ダーレクの勝利しょうり

ダーレクの勝利しょうり Victory of the Daleks
『ドクター・フー』のエピソード
第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん期きのイギリスでカモフラージュされたダーレク
話はなし数すう	シーズン5 第だい3話わ
監督かんとく	アンドリュー・ガン
脚本きゃくほん	マーク・ゲイティス
制作せいさく	ピーター・ベネット
音楽おんがく	マレイ・ゴールド
作品さくひん番号ばんごう	1.3
初はつ放送ほうそう日び	2010年ねん4月がつ17日にち 2015年ねん6月11日にち
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「ダーレクの勝利しょうり」（ダーレクのしょうり、原題げんだい: "Victory of the Daleks"）は、イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』の第だい5シリーズ第だい3話わ。マーク・ゲイティスが脚本きゃくほんを、アンドリュー・ガンが監督かんとくを担当たんとうし、2010年ねん4月がつ17日にちに BBC One で初はじめて放送ほうそうされた。

本ほん作さくでは11代目だいめドクター（演えんじ:マット・スミス）と彼かれのコンパニオンのエイミー・ポンド（演えんじ:カレン・ギラン）がロンドン大だい空襲くうしゅうの時期じきのロンドンを訪おとずれる。当時とうじのイギリス首相しゅしょうウィンストン・チャーチル（演えんじ:イアン・マクニース）はブレイスウェル教授きょうじゅ（演えんじ:ビル・パターソン）が開発かいはつした新型しんがた兵器へいきアイアンサイドを使役しえきし、ドイツ国こくに対たいして戦果せんかを挙あげようとしていた。しかしアイアンサイドの正体しょうたいはドクターの宿敵しゅくてきダーレクであり、彼かれらはアンドロイドであるブレイスウェルの中なかに仕込しこんだ装置そうちを起動きどうして地球ちきゅうを破壊はかいする計画けいかくを企くわだてていた。

人気にんきの高たかいダーレクを第だい5シリーズに組くみ込こむことを願ねがって、製作せいさく総そう指揮しきスティーヴン・モファットはチャーチルとダーレクについてのエピソードを執筆しっぴつするよう指示しじを出だした。本ほん作さくでは、それまでのダーレクよりも色彩しきさいに富とんで大型おおがたであるようにゲイティスがデザインした、新あらたなるパラダイムが初はつ登場とうじょうを果はたした。「ダーレクの勝利しょうり」は BBC One と BBC HD で820万まん人にんの視聴しちょう者しゃを獲得かくとくし、放送ほうそう日びの夜よるで2番目ばんめに多おおく視聴しちょうされた番組ばんぐみとなった。批評ひひょう家かの反応はんのうは複雑ふくざつであった。マクニースとパターソンの演技えんぎは称賛しょうさんを受うけたが、ペースが速はやすぎるため2部ぶ作さくに分わけた方ほうが良よかったと感かんじる批評ひひょう家かもいた。

連続れんぞく性せい

これまでのダーレクの物語ものがたりを仄ほのめかす描写びょうしゃが散見さんけんされた。The Power of the Daleks（1966年ねん）では蘇よみがえったダーレクが "I am your servant!" と宣言せんげんしており、本ほん作さくで使用しようされたフレーズ "I am your soldier"（日本語にほんご版ばんでは「私わたしはあなたの兵士へいしです」）に類似るいじしている。また、ドクターもダーレクの "the final end"（日本語にほんご版ばんでは「とどめ」）を目めにすることを渇望かつぼうしており、これは The Evil of the Daleks（1967年ねん）からの直接ちょくせつの引用いんようである。当該とうがいエピソードでは、ダーレクが最終さいしゅう的てきに滅ほろびを迎むかえることへの期待きたいを2代目だいめドクターが表明ひょうめいしていた。

ドクターはダーレクについてエイミーと話はなしをする際さいにダーレクの以前いぜんの地球ちきゅう侵攻しんこう（「盗ぬすまれた地球ちきゅう」と「旅たびの終おわり」）に言及げんきゅうし、エイミーがその出来事できごとを覚おぼえていないことに違和感いわかんを抱だいた。エピソードの終盤しゅうばんでは、ターディスが停泊ていはくしていた背後はいごに時空じくう間あいだの裂さけ目めが確認かくにんされた。この裂さけ目めはエイミーの幼少ようしょう期きに彼女かのじょの寝室しんしつで初はじめて出現しゅつげんしたもので、第だい5シリーズで繰くり返かえし登場とうじょうするテーマである。本ほん作さくから2話わ後ごの「肉体にくたいと石いし」では、エイミーがダーレクを覚おぼえていなかった原因げんいんが、物体ぶったいが存在そんざいした過去かこまでをも抹消まっしょうしてしまう裂さけ目めの力ちからであると判明はんめいした。

製作せいさく

調査ちょうさのためゲイティスはチャーチル博物館はくぶつかんを訪おとずれた。エピソードの撮影さつえいには部屋へやを複製ふくせいしたセットが使用しようされた。

製作せいさく総そう指揮しきのスティーヴン・モファットは、子こどもたちの間あいだで人気にんきが高たかく既すでに"レギュラー"にもなっているダーレクの再さい登場とうじょうを望のぞんだ。2010年ねん3月がつには、モファットを含ふくむ製作せいさくチームがダーレクの再さいデザインを検討けんとうしていると彼かれが主張しゅちょうした。本ほん作さくの脚本きゃくほん家かマーク・ゲイティスはチャーチル対たいダーレクのエピソードを執筆しっぴつするようモファットから指示しじを受うけた。この前提ぜんていで何なにをすればよいかゲイティスは当初とうしょ確信かくしんがなかったが、後こう彼かれの思おもうところの戦争せんそう映像えいぞうや自分じぶんオリジナルのダーレクの物語ものがたりを作つくれることに興奮こうふんした。 調査ちょうさのために彼かれは現実げんじつのチャーチル博物館はくぶつかんを訪おとずれて戦争せんそうの目撃もくげき談だんや日記にっきにも目めを通とおした。ゲイティスは1966年ねんの The Power of the Daleks にインスパイアされたが、この作品さくひんはフィルムが紛失ふんしつしたためゲイティス自身じしんが視聴しちょうしたことはなかった。当該とうがい作さくではダーレクはより狡猾こうかつで寡黙かもくな存在そんざいとして描えがかれ、命令めいれいを叫さけんでいるだけの時ときよりも怖こわろしいとゲイティスは論評ろんぴょうした。

ゲイティスが本ほん作さくの最初さいしょの草案そうあんを執筆しっぴつした時とき、まだマット・スミスはドクター役やくにキャスティングされていなかった。ゲイティスはどのドクターにも当あてはまるよう初期しょき草案そうあんを執筆しっぴつしたが、モファットはこの草案そうあんのドクターが3代目だいめドクター（演えんじ:ジョン・パートウィー）のようだとコメントした。スミスがキャスティングされると、ゲイティスはテレビシリーズ『Party Animals』やその他たスミスの出演しゅつえんしていた作品さくひんを何なんでも視聴しちょうした。ゲイティスはこれらの作品さくひんを問とえ老おいてスミスの喋しゃべり方かたを落おとし込こみ、彼かれのエネルギーとい回いまわしをテストした。

ダーレク以外いがいの全すべてを破壊はかいするという使命しめいは非常ひじょうにナチス的てきなコンセプトであり、ゲイティスはダーレクが第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんに関かかわっていると指摘してきした。事実じじつ、ダーレクを創作そうさくしたテリー・ネイションは第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん期きに育そだち、ナチスをベースにしてダーレクを創つくり上あげた。また、ドクターとチャーチルの両りょう名なが非常ひじょうに知的ちてきであり、かつ互たがいを古ふるくから知しっていたことから、スミスは両者りょうしゃがパラレルな関係かんけいにあると指摘してきした。最終さいしゅうカットで削除さくじょされたシーンでは、2人ふたりがどれほど長ながく互たがいのことを知しっていたかが説明せつめいされていた。ゲイティスはチャーチルの有名ゆうめいな格言かくげん "Keep buggering on"（日本語にほんご版ばんでは「K 決けっして B 武器ぶきを O 置おくな」）を台本だいほんに取とり入いれ、このフレーズを入いれられて嬉うれしいとコメントした。チャーチル役やくを演えんじたイアン・マクニースは以前いぜんに8代目だいめドクターの登場とうじょうする Big Finish Productions のオーディオ Immortal Beloved（2007年ねん）で悪役あくやくゼウスを演えんじていた。

新あらたなデザインのダーレクの1体たい。この個体こたいは永遠えいえんのダーレクと呼よばれる個体こたいである。

ゲイティスはダーレクの再さいデザインのため、台本だいほんにおいてダーレクはこれまでに見みてきたものより大型おおがたであると綴つづった。目めの部分ぶぶんはスミスの視線しせんに合あうようデザインされた。モファットとゲイティスは新あたらしいダーレクが1960年代ねんだいの映画えいが『Dr.フー in 怪人かいじんダレクの惑星わくせい』のように非常ひじょうにカラフルであれば良よいと考かんがえた。ゲイティスは元々もともと緑色みどりいろのダーレクにするつもりであったが、緑色みどりいろでは映はえないと考かんがえた。ダーレクの声こえを担当たんとうするニコラス・ブリッグズは、新生しんせいダーレクの明あかるい色いろに対たいして、より悪意あくいのある声こえを当あてようと計画けいかくした。モファットは戦闘せんとう機きスピットファイアが宇宙うちゅうを飛とんでいる画がが欲ほしいと考かんがえ、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんのスピットファイアのレプリカがグリーンスクリーンの前まえに置おかれて、当該とうがいシーンのライブアクションパートの撮影さつえいに使用しようされた。残のこりの部分ぶぶんはCGで対応たいおうされた。当該とうがいシークエンスでは "Broadsword to Danny Boy"（日本語にほんご版ばんでは「司令しれい部ぶよりダニーボーイ」）というフレーズが登場とうじょうし、これは映画えいが『荒あら鷲わしの要塞ようさい』に登場とうじょうした同様どうようの台詞せりふを反映はんえいしている。ゲイティス本人ほんにんはスピットファイアのパイロットの声こえとしてカメオ出演しゅつえんした。1つはクリアなバージョンの声こえ、もう1つは口くちの前まえに手てを当あてて出だした声こえである。2010年ねん4月がつのインタビューによると、キャスティング・ディレクターのアンディ・プライヤーなどからパイロットの声こえを演えんじたがっていると何なん度ども思おもわれるうちに、ゲイティスはそれを否定ひていした上うえで、そう望のぞむなら出演しゅつえんすると承諾しょうだくのメールを送おくったという。

放送ほうそうと反応はんのう

「ダーレクの勝利しょうり」はイギリスでは2010年ねん4月がつ17日にちに BBC One で初はつ放送ほうそうされた。当夜とうやの視聴しちょう者しゃ数すうの速報そくほう値ちは BBC One で620万まん人にん、BBC HD のサイマル放送ほうそうで23万まん1000人にんで、その日ひで2番目ばんめに視聴しちょう者しゃの多おおかった番組ばんぐみとなった。最終さいしゅう的てきな合計ごうけい値ちは BBC One で792万まん人にん、BBC HD で38万まん1000人にん、トータルで820万まん人にんに達たっした。これにより本ほん作さくは4月がつ18日にちで終おわるその週しゅうにおいて、BBC One では4番目ばんめに、イギリス国内こくないの全すべてのチャンネルでは11番目ばんめに多おおく視聴しちょうされた番組ばんぐみとなった。なお、放送ほうそう当日とうじつで最もっとも視聴しちょう者しゃ数すうを稼かせいだ番組ばんぐみは1187万まん人にんを記録きろくした『ブリテンズ・ゴット・タレント』であった。Appreciation Index は84で、前々回ぜんぜんかい「11番目ばんめの時間じかん」と前回ぜんかい「眼下がんかの獣しし」から僅わずかに下さがることとなった。

日本にっぽんでは2015年ねん6月11日にちにAXNミステリーで初はつ放送ほうそうされた。

批評ひひょう家かの反応はんのう

「ダーレクの勝利しょうり」は複雑ふくざつなレビューを受うけた。ガーディアン紙かみのダニエル・マーティンは肯定こうてい的てきなレビューをしており、彼かれは本ほん作さくについて「ゲイティスが『ドクター・フー』のために書かいたものの中なかでは最高さいこうだ」と評価ひょうかし、ダーレクを想定そうていよりも高こう圧あつ的てきでない人造じんぞうの戦争せんそう兵器へいきとする、ゲイティスによるアイディアの探究たんきゅうを称賛しょうさんした。また、彼かれはマクニースとパターソンの演技えんぎ、ドクターとエイミーの間あいだのストーリーラインの掘ほり下さげにも好意こうい的てきであり、ダーレクの脅威きょういを肯定こうてい的てきに第だい1シリーズになぞらえた。ラジオ・タイムズのパトリック・マルケーンは本ほん作さくについて完全かんぜん勝利しょうりだともてはやし、ゲイティスがブレイスウェル教授きょうじゅというキャラクターを生うみ出だしたことを称賛しょうさんし、ゲイティスがいかにブレイスウェルを『スタートレック』のデータのような感情かんじょうに訴うったえるロボットに変かえたかについて好意こうい的てきにコメントした。また、彼かれはゲイティスがビル・パターソンに彼かれの地位ちいに相応ふさわしい登場とうじょう人物じんぶつを与あたえたと指摘してきした。

SFXのジョーダン・ファーレイは「ダーレクの勝利しょうり」に星ほし5つのうち3.5を与あたえ、彼かれは本ほん作さくがやや不完全ふかんぜんだったとも指摘してきしたものの再さいデザインされたダーレクが等ひとしく威圧いあつ的てきであること、エピソードが愉快ゆかい極きわまりないことを称賛しょうさんした。しかし彼かれは本ほん作さくのペースが速はやすぎると感かんじ、本ほん作さくが二部作にぶさくであればもっと成功せいこうを収おさめただろうかと推論すいろんした。また、彼かれは本ほん作さくに引用いんようできる台詞せりふが欠かけていたことと、ドクターの遊あそび心ごころに富とんだ冗談じょうだんと奇抜きばつな作法さほうがなかったことを残念ざんねんに感かんじた。

IGNのマット・ウェールズはさらに肯定こうてい的てきでなく、本ほん作さくを10段階だんかい評価ひょうかで5と評価ひょうかした。彼かれは本ほん作さくについて第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん期きのセットを称賛しょうさんしたものの、「本当ほんとうの物語ものがたりの肉にくを提供ていきょうする試こころみではなく、シリーズの長ちょうきに亘わたる悪役あくやくをリブートするための、大おおいに必要ひつようであるとはいえ薄うすっぺらいい訳いわけ」であると評価ひょうかした。Total Sci-Fi Online のブライアン・J・ロブはマクニースの演えんじたチャーチルを称賛しょうさんしたが、彼かれの台詞せりふの中なかには大おおげさなものもあるとし、その原因げんいんを脚本きゃくほんがモファットに改竄かいざんされたせいであると考かんがえた。ファーレイと同様どうように、彼かれはエピソードのペースが速はやいとし、二部作にぶさくならもっと成功せいこうしただろうとコメントした。また、ロブはスミスの演技えんぎにも批判ひはん的てきであり、ドクターが怒おこっているシーンを否定ひてい的てきにシルベスター・マッコイのものになぞらえた。彼かれはダーレクの新あたらしいデザインにも否定ひてい的てきであった。本ほん作さくに対たいする彼かれの評価ひょうかは最終さいしゅう的てきに10段階だんかいで7であった。

ホームメディア

2010年ねん6月がつ7日にちに「ダーレクの勝利しょうり」は「11番目ばんめの時間じかん」や「眼下がんかの獣しし」と共ともにリージョン2のDVDおよびブルーレイディスクで発売はつばいされた。その後ごは2010年ねん11月8日にちに完全かんぜん版ばん第だい5シリーズDVDセットの一部いちぶとして再さい発売はつばいされた。日本語にほんご版ばんDVDは2014年ねん10月がつ3日にちに『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション DVD-BOX 1』に同どう梱こりされて発売はつばいされた。

書籍しょせき化か

Victory of the Daleks

著者ちょしゃ	Peter Gutiérrez
シリーズ	Doctor Who novelisations
出版しゅっぱん社しゃ	Pearson Education
出版しゅっぱん日び	2011年ねん5月がつ
ISBN	9781408273876

2011年ねん5月がつには、学校がっこうリテラシープログラムの一環いっかんとしてピーター・ゲティエレスが本ほん作さくをフォトノベライズし、Pearson Education が出版しゅっぱんした。