クラン (メルキト部ぶ)

クラン（Qulan,モンゴル語ご: Хулан Хатан, 中国ちゅうごく語ご: 忽ゆるがせ蘭らん）は、ウハズ・メルキト部族ぶぞく長ちょうダイル・ウスンの娘むすめで、チンギス・カンの妻つま（ハトゥン）の一人ひとり。チンギス・カンの妻つまの中なかでは第だい一いち夫人ふじんボルテに次つぐ地位ちいを持もち、「チンギス・カンの第だい二にオルド」を管理かんりした。

概要がいよう

1204年ねん、モンゴリアの大だい部分ぶぶんを制圧せいあつしたテムジン（チンギス・カン）に対たいしてモンゴリア西方せいほうでナイマン部ぶ、メルキト部ぶなどの反はんテムジン勢力せいりょくが結集けっしゅうし、モンゴル軍ぐんとの決戦けっせんが行おこなわれた。結果けっかとしてモンゴル軍ぐんが勝利しょうりし多おおくの部族ぶぞくが投降とうこうする中なかで、メルキト部ぶは部族ぶぞく長ちょうトクトア・ベキに率ひきいられて逃のがれたものの、同年どうねん冬ふゆにセレンガ川かわの支流しりゅうでモンゴル軍ぐんに再ふたたび捕捉ほそく・撃破げきはされた。この敗戦はいせんの中なか、ウアス・メルキトの部族ぶぞく長ちょうダイル・ウスンは自分じぶんの娘むすめクランを伴ともなってチンギス・カンの下したを訪おとずれ投降とうこうしようとした。

『元朝がんちょう秘史ひし』ではクランがチンギス・カンの下したを訪おとずれ、娶めとられるまでの経緯けいいについて以下いかのような逸話いつわを伝つたえている。チンギス・カンの下したを訪おとずれようと出発しゅっぱつしたダイル・ウスンとクランは、チンギス配下はいかのナヤア・ノヤンと出会であい、クランらが掠奪りゃくだつを受うけることを心配しんぱいしたナヤアは3日にち彼女かのじょらを自分じぶんの下したに留とめてから、チンギス・カンの基もとに参上さんじょうした。チンギス・カンはクランがナヤアの下したに3日にち留とめられたことを知しると怒いかり、ナヤアを罰ばっしようとしたが、これに対たいしクランは、ナヤアがいたからこそ無事ぶじに辿たどり着つくことができたのであり、自身じしんの貞節ていせつを疑うたがうならば直接ちょくせつ確たしかめればよい、と述のべた。後のちにクランの述のべたことが真実しんじつであると分わかると、クランはチンギス・カンの正式せいしきな妃ひとして寵愛ちょうあいされるようになり、ナヤアは恩賞おんしょうを与あたえられたという。

チンギス・カンの妃ひたちは「四よん大だいオルド」に属ぞくしていたが、クランはその中なかで「第だい二にオルド」の主しゅとして扱あつかわれ、哈児八はち真ま皇后こうごう・亦また乞剌真ま皇后こうごう・脱だつ忽ゆるがせ茶ちゃ児じ皇后こうごう・也真妃ひ子こ・也里忽ゆるがせ禿かぶろ妃ひ子こ・察真妃ひ子こ・哈剌真しん妃ひ子こらが配下はいかにいた。チンギス・カンが中央ちゅうおうアジアのホラズム・シャー朝あさへの遠征えんせいに出発しゅっぱつした時とき、クランは選えらばれて遠征えんせい軍ぐんに同行どうこうしている。チンギス・カンとの間あいだにはコルゲンという息子むすこを持もった。

参考さんこう文献ぶんけん

• 村上むらかみ正二しょうじ訳注やくちゅう『モンゴル秘史ひし 2巻かん』平凡社へいぼんしゃ、1972年ねん
• 村上むらかみ正二しょうじ訳注やくちゅう『モンゴル秘史ひし 3巻かん』平凡社へいぼんしゃ、1976年ねん