ブルガン

ブルガン
モンゴル帝国ていこく皇后こうごう・元朝がんちょう皇后こうごう
別称べっしょう	漢字かんじ表記ひょうき：卜ぼく魯罕
死去しきょ	大徳だいとく11年ねん（1307年ねん）
配偶はいぐう者しゃ	テムル（成なり宗むね）
子女しじょ	デイシュ（徳寿とくじゅ）
氏族しぞく	バヤウト部族ぶぞく
父親ちちおや	トルクス・キュレゲン（脱だつ里さと忽ゆるがせ思おもえ）

ブルガン（モンゴル語ご: ᠪᠤᠷᠬᠠᠨ 転写てんしゃ: bülγがんまan、Bulγがんまan）は、モンゴル帝国ていこく（元もと）のカアンの成なり宗むねテムルの皇后こうごう。漢字かんじ表記ひょうきは卜ぼく魯罕、『集しゅう史し』のペルシア語ご表記ひょうきでは بولوغان خاتون Būlūghān khātūn 。バヤウト部族ぶぞくの出身しゅっしん。

概要がいよう

ブルガンの祖父そふのブカ・キュレゲンはチンギス・カンの時期じきに活躍かつやくした人物じんぶつで、十じゅう三さん翼つばさの戦たたかいでバヤウト部ぶを率ひきい奮戦ふんせんした功績こうせきからチンギス家かの駙馬たるの栄誉えいよを与あたえられていた。当時とうじの元もとの宮廷きゅうてい（オルド）ではチンギス・カンの第だい一いち夫人ふじんボルテ、クビライの第だい一いち夫人ふじんチャブイを出だしたコンギラト部族ぶぞくが最さい有力ゆうりょくの姻族いんぞくであった。しかし、大徳だいとく3年ねん（1299年ねん）にテムルの第だい一いち夫人ふじんシリンダリが亡なくなったため、コンギラトの出身しゅっしんではないブルガンが第だい一いち夫人ふじんになり、さらにテムルを後見こうけんしてきたコンギラト氏し出身しゅっしんの皇太后こうたいごうココジンが大徳だいとく4年ねん（1300年ねん）に没ぼっした後のちは、ブルガンが宮廷きゅうていの第だい一いち実力じつりょく者しゃとなる。テムルは病弱びょうじゃくで、晩年ばんねんはほとんど政務せいむが取とれない状況じょうきょうになっていたため、皇后こうごうブルガンが政権せいけんを掌握しょうあくし、テムルにかわって政務せいむをとった。

大徳だいとく11年ねん（1307年ねん）にテムルが崩御ほうぎょした後のち、モンゴルの伝統でんとうに従したがって皇后こうごうブルガンが監かん国こくし、政務せいむをとると共ともに後継こうけいカアンの選出せんしゅつにあたったが、ブルガンの生うんだテムルの皇子おうじのデイシュ（徳寿とくじゅ） は早世そうせいし、テムルには他たに男子だんしがなかったため、時局じきょくが混乱こんらんした。当時とうじ、テムルの近親きんしんでカアンに適任てきにんな皇子おうじにはテムルのすぐ上じょうの兄あにのダルマバラの遺児いじのカイシャンとアユルバルワダ兄弟きょうだいがいたが、彼かれらの母はははコンギラト氏しのダギであり、その即位そくいを許ゆるせば再ふたたびコンギラト部族ぶぞくが政権せいけんを握にぎり、ブルガンは実権じっけんを失うしなうことが明あきらかであった。また、ダルマバラの死後しご、テムルとダギの再婚さいこんが取とり沙汰ざたされたことがあり、ブルガンは個人こじん的てきな嫉妬しっと心しんからダギを敵視てきししていたとも言いわれる。

ブルガンはあらかじめカイシャンをモンゴル高原こうげんに、その弟おとうとのアユルバルワダと母ははのダギを懐ふところ州しゅうに追おいやって首都しゅとの大だい都とから遠とおざけていたが、ちょうどテムルの従兄弟いとこにあたる安西あんざい王おうアナンダが大だい都とに入朝にゅうちょうしようとしていたのに目めをつけ、アナンダに接近せっきんして即位そくいを持もちかけた。この策動さくどうが成功せいこうすればますます政権せいけんから遠とおざけられることを恐おそれたコンギラト派はの重臣じゅうしんは、ひそかに大だい都とに近ちかい懐ふところ州しゅうからアユルバルワダを呼よび寄よせ、宮中きゅうちゅうでクーデターを起おこしてブルガンとアナンダを捕とらえた。ブルガンは私通しつうの罪つみで東ひがし安やす州しゅうに追放ついほうされ、続つづいてアユルバルワダを屈服くっぷくさせて即位そくいしたカイシャンの命令めいれいによって処刑しょけいされた。

バヤウト部ぶブカ・キュレゲン家か

• ブカ・キュレゲン（Buqa Küregen ＞不ふ合ごう古こ咧堅/bùhé gŭliējiān,بوقا گورکان/Būqā gūrkān）
  • トルクス・キュレゲン（Torqus Küregen ＞脱だつ里さと忽ゆるがせ思おもえ/tuōlǐhūsī）
    • ブルガン・カトン（Bulγがんまan qatun ＞卜ぼく魯罕/bŭlŭhǎn,بولوغان خاتون/Būlūghān khātūn）

参考さんこう文献ぶんけん

• 宇野うの伸浩のぶひろ「チンギス・カン家かの通つう婚こん関係かんけいに見みられる対称たいしょう的てき婚姻こんいん縁組えんぐみ」『国立こくりつ民族みんぞく学がく博物館はくぶつかん研究けんきゅう報告ほうこく』別冊べっさつ 20、1999年ねん
• 村上むらかみ正二しょうじ訳注やくちゅう『モンゴル秘史ひし 2巻かん』平凡社へいぼんしゃ、1972年ねん
• C.M.ドーソン著ちょ／佐さ口こう透とおる訳注やくちゅう『モンゴル帝国ていこく史し 3巻かん』平凡社へいぼんしゃ、1971年ねん