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テンペスト (シェイクスピア)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジョージ・ロムニーだい1まくだい1じょう

テンペスト』(えい: The Tempest)は、英国えいこくげき作家さっかウィリアム・シェイクスピアさく戯曲ぎきょく。「テンペスト」は「あらし」を意味いみし、日本にっぽんでは『あらし』の題名だいめいでも上演じょうえんされる。シェイクスピア単独たんどく執筆しっぴつとしては最後さいご作品さくひんわれる。

シェイクスピアがいたなかでも人気にんきたか作品さくひんで、2012ねんのロンドン・オリンピック開会かいかいしきでは、物語ものがたり舞台ぶたいとなる魔法まほうしましたセットで作品さくひん一部いちぶ朗読ろうどくされるなど重要じゅうよう役割やくわりたした[1][2]

あらすじ

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プロスペローとエアリエル
ウィリアム・ハミルトン

ナポリおうアロンゾー、ミラノ大公たいこうアントーニオらをせたふねだいあらし難破なんぱいちぎょう絶海ぜっかい孤島ことう漂着ひょうちゃくする。そのしまには12ねんまえにアントーニオによって大公たいこう地位ちいわれ追放ついほうされたあにプロスペローとそのむすめミランダが魔法まほう学問がくもん研究けんきゅうして[3]らしていた。ふねおそったあらしはプロスペローが復讐ふくしゅうのため手下てした妖精ようせいエアリエルにめいじてもちいた魔法まほううた[4])のちからによるものだった。

おういちぎょうはなばなれになったナポリ王子おうじファーディナンドは、プロスペローの思惑おもわくどおりミランダに出会であい、2人ふたり一目いちもくこいちる。プロスペローにされた試練しれんいたファーディナンドはミランダとの結婚けっこんゆるされる。

一方いっぽうさらなる出世しゅっせ目論もくろむアントーニオはナポリおうおとうとそそのかしておう殺害さつがいはかり、またしま怪物かいぶつキャリバン漂着ひょうちゃくしたナポリおう執事しつじ道化師どうけし味方みかたにつけプロスペローをころそうとする。しかし、いずれの計画けいかくもエアリエルのちからによって未遂みすいわる。

魔法まほうによって錯乱さくらん状態じょうたいとなるアロンゾーいちぎょう。だが、プロスペローはさらなる復讐ふくしゅうおもいとどまり、過去かこつみあらためさせてゆるすことを決意けついする。和解わかいする一同いちどうおうらをナポリにおくり、そこで結婚式けっこんしきおこなうことになる。

魔法まほうちからてエアリエルを自由じゆうにしたプロスペローは最後さいご観客かんきゃくかたりかける。「自分じぶんしまにとどめるのもナポリにすのも観客かんきゃく気持きも次第しだい。どうか拍手はくしゅによっていましめをき、自由じゆうにしてくれ」と。

主要しゅよう登場とうじょう人物じんぶつ

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プロスペロー
ぜんミラノ大公たいこう
ミランダ
プロスペローのむすめ
エアリエル
空気くうきせい
キャリバン
しま怪獣かいじゅう
アロンゾー
ナポリおう
セバスチャン
おうおとうと
ファーディナンド
おう息子むすこ
アントーニオ
ミラノ大公たいこう、プロスペローのおとうと
ゴンザーロー
ナポリおう顧問こもんかん
主人公しゅじんこう親子おやこ
12ねんまえ漂着ひょうちゃく
しま住人じゅうにんとう
あらし漂着ひょうちゃく
 
妖精ようせい
エアリエル
幽閉ゆうへい 魔女まじょ
シコラクス
(故人こじん)
信仰しんこう かみ
セティボス

母子ぼし

信仰しんこう
筒抜つつぬ 怪物かいぶつ
キャリバン

救出きゅうしゅつ
酷使こくし

うんざり
主人公しゅじんこう
もとミラノ大公たいこう
プロスペロー
しまかすめ
復讐ふくしゅう

ちちむすめ

追放ついほう

兄弟きょうだい

復讐ふくしゅう

結託けったく
むすめ
ミランダ
叔父おじ
めい
げんミラノ大公たいこう
アントーニオ
教唆きょうさ ナポリおうおとうと
セバスティアン
執事しつじ
ステファノー
道化師どうけし
トリンキュロー

結託けったく

がい

兄弟きょうだい

出来心できごころ
ナポリおう
アロンゾー
臣下しんか
領主りょうしゅ

恋人こいびと

父子ふし

領主りょうしゅ

臣下しんか
ナポリ王子おうじ
ファーディナンド
ナポリ貴族きぞく
フランシスコー
エイドリアン

執筆しっぴつ背景はいけい

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『テンペスト』の初演しょえん確実かくじつにはわかっていないが、1611ねん11月1にち宮廷きゅうてい上演じょうえんされており、これが現在げんざいのこっている最初さいしょ上演じょうえん記録きろくである[5]。1623ねん出版しゅっぱんされたファースト・フォリオ最初さいしょ収録しゅうろくされている[6]直接ちょくせつ出典しゅってん特定とくていされていないが、1609ねんにバミューダ諸島しょとうおき英国えいこくふね遭難そうなんした事件じけんや、またモンテーニュのエッセイ「人喰ひとく人種じんしゅについて」などからの影響えいきょう指摘してきされている[7]

解釈かいしゃく

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シェイクスピア作品さくひん一部いちぶとくに「ロマンスげき」とぶことがあり、この『テンペスト』はその代表だいひょうさくひとつにかぞえられる[8]。「ロマンス」は恋愛れんあいもののげきという意味いみではなく、現実離げんじつばなれした空想くうそうたんし、もとはロマンス(イタリアフランス語ふらんすごなど)でかれた中世ちゅうせい荒唐無稽こうとうむけい物語ものがたり言葉ことばだった[9]。シェイクスピア研究けんきゅうしゃのエドワード・ダウデンが考案こうあんした用語ようごで、シェイクスピアは魔法まほうのような人知じんちえたちから重要じゅうよう役割やくわりたす「ロマンスげき」を晩年ばんねん連続れんぞくして執筆しっぴつしている[7]

またプロスペローに服従ふくじゅうしているみにくしし「キャリバン」は、復讐ふくしゅうから和解わかい解放かいほうへいたる物語ものがたりのなかで人々ひとびとからあざけられつづけだれからもゆるされることがないため、西洋せいよう文明ぶんめい植民しょくみん関係かんけい象徴しょうちょうする存在そんざいとして、近年きんねん[いつ?]文学ぶんがく研究けんきゅうおおきな注目ちゅうもくあつめる存在そんざいとなっている[10][11]

時間じかん場所ばしょすじ統一とういつ主張しゅちょうする古典こてん主義しゅぎのいわゆる「さん一致いっち法則ほうそく」をまもったシェークスピア唯一ただいち戯曲ぎきょくである[9]

有名ゆうめい台詞ぜりふ

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  • ファーディナンドとミランダ(だい5まく
    )Edward Reginald Frampton
    「この大地だいちにあるものはすべて、るのだ。そして、いま実体じったいのない見世物みせものえたように、あとにはくもひとつのこらない。わたしたちは、ゆめいとのようなものだ。そのささやかな人生じんせいは、ねむりによってめくくられる[12]」("Yea, all which it inherit, shall dissolve, and, like this insubstantial pageant faded, leave not a rack behind. We are such stuff as dreams are made on; and our little life Is rounded with a sleep."(だい4まくだい1じょう、プロスペローの言葉ことば。いずれすべてはるという諦観ていかんが『ハムレット』に共通きょうつうするともわれる[11]
  • 「だが、この荒々あらあらしい魔法まほうちからわたし今日きょうかぎてよう[12]」("But this rough magic I here abjure.")(だい5まくだい1じょうこと成就じょうじゅさせたプロスペローの独白どくはく。『テンペスト』がシェイクスピア単独たんどく執筆しっぴつとしては最後さいご作品さくひんとなったため、これがシェイクスピア自身じしん絶筆ぜっぴつ宣言せんげんなどと解釈かいしゃくされることがある[13]
  • 「まあ、不思議ふしぎ!ここにはなんておおくのすてきなひとたちがいることでしょう!人間にんげんってなんてうつくしいのでしょう!ああ、すばらしきしん世界せかい、こんなにひとがいるなんて[12]」("O, wonder, how many goodly creatures e there here! How beauteous mankind is! O brave new world, that has such people in'it!")(だい5まくだい1じょうまれてはじめて大勢おおぜい人間にんげんにしたミランダの言葉ことばオルダス・ハックスレー小説しょうせつすばらしいしん世界せかい』の題名だいめいはここからられている[11]

日本語にほんごやく

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映画えいが作品さくひん[14]

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題名だいめい 邦題ほうだい 公開こうかいねん 監督かんとく 形態けいたい 制作せいさくこく そのほか
The Tempest 日本にっぽん公開こうかい 1908 Percy Stow 映画えいが えい
The Tempest 日本にっぽん公開こうかい 1921 Robert N. Bradury 映画えいが べい
The Tempest   日本にっぽん公開こうかい 1939 Dallas Bower 映画えいが えい
Forbidden Planet[15]       禁断きんだん惑星わくせい 1956 Frank M. Wilcox 映画えいが べい 『テンペスト』を翻案ほんあんしたSF映画えいが[14][16]
The Tempest 日本にっぽん公開こうかい 1960 George Schafer  TVてれび べい
The Tempest テンペスト 1979 Derek Jarman 映画えいが えい デレク・ジャーマン監督かんとくヒースコート・ウィリアムズ主演しゅえん
The Tempest テンペスト 1980 John Gorrie TVてれび えい ジョン・ゴリー監督かんとくマイケル・ホーダーン主演しゅえんBBCによるシェイクスピアぜん作品さくひんテレビドラマシリーズ (en) の一本いっぽん
The Tempest テンペスト 1981 Paul Mazursky      映画えいが べい ポール・マザースキー監督かんとくジョン・カサヴェテスジーナ・ローランズ出演しゅつえん
The Tempest 日本にっぽん公開こうかい 1985 William Woodman 映画えいが べい
Prospero’s Books    プロスペローのほん      1991 Peter Greenaway   映画えいが ふつあららぎ    ピーター・グリーナウェイ監督かんとくジョン・ギールグッド主演しゅえんほん作品さくひんをアレンジした映画えいが
The Tempest 日本にっぽん公開こうかい 1998 Jack Bender TVてれび べい
The Tempest テンペスト 2010 Julie Taymor        映画えいが べい ジュリー・テイモア監督かんとくヘレン・ミレン主演しゅえん主人公しゅじんこうのプロスペローをプロスペラという女性じょせいえている。
The Tempest 日本にっぽん公開こうかい 2014 Jeremy Herrin    映画えいが えい

関連かんれん作品さくひん

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サイレントにイギリスでつくられた『テンペスト』(1908)

音楽おんがく

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  • ベートーヴェンピアノソナタだい17ばんは『テンペスト』の通称つうしょうつ。これはベートーヴェンが弟子でしのシントラーにこのきょく解釈かいしゃくについて質問しつもんされたさいに「シェイクスピアの『テンペスト』をめ」と返答へんとうしたという逸話いつわ由来ゆらいする。
  • チャイコフスキーはシェイクスピアげき題材だいざいに3きょくの「幻想げんそう序曲じょきょく」を作曲さっきょくしており、そのいちきょくが『テンペスト』である。
  • シベリウスはこの戯曲ぎきょくのために付随ふずい音楽おんがく作曲さっきょくしている。のちにそのなかから序曲じょきょくと2つの組曲くみきょく演奏えんそうかいようまれた。

そのほか

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  • 未来みらい世紀せいきシェイクスピア - ほん作品さくひんをアレンジしたテレビドラマ。
  • ブックオブウォーターマークス - ほん作品さくひん設定せっていをベースに制作せいさくされたアドベンチャーゲーム
  • サンドマン - ニール・ゲイマンによるコミック。最終さいしゅうばなし The Tempestほん作品さくひん主題しゅだいにしている。
  • 禁断きんだん惑星わくせい - 1950年代ねんだいSF映画えいがなかでも傑作けっさくひょうされ、現代げんだいSF映画えいがとされる。登場とうじょう人物じんぶつ孤立こりつした舞台ぶたいほんさく類似るいじしており、プロットにも一部いちぶほんさく対応たいおうする部分ぶぶんがあるため、おおまかな意味いみでの翻案ほんあん做されている。

関連かんれん項目こうもく

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ちゅう

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  1. ^ “London 2012: How Shakespeare's Tempest shapes the ceremonies” (英語えいご). BBC News. (2012ねん1がつ27にち). https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-16761126 2021ねん6がつ13にち閲覧えつらん 
  2. ^ The London 2012 Summer Olympics” (英語えいご). MIT Global Shakespeares. 2021ねん6がつ13にち閲覧えつらん
  3. ^ 菊地きくち, ぜんふとし『テンペスト』のいち考察こうさつ プロスペローの学問がくもん」(PDF)『日本にっぽん大学だいがく大学院だいがくいん総合そうごう社会しゃかい情報じょうほう研究けんきゅう紀要きよう』、日本にっぽん大学だいがく、2006ねん、159-169ぺーじ2018ねん8がつ21にち閲覧えつらん  NAID 40015432943
  4. ^ 菊地きくち, ぜんふとし『テンペスト』 における魔法まほう変容へんようする音楽おんがく Music Transformed to Magic in The Tempest」(PDF)『融合ゆうごう文化ぶんか研究けんきゅう』、国際こくさい融合ゆうごう文化ぶんか学会がっかい、2005ねん2018ねん8がつ21にち閲覧えつらん 
  5. ^ Stage History | The Tempest | Royal Shakespeare Company” (英語えいご). www.rsc.org.uk. 2023ねん9がつ10日とおか閲覧えつらん
  6. ^ The Tempest | Play | New National Theatre, Tokyo”. www.nntt.jac.go.jp. しん国立こくりつ劇場げきじょう. 2023ねん9がつ10日とおか閲覧えつらん
  7. ^ a b "William Shakespeare, The Tempest: Reader Response * New Historicism * Postcolonial Studies." Blackwell Guides to Literature: The Blackwell Guide to Literary Theory, Gregory Castle, Wiley, 1st edition, 2007.
  8. ^ "William Shakespeare, The Tempest." Blackwell Guides to Literature: The English Renaissance 1500-1620, Andrew Hadfield, Wiley, 1st edition, 2000.
  9. ^ a b Cook, James Wyatt. "The Tempest." Encyclopedia of Renaissance Literature, James Wyatt Cook, Facts On File, 2nd edition, 2014.
  10. ^ Vaughan, Aldent T. and Virginia Mason Vaughan. Shakespeare's Caliban: A Cultural History, Cambridge University Press, 1991
  11. ^ a b c Bigliazzi, Silvia and Losanna Calve eds. Revisiting The Tempest:The Capacity to Signify, Palgrave Macmillan, 2014.
  12. ^ a b c 河合かわい祥一郎しょういちろう『あらすじでむシェイクスピアぜん作品さくひん』(祥伝社しょうでんしゃ、2007)
  13. ^ Hopkins, Lisa. Shakespeare's The Tempest: the Relationship between Text and Flm, London: Methuen Drama, 2008.
  14. ^ a b Rothwell, Kenneth S. A History of Shakespeare on Screen: A Century of Film and Television, 2nd ed., Cambridge University Press, 2004.
  15. ^ Vaughan, Aldent T. and Virginia Mason Vaughan. Shakespeare's Caliban: A Cultural History, Cambridge University Press, 1991, p. 204.
  16. ^ Lisa Hopkins. Shakespeare's The Tempest : the relationship between text and film, London: Methuen Drama, 2008.

関連かんれん文献ぶんけん

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  • Bigliazzi, Silvia and Losanna Calve eds. Revisiting The Tempest:The Capacity to Signify, Palgrave Macmillan, 2014.
  • Cochran, Peter. Small-Screen Shakespeare, Cambridge Scholars Publishing, 2013.
  • Hopkins, Lisa. Shakespeare's The Tempest : the Relationship between Text and Flm, London: Methuen Drama, 2008.
  • Jackson, Russell. The Cambridge Companion to Shakespeare on Screen, Cambridge University Press, 2020.

外部がいぶリンク

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