シマミミズ

シマミミズ
	シマミミズ
分類ぶんるい
学名がくめい
	Eisenia fetida (Savigny)
和名わみょう
	シマミミズ
英名えいめい
	brandling earthworm、tiger earthworm

シマミミズ（Eisenia fetida）は、ミミズの1種しゅ。世界せかいに広ひろく分布ぶんぷする種しゅで、ミミズの中なかでもよく知しられたものである。体からだ節ぶしの中央ちゅうおうが色濃いろこくなって、縞しま模様もように見みえる。なお学名がくめいは古ふるくは E. foetida が用もちいられ、若干じゃっかんの混乱こんらんがある。

特徴とくちょう

大型おおがたのミミズの1つ^[1]。体長たいちょうは60~180mm、体からだ幅はばは3-4mmで全体ぜんたいの体からだ節ぶし数すうは80~110程度ていど^[2]。体からだはやや扁平へんぺいになっている^[3]。体からだ節ぶしそれぞれの中央ちゅうおう部ぶが紫むらさき褐色かっしょくの太ふとい帯おびになっているため、全体ぜんたいを見みると縞しま模様もように見みえる。体からだ節ぶし間あいだの溝部みぞべや肛門こうもん周辺しゅうへん部ぶでは体腔たいこう液えきが透すけて見みえ、黄色おうしょくみを帯おびる^[3]。ただし体からだ色しょくには個体こたい変異へんいもある^[4]。

環たまき帯たいはXXVVIからXXXIIまでの5体たい節ぶしに渡わたり、鞍くら状じょうで淡あわ赤色あかいろを帯おびる。剛毛ごうもうは各かく体からだ節ぶしに4対ついずつで、腹はら面めん側がわからabcdと名付なづけられ、aa間あいだはab間あいだとほぼ等ひとしく、dd間あいだは体からだ周しゅうの約やく半分はんぶん、つまりdは体側たいそくほぼ中央ちゅうおうに位置いちする。XIIIとXIV体からだ節ぶしの腹はら面めん両側りょうがわに産卵さんらん孔あなが、XV節ぶしの腹はら面めん両側りょうがわには雄ゆう性せい孔あながある。体内たいないではXIII節ぶしに卵巣らんそうが1対つい、精巣せいそうは2対ついでXとXI節ぶしにある。また貯精嚢は4対ついでIX、X、XI、XIIにある。

本ほん種しゅの外見がいけん的てきな目立めだつ特徴とくちょうは体からだ節ぶしの中央ちゅうおうが色濃いろこいことによって全身ぜんしんが縞しま模様もように見みえることであり、和名わみょうはこれによると思おもわれる。英名えいめいもこれにちなみ brandling earthworm、あるいは tiger earthworm であるとのこと^[5]。

生息せいそく環境かんきょう

特とくに有機物ゆうきぶつの多おおい湿しめった土どを好このみ、堆肥たいひの周囲しゅういや台所だいどころの流ながし周辺しゅうへんなどにきわめて普通ふつうに見みられる^[6]。ゴミ捨ごみすて場ば、イネ藁わらや家畜かちくの糞くその堆積たいせき場じょうなど、人為じんい的てき影響えいきょうの大おおきい場所ばしょによく見みられ、森林しんりん内ないなどの自然しぜんな条件じょうけんの場ばにはほとんど生息せいそくしていない^[1]。生息せいそく地ちでの密度みつどはとても高たかい^[3]。

ただし現代げんだい日本にっぽんでは生なまゴミはすべて纏まとめて回収かいしゅうされ、田舎いなかでも堆肥たいひ舎しゃなども滅多めったにないために本ほん種しゅの生息せいそく場所ばしょはかなり減少げんしょうしている。畑はたけの片隅かたすみに畳たたみや段だんボールが積つまれていると、そこでは本ほん種しゅが多量たりょうに群生ぐんせいしている場合ばあいがあり、往時おうじをしのばせるものとなっている由よし。天王寺てんのうじ動物どうぶつ園えんでは本ほん種たねをキウイの餌えさとするために獣ししの糞くそや敷じき藁わらを積つみ上あげて本ほん種たねを繁殖はんしょくさせた事例じれいもある^[7]。

習性しゅうせい

卵たまご包つつみはレモン色しょくで長ながさ3-6mmで幅はば2-3mm、中なかに1個いっこから10数すう個こまでの卵たまごを含ふくむ。孵化ふかには20℃で約やく20日にちを要ようし、2-3ヶ月かげつで鞍くら状じょうの環たまき帯たいが出来できて成体せいたいになる。通年つうねんに渡わたって様々さまざまな大おおきさの本ほん種たねを見みることが出来できる^[1]。

卵たまご包つつみは環たまき帯たいの表面ひょうめんに分泌ぶんぴつされた粘液ねんえきが固かたまることで出来できる外部がいぶ膜まくからなり、ミミズはその膜まくが出来できると体からだを後退こうたいさせることでこの膜まくを体からだ前方ぜんぽうへとずらしてゆき、その中なかに雌めす性せい孔あなから卵たまごを、受精じゅせい嚢孔から精子せいしを放出ほうしゅつし、最後さいごに口先くちさきより体からだから離はなされる。体からだから離はなれると卵たまご包つつみの先端せんたんと後端こうたんは収縮しゅうしゅくし、前後ぜんごにやや尖とがった丸まるっこい形かたちとなる。なお、精子せいしはこれ以前いぜんに他た個体こたいと交接こうせつして受精じゅせい嚢に受うけ取とったものである^[8]。

また卵たまご包つつみを糞くそ塊かたまりで覆おおった状態じょうたいのものが見みられ、卵たまご包つつみを保護ほごするためと考かんがえられている^[9]。卵たまご包つつみから出でてくる幼ようミミズの個体こたい数すうは卵たまご包つつみの大おおきさによって異ことなり、ヨーロッパの記録きろくでは最大さいだいで20個体こたいに達たっした^[10]。

大阪おおさかでの観察かんさつでは繁殖はんしょくは周年しゅうねん行おこなわれるが、産卵さんらんは春はると秋あきに多おおく、夏なつにはかなり減少げんしょうした^[10]。

分布ぶんぷ

日本にっぽんでは北海道ほっかいどうから九州きゅうしゅうまで分布ぶんぷが見みられる^[3]。国外こくがいでは全ぜん世界せかいに分布ぶんぷする^[6]。

分布ぶんぷ域いきとしては温帯おんたいが中心ちゅうしんで、熱帯ねったいでも所々ところどころで見みられる。ヨーロッパ起源きげんと思おもわれ、それ以外いがいの分布ぶんぷ域いきは人為じんい的てきなものと考かんがえられる。鉢植はちうえの植物しょくぶつと共ともに運はこばれたとするのが主おもであるが、釣つり餌えさとして普遍ふへん的てきに用もちいられており、そのための人為じんい的てきな移植いしょくもあったものと想像そうぞうされている^[11]。

近似きんじ種しゅなど

環たまき帯たいがフトミミズ類るいでは14番目ばんめの体からだ節ぶしから3節分せつぶんであるのに対たいし、本ほん種たねを含ふくむツリミミズ科かではより後方こうほうでより多おおくの体からだ節ぶしを含ふくんで幅広はばひろく、また鞍くら方かたで背面はいめんにはあるものの腹はら面めんにはなくて体からだ節ぶしが見みえる。この点てんで多おおくの種たねを含ふくむフトミミズ類るいからは区別くべつ出来できる。本ほん種しゅの判別はんべつ点てんとして、縞しま模様もようが目立めだつことが挙あげられる。

フトミミズ科かのシマチビミミズ Pheretima okutamaensis はやはりはっきりした縞しま模様もようがあり、本ほん種しゅに似にて見みえるが、上記じょうきのような差異さいで区別くべつ出来できる^[12]。

本ほん種たねと同属どうぞくのサクラミミズ E. japonica も日本にっぽん全国ぜんこくに分布ぶんぷする。大おおきさもほぼ同おなじだが体からだ色しょくは乳白色にゅうはくしょくから淡あわ赤色あかいろ、淡あわ赤褐色せきかっしょくなどで縞しま模様もようはない。腸ちょう内ないの食物しょくもつでも体からだ色しょくが違ちがって見みえる^[13]。同どう科かで別べつ属ぞくのカッショクツリミミズも国内こくないに広ひろく分布ぶんぷし、大おおきさはやはり同おなじくらい、やはり縞しま模様もようはなく、全体ぜんたいに褐色かっしょくがかり、環たまき帯たいがやや色いろの薄うすい茶色ちゃいろであるのが目立めだつ^[14]。

しかし同属どうぞくでもっともよく似にているのは以下いかの種たねである。

アンドレツリミミズとの関係かんけい

アンドレツリミミズ E. andrei はもともと1963年ねんに本ほん種しゅの色彩しきさい変異へんいとして区別くべつされたのが最初さいしょで、1972年ねんには本ほん種しゅの亜種あしゅとして記載きさいされた^[15]。しかし現在げんざいはこの2種しゅを別種べっしゅと見みなす研究けんきゅう者しゃが多おおい。この種たねは本ほん種しゅのような縞しま模様もようはなく、一様いちように赤あかい色いろをしていることで区別くべつ出来できる。それ以外いがいの形質けいしつや生態せいたい的てきな特徴とくちょうでは両りょう種たねには区別くべつ出来できるものがない。生殖せいしょく的てきにはアンドレツリミミズの方ほうが卵たまご包つつみを作つくることと、より成長せいちょうが早はやいことが知しられる程度ていどである。生化学せいかがく的てきには両りょう種たねに違ちがいが見みられ、アンドレツリミミズは本ほん種しゅから幾いくつかの生理せいり活性かっせいに関かんする遺伝子いでんし対たいが失うしなわれたことで生うまれたとの説せつが唱となえられたこともある。

この両者りょうしゃは分布ぶんぷ域いきも両りょう種たね共どもに世界せかいに渡わたり、同おなじ場所ばしょで共ともにコロニーを作つくり、同おなじようにコンポストなどに出現しゅつげんする。しかし実験じっけん的てきに2種しゅを交配こうはいさせると、両者りょうしゃは生殖せいしょく的てきに隔離かくりされていることが確たしかめられている。なおこの種たねも本ほん種しゅとほぼ同おなじように利用りようされている。

利用りよう

釣つり餌えさや養魚ようぎょ場じょうの餌えさとして用もちいられる。そのほか、汚泥おでいや産業さんぎょう廃棄はいき物ぶつの処理しょり、肥料ひりょう化かなどに本ほん種たねを利用りようすることが試こころみられている^[1]。

香港ほんこんでは本ほん種たねを8000匹ひき用もちいて生なまゴミ処理しょりが行おこなわれているという。また生なまゴミのミミズによる堆肥たいひ化かにも本ほん種しゅがよく用もちいられるが、好こう気性きしょう微生物びせいぶつによる堆肥たいひ化かとミミズによる堆肥たいひ化かを比較ひかくすると、微生物びせいぶつによる発酵はっこうではその過程かていでアンモニア、メタン、二酸化炭素にさんかたんそなどの成分せいぶんが発生はっせいし、これらはいずれも温室おんしつ効果こうかガスである。ミミズを用もちいた場合ばあいにはこの成分せいぶんの発生はっせいがずっと少すくなくなる^[16]。