カメラ小僧こぞう

カメラ小僧こぞう（カメラこぞう）は、本来ほんらいは写真しゃしん撮影さつえいを行おこなう年少ねんしょう者しゃを指さす言葉ことば。カメ小しょう（カメこ）、カメコなどと略りゃくされる場合ばあいもある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

カメラが安価あんかで入手にゅうしゅできるようになるにつれ、カメラを購入こうにゅうできる所得しょとく層そうが拡大かくだいしたことに起因きいんする。カメラの購入こうにゅうできる所得しょとく層そうが拡大かくだい、業務ぎょうむ用途ようとが大半たいはんだったカメラが徐々じょじょに個人こじんの趣味しゅみの領域りょういきに拡大かくだいしていき、写真しゃしん撮影さつえいを行おこなう年少ねんしょう者しゃに対たいして「カメラ小僧こぞう」の名ながついた。また、ビデオカメラを使つかって同様どうようの行為こういに及およぶ者ものを指さしてビデオ小僧こぞう、ビデ小しょう（ビデこ）と呼よぶこともある。

「カメラ小僧こぞう」という言葉ことば自体じたいは1970年代ねんだい後半こうはんから青年せいねん誌しで活躍かつやくした若わかき日ひの篠山しのやま紀きの信しんが女性じょせいポートレートを発表はっぴょうする己おのれをジャーナリズムと一線いっせんを画かくする存在そんざい〈スケベ小僧こぞう〉という意味いみでつけたものであり、現在げんざいのカメラ小僧こぞうも今いまや巨匠きょしょうとなった「ご先祖せんぞ様さま」の延長線えんちょうせんにあると見みても良よい。漫画まんが家か・赤塚あかつか不二夫ふじおによって、当時とうじの篠山しのやまをモデルとした「カメラ小僧こぞう」という漫画まんがのキャラクターが生うみ出だされている。

起源きげん[編集へんしゅう]

1969年ねん頃ごろに少年しょうねん誌しを賑にぎわせた蒸気じょうき機関きかん車しゃ(SL) ブームに遡さかのぼることができる。当時とうじは父親ちちおやのカメラを借かりて少すこしずつに減少げんしょうしてゆく蒸気じょうき機関きかん車しゃを撮影さつえいするために日曜日にちようびともなると国有こくゆう鉄道てつどう（国鉄こくてつ、現在げんざいのJR）の線路せんろ脇わき・鉄橋てっきょうの下したに小中学生しょうちゅうがくせいがカメラ片手かたてに殺到さっとうしていた時代じだいであり、これが「カメラ小僧こぞう」の原点げんてんである。その後ご、キヤノンの「AE-1」、旭光学工業あさひこうがくこうぎょうのペンタックスES、オリンパスのOM-1などの小型こがた一いち眼めレフの発売はつばいにより、^{[要よう出典しゅってん]}それまで非常ひじょうに高価こうかな代物しろものであった一眼いちがんレフカメラが、（もちろんアルバイトなどで一生懸命いっしょうけんめい小遣こづかいを貯ためれば、だが）学生がくせいにも手ての届とどくものになった。また、それまで一部いちぶの学校がっこうにしかなかった写真しゃしん部ぶが、多おおくの学校がっこうで開設かいせつされた。

このため、カメラに非常ひじょうに詳くわしい若年じゃくねん者しゃが増ふえることになり、彼かれらを総称そうしょうする言葉ことばとして「カメラ小僧こぞう」という呼称こしょうが生うまれた。当時とうじはオタクという言葉ことばが無ない時代じだいであり、小僧こぞうは蔑称べっしょうと言いうよりも野球やきゅう小僧こぞうのように「坊主ぼうず」「小坊主こぼうず」に類るいする子供こどもに対たいする愛称あいしょうのような言葉ことばでもあった。したがって本来ほんらいの「カメラ小僧こぞう」とは、後述こうじゅつのそれとはまったく異ことなり、1940年代ねんだい前半ぜんはんから1950年代ねんだい後半こうはんに出生しゅっしょうしたカメラ愛好あいこう家かの世代せだいを指さすものである。

このことを裏付うらづけるように、北野きたの大まさるはNHKの番組ばんぐみ「趣味しゅみ悠々ゆうゆう・デジタルカメラ入門にゅうもん（2005年ねん4月がつ - 5月、NHK教育きょういくテレビジョン）にて、自身じしんを「昔むかしはカメラ小僧こぞうであった」と語かたっている。ここでの意味いみは前述ぜんじゅつの意味いみで有あり、少年しょうねん期きにカメラが大好だいすきだったことを言及げんきゅうしたものである。

写真しゃしん部ぶを題材だいざいとしたドラマや漫画まんがなども制作せいさくされ、大衆たいしゅう化かしていくとともに、個人こじんでも現像げんぞうできる機材きざいが市販しはんされるなど、写真しゃしん業界ぎょうかい側がわもアマチュア層そうの個人こじんをターゲットとする商品しょうひんを展開てんかいしていった。

このように、1969年代ねんだいから1980年代ねんだい初頭しょとうにかけての「カメラ小僧こぞう」は「カメラに詳くわしい若者わかもの」という程度ていどの意味いみであったため、写真しゃしん撮影さつえいのウェイトが大おおきい鉄道てつどうファンや航空機こうくうきファンなどもカメラ小僧こぞうと呼よばれることがあった。

対象たいしょうの変遷へんせん[編集へんしゅう]

「カメラ小僧こぞう」という言葉ことばの対象たいしょうは、下記かきのように変化へんかしている。

展示てんじ会かいやレースなどの催事さいじにおいて、イベントを盛もり上あげ「魅みせる」ために配置はいちされるレースクイーンやイベントコンパニオンなどの露出ろしゅつ度どの高たかいコスチュームを身みに着つけた女性じょせいを撮影さつえいすることを主おもな目的もくてきに、年齢ねんれい層そうを問とわず高額こうがくなカメラ機材きざいを抱かかえて集つどう男性だんせいカメラユーザーのことを、被写体ひしゃたいになる人々ひとびとや広告こうこく代理だいり店てん社員しゃいんら関係かんけい者しゃが蔑称べっしょうとして「カメラ小僧こぞう」と（オタクと同義どうぎの類型るいけいとして）呼よぶようになる。催事さいじはモーターショーや自動車じどうしゃレースにかぎらず、アマチュア・プロを問とわず、ゴルフ・テニス・新体操しんたいそう・ビーチバレーなどのスポーツ試合しあい、ライブアイドルなどのストリートライブなども含ふくめる。

マニア性せい[編集へんしゅう]

イベント会場かいじょうは暗くらい場合ばあいが多おおいので撮影さつえいの難易なんい度どは比較的ひかくてき高たかく、露出ろしゅつや感度かんどなどに拘かかわるカメラ小僧こぞうは一眼いちがんレフカメラを使用しようし、フラッシュも外そと付づけの高級こうきゅうなものを使用しようすることがある。焦点しょうてん距離きょりが50mmを中心ちゅうしんとした広角こうかくから望遠ぼうえんまでの標準ひょうじゅんズームレンズ以外いがいにも、100mmを超こえる望遠ぼうえんレンズを使用しようしている者ものも多おおい。コンパクトデジタルカメラを使用しようする人ひともいるが、一眼いちがんレフのような高級こうきゅうカメラを複数ふくすう首くびから下さげ、望遠ぼうえんレンズを装着そうちゃくし、イベント会場かいじょうの女性じょせいに群むらがるという光景こうけいに異様いような印象いんしょうを持もたれるものだった。また、そういったマニアが見みた目めを気きにしないいわゆるおたくの風貌ふうぼうと重かさなったケースが多おおかったため、蔑称べっしょうとして広ひろく使用しようされるようになった。

コンパニオンから見みたカメラ小僧こぞう[編集へんしゅう]

コンパニオンにとって、イベントの来客らいきゃくであり自身じしんのプロモーションとなるカメラ小僧こぞうはビジネスの上うえで有益ゆうえきな存在そんざいである。

撮影さつえい会かいやショーなどで普段ふだんから互たがいに面識めんしきがあり、会話かいわを交かわす場面ばめんも見みられ、コンパニオンの中なかにはそういったカメラ小僧こぞうを積極せっきょく的てきに利用りようして知名度ちめいどを上あげていこうとする者ものや、自身じしんのウェブサイトやブログを無償むしょうで制作せいさく・運営うんえいさせる代かわりに「公式こうしきファン」や「公式こうしき追おっかけ」と認みとめるなど共存きょうぞん関係かんけいを持もつ者ものも増ふえている。

ただし、デジタルカメラやインターネットの普及ふきゅうによって、撮影さつえいしたコンパニオンの写真しゃしんをネットなどで公開こうかいする人ひともいるが、撮影さつえいしたコンパニオンの写真しゃしんの肖像しょうぞう権けんはコンパニオン本人ほんにんと所属しょぞく事務所じむしょに帰属きぞくするため、インターネット等とうによる公開こうかいには事務所じむしょの許可きょかが必要ひつようであるとされる。イベント内容ないようやコンパニオンによっては自由じゆうな公開こうかいを許可きょかしている場合ばあいもある。

一方いっぽうで、下記かきのような撮影さつえいにおけるマナーを守まもらないカメラユーザーが契機けいきとなり、カメラ小僧こぞう全般ぜんぱんに対たいして嫌悪けんお感かんを持もつに至いたるコンパニオンも存在そんざいするようになった。

他たの一般いっぱん客きゃくを押おしのける、しつこく写真しゃしんを撮とる、しつこく話はなしかけるなどの業務ぎょうむ妨害ぼうがい
休憩きゅうけい中ちゅうや食事しょくじ中ちゅうに話はなしかけてくるなど、プライバシーに配慮はいりょしない行為こうい
隠かくし撮とりするなどのマナー違反いはんの行為こうい
撮影さつえい中ちゅうの行動こうどうが不自然ふしぜんで、その画像がぞうが後日ごじつどう利用りようされるのかを不安ふあんにさせる撮影さつえい
卑猥ひわいなポーズを強要きょうようしたり、下半身かはんしんや胸部きょうぶばかりを撮影さつえいしようとするセクシャルハラスメントまがいの行為こうい

主催しゅさい者しゃから見みたカメラ小僧こぞう[編集へんしゅう]

主催しゅさい者しゃはこうしたカメラ小僧こぞうを快こころよく思おもわない場合ばあいが多々たたある。イベント内容ないようによってはコンパニオンの撮影さつえいを禁止きんしする企業きぎょうもある。1980年代ねんだいには、女性じょせいアイドルのコンサートやイベントで無む許可きょかで撮影さつえいした写真しゃしんが生なま写真しゃしん屋やなどで売うられ反はん社会しゃかい的てき勢力せいりょくの資金しきん源げんになることもあり、主催しゅさい者しゃ側がわがカメラ持もち込こみを禁止きんしするケースも多おおかった。当時とうじトップアイドルだった南野みなみの陽子ようこは、カメラ小僧こぞうが警備けいび員いんに羽はね交かい絞しめにされて連つれ出だされ、ボコボコにされる姿すがたを見みながら歌うたっていたと語かたっている^[1]。

派生はせい[編集へんしゅう]

女性じょせいアイドル、特とくに新人しんじんライブアイドルやグラビアアイドルなどを専せん門もんにしたカメラ小僧こぞうも存在そんざいしており、主おもにサイン会かいや握手あくしゅ会かい、各種かくしゅミニライブなどで活動かつどうする場合ばあいが多おおい。2000年代ねんだい以降いこうでは大手おおて芸能げいのうプロダクション所属しょぞくの人気にんきアイドルになると肖像しょうぞう権けんやパンチラ写真しゃしんの投稿とうこうを防ふせぐなどの理由りゆうで出演しゅつえんするイベントには撮影さつえい規制きせいがかけられる場合ばあいがほとんどだが、知名度ちめいどが無ないアイドルやグラビアを中心ちゅうしんに活動かつどうしているアイドルの場合ばあいは、プロモーションの名目めいもくで規制きせいが緩ゆるいということもある。現在げんざいでは特とくに秋葉原あきはばらのCDショップで頻繁ひんぱんにイベントが開催かいさいされることから、秋葉原あきはばらはこうしたイベントおよびカメラ小僧こぞうの聖地せいちと化かしている。また、グラビアアイドルの中なかには積極せっきょく的てきに撮影さつえい会かいというカメラ小僧こぞうのためのイベントを開催かいさいしている人ひともいる（小倉おぐら優子ゆうこや浜田はまだ翔子しょうこも昔むかしは積極せっきょく的てきに撮影さつえい会かいを行おこなっていた）。

コスプレを専せん門もんに扱あつかったイベントを中心ちゅうしんに、コスプレイヤーを専せん門もんにしたカメラ小僧こぞうも存在そんざいし、コミックマーケットや東京とうきょうゲームショウなどに参加さんかする場合ばあいが多おおい。コスプレ関係かんけいではイベントコンパニオン・レースクイーンの場合ばあいと同様どうように、コスプレイヤーとの間あいだでギブアンドテイクの関係かんけいを持もつ場合ばあいもあり、カメラ小僧こぞうのサイトでコスプレイヤーの写真しゃしんを掲載けいさいしたり、コスプレイヤーの写真しゃしん集しゅう（同人どうじん誌し・同人どうじんソフトとして自主じしゅ製作せいさくする）の製作せいさくに参加さんかする場合ばあいもある。また男性だんせいの場合ばあいでもコスプレイヤーを兼かねている場合ばあいもあり、逆ぎゃくに女性じょせいコスプレイヤーが他たのコスプレイヤーを撮影さつえいする、すなわちカメラ小僧こぞう化かすることもある（この場合ばあいはカメラ娘むすめ、略りゃくしてカメ娘むすめ（カメこ）と呼よぶ場合ばあいがある）。

また、カメラ小僧こぞうの中なかには、単独たんどくのカテゴリーだけではなく、複数ふくすうのカテゴリーを守備しゅび範囲はんいにする者ものも多おおい。例たとえば東京とうきょうゲームショウでイベントコンパニオン・コスプレイヤー両方りょうほうを撮影さつえいする、アイドルの参加さんかするイベントにも各種かくしゅレースにも撮影さつえいに出でかける、などの事例じれいがある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ 「南野みなみの陽子ようこ『私わたしがキレイでいられる理由りゆう』」『FRIDAY』2010年ねん7月がつ16日にち号ごう、講談社こうだんしゃ、112-116頁ぺーじ。