照さんしょうのこと[44]

しかしながら、ミューチュアル・ファンドの組成そせいかかるオフショア法域ほういきのよりおおきな魅力みりょくは、通常つうじょうは、規制きせいじょう考慮こうりょにある。オフショア法域ほういきは、ミューチュアル・ファンドが追及ついきゅう投資とうし戦略せんりゃくたいして(かりにあるとしても)ほとんど規制きせいしておらず、ミューチュアル・ファンドがその投資とうし戦略せんりゃくにおいて採用さいようレバレッジ程度ていどについても制限せいげんしていない。おおくのオフショア法域ほういきバミューダイギリスりょうヴァージン諸島しょとうケイマン諸島しょとうおよびガーンジー)は、ミューチュアル・ファンドとして利用りようするための分別ふんべつポートフォリオ会社かいしゃ(segregated portfolio company:SPC)設立せつりつ許容きょようしている。類似るいじ会社かいしゃがたビークルはオンショアでは利用りようできないこともまた、オフショアで設立せつりつされたファンドの隆盛りゅうせい寄与きよしている[よう出典しゅってん]

銀行ぎんこうぎょう[編集へんしゅう]

伝統でんとうてきに、すうおおくのオフショア法域ほういきは、銀行ぎんこう免許めんきょ比較的ひかくてきわずかな審査しんさによってあたえてきた。国際こくさいてきなイニシアティヴによってこの運用うんようめられ、いまやごくわずかなオフショア金融きんゆうセンターしか、主要しゅようなオンショア法域ほういき銀行ぎんこう免許めんきょゆうしないオフショア銀行ぎんこう銀行ぎんこう免許めんきょ発行はっこうしていない。オフショア銀行ぎんこうについての最新さいしん信頼しんらいできるかずとしては、ケイマン諸島しょとうが285ぎょう[45]免許めんきょけた銀行ぎんこうかかえ、バハマ [ちゅう 7]は301ぎょうである。これにたいして、イギリスりょうヴァージン諸島しょとうはたった7ぎょうしか免許めんきょけたオフショア銀行ぎんこうようしていない。

主要しゅようなオフショア金融きんゆうセンターの一覧いちらん[編集へんしゅう]

IMFによりオフショア金融きんゆうセンターとされる法域ほういき一覧いちらんは、オンラインで公開こうかいされている[46]おおくのオフショア金融きんゆうセンターは、現在げんざいのまたはかつての英国えいこく植民しょくみんまたは王室おうしつ属領ぞくりょうであり、しばしば自身じしん単純たんじゅんにオフショア法域ほういきぶ。見方みかたによっては、もっとたくさんのくにがオフショア金融きんゆうセンターであるが、以下いかかかげる法域ほういきはオフショア金融きんゆう主要しゅようさきであるとかんがえられている。

  • バミューダキャプティブ保険ほけんについて市場いちば主導しゅどうしゃであり、オフショア・ファンドおよび航空機こうくうき登録とうろくにおいてもつよいプレゼンスをゆうする。
  • ジャージー:イギリスの王室おうしつ属領ぞくりょうはそのすべてがオフショア・センターであるが、そのなかもっと国際こくさいてきである。ジャージーはとく強力きょうりょく銀行ぎんこうセクターとファンド運用うんようセクターをゆうし、弁護士べんごしやファンド・マネージャーなどの専門せんもんてきなアドバイザーが多数たすう集中しゅうちゅうしている[47]
  • ニュージーランドもっと遠距離えんきょりにある法域ほういきであるが、しん主要しゅよう法域ほういきとしてのメリットと、強力きょうりょくだが実際じっさいてき規制きせい体制たいせいそなえている。アジア市場いちばきの位置いちではあるが、ヨーロッパとの緊密きんみつむすびつきも保持ほじしている。
  • シンガポール近時きんじ資産しさん管理かんりセンターとして評判ひょうばんたかめており、2009ねんグローバル金融きんゆうセンター指数しすうでは世界せかいだい4である。このくにはヘッジ・ファンドのハブであり、そのプライベート・バンキング産業さんぎょう毎年まいとし30%の割合わりあい成長せいちょうしている[48]

以下いか著名ちょめいなオフショア・センターはいまはニッチな市場いちばとくしている。

  • バハマ相当そうとうすう登録とうろく船舶せんぱくゆうする。バハマはかつてはオフショア金融きんゆう世界せかい支配しはいてき勢力せいりょくであったが、独立どくりつて1970年代ねんだい失墜しっついした[ちゅう 9]
  • パナマ重要じゅうよう国際こくさい海事かいじセンターである。パナマは(バミューダとともに)もっとふるいオフショア法人ほうじん設立せつりつの1つであったが、パナマはその重要じゅうようせいを1990年代ねんだい初期しょきうしなった[ちゅう 10]。パナマは、いま法人ほうじん設立せつりつすうについてはイギリスりょうヴァージン諸島しょとうについでだい2である[49]
FATFによる資金しきん洗浄せんじょう対策たいさく協力きょうりょくてきくに地域ちいき一覧いちらん参照さんしょう

グローバル金融きんゆうセンター指数しすう[編集へんしゅう]

規制きせい評判ひょうばんおよび基準きじゅんはオフショア・センター全体ぜんたいにおいて一様いちようでない。2010ねんグローバル金融きんゆうセンター指数しすう(GFCI)すべての国際こくさい金融きんゆうセンターについてデータを収集しゅうしゅうし、世界せかいの5つの主導しゅどうてきなオフショア金融きんゆうセンターとして、つぎのリストを公表こうひょうしている(すべてイギリスの主権しゅけんのおよぶ地域ちいきである。)[50]

  1. ジャージー
  2. ガーンジー
  3. マンとう
  4. バミューダ
  5. ケイマン諸島しょとう

2009ねん12月には、GFCIの主導しゅどうてきなオフショア金融きんゆうセンターに所在しょざいする専門せんもんサービス事務所じむしょ企業きぎょうのグループが、国際こくさい金融きんゆうセンター・フォーラム(International Financial Centre Forum)をげた。[51]。そのウェブサイトによると、どうフォーラムは、小規模しょうきぼ国際こくさい金融きんゆうセンターの世界せかい経済けいざいにおける役割やくわりについて信頼しんらいできるバランスのとれた情報じょうほう提供ていきょうすることを目的もくてきとしている。

近時きんじ進展しんてん[編集へんしゅう]

EUの源泉げんせん徴収ちょうしゅう課税かぜい[編集へんしゅう]

欧州おうしゅう連合れんごう近時きんじ[いつ?]すうおおくのオフショア金融きんゆうセンター(とくバルバドスバミューダ例外れいがいである。)にたいして欧州おうしゅう連合れんごう源泉げんせん徴収ちょうしゅう課税かぜいおよび情報じょうほう交換こうかんかんする指令しれい署名しょめいさせた。この規制きせい各国かっこくほうによって施行しこうされるが、そのもとでは、これらの法域ほういき銀行ぎんこう口座こうざゆうするEUに居住きょじゅうする国民こくみんは、15%の源泉げんせん徴収ちょうしゅう課税かぜい(これはオフショア法域ほういき口座こうざ保有ほゆうしゃ居住きょじゅうこく分割ぶんかつされる。)をれるか、または銀行ぎんこうたいして居住きょじゅうこくとの完全かんぜん情報じょうほう交換こうかん許容きょようしなければならない。

おおくのだい規模きぼ法域ほういきとく香港ほんこんとシンガポール)は指令しれいへの署名しょめい拒否きょひした。施行しこうによって、この指令しれいは、予測よそくされていたよりもずっとすくないがくしかもどせなかったが[52]、これが規制きせい実効じっこうせいいたためなのか、オフショア銀行ぎんこう口座こうざにあると予測よそくされていたがく大幅おおはば過剰かじょうであったことがあきらかになっただめかについては、あらそいがある[よう出典しゅってん]同様どうように、ひろ予測よそくされていた香港ほんこんおよびシンガポールへの資金しきん逃避とうひ実際じっさいにはこらなかった[よう出典しゅってん]

2006ねん5がつのイギリスにおける特別とくべつ委員いいん決定けっていにより、同国どうこく歳入さいにゅう当局とうきょくは、イギリスを本拠ほんきょとする銀行ぎんこうたいしては、違法いほうせいうたがわれる場合ばあいにオフショア銀行ぎんこう預金よきん情報じょうほう開示かいじ強制きょうせいできるようになった。これは、顧客こきゃく情報じょうほう交換こうかんよりも源泉げんせん徴収ちょうしゅう課税かぜい選択せんたくした場合ばあいであってもである[53]

OECDリスト[編集へんしゅう]

2000ねんのレポートTowards Global Tax Competition[54]において、経済けいざい協力きょうりょく開発かいはつ機構きこう (OECD)は、金融きんゆう事業じぎょう優遇ゆうぐうする税制ぜいせい存在そんざい租税そぜい情報じょうほう交換こうかん手続てつづき欠如けつじょ根拠こんきょに、47の法域ほういきタックス・ヘイヴンとして特定とくていした。2000ねんから2002ねん4がつあいだに、31の法域ほういきがOECDの透明とうめいせいおよび情報じょうほう交換こうかん基準きじゅん実施じっしすることを正式せいしき確約かくやくし、これらはタックス・ヘイヴンのリストから除外じょがいされた。

アンドラ、リヒテンシュタイン、リベリア、モナコ、マーシャル諸島しょとう、ナウルおよびバヌアツは透明とうめいせいおよび情報じょうほう交換こうかんについてその時点じてんでは確約かくやくしていなかったため、2002ねん4がつにOECD租税そぜい委員いいんかいによって「協力きょうりょくてきなタックス・ヘイヴン」として名指なざしされた。これらすべての法域ほういきはそのその立場たちばひるがえし、もはやタックス・ヘイヴンとはみなされていない。

2009ねん4がつG20ロンドン・サミットなかで、G20の指導しどうしゃらがタックス・ヘイヴンをまることに合意ごういしたのち、OECDは、国際こくさいてき合意ごういされた課税かぜい基準きじゅん実施じっしする必要ひつようのあるくにのリストを公開こうかいした[55]

2009ねん5がつには、OECD租税そぜい委員いいんかい残存ざんそんする3つの法域ほういき(アンドラ、リヒテンシュタインおよびモナコ)を協力きょうりょくてきなタックス・ヘイヴンのリストから除外じょがいすることを決定けっていした。これらのくにがOECDの透明とうめいせいおよび実効じっこうてき情報じょうほう交換こうかん基準きじゅんとその実施じっしけて作成さくせいした工程こうていひょう確約かくやくしたためである。その結果けっか現在げんざいではOECD租税そぜい委員いいんかいにより協力きょうりょくてきなタックス・ヘイヴンとしてリストに掲載けいさいされた法域ほういき存在そんざいしない[56]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 2000ねんに、FATFは資金しきん洗浄せんじょうたいするプログラムのなかで、すべてのくに協力きょうりょく評価ひょうかする政策せいさく開始かいしした。そのすうねんにわたって、規制きせい実施じっし両方りょうほう相当そうとう程度ていどけられたことが、FATFによってしめされている(FATFによる資金しきん洗浄せんじょう対策たいさく協力きょうりょくてきくに地域ちいき一覧いちらん参照さんしょう。)
  2. ^ そのような規制きせいEUにおいてだい3資金しきん洗浄せんじょう指令しれいともなって提案ていあんされたのであるが。
  3. ^ たとえば、en:Panama Private Interest Foundation参照さんしょう
  4. ^ 将来しょうらい政治せいじてきまたは経済けいざいてきなリスクにたいする合法ごうほうてき資産しさん保護ほごは、債権さいけんしゃからの財産ざいさん隠匿いんとくはか不法ふほうこころみとは区別くべつされるべきである。後述こうじゅつ
  5. ^ 実務じつむじょう、そのようなこころみはほとんどこうそうしない。破産はさん管財かんざいじんは、通常つうじょう債務さいむしゃのあらゆる財務ざいむ記録きろくにアクセスし、ほとんど支障ししょうなく資産しさんがどこに移転いてんされたかを追跡ついせきするのが通常つうじょうである。いつわりがい行為こういおおくの法域ほういき(オフショアおよびオンショア)においてきんじられており、破産はさん管財かんざいじんはほとんど支障ししょうなく現地げんち裁判所さいばんしょ説得せっとくして移転いてん否認ひにんすることになる。成功せいこう見込みこみはうすいにもかかわらず、オフショア法域ほういき裁判所さいばんしょたいする申立もうしたてがあることから、倒産とうさん状態じょうたいとなった個人こじん依然いぜんとしてこの戦略せんりゃくこころみる場合ばあいがあることがわかるが、これは通常つうじょうりょう法域ほういきにおいて重大じゅうだい犯罪はんざいである。
  6. ^ 世界せかいのトップ40のさい保険ほけん会社かいしゃのうち13がバミューダに本籍ほんせきく。たとえば、アメリカン・インターナショナル・アンダーライターズ・グループ(American International Underwriters Group)HSBCインシュランス・ソリューションズ(HSBC Insurance Solutions)、XLキャピタル・リミテッド(XL Capital Limited)およびACEリミテッド(ACE Limited)がある。
  7. ^ ここではスイス(500ぎょう) はオフショア金融きんゆうセンターとしてあつかっていない。
  8. ^ 70まんちょうのオフショア会社かいしゃがイギリスりょうヴァージン諸島しょとうにおいて設立せつりつされ、そのうちのやく45まんのみが活動かつどうちゅうである(のこりは解散かいさんしたか抹消まっしょうされている。)。これは、世界中せかいじゅう設立せつりつされた110まん見積みつもられるオフショア会社かいしゃのうち、そのやく42%をめる。
  9. ^ 独立どくりつ時点じてんで、バハマはすうおおくの銀行ぎんこう不祥事ふしょうじれていた。さらに、不適切ふてきせつにもバハマの法曹ほうそう資格しかくをバハマ国民こくみん限定げんていしてしまったため、この法域ほういきにおける法的ほうてき能力のうりょくしつ希薄きはくしたが(国籍こくせき離脱りだつしゃ採用さいようさまたげたため)、法的ほうてき能力のうりょくこそが洗練せんれんされたオフショアの仕組しくみをつくげるためには不可欠ふかけつなものであった。どう時期じきではないものの、オフショア金融きんゆうにおける支配しはいてき勢力せいりょくとしてのケイマンの隆盛りゅうせいは、ほとんど正確せいかくにバハマの没落ぼつらく反映はんえいしている。Tolley's Tax Havens (2000), ISBN 0-7545-0471-9参照さんしょう
  10. ^ 1989ねん米国べいこくマヌエル・ノリエガ追放ついほうのために侵攻しんこうしたことが、この法域ほういきからおおきく市場いちばがシフトする原因げんいんとなった。その近時きんじにおいては比較的ひかくてき回復かいふくせている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]