遠心えんしん冷凍れいとう機き

遠心えんしん冷凍れいとう機き（えんしんれいとうき、英えい: Centrifugal chiller）とは遠心えんしん式しき圧縮あっしゅく機きを利用りようした冷凍れいとう機きで、回転かいてんする羽根車はねぐるまで冷媒れいばいを外周がいしゅう部ぶへ吐はき出だすことで圧縮あっしゅくを行おこなう蒸気じょうき圧縮あっしゅく式しき冷凍れいとう機きの一種いっしゅである。ターボ冷凍れいとう機きと呼よばれる事ことが多おおい。冷凍れいとう能力のうりょくは80トン～12,000トンと範囲はんいが広ひろく、オフィスビル、地域ちいき冷暖房れいだんぼう、病院びょういん、半導体はんどうたい工場こうじょう、石油せきゆ化学かがく工業こうぎょう等ひとしに適用てきようされている。

用途ようと[編集へんしゅう]

水みず及およびその他た不凍液ふとうえき（ブライン）等とうを冷却れいきゃくもしくは温あたため、その流体りゅうたいを利用りようするのが一般いっぱん的てきである。ただし、特殊とくしゅ用途ようととして気体きたいを冷却れいきゃくするものも存在そんざいする。尚なお、対象たいしょうとなる流体りゅうたいは石油せきゆ化学かがく工業こうぎょう等とうでは製品せいひんを直接ちょくせつ流ながしプロセス用途ようとにも使つかわれる。

動作どうさ原理げんり[編集へんしゅう]

「冷凍れいとうサイクル」も参照さんしょう

蒸発じょうはつ器きにて液体えきたいの冷媒れいばいが熱ねつ交換こうかんを行おこない、蒸発じょうはつした冷媒れいばいガスを遠心えんしん式しき圧縮あっしゅく機きが吸すい込こみ、断熱だんねつ圧縮あっしゅくされた冷媒れいばいガスが凝縮ぎょうしゅく器きで冷ひやされて液化えきかし、膨張ぼうちょう弁べんをとおり断熱だんねつ膨張ぼうちょうの後のち、蒸発じょうはつ機きに再ふたたび液体えきたいの冷媒れいばいとして供給きょうきゅうされ冷凍れいとうサイクルが完成かんせいされる。

構造こうぞう[編集へんしゅう]

圧縮あっしゅく機き[編集へんしゅう]

圧縮あっしゅく機き内部ないぶ構造こうぞうは、インペラーを貫通かんつうし駆動くどうするシャフト、密閉みっぺい式しきの場合ばあいは増ぞう速そくギア（もしくは減速げんそくギア）、開放かいほう式しきの場合ばあいはメカニカルシール、インペラーの吸すい込こみ効率こうりつを上あげるラビリンスシール、圧縮あっしゅく効率こうりつを上あげるラビリンスシール、インペラーにより冷媒れいばいに与あたえられた速度そくどエネルギーを圧力あつりょくエネルギに変換へんかんするディフューザー、軸受じくうけ、容量ようりょう制御せいぎょの為ための吸すい込こみベーンで構成こうせいされる。圧縮あっしゅく機きには遠心えんしん式しき圧縮あっしゅく機きを採用さいようしている事ことから1 - 6段だん型がたまで利用りようされ冷媒れいばい、利用りようする温度おんどにより形態けいたいが異ことなる。

単たん段だん型がた: インペラーが1枚まいとなる圧縮あっしゅく機きである。単たん段だん型がたの場合ばあい大おおきな圧縮あっしゅく比ひを取とる事ことは、圧縮あっしゅく機きサイズの制限せいげんや回転かいてん数すうの制限せいげん等とうにより難むずかしくなる事ことと、遠心えんしん式しき圧縮あっしゅく機きの特性とくせいとして、風ふう量りょうと圧縮あっしゅく比ひが反比例はんぴれい関係かんけいに有あることから比較的ひかくてき小ちいさな冷凍れいとう能力のうりょくとなるユニットに採用さいようされる。
多段ただん型がた: インペラーが複数ふくすう枚まい採用さいようされる圧縮あっしゅく機構きこう造づくりである。インペラー一いち枚まいあたりの圧縮あっしゅく比ひが小ちいさく出来できる事ことで、大おおきな風ふう量りょうでも圧縮あっしゅく比ひを適正てきせいに取とる事ことが出来できる。また、逆ぎゃくに風ふう量りょうが少すくなく大おおきな圧縮あっしゅく比ひが必要ひつような場合ばあい（低温ていおん取とり出だし、高温こうおん取とり出だし、冷媒れいばいガス物性ぶっせいとして等ひとし）にも採用さいようされる。

動力どうりょく源げん[編集へんしゅう]

比較的ひかくてき小ちいさな機器ききでは、主おもに誘導ゆうどう電動でんどう機きが採用さいようされる。大だい容量ようりょう機きではガスエンジン・ガスタービン・蒸気じょうきタービン等ひとしの駆動くどう源げんが利用りようされる。

蒸発じょうはつ器き[編集へんしゅう]

大だい容量ようりょう機きが主おもな物ものとなることと、対象たいしょうが流体りゅうたいであること、また、圧縮あっしゅく機きの特性とくせいから一般いっぱん的てきにはシェル＆チューブ型がたの熱ねつ交換こうかん器きが採用さいようされる。シェル側がわに冷媒れいばい液えきと冷媒れいばいガスが存在そんざいし、チューブ内部ないぶに対象たいしょうとなる流体りゅうたいを流ながすことになる。チューブ材質ざいしつは一般いっぱん的てきには銅どうチューブであるが流体りゅうたいによってはチタン、ニッケル、ステンレス等とう必要ひつように応おうじて設計せっけいされる。また、圧縮あっしゅく機きが遠心えんしん式しき圧縮あっしゅく機きであり圧縮あっしゅくガスを吸すい込こむ事こととした設計せっけいであることから、運転うんてん状態じょうたいによって過度かどの沸騰ふっとうによる液えき滴しずくの吸すい込こみを防止ぼうしするために、ガスと液えきを分離ぶんりするエリミネーター、もしくはセパレーターと呼よばれる分離ぶんり装置そうちを圧縮あっしゅく機き吸すい込こみ口こう直下ちょっかに設もうけているものが多おおい。

凝縮ぎょうしゅく器き[編集へんしゅう]

蒸発じょうはつ器きと同様どうように大だい容量ようりょう機きが主おもなものとなるので、シェル＆チューブ型がたが一般いっぱん的てきである。冷媒れいばいガスを冷却れいきゃくする流体りゅうたいによって蒸発じょうはつ器き同様どうようにチューブは最適さいてきな物ものが選択せんたくされるが、一般いっぱん的てきには銅どうチューブである。尚なお、高温こうおん高だか圧あつで速度そくどの早はやいガスが直接ちょくせつチューブに当あたり、チューブの損傷そんしょうを防ふせぐためにバッフル板ばんと呼よばれる物ものが圧縮あっしゅく機きより導みちびかれている配管はいかん直下ちょっかに設置せっちされているのが一般いっぱん的てきである。ただし、凝縮ぎょうしゅく器きまでの配管はいかん長ながさが十分じゅうぶんに取とれる場合ばあいには設置せっちされていないものもある。

中間ちゅうかん冷却れいきゃく器き[編集へんしゅう]

多段ただん圧縮あっしゅくの場合ばあいには、中間なかま段だんに凝縮ぎょうしゅく器きで液化えきかした冷媒れいばいを一部いちぶ蒸発じょうはつさせ中なか間あいだ段だんに吸すい込こませ、圧縮あっしゅく機きの吐出としゅつ温度おんどを低下ていかさせ、圧縮あっしゅく機軸きじく動力どうりょくの減少げんしょうを目的もくてきとした省しょうエネの為ために、液えき冷媒れいばいを一部いちぶ蒸発じょうはつさせるための容器ようきが取とり付つけられている。

膨張ぼうちょう弁べん機構きこう[編集へんしゅう]

電子でんし式しき膨張ぼうちょう弁べん、オリフィス、フロートボール式しきバタフライバルブ等ひとしの断熱だんねつ膨張ぼうちょうを行おこなうための流量りゅうりょう制御せいぎょ機構きこうが、中間ちゅうかん冷却れいきゃく器き内部ないぶと蒸発じょうはつ器き入いり口くちに設もうけられる。膨張ぼうちょう弁べんを冷媒れいばいが通過つうかする事ことで断熱だんねつ膨張ぼうちょうが行おこなわれ入口いりくちと出口でぐちの容積ようせきも変かわるので冷媒れいばいは熱ねつを奪うばわれず温度おんどが下さがる。

容量ようりょう制御せいぎょ機構きこう[編集へんしゅう]

容量ようりょう制御せいぎょ機構きこうには圧縮あっしゅく機き吸すい込こみ側がわにベーンを設もうけ、吸すい込こみガス風ふう量りょうを制御せいぎょする事ことによる容量ようりょう制御せいぎょ機構きこうを持もつ物ものが一般いっぱん的てきである。また、製作せいさくメーカーによっては部分ぶぶん負荷ふか運転うんてん時じの効率こうりつを上昇じょうしょうさせる目的もくてきで、可変かへんデフューザー、回転かいてん数すう制御せいぎょ等とうも装備そうびされる。

制御せいぎょ機器きき[編集へんしゅう]

インターロック: 冷水れいすい流量りゅうりょう検知けんち・冷却れいきゃく水流すいりゅう量りょう検知けんち・油圧ゆあつ低下ていか検知けんち・過か電流でんりゅう検知けんち・モータ巻まき線せん温度おんど検知けんち・各部かくぶ軸受じくうけ温度おんど検知けんち・冷媒れいばい温度おんど検知けんち・吐出としゅつ温度おんど検知けんち・油あぶら温ゆたか検知けんち・凍結とうけつ防止ぼうし等とうが装備そうびされ、必要ひつように応おうじて仕様しようにより他たの保護ほごも追加ついかされる。
温度おんど制御せいぎょ: 温度おんど制御せいぎょは、TICとよばれる表示ひょうじ機能きのう付つき温度おんど制御せいぎょ機器ききにて、圧縮あっしゅく機きベーン及および回転かいてん数すう制御せいぎょが行おこなわれる。
回転かいてん数すう制御せいぎょ: 一般いっぱん的てきには遠心えんしん式しき圧縮あっしゅく機きの場合ばあい、吸すい込こみ側がわの圧力あつりょく損失そんしつは軸じく動力どうりょくの増加ぞうかに繋つながり、ベーン機構きこうでの風ふう量りょうを絞しぼる手法しゅほうでは効率こうりつ低下ていかを招まねく。回転かいてん数すう制御せいぎょ機構きこうが取とり入いれられている場合ばあいは、圧縮あっしゅく機きインペラーのプロフィールを元もとに計算けいさんされたサージング曲線きょくせんと、実測じっそく値ちの吸すい込こみ側がわ圧力あつりょくと吐出としゅつ側がわ圧力あつりょくを計測けいそくし、圧力あつりょく比ひを演算えんざんしたのち、プロフィールと照てらし合あわせ、設定せってい冷水れいすい出口でぐち温度おんどを保たもったまま、サージングが発生はっせいしない程度ていどまで回転かいてん数すうを可能かのうな限かぎり下さげる動作どうさを行おこない、容量ようりょう制御せいぎょを実現じつげんしている。よって、吸すい込こみ側がわベーンが全開ぜんかいのまま回転かいてん数すうだけで制御せいぎょ出来できる範囲はんいを大おおきく取とれれば取とれるほど、機器ききの消費しょうひ電力でんりょくは低下ていかする。
ホットガスバイパス: 凝縮ぎょうしゅく器きと蒸発じょうはつ器きを結むすぶ配管はいかんに電動でんどう弁べんもしくは手動しゅどう弁べんを取とり付つけ、開放かいほうする事ことで蒸発じょうはつ器きの圧力あつりょくを上昇じょうしょうさせ、凝縮ぎょうしゅく器きの圧力あつりょくを低下ていかさせる。この事ことにより、蒸発じょうはつ器き圧力あつりょくが上あがる事ことで蒸発じょうはつ器きへの冷媒れいばい液えき供給きょうきゅう量りょうが下さがり、蒸発じょうはつ器きの冷凍れいとう能力のうりょくの発生はっせいを抑制よくせいし容量ようりょう制御せいぎょを行おこなう。また、凝縮ぎょうしゅく器き圧力あつりょくが下さがる事ことで、圧縮あっしゅく機きの軸じく動力どうりょくは低下ていかするが、上記じょうき温度おんど制御せいぎょや回転かいてん数すう制御せいぎょと比較ひかくした場合ばあいには、冷凍れいとう能力のうりょくに無効むこうな風ふう量りょうがある事ことからそれほど下さがる事ことはない。利用りようする場合ばあいは、インペラープロフィールの範囲はんい外がいで容量ようりょう制御せいぎょを必要ひつようとされる運転うんてんがある場合ばあいである。