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チェレンコフ放射ほうしゃ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
アメリカ/アイダホ国立こくりつ研究所けんきゅうじょないにある新型しんがた実験じっけん観測かんそくされたチェレンコフ放射ほうしゃれい

チェレンコフ放射ほうしゃ(チェレンコフほうしゃ、えい: Čerenkov radiation)とは、荷電かでん粒子りゅうし空気くうきみずなどの媒質ばいしつちゅう運動うんどうするとき荷電かでん粒子りゅうし速度そくどがその媒質ばいしつちゅうすすひかり速度そくどよりもはや場合ばあいひかり放射ほうしゃされる現象げんしょうチェレンコフ効果こうかともいう。このとき放射ほうしゃされるひかりチェレンコフこう、またはチェレンコフ放射光ほうしゃこうという。

この現象げんしょうは1934ねんパーヴェル・チェレンコフによって発見はっけんされ、チェレンコフ放射ほうしゃ名付なづけられた。そのイリヤ・フランクイゴール・タムにより、発生はっせい原理げんり解明かいめいされた。これらの功績こうせきにより、この3めいは1958ねんノーベル物理ぶつりがくしょうけた[1]

物理ぶつりてき原理げんり

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相対性理論そうたいせいりろん真空しんくうなか光速こうそくがどんな場合ばあいにも一定いってい)であると仮定かていしているが、これは「真空しんくうちゅう」であることが本質ほんしつであり、空気くうきみずなどの媒質ばいしつちゅうでは、そこをすすひかり速度そくどよりもおそくなる。たとえば、みずなか伝播でんぱ速度そくどにすぎない。粒子りゅうしは、かく反応はんのう粒子りゅうし加速器かそくきなどによって加速かそくされ、(ひかり速度そくど えることはないものの)媒質ばいしつちゅう伝播でんぱ速度そくどえることが可能かのうである。チェレンコフ放射ほうしゃは、荷電かでん粒子りゅうし(たいていは電子でんし)が(絶縁ぜつえんされた)誘電ゆうでんたいを、その媒質ばいしつちゅうひかり速度そくどよりもはや速度そくど通過つうかするときに放射ほうしゃされる。

このときのひかり速度そくどというのは、ぐん速度そくどではなく位相いそう速度そくどである。位相いそう速度そくどは、周期しゅうきてき媒質ばいしつもちいることで劇的げきてきえることができ、このとき最小さいしょう粒子りゅうし速度そくどたっさなくともチェレンコフ放射ほうしゃ観測かんそくすることができる(これはスミス-パーセル効果こうかとしてられている)。フォトニック結晶けっしょうなどの複雑ふくざつ周期しゅうきてき媒質ばいしつにおいては、チェレンコフ放射ほうしゃのさまざまな特異とくいてきふるまいをみることができる。たとえば後方こうほうへの放射ほうしゃなどである(通常つうじょう粒子りゅうし速度そくど鋭角えいかく方向ほうこう放射ほうしゃする)。

荷電かでん粒子りゅうし媒質ばいしつちゅう通過つうかすると、物質ぶっしつ局所きょくしょてき電磁場でんじばみだされる。媒質ばいしつ原子げんしなか電子でんしは、通過つうかする荷電かでん粒子りゅうしによってうごかされ、へんきょくする。みだれが通過つうかしたあと、電子でんしふたた平衡へいこう状態じょうたいもどろうとするとき、光子こうし放出ほうしゅつされる(伝導でんどうたいにおいては、光子こうし放出ほうしゅつすることなく平衡へいこう状態じょうたいもどる)。通常つうじょう場合ばあいには、光子こうし破壊はかいてき干渉かんしょうしあい、放射ほうしゃ検出けんしゅつされない。しかしみだれがその物質ぶっしつちゅう光速こうそくえて伝播でんぱするとき、光子こうし創造そうぞうてき干渉かんしょうしあい、観測かんそくされる放射ほうしゃ増幅ぞうふくされる。

チェレンコフ放射ほうしゃは、しばしば飛行機ひこうき弾丸だんがんちょう音速おんそく移動いどうするときに発生はっせいするソニックブームたとえられる。ちょう音速おんそく物体ぶったいによって発生はっせいする音波おんぱは、十分じゅうぶん速度そくどがないため、物体ぶったい自身じしんからはなれることができない。そのため音波おんぱ蓄積ちくせきされ、衝撃波しょうげきはめん形成けいせいされる。おなじようにして、荷電かでん粒子りゅうし媒質ばいしつちゅう通過つうかするときに、光子こうし衝撃波しょうげきは生成せいせいする。

チェレンコフ放射ほうしゃ図解ずかい


において、粒子りゅうしあか矢印やじるし)は速度そくど媒質ばいしつちゅう通過つうかする。ここでは、粒子りゅうし速度そくど真空しんくうちゅう光速こうそくとの定義ていぎする。物質ぶっしつ屈折くっせつりつとすると、放射ほうしゃされる電磁波でんじはあお矢印やじるし)の伝播でんぱ速度そくどとなる。

三角形さんかっけいひだり頂点ちょうてんは、ある初期しょき時点じてん)における粒子りゅうし位置いちをあらわす。みぎ頂点ちょうてんは、ある時間じかんにおける粒子りゅうし位置いちをあらわす。あるあたえられた場合ばあい粒子りゅうし移動いどう距離きょり

であり、放射ほうしゃ電磁波でんじは移動いどう距離きょり

となる。ゆえに、放射ほうしゃかく

となる。

応用おうよう

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粒子りゅうし物理ぶつりがく

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小柴こしば昌俊まさとしによるカミオカンデスーパーカミオカンデなどでは、円錐えんすいじょうひろがるチェレンコフこうらえることによりさまざまな研究けんきゅうおこなう。そのチェレンコフこうニュートリノにより散乱さんらんされた電子でんしにより発生はっせいしたのであれば、チェレンコフこう観測かんそく結果けっかから電子でんし運動うんどう方向ほうこう速度そくどかり、それらからニュートリノの飛来ひらい方向ほうこうなどを計算けいさんすることができ、ニュートリノが観測かんそくできる。

臨界りんかい事故じこ

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チェレンコフこうれいとしては、原子力げんしりょく発電はつでんしょ燃料ねんりょうはいったプールのなかえる青白あおじろひかりがある。東海とうかいむらJCO臨界りんかい事故じこチェルノブイリ原子力げんしりょく発電はつでんしょ事故じこで「青白あおじろひかりた」と作業さぎょういん証言しょうげんしたので、臨界りんかい事故じこ確認かくにんがとれた。なお、東海とうかいむらJCO臨界りんかい事故じこえたひかりがチェレンコフこうであったかべつ現象げんしょうであったかについては、臨界りんかい事故じこ記事きじ考察こうさつがある。

使用しようかく燃料ねんりょうぼう

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チェレンコフ放射光ほうしゃこうは、核分裂かくぶんれつ連鎖れんさ反応はんのうまったのち持続じぞくし、寿命じゅみょうみじか生成せいせいぶつ減衰げんすいするにつれてくらくなる。同様どうように、チェレンコフ放射ほうしゃは、使用しようかく燃料ねんりょうぼう残留ざんりゅう放射能ほうしゃのう物語ものがたっている。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Cherenkov, Pavel A. (1934). “Visible emission of clean liquids by action of γがんま radiation”. Doklady Akademii Nauk SSSR 2: 451.  Reprinted in Selected Papers of Soviet Physicists, Usp. Fiz. Nauk 93 (1967) 385. V sbornike:Pavel Alekseyevich Čerenkov:Chelovek i Otkrytie pod redaktsiej A. N. Gorbunova i E. P. Čerenkovoj, M.,"Nauka, 1999, s. 149-153. (ref Archived 2007ねん10がつ22にち, at the Wayback Machine.)

関連かんれん項目こうもく

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