ストーンウォール (映画えいが)

ストーンウォール
Stonewall
監督かんとく	ローランド・エメリッヒ
脚本きゃくほん	ジョン・ロビン・ベイツ
製作せいさく	ローランド・エメリッヒ マーク・フライドマン マイケル・フォサット カーステン・ローレンツ
製作せいさく総そう指揮しき	アダム・プレス クリスティン・ウィンクラー マイケル・ローバン
出演しゅつえん者しゃ	ジェレミー・アーヴァイン ジョニー・ボーシャン ジョーイ・キング ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ マット・クレイヴン デヴィッド・キュービット ジョナサン・リース＝マイヤーズ ロン・パールマン
音楽おんがく	ロブ・シモンセン
撮影さつえい	アダム・ウルフ
編集へんしゅう	マルクス・フォーデラー
製作せいさく会社かいしゃ	セントロポリス・エンターテインメント
配給はいきゅう	ロードサイド・アトラクションズ アット エンタテインメント
公開こうかい	2015年ねん9月がつ18日にち (トロント国際こくさい映画えいが祭さい) 2015年ねん9月がつ25日にち 2016年ねん12月24日にち
上映じょうえい時間じかん	129分ふん
製作せいさく国こく	アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
言語げんご	英語えいご
興行こうぎょう収入しゅうにゅう	$292,669

『ストーンウォール』（Stonewall）は、2015年ねんのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのドラマ映画えいが。ローランド・エメリッヒが監督かんとく、ジョン・ロビン・ベイツが脚本きゃくほんを務つとめた。ニューヨークでのゲイ解放かいほう運動うんどうを促うながした1969年ねんのストーンウォールの反乱はんらんを背景はいけいに、架空かくうのゲイ青年せいねんの成長せいちょうを描えがく。

ストーリー

映画えいがは架空かくうの白人はくじんゲイ青年せいねんダニー・ウィンターズ（ジェレミー・アーヴァイン）の成長せいちょう譚たんの形式けいしきを採とる。1960年代ねんだい暮くれ、ダニーは故郷こきょうインディアナ州しゅうの保守ほしゅ的てきな地域ちいきで同性愛どうせいあい者しゃであることが発覚はっかくし、父親ちちおやから勘当かんどうされたため、入学にゅうがく予定よていのコロンビア大学ころんびあだいがくがあるニューヨークへやって来くる。無一文むいちもんのダニーはグリニッジ・ヴィレッジのクリストファー・ストリートに居場所いばしょを見みつけ、貧まずしいクィアの若者わかものたちと親したしくなるとともに、警察けいさつによる彼かれらへの激はげしい暴行ぼうこうを目まの当あたりにする。

ダニーは友人ゆうじんレイ（ジョニー・ボーシャン）らに連つれられて入はいったバー、ストーンウォール・インで年上としうえの男おとこトレバー（ジョナサン・リース＝マイヤーズ）と出会であい、ダンスに誘さそわれる。しかしその夜よるバーは警察けいさつのガサ入いれに遭あい、警察けいさつはレイら客きゃくを逮捕たいほする。異性いせい装そうをしていなかったために逮捕たいほを免まぬかれたダニーは、翌日よくじつ解放かいほうされたレイを迎むかえに行いく。生活せいかつに困窮こんきゅうしたダニーは売春ばいしゅんに手てを出だし、中ちゅう年男としおとこにフェラチオをされながら屈辱くつじょくの表情ひょうじょうを浮うかべる。次つぎにダニーは会員かいいんであるトレバーに誘さそわれて、ラディカリズムとは一線いっせんを画かくし穏健おんけん的てきな方法ほうほうでゲイの権利けんりの獲得かくとくを目指めざすマタシン協会きょうかいの会合かいごうに出席しゅっせきし、その日ひトレバーと一いち夜やを共ともにする。

しかしダニーは間まもなくストーンウォールでトレバーが別べつの若わかい男おとこといるのを発見はっけんし、傷心しょうしんのうちに街まちを去さることを決意けついする。しかしその矢先やさき、彼かれはストーンウォールを経営けいえいするエド・マーフィー（ロン・パールマン）の画策かくさくによって誘拐ゆうかいされ、高級こうきゅう売春ばいしゅん組織そしきに強制きょうせい的てきに斡旋あっせんされそうになる。ダニーはレイによって救出きゅうしゅつされ、二人ふたりはストーンウォールに行いきマーフィーに詰つめ寄よる。この夜よる警察けいさつはストーンウォールを急襲きゅうしゅうし、一部いちぶの客きゃくを逮捕たいほする。他たの残のこりの客きゃくとともに路上ろじょうに放ほうり出だされたダニーは、トレバーの制止せいしを振ふり切きってストーンウォールにレンガを投なげ込こみ、「ゲイ・パワー！」と叫さけぶ。これに触発しょくはつされた群衆ぐんしゅうは警官けいかんたちを攻撃こうげきし、警官けいかんたちはストーンウォール内ないに立たてこもって応戦おうせんする。

1年ねん後ご、大学だいがくでの初年度しょねんどを終おえたダニーは故郷こきょうに戻もどり、妹いもうと（ジョーイ・キング）に彼かれがニューヨークのゲイ解放かいほうマーチに参加さんかする予定よていであることを伝つたえる。映画えいがはパレード当日とうじつ、旧友きゅうゆうたちと再会さいかいし行進こうしんするダニーが路肩ろかたに妹いもうとの姿すがたを認みとめたところで幕まくを閉とじる。

キャスト

※括弧かっこ内ないは日本語にほんご吹替版ばんのキャスト

• ダニー・ウィンターズ - ジェレミー・アーヴァイン（梶かじ裕貴ゆき）
• レイ / ラモーナ - ジョニー・ボーシャン（金野こんの潤じゅん）
• フィービ・ウィンターズ - ジョーイ・キング（孫崎まごさき純じゅん）
• アニー - ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ（加藤かとうルイ）
• シーモア・パイン - マット・クレイヴン（相樂さがら真しん太郎たろう）
• コーチ・ウィンターズ - デヴィッド・キュービット
• トレバー - ジョナサン・リース＝マイヤーズ（手塚てづかヒロミチ）
• コンガ - ウラジミール・アレクシス（市橋いちはし尚史ひさし）
• クワイエット・ポール - ベン・サリヴァン（岡本おかもと和浩かずひろ）
• ジョイス・ウィンターズ - アンドレア・フランクル（田中たなか聡美さとみ）
• ボブ・コーラー - パトリック・ギャロウ（瀧村たきむら直樹なおき）
• リー - アレックス・C・ナチ（白石しらいし智さとし起おこり）
• ジョー - カール・グルスマン（藤田ふじた将利まさとし）
• マーシャ・P・ジョンソン - オトージャ・アビット（綿貫わたぬき竜之介りゅうのすけ）
• エド・マーフィー - ロン・パールマン（山下やました大だい毅あつし）

製作せいさく

2013年ねん4月がつ、ローランド・エメリッヒは本ほん作さくの企画きかくについて語かたり、「ニューヨークのストーンウォールの反乱はんらんに関かんする1200〜1400万まんドル程度ていどの小ちいさな映画えいがをやるかもしれない。クレイジーな若者わかものたちの話はなしで、一人ひとりの田舎いなか者しゃが彼かれらの仲間なかまに入はいって、最終さいしゅう的てきには反乱はんらんを始はじめて世界せかいを変かえるんだ」と述のべた。2014年ねん3月がつ31日にちには本ほん作さくがモントリオールで撮影さつえいされることが発表はっぴょうされた。2014年ねん4月がつ9日にち、ジェレミー・アーヴァインの出演しゅつえんが判明はんめいした。2014年ねん6月がつ3日にちに主要しゅよう撮影さつえいが始はじまり、同時どうじにジョナサン・リース＝マイヤーズ、ロン・パールマン、ジョーイ・キングがキャストに加くわわったことが発表はっぴょうされた。エメリッヒは当初とうしょニューヨークでの撮影さつえいを望のぞんでいたが、予算よさんの都合つごう上じょう断念だんねんした。

公開こうかい

2015年ねん3月がつにロードサイド・アトラクションズが本ほん作さくの配給はいきゅう権けんを獲得かくとくした。2015年ねん7月がつ、公開こうかい日びが2015年ねん9月がつ25日にちに決定けっていした。127館かんで公開こうかいされた本ほん作さくはオープニング週末しゅうまつに11万まん2414ドルを売うり上あげ、一いち館かんあたり871ドルという「悲惨ひさんな」数字すうじを残のこした。

日本にっぽんでは2016年ねん12月24日にちに公開こうかいされ、字幕じまく版ばんのほか、日本語にほんご吹替ふきかえ版ばんも上映じょうえいされた。

評価ひょうか

本ほん作さくに対たいする批評ひひょう家かの反応はんのうは否定ひてい的てきである。Rotten Tomatoesは66件けんの批評ひひょうに基もとづき、高こう評価ひょうかの割合わりあいを9%、評価ひょうかの平均へいきんを3.6/10、批評ひひょう家かの総意そういを「平凡へいぼんな成長せいちょう譚たんドラマとしては、『ストーンウォール』は単たんに退屈たいくつで散漫さんまんである――しかし、米国べいこく史しの重大じゅうだいな出来事できごとを描写びょうしゃする試こころみとしては、それは侮辱ぶじょく的てきなまでに悪質あくしつである」としている。Metacriticは27件けんの批評ひひょうに基もとづき、30/100という「概おおむね不評ふひょう」の値ねを示しめしている。

『ヴァニティ・フェア』のリチャード・ローソンは映画えいがを「どうかするほど、頭あたまが麻痺まひするほど粗末そまつ」、脚本きゃくほんを「憂うれわしいほど不器用ぶきよう」、美術びじゅつを「1960年代ねんだい末まつのクリストファー・ストリートがセサミストリートに見みえる」と形容けいようし、「エメリッヒは前ぜん世紀せいきの最もっとも政治せいじ的てき意味合いみあいの強つよい時代じだいの一ひとつを、凡庸ぼんようで浅薄せんばくな成長せいちょう譚たんに変かえてしまった」「実際じっさいのストーンウォールの英雄えいゆうであるマーシャ・P・ジョンソンはわずかな時間じかんしか画面がめんに登場とうじょうせず、それも完璧かんぺきなコミックリリーフとして扱あつかわれている」と述のべた。ローソンによれば、ジョンソンの扱あつかいは本ほん作さくの非ひ白人はくじんおよび「非ひブッチ」のキャラクターに対たいする敬意けいいの欠如けつじょの一端いったんであり、こうした人ひとたちは「最小さいしょうの、頭あたまを撫なでる程度ていどの注意ちゅういしか払はらわれ」ず、映画えいがは反乱はんらんを「白人はくじん的てきで、異様いように異い性愛せいあい規範きはん的てきなレンズ越ごしに」描えがいているという。

『ニューヨーク・タイムズ』のスティーヴン・ホールデンは、映画えいがは「グリニッジ・ヴィレッジの路上ろじょう生活せいかつを支配しはいした陶酔とうすい的てきな野性やせいと恐怖きょうふの混淆こんこうを思おもい起おこさせることに関かんしてはそれなりに良よい仕事しごとをしている」としたものの、「映画えいががありきたりな白人はくじんの騎士きしを創作そうさくして、最初さいしょにレンガを窓まどに投なげて反乱はんらんを焚たきつけさせたことは、歴史れきしを作つくった人々ひとびとからその歴史れきしを横よこ奪だつすることに等ひとしい」と述のべた。「ローランド・エメリッヒの恐おそろしい『ストーンウォール』に投なげるレンガがこの世よには足たりない」と題だいされたGawkerの記事きじでリッチ・ジュズウィアックは、本ほん作さくは「形式けいしき上じょうの一貫いっかん性せいに欠かけ」、「『ストーンウォール』を観みて同性愛どうせいあいについて学まなべることは『おしゃれキャット』(The Aristocats) を観みて貴族きぞく階級かいきゅう (aristocrat) について学まなべることぐらいしかない」と述のべた。『シカゴ・トリビューン』のマイケル・フィリップスによると、「エメリッヒは『紀元前きげんぜん1万まん年ねん』よりも歴史れきし考証こうしょう上じょう不正確ふせいかくな映画えいがを作つくった」が、それ以上いじょうに本ほん作さくが問題もんだいなのは「あらゆる誤あやまったクリシェを取とり込こんでいること」であり、それは「絶望ぜつぼう的てきなニュアンスの欠如けつじょの中なかで、ほぼすべての演技えんぎを苛さいなんでいる」という。

ストーンウォールの反乱はんらんに参加さんかしたマーク・シーガルは『PBSニュースアワー』に寄よせ、「『ストーンウォール』は、その白人はくじんで男性だんせいで月並つきなみなまでに美形びけいの主人公しゅじんこうが中心ちゅうしんでない歴史れきしには、一切いっさい興味きょうみを示しめさない。反乱はんらんに参加さんかしゲイ解放かいほう前線ぜんせんの創設そうせつに携たずさわった女性じょせいたちのことはほぼすべて置おき去ざりにしている。ゲイ解放かいほう前線ぜんせんには若者わかもの、トランスの人々ひとびと、レズビアン分離ぶんり主義しゅぎ者しゃなど、我々われわれのコミュニティのあらゆる範囲はんいの人々ひとびとが含ふくまれていた」と述のべた。

ストーンウォールの歴史れきし研究けんきゅう家かデイヴィッド・カーターは『ガーディアン』に、映画えいがは「非常ひじょうに粗悪そあくで不正確ふせいかくな描写びょうしゃ」であると語かたった。ストーンウォールの反乱はんらんに参加さんかしたトーマス・ラニガン＝シュミットも、「路上ろじょうの若者わかものが物事ものごとの原動力げんどうりょくであったこと」や警察けいさつの同性愛どうせいあい者しゃに対たいする残忍ざんにんさの描写びょうしゃは正確せいかくだと認みとめたものの、登場とうじょう人物じんぶつの行動こうどうや美術びじゅつデザインなどに関かんして映画えいがは不正ふせい確かくだと批判ひはんした。

批判ひはん

本ほん作さくは本編ほんぺん公開こうかい前まえの予告編よこくへんの段階だんかいから、有色ゆうしょく人種じんしゅやドラァグクイーン、ブッチレズビアン、トランス女性じょせいといったストーンウォールの反乱はんらんに大おおきく関与かんよした社会しゃかい的てき少数しょうすう者しゃの描写びょうしゃを欠かいているとして批判ひはんの対象たいしょうとなった。エメリッヒはこれに対たいし、「映画えいがは一部いちぶの人ひとたちが思おもっているよりもずっと人種じんしゅ的てき・性的せいてきに多様たようだ」と述のべていた。

主演しゅえんのジェレミー・アーヴァインも、歴史れきし上じょうの重要じゅうような人物じんぶつが省略しょうりゃくされたりホワイトウォッシュされたりしているとの批判ひはんに反論はんろんした。アーヴァインはInstagramに投稿とうこうし、「先週せんしゅう #StonewallMovie を初はじめて観みたが、本ほん作さくの多様たよう性せいについて懸念けねんを持もっている人ひとには、この歴史れきし上じょう最もっとも重要じゅうような公民こうみん権けん運動うんどうの一ひとつに不可欠ふかけつだった人種じんしゅや社会しゃかい格差かくさのほとんどすべてが描えがかれていることを保障ほしょうできる。マーシャ・P・ジョンソンは映画えいがの重要じゅうような一部分いちぶぶんであり、反乱はんらんで誰だれが最初さいしょにレンガを投なげたのかの証言しょうげん同士どうしには大おおきく食くい違ちがいがあるものの、反乱はんらんシーンで最初さいしょにレンガを持もち出だすのは、才能さいのう豊ゆたかなヴラディミール・アレクシス演えんじる、架空かくうの黒人こくじんのトランスヴェスタイトのキャラクターだ」と述のべた。

映画えいがの本編ほんぺんに対たいして寄よせられた批判ひはんに対たいして、エメリッヒは主人公しゅじんこうを白人はくじんにしたことについて「私わたしはゲイの人々ひとびとだけに向むけてこの映画えいがを作つくったのではない。ストレートの人々ひとびと向むけでもある」「監督かんとくは自分じぶんの映画えいがに自分じぶん自身じしんを投影とうえいしなければならず、そして私わたしは白人はくじんのゲイだ」と述のべた。

『アドボケート』誌しは2015年ねんの「今年ことしの人物じんぶつ」の最終さいしゅう候補こうほに、「映画えいが『ストーンウォール』への反乱はんらん者しゃたち」を選えらんだ。

2016年ねん、エメリッヒは本ほん作さくの失敗しっぱいについて「私わたしの映画えいがは、彼かれらがこうだと言いっていたものの正せい反対はんたいだ。映画えいがは政治せいじ的てきに正ただしかった。黒人こくじんやトランスジェンダーの人々ひとびともいた。我々われわれは予告編よこくへんを見みて『これはストーンウォールをホワイトウォッシュしてる』と言いったインターネットの一ひとつの声こえに押おし潰つぶされただけだ。皆みな正直しょうじきになろう、ストーンウォールは白人はくじんのイベントだった。でも誰だれもそんなことは聞ききたくなかったんだ」と述のべた。しかし、反乱はんらんを始はじめたのがさまざまな人種じんしゅや性的せいてき指向しこう、性せい自認じにんの人々ひとびとであったことは、当時とうじの報道ほうどうや写真しゃしん、また目撃もくげき証言しょうげんから明あきらかになっている。

外部がいぶリンク

• 公式こうしきウェブサイト
• ストーンウォール - allcinema
• Stonewall - IMDb（英語えいご）
• Stonewall - Rotten Tomatoes（英語えいご）