オルジェイ (衛まもる王おう)

オルジェイ（モンゴル語ご: Өлзий, Ölǰei、中国ちゅうごく語ご: 完かん澤さわ、? - 1324年ねん）は、モンゴル帝国ていこく第だい4代だい皇帝こうていモンケ・カアンの庶子しょしのアスタイの息子むすこ。『元もと史し』などの漢文かんぶん史料しりょうでは完かん沢さわ、『集しゅう史し』などのペルシア語ご史料しりょうではاولجای (Ūljāī) と記しるされる。

概要がいよう

『元もと史し』巻まき107宗室そうしつ世よ系けい表ひょうではオルジェイがウルン・タシュの息子むすこであると記しるす一方いっぽう、『集あつまり史し』ではアスタイ（آسوتایĀsūtāī）の息子むすこと記しるしており、記録きろくが一致いっちしない。しかし、『元もと史し』宗室そうしつ世よ系けい表ひょうは誤あやまりが多おおいことで有名ゆうめいなこと、『元もと史し』食しょく貨志でオルジェイ時代じだいの下賜かしがアスタイ家か名義めいぎでなされていることなどから、『集あつまり史し』に従したがってアスタイの息子むすことするのが正ただしいとされる。

クビライ統治とうち時代じだいのオルジェイの動向どうこうは不明ふめいで、モンケ家か王族おうぞくの多おおくが参加さんかした「シリギの乱らん」に加くわわったのかどうかも不明ふめいである。元げん貞さだ2年ねん（1296年ねん）、当時とうじモンケ・ウルス当主とうしゅであったウルス・ブカが大だい元もとウルスに投降とうこうした直後ちょくご、オルジェイは初はじめて史書ししょに名なが記しるされる。この時とき、オルジェイは成なり宗むねテムルより無む邑国名めいの印しるしを与あたえられている。

大徳だいとく9年ねん（1305年ねん）にはアリクブケ家かのヨブクルとともに金きむ印しるしを賜たまわり、衛まもる安王やすおうに封ふうぜられた。これはウルス・ブカがそうであったように、元朝がんちょうに敵対てきたい的てきであった諸王しょおうを優遇ゆうぐうすることでいまだ中央ちゅうおうアジアで敵対てきたいを続つづける人々ひとびとに帰順きじゅんを促うながす目的もくてきがあったものと見みられる。また、「衛まもる安王やすおう」とはモンケ・ウルスに割わり当あてられた投下とうか領りょうの「衛まもる輝てる路ろ」に由来ゆらいするものである。

テムルの死後しご即位そくいした武たけ宗はじめカイシャンは、それまで限かぎられた者ものにしか許ゆるされていなかった最高さいこうランクの「一いち字じ王おう号ごう」を乱発らんぱつし、オルジェイもまた至大しだい3年ねん（1310年ねん）に「衛まもる安王やすおう」より新あらたに「衛まもる王おう」に封ふうぜられた。この時点じてんでモンケ家かの中なかで一いち字じ王おう号ごうを賜たまわっているのはオルジェイただ一いち人にんであるため、この頃ころにはウルス・ブカに代かわる新あらたなモンケ・ウルス当主とうしゅと見みなされていたものと見みられる。

この後のちも仁じん宗むねアユルバルワダ・英えい宗むねシデバラに仕つかえ続つづけたものと見みられるが、皇すめらぎ慶けい元年がんねん（1312年ねん）にオルジェイおよびその息子むすこのチェチェクトゥに対たいして下賜かしがあったことを除のぞけば記録きろくはない。

泰たい定じょう元年がんねん（1324年ねん）、新あらたにカアンとなったイェスン・テムルよりオルジェイの息子むすこのチェチェクトゥに父ちちの所部ところぶを承うけたまわ襲かさねするよう命令めいれいがなされており、この頃ころにオルジェイは亡なくなったものと見みられる。

子孫しそん

『元もと史し』では郯王徹てっ徹てっ禿かぶろという息子むすこがいたことを記しるす。『集あつまり史し』にはオルジェイの息子むすこに関かんする記述きじゅつはないものの、『五ご族ぞく譜ふ』・『高貴こうき系譜けいふ』といった系図けいず集しゅうにはオルジェイの息子むすことしてチェチェクトゥ（چکتوChektū）の名前なまえが記しるされており、これが「徹とおる徹とおる禿かぶろ」に相当そうとうするものと見みられる。また、『高貴こうき系譜けいふ』のみにはBārītāīという息子むすこがいたことを記しるしているが、他たの史料しりょうでの裏付うらづけはとれず実在じつざいしたかどうかは不明ふめいである。

モンケ家かの系図けいず

• モンケ・カアン…トルイの長男ちょうなんで、モンケ・ウルスの創始そうし者しゃ。
  • バルトゥ（Baltu,班はん禿かぶろ／بالتوBāltū）…モンケの嫡長子ちょうし。
    • トレ・テムル（Töre-temür,توراتیمورTūlā tīmūr）…バルトゥの息子むすこ。
  • ウルン・タシュ（Ürüng-daš,玉たま龍りゅう答こたえ失しつ／اورنگتاشŪrung tāsh）…モンケの次男じなんで、第だい2代だいモンケ・ウルス当主とうしゅ。
    • サルバン（Sarban,撒里蛮／ساربانSārbān）…ウルン・タシュの息子むすこ。
  • シリギ（Sirigi,昔むかし里吉さとよしشیرکیShīrkī）…モンケの庶子しょしで、第だい3代だいモンケ・ウルス当主とうしゅ。
    • ウルス・ブカ（Ulus-buqa,兀魯思おもえ不ふ花王かおう／اولوس بوقاŪlūs būqā）…シリギの息子むすこで、第だい4代だいモンケ・ウルス当主とうしゅ。
      • コンコ・テムル（Qongqo-temür,并王晃あきら火ひ帖じょう木き児じ／قونان تیمورQūnān tīmūr）…ウルス・ブカの息子むすこ
        • チェリク・テムル（Čerik-temür,徹とおる里さと帖じょう木き児じ）…コンコ・テムルの息子むすこで、第だい7代だいモンケ・ウルス当主とうしゅ。
      • テグス・ブカ（Tegüs-buqa,武平ぶへい王おう帖じょう古こ思おもえ不ふ花はな）…ウルス・ブカの息子むすこ、コンコ・テムルの弟おとうとで、第だい2代だい武平ぶへい王おう。
    • トレ・テムル（Töre-temür,توراتیمورTūlā tīmūr）…シリギの息子むすこ。
    • トゥメン・テムル（Tümen-temür,武平ぶへい王おう禿かぶろ満まん帖じょう木き児じ／تومان تیمورTūmān tīmūr）…シリギの息子むすこで、初代しょだい武平ぶへい王おう。
  • アスタイ（Asudai,阿おもね速はや歹／آسوتایĀsūtāī）…モンケの庶子しょし
    • オルジェイ（Ölǰei,衛まもる王おう完かん沢さわ／اولجایŪljāī）…アスタイの息子むすこで、第だい5代だいモンケ・ウルス当主とうしゅ。
      • チェチェクトゥ（Čečektu,郯王徹てっ徹てっ禿かぶろ／چکتوChektū）…オルジェイの息子むすこで、第だい6代だいモンケ・ウルス当主とうしゅ。
    • フラチュ（Hulaču,忽ゆるがせ剌出／هولاچوHūlāchū）…アスタイの息子むすこ。
    • ハントム（Hantom,هنتوم／Hantūm）…アスタイの息子むすこ。
    • オルジェイ・ブカ（Ölǰei buqa,اولجای بوقا／Ūljāī būqā）…アスタイの息子むすこ。

参考さんこう文献ぶんけん

• 杉山すぎやま正明まさあき『モンゴル帝国ていこくと大元おおもとウルス』京都大学きょうとだいがく学術がくじゅつ出版しゅっぱん会かい、2004年ねん
• 村岡むらおか倫りん「モンケ・カアンの後裔こうえいたちとカラコルム」『モンゴル国こく現存げんそんモンゴル帝国ていこく・元朝がんちょう碑文ひぶんの研究けんきゅう』大阪国際大学おおさかこくさいだいがく、2013年ねん
• 『新元しんもと史し』巻まき112列伝れつでん9
• 『蒙こうむ兀児史記しき』巻まき37列伝れつでん19