クロム銅どうヒ素ひそ系けい木材もくざい保存ほぞん剤ざい

クロム銅どうヒ素ひそ系けい木材もくざい保存ほぞん剤ざい（クロムどうヒそもくざいほぞんざい）は、人間にんげんにとって有害ゆうがいなシロアリから木造もくぞう住宅じゅうたくを守まもるために使用しようされていた薬剤やくざいである。クロム (Cr)、銅どう (Cu)、ヒ素ひそ (As) を含ふくみ、クロム化かヒ酸さん銅どう（chromated copper arsenate）の頭文字かしらもじを取とってCCA系けい木材もくざい保存ほぞん剤ざいとも呼よばれる。

歴史れきし

1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん）に、アメリカでCCAによる木材もくざいの処理しょりが発明はつめいされる。戦後せんご、国産こくさんの木材もくざいが高騰こうとうしたことから、アメリカから2×4（ツーバイフォー）住宅じゅうたくが輸入ゆにゅうされるようになり、耐たい湿性しっせい・耐たい蟻あり性せいに劣おとるベイツガ等ひとしの木材もくざいが大量たいりょうに使つかわれるようになった。これに伴ともない、木材もくざい保存ほぞん剤ざいを床下ゆかした木材もくざいに使用しようする処理しょりが普及ふきゅうしだす。また、アメリカ等とうでCCA処理しょりされた木材もくざいが国内こくないで使つかわれだした。

CCAが開発かいはつされた当初とうしょは、CCAの成分せいぶんは木材もくざいに強固きょうこに結合けつごうするため、毒性どくせい等とうの問題もんだいは無ないと言いわれて来きた。しかし、近年きんねんの研究けんきゅうで雨あめに濡ぬれると徐々じょじょに溶とけ出だし、周辺しゅうへん土壌どじょう等とうの環境かんきょうを汚染おせんしたり、人体じんたいに触ふれると慢性まんせい毒性どくせいにより健康けんこう被害ひがいが発生はっせいするリスクを指摘してきされるようになった。

国内こくないでは1996年ねん（平成へいせい8年ねん）から生産せいさん量りょうが激減げきげんし、現在げんざいはほとんど使用しようされていない。

年譜ねんぷ

• 1938年ねん（昭和しょうわ13年ねん） - アメリカでCCAによる木材もくざいの処理しょりが発明はつめいされた。
• 戦後せんご - 国産こくさんの木材もくざいが高騰こうとうし、米べい栂つが等とうの輸入ゆにゅう木材もくざいが大量たいりょうに普及ふきゅうした。これに伴ともない、クレオソート油ゆ等ひとしの木材もくざい保存ほぞん剤ざいによる処理しょりが普及ふきゅうした。また、アメリカ等とうでCCA処理しょりされた木材もくざいが輸入ゆにゅうされた。
• 1963年ねん（昭和しょうわ38年ねん） - CCAの国産こくさんが始はじまる。
• 1996年ねん（平成へいせい8年ねん） - 水質すいしつ汚濁おだく防止ぼうし法ほうが改正かいせいされ、ヒ素ひその排出はいしゅつ基準きじゅんが強化きょうかされた。これに伴ともない、CCAの生産せいさん量りょうが激減げきげんした。

問題もんだい

CCA系けい木材もくざい保存ほぞん剤ざいは発癌はつがん性せいのある六ろく価かクロム、ヒ素ひそを含ふくむため、これを使用しようしたあとの大量たいりょうの建築けんちく廃はい木材もくざいが重おも篤あつな環境かんきょう汚染おせんを引ひき起おこすことが懸念けねんされている。

国土こくど交通省こうつうしょうは建設けんせつリサイクル法ほう基本きほん方針ほうしんで、CCAを含ふくむおそれのある建築けんちく廃はい木材もくざいは分別ふんべつした上うえで、適切てきせつに埋立うめたてて又または焼却しょうきゃくすることと指導しどうしている。

しかし、不十分ふじゅうぶんな設備せつびで安易あんいに焼却しょうきゃく処理しょりを行おこなうと昇華しょうかし易やすいヒ素ひそ化合かごう物ぶつが排煙はいえんとして飛散ひさんし、周辺しゅうへん地域ちいき土壌どじょうを汚染おせんすることが懸念けねんされている。また、密閉みっぺいの不十分ふじゅうぶんな処理しょり場じょうに埋うめ立たてると周辺しゅうへんの土壌どじょう、水源すいげんを汚染おせんする心配しんぱいもある。

CCA処理しょり木材もくざいの処理しょり方法ほうほう

超ちょう臨界りんかい流体りゅうたいを用もちいた処理しょり方法ほうほう等とうが研究けんきゅう・開発かいはつされているが、経済けいざい性せいなどに問題もんだいがあり、未いまだ実用じつよう化かには至いたっていない。

CCA処理しょりされた建築けんちく廃はい木材もくざいの分別ふんべつ方法ほうほう

CCA処理しょりされた建築けんちく廃はい木材もくざいは、それを含ふくまない木材もくざいと分別ふんべつし処理しょりをする必要ひつようがある。その分別ふんべつ方法ほうほうには以下いかのようなものがある。

目視もくし

CCA処理しょりされた木材もくざいは、青あお緑みどりに着色ちゃくしょくするため目視もくしにより分別ふんべつできるとされている。しかし、建築けんちく後ご、シロアリ防除ぼうじょ業者ぎょうしゃが定期ていき的てきに防除ぼうじょ処理しょりを行おこなうことがあるが、その際さい別べつの防ぼう蟻あり剤ざい入いり塗料とりょうを塗布とふすることもある。また木材もくざい自体じたいが経年けいねん劣化れっかのため黒くろずんでくるため目視もくしのみによる分別ふんべつは確実かくじつでない。

検出けんしゅつ試薬しやく

銅どうを検出けんしゅつする方法ほうほうとクロムを検出けんしゅつする方法ほうほうがある。なお、ヒ素ひそについては、化学かがく分析ぶんせきでは一度いちどヒ素ひそ化合かごう物ぶつを気化きかさせる必要ひつようがあり、解体かいたい現場げんばで簡便かんべんに検出けんしゅつするのは難むずかしい（後述こうじゅつの分析ぶんせき機器ききによる方法ほうほうでは可能かのう）。また、試薬しやくによる判定はんていは、全般ぜんぱん的てきに後述こうじゅつの分析ぶんせき機器ききによる方法ほうほうに比くらべて数すう分ふんから十じゅう数すう分ふんを要ようし時間じかんがかかるのが難点なんてんである。

銅どうの検出けんしゅつ

銅どうの検出けんしゅつ試薬しやくである「クロムアズロールS」を使用しようし、CCA処理しょりされた木材もくざいを青色あおいろに着色ちゃくしょくして判定はんていする。詳細しょうさいは、北海道ほっかいどう立りつ林産りんさん試験場しけんじょうホームページ内ないに紹介しょうかいされている。

しかし、この方法ほうほうでは、現行げんこうの銅どう系けい木材もくざい保存ほぞん剤ざい（ACQなど）も検出けんしゅつしてしまうため検出けんしゅつ方法ほうほうとしては不十分ふじゅうぶんとの意見いけんもある。

六ろく価かクロムの検出けんしゅつ

六ろく価かクロムの検出けんしゅつ試薬しやくであるジフェニルカルバジド（IUPAC名めい 1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド）を使用しようする。

まず廃はい木材もくざいに過酸化水素かさんかすいそなどの酸化さんか剤ざいを反応はんのうさせ、経年けいねん劣化れっかして生しょうじた三さん価かクロムを六ろく価かクロムに酸化さんかさせ、その後ごジフェニルカルバジドを反応はんのうさせて紫むらさき乃至ないしピンク色ぴんくいろに発色はっしょくさせる。

この方法ほうほうの難点なんてんは、ジフェニルカルバジドが非常ひじょうに酸化さんか劣化れっかしやすく、事実じじつ上じょう現場げんばで試薬しやくを調合ちょうごうする必要ひつようがあり、実用じつよう性せいに乏とぼしいことであった。尚なお、近年きんねん劣化れっかの問題もんだいを克服こくふくした試薬しやくも開発かいはつされてきている。

機器きき分析ぶんせき

近赤外線きんせきがいせん吸収きゅうしゅう法ほうを用もちいた分析ぶんせき機器ききが実用じつよう化かされている。この方法ほうほうは、クロム、銅どう、ヒ素ひその3元素げんそすべてを瞬時しゅんじ（2秒びょう程度ていど）で検出けんしゅつ可能かのうであり、信頼しんらい性せいが高たかいといわれている。

一方いっぽうで、分析ぶんせき機器ききは試薬しやくに比くらべると比較的ひかくてき高価こうかであり、解体かいたい業者ぎょうしゃのうち中小ちゅうしょう零細れいさい企業きぎょうは導入どうにゅうが難むずかしいとの声こえもある。

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外部がいぶリンク

• 国土こくど交通省こうつうしょうのリサイクルホームページ
• 社団しゃだん法人ほうじん　日本にっぽん木材もくざい保存ほぞん協会きょうかい
• 北海道ほっかいどう立りつ林産りんさん試験場しけんじょう　CCA処理しょり木材もくざい分別ふんべつの手引てびき