カンポ・セラード

セラードの風景ふうけい

カンポ・セラード (ブラジルポルトガル語ご: Campo Cerrado) は、ブラジル高原こうげんに広ひろがるサバナである。総そう面積めんせきはおよそ2億おく400万まんヘクタールで日本にっぽんの5.5倍ばい、ブラジル総そう面積めんせきの24%を占しめる。セラード、カンポ、原音げんおんを考慮こうりょしたカンポ・セハードの表記ひょうきも見みられる。

語義ごぎ

カンポとはポルトガル語ごで「畑はたけ」の意いで、樹木じゅもくのない植生しょくせいを表あらわす学術がくじゅつ用語ようご。セラードは草原そうげんにまばらにのみ低木ていぼくの茂しげる植生しょくせいを表あらわし、「セラード」はブラジルポルトガル語ごで「閉とざされた」（英語えいごの「closed」に相当そうとう）という意味いみを持もち、「カンポ・セラード」で「見通みとおしのきかない草原そうげん」の意味いみであるという。

特徴とくちょう

植生しょくせいは高木たかぎが少すくなく、灌木がまばらに生はえるのみ。かつては強つよい酸性さんせいの赤土あかつちに覆おおわれていることから、耕作こうさくには不向ふむきとされてきた。従来じゅうらいより肉牛にくぎゅうの放牧ほうぼく地ちとして利用りようされてきた。乾期かんきになると落雷らくらいや野焼のやきを原因げんいんとする火災かさいが頻繁ひんぱんに発生はっせいする。

トカンティンス州しゅう、マラニョン州しゅう、ピアウイ州しゅうを跨またぐ一帯いったい、ヴェアデイロス平原へいげん国立こくりつ公園こうえんおよびパラナ川がわ渓谷けいこくを含ふくむ広ひろい範囲はんいはユネスコの生物せいぶつ圏けん保護ほご区くに指定していされている。

開発かいはつ

ブラジル中部ちゅうぶのセラード地域ちいきにおいては、1979年ねんから日本にっぽんとブラジルの間あいだでセラード農業のうぎょう開発かいはつ協力きょうりょく事業じぎょう（PRODECER、プロデセール）という共同きょうどうの農業のうぎょう開発かいはつプロジェクトが実施じっしされた。その背景はいけいには第だい一いち次じ石油せきゆショックや米国べいこくによる大豆だいずの禁輸きんゆなどをきっかけに資源しげんの安定あんてい確保かくほが日本にっぽんの重大じゅうだいな外交がいこう課題かだいとなっていたことがあり、ブラジルに訪問ほうもんした田中たなか角栄かくえい首相しゅしょうのエルネスト・ガイゼル大統領だいとうりょうへの提案ていあんが事業じぎょう推進すいしんのはじまりとなった。

2001年ねんの終了しゅうりょうまで3期き21年間ねんかんにわたり、約やく600億おく円えんの資金しきん（日本にっぽんのODAは279億おく円えんを活用かつよう）が投とうじられた。対象たいしょう地域ちいきは7州しゅうの34万まんヘクタールにおよび、酸性さんせい土壌どじょうの中和ちゅうわによる改良かいりょう、灌漑かんがいの整備せいび、国際こくさい協力きょうりょく事業じぎょう団だん（現げんJICA）を通つうじて115人にんの農業のうぎょう専門せんもん家かの派遣はけんが実施じっしされた。

当該とうがい地域ちいきでの大豆だいず生産せいさん量りょうは1975年ねんに43万まんトンであったものが、1999年ねんには1666万まんトンへと急増きゅうぞう。さらに2012年ねん/2013年ねんシーズンの生産せいさん予測よそく値ちは7800万まんトン・世界せかい生産せいさん量りょうの28%となり、輸出ゆしゅつ量りょうは米国べいこくの38%に匹敵ひってきする36%となる見込みこみ。今いまではブラジルは、トウモロコシやコーヒー豆まめと並ならんで大豆だいずの一大いちだい生産せいさん・輸出ゆしゅつ大国たいこくとなっているが、2012年ねんのブラジル産さん大豆だいずの6割わりがセラードで生産せいさんされたものであるなど、この農業のうぎょう開発かいはつの成果せいかは非常ひじょうに大おおきいと評価ひょうかされている。なお、開発かいはつ初年しょねんから35年間ねんかんで耕作こうさく地域ちいきは1200万まんヘクタールに達たっしたが、耕作こうさく可能かのう地ちは全体ぜんたいで1.27億おくヘクタールにおよぶことから、未いまだ「無限むげんに近ちかい」開発かいはつ余地よちがあるという。

ただし、開発かいはつがセラード北側きたがわのアマゾン南部なんぶへもおよび、1997年ねんから2007年ねんの10年ねんだけで北海道ほっかいどうに相当そうとうする面積めんせきの森林しんりんが伐採ばっさいされたという。