(Translated by https://www.hiragana.jp/)
十二夜 - Wikipedia コンテンツにスキップ

じゅう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

じゅう』(じゅうにや、Twelfth Night, or What You Will)は、イギリスげき作家さっかウィリアム・シェイクスピアさく喜劇きげきである。副題ふくだいは「御意ぎょいのままに」を意味いみする。1601ねんから1602ねんごろに、クリスマスのシーズンのわりをげるじゅう上演じょうえんするためにかれたとかんがえられているが、げきちゅうじゅう行事ぎょうじかかわるような台詞せりふはない。この芝居しばい双子ふたご兄妹きょうだいであるヴァイオラとセバスチャンがふね難破なんぱはなればなれになってしまったことからはじまる。いもうとのヴァイオラは少年しょうねん変装へんそうするが、自分じぶんつかえているオーシーノ公爵こうしゃくこいをしてしまう。オーシーノは伯爵はくしゃく令嬢れいじょうであるオリヴィアにこいをしているが、オリヴィアはヴァイオラをおとこだとおもんでおもいをせるようになってしまう。マッテオ・バンデッロ物語ものがたりにもとづくバーナビー・リッチの短編たんぺん「アポロニアスとシッラ」の物語ものがたり部分ぶぶんてきんでおり、音楽おんがく馬鹿騒ばかさわぎにあふれた芝居しばいでもある[1]記録きろくのこっている最初さいしょ上演じょうえんは1602ねん2がつ2にちこよみうえでクリスマスの時期じき正式せいしきわりであるキャンドルマスののものである。1623ねんファースト・フォリオはいるまではいち出版しゅっぱんされたことがなかった。

登場とうじょう人物じんぶつ

[編集へんしゅう]
ヴァイオラ(シザーリオ)
物語ものがたり主人公しゅじんこう。シザーリオは男装だんそう名前なまえ
オーシーノ公爵こうしゃく
ヴァイオラのつかえるイリリア公爵こうしゃく。オリヴィアに求婚きゅうこん
オリヴィア
イリリアの伯爵はくしゃく令嬢れいじょう
サー・トービー・ベルチ
オリヴィアの叔父おじ
サー・アンドルー・エイギュチーク
オリヴィアの求婚きゅうこんしゃ
マライア
オリヴィアの侍女じじょ
マルヴォーリオ
伯爵はくしゃく執事しつじ
フェステ
伯爵はくしゃく道化どうけ
セバスチャン
ヴァイオラの双子ふたごあに
アントニオ
セバスチャンの友人ゆうじん

舞台ぶたい

[編集へんしゅう]

じゅう』の舞台ぶたいであるイリリアは、この芝居しばいのロマンティックな雰囲気ふんいき重要じゅうよう貢献こうけんをしている。イリリアはバルカン半島ばるかんはんとう西側にしがわ地域ちいき古代こだい存在そんざいした国名こくめいである。アドリア海あどりあかい東側ひがしがわ海岸かいがん古代こだいイリリアの一部いちぶであり、この海岸かいがんという設定せってい芝居しばいにとっては重要じゅうようである。この海岸かいがん現代げんだい国名こくめいうと、きたスロベニアクロアチアボスニア・ヘルツェゴビナみなみモンテネグロアルバニアまでをカバーする地域ちいきである。ラグーサ共和きょうわこくはここにふくまれ、おそらくこのあたりが舞台ぶたいとして想定そうていされている[2]。イリリアはシェイクスピアがもっとはや時期じきいた芝居しばいである『ヘンリーろくせい だい2』でも海賊かいぞく活動かつどうしている地域ちいきとして言及げんきゅうされている。登場とうじょう人物じんぶつ名前なまえのほとんどはイタリアふうであるが、喜劇きげきてき人物じんぶつにはイングランドふう名前なまえものもいる。おかしなことに、「イリリアの」貴婦人きふじんであるオリヴィアのおじ、サー・トービー・ベルチはイングランドじんである。芝居しばい設定せっていにはほかにもイングランドらしいところがあり、ヴァイオラは16世紀せいきロンドンの船頭せんどうがよく使つかっていた "Westward ho!" という表現ひょうげん使用しようしており、さらにアントニオがセバスチャンにイリリアで一番いちばんいい宿やどとして「エレファント」ちんをすすめるが、これはグローブちかくにあったパブと同名どうめいである[3]

あらすじ

[編集へんしゅう]
エドモンド・レイトンえがいたオリヴィア

双子ふたご兄妹きょうだいセバスチャンとヴァイオラのったふねあらしい、ヴァイオラはイリリアの海岸かいがんげられる。彼女かのじょ消息しょうそくからないあにんだとおもい、まもるためあにそっくりに男装だんそうしてシザーリオと名乗なのり、イリリアの公爵こうしゃくであるオーシーノに小姓こしょうとしてつかえることにする。

オーシーノは伯爵はくしゃくむすめであるオリヴィアにこいをしていたが、あにふくしたいという理由りゆう彼女かのじょことわられつづけていた。シザーリオをすっかりったオーシーノは、オリヴィアに自分じぶん気持きもちをつたえるようめいじる。ひそかにオーシーノにあわおもいをいていたヴァイオラはその命令めいれいくるしむが、小姓こしょうとしてそのつとめをたす。オーシーノのおもいをこばむオリヴィアだったが、使者ししゃとしてやってたシザーリオにしんうばわれてしまう。それにいたヴァイオラは、みのるはずのない自分じぶんへのオリヴィアのおもいを、オーシーノへの自分じぶんおもいとかさねてかなしむ。

一方いっぽうんだとヴァイオラがおもっていた双子ふたごあにセバスチャンは、べつふね船長せんちょうアントニオにたすけられており、かれともにイリリアにやってていた。アントニオはセバスチャンをっていたが、オーシーノと過去かこ因縁いんねんがある関係かんけいで、セバスチャンとわかれて人目ひとめかないよう行動こうどうしていた。

オリヴィアにはオーシーノのほかにも求婚きゅうこんしゃがおり、オリヴィアの叔父おじトービーのあそ仲間なかまであるアンドルーもその一人ひとりだった。いとしいオリヴィアが公爵こうしゃく小姓こしょうねつげているといたアンドルーは、トービーにそそのかされてシザーリオに決闘けっとうもうむ。シザーリオは仕方しかたなくその決闘けっとうけるが、シザーリオのことをセバスチャンだとおもんだアントニオがってはいり、決闘けっとうめる。その警備けいびいんつかまってしまうアントニオだったが、ヴァイオラはかれ自分じぶんのことをセバスチャンとぶのをいて、あにきていることをる。

そのころ、イリリア見物けんぶつをしていたセバスチャンは、偶然ぐうぜんにオリヴィアと出会であう。セバスチャンはらずのうつくしいひめ求婚きゅうこんされてゆめではないかと戸惑とまどうも、そのもうれる。オリヴィアはシザーリオにそれまでかたくなにこばまれてきたこともあり、相手あいてわらぬうちにとすぐに結婚式けっこんしきげる。

その、オリヴィアと出会であったオーシーノは彼女かのじょ求婚きゅうこんするも、いつもとおことわられてしまう。さらには彼女かのじょ自分じぶん小姓こしょうおっとぶのをいて、裏切うらぎられたとおもったオーシーノはシザーリオに激怒げきどする。おぼえのないヴァイオラはそれを否定ひていするが、今度こんどはオリヴィアが裏切うらぎられたとさけぶ。そんな口論こうろん最中さいちゅうにセバスチャンがあらわれ、一同いちどうおどろく。ヴァイオラとセバスチャンはたがいに素性すじょうたしかめい、わかれになっていた兄妹きょうだいる。ヴァイオラをおとこおもって求婚きゅうこんしたオリヴィアはるが、オリヴィアもセバスチャンもたがいにわるはせず、一方いっぽうのオーシーノはシザーリオがおんなだとり、あらためて求婚きゅうこんする。こうして2くみのカップルがめでたく誕生たんじょうする。

ざいげん

[編集へんしゅう]

この芝居しばいおもにイタリアの作品さくひん『リンガンナーティ』(Gl'ingannati、『あざむかれたものたち』)をソースとしているとかんがえられている[4]。この作品さくひんはアカデミア・デッリ・イントロナーティ (Accademia degli Intronati) によるともさくで1531にかれている。男性だんせい主人公しゅじんこうオーシーノ (Orsino) の名前なまえはブラチアーノ公爵こうしゃくヴィルジニオ・オルシーニ (Virginio Orsini) からきているのではないかと推定すいていされており、このイタリアの貴族きぞくは1600ねんから1601ねんにロンドンを訪問ほうもんしている[5]

もうひとつの種本たねほんである『アポロニアスとシッラ』 (Of Apollonius and Silla) はバーナビー・リッチの作品さくひんしゅうである Riche his Farewell to Militarie Profession conteining verie pleasaunt discourses fit for a peaceable tyme (1581ねん)に収録しゅうろくされており、マテオ・バンデッロの物語ものがたり翻案ほんあんである[6]

アーサー・ボイド・ホートンによる「サー・アンドルー・エイギュチークをたすけにくるサー・トービー・ベルチ」(1854ねんごろ

タイトルの「じゅう」は、クリスマスの12にちおこなわれるおおやけげんさいよる祝宴しゅくえんのことである。もともとはカトリック祭日さいじつであったが、どんちゃんさわぎのとなっていた。召使めしつかいが主人しゅじんのような服装ふくそうをし、男女だんじょ衣服いふくえた。この祝祭しゅくさい儀礼ぎれいカーニヴァルてき反転はんてんは、いちねんおな時期じきいわわれた古代こだいローマまつりであるサトゥルナリアにもとづくものではないかとわれており、ほんさくのジェンダーが混乱こんらんするプロットの文化ぶんかてき起源きげんである。エリザベスあさにおいてもじゅういわいは馬鹿騒ばかさわぎをふくむものであり、一時いちじてきにエンタテイメント、音楽おんがくママーズ・プレイなどをとりしきる権威けんいあたえられた無礼講ぶれいこうおう(ロード・オブ・ミスルール)が任命にんめいされた。この芝居しばいは、こうした無礼講ぶれいこうゆるされる伝統でんとうてき祝祭しゅくさい雰囲気ふんいきのこした作品さくひんである[7]。このため、通常つうじょう物事ものごとのきまり、とくにジェンダーロールの逆転ぎゃくてんこっている[8]。ひどいめにあって孤立こりつするマルヴォーリオは、サー・トービー・ベルチが主導しゅどうする、祝宴しゅくえんたのしむまつり共同きょうどうたい敵対てきたいする存在そんざいとしてえがかれている[9][10]

ジェンダーロールと異性いせいそう

[編集へんしゅう]

ヴァイオラのほかにも、シェイクスピアげきには異性いせいそうするヒロインがいる。シェイクスピアの時代じだい演劇えんげきでは、わか男性だんせいおんなやくえんじており、そうした役者やくしゃ一時いちじてき男性だんせいらしいふりをする女性じょせいキャラクターにふんすることで、んだ変装へんそうにユーモアの要素ようそまれるようになっている[11]。ヴァイオラは異性いせいそうをすることで、オーシーノとオリヴィアのあいだ使者ししゃつとめたり、オーシーノの秘密ひみつ親友しんゆうとなったりするなど、通常つうじょう男性だんせいのものとされる役割やくわり自分じぶんのものとすることになる。しかしヴァイオラは、『すまま』のロザリンドや『ヴェニスの商人しょうにん』のポーシャにくらべると、男装だんそうによってプロットに直接ちょくせつ介入かいにゅうすることがすくなく、「」 ("Time") にプロットの解決かいけつをゆだねている[12]

じゅう』はジェンダー・アイデンディティや、さまざまな人々ひとびと性的せいてきかれうさまを探求たんきゅうしているため、男性だんせい役者やくしゃがヴァイオラをえんじることで両性りょうせい具有ぐゆう性的せいてき曖昧あいまいさといった要素ようそ強調きょうちょうされるようになる[13]。このため、『じゅう』はシェイクスピアげきなかでもきわめて直接的ちょくせつてきにジェンダーの問題もんだいあつかった芝居しばいであるとかんがえられることもある[14]。『じゅう』におけるジェンダーの描写びょうしゃは、女性じょせい不完全ふかんぜん男性だんせいであるという初演しょえん時代じだい普及ふきゅうしていた科学かがくかんからきているということも指摘してきされている[15]。このかんがえにより、『じゅう』のキャスティングとキャラクターにおいて異性いせいのきょうだいのあいだ見分みわけがつかないとされている設定せってい説明せつめいできる。ヴァイオラが芝居しばい最後さいごにオーシーノと婚約こんやくする場面ばめんまでずっと異性いせいそうのままであることは、しばしばヴァイオラとオーシーノのあいだのホモエロティックな関係かんけい可能かのうせいについての議論ぎろんがねとなっている。河合かわい祥一郎しょういちろうはこれについて、ヴァイオラが女装じょそうてくるのが冒頭ぼうとう難破なんぱ場面ばめんのみであるのは、おんなやくえんじる役者やくしゃがかなり成長せいちょうしており、できるだけ男装だんそう舞台ぶたいしておいたほうが配役はいやくじょう都合つごうかったのではないかというせつ提示ていじしている[16]

メタシアター

[編集へんしゅう]

オリヴィアがだい1まくだい5じょうではじめてシザーリオ(ヴァイオラ)に出会であ場面ばめんで、「コメディアンなの?」(エリザベスあさ語法ごほうでは「役者やくしゃなの?」とおな意味いみである)とたずねる[17]。ヴァイオラは「わたしわたしえんじているものではありません」とこたえるが、ここは演劇えんげきせいげきちゅうで「えんじる」ことにたいする言及げんきゅうである[18]。マルヴォーリオいじめのプロットはこのアイディアにもとづいており、フェイビアンはだい3まくだい4じょうで「もしいまこれが舞台ぶたいでかかっている芝居しばいなら、ありえないオハナシだと文句もんくつけるところですよ」とっている[19]だい4まくだい2じょうでは、道化どうけのフェステが地元じもと聖職せいしょくしゃであるサー・トーパスの声色こわいろ自分じぶん自身じしんこえ交互こうご使つかいながら2やくえんけて、マルヴォーリオをからかう。フェステは自分じぶんをイングランドの道徳どうとくげきてくる「むかしのヴァイス(悪徳あくとくやく」になぞらえてしめくくる[20]。イングランドの民俗みんぞくてき伝統でんとう影響えいきょうはフェステのうた台詞せりふにも見受みうけられ、だい5まく最後さいごうたなどがそのれいである[21]うた最後さいご歌詞かしは、イングランドの伝統でんとうてきもの台詞せりふ直接ちょくせつ反映はんえいするものとなっている[22]

初演しょえん執筆しっぴつ時期じき

[編集へんしゅう]

ジョン・マニンガム (John Manningham) はミドル・テンプル法律ほうりつまな学生がくせいであったが、1602ねん2がつ2にちのキャンドルマスのに『じゅう』がミドル・テンプルで上演じょうえんされ、学生がくせいまねかれたと日記にっき記録きろくしている[23]。これが記録きろくのこ最初さいしょ上演じょうえんであり、これ以降いこうにこの芝居しばい執筆しっぴつされたということはありない。出版しゅっぱんは1623ねんファースト・フォリオはいるまでおこなわれなかった。

従来じゅうらいこのげき初演しょえんは、1601ねん1がつ6にちエリザベス1せい宮廷きゅうていおこなわれたとわれていた。これはシェイクスピア学者がくしゃのレズリー・ホットソンが『「じゅう」のだいいち』(The First Night of 'Twelfth Night', 1954ねん)でとなえたせつで、じゅうのそのその場所ばしょでシェイクスピアの劇団げきだんげき上演じょうえんした記録きろくがあることと、そのとき主賓しゅひん登場とうじょう人物じんぶつ同名どうめいのイタリア貴族きぞくオーシーノ公爵こうしゃくだったことを根拠こんきょにしている。しかしこのせつは、公爵こうしゃく自分じぶん同名どうめい登場とうじょう人物じんぶつ道化どうけにからかわれるのをよろこんだか、また公爵こうしゃく訪英ほうえいらせがはいったのが12月25にちのことで、いくらシェイクスピアでもこれほどの短期間たんきかん新作しんさく仕上しあげるのはむずかしいのではないか、という疑問ぎもんがある。

執筆しっぴつ年代ねんだいについて確実かくじつえるのは、前述ぜんじゅつしたように1602ねんはじめには上演じょうえんできる状態じょうたいであったということと、どれほどはやくとも1599ねん以後いごかれたということ程度ていどである。それは同年どうねん出版しゅっぱんされたエドワード・ライト (Edward Wright) のイギリスはつ世界せかい地図ちずへの言及げんきゅうだい3まくだい3じょうのマライアの台詞せりふにあることからわかる。デイヴィッド・ビーヴィントン (David Bevington) は1599ねん執筆しっぴつ可能かのうせい示唆しさしている。さらに英文えいぶん学者がくしゃ河合かわい祥一郎しょういちろうは、シェイクスピアの作品さくひんをパロディしている作者さくしゃ不明ふめいの『をつけろ』(Look About You, 1599ねんから1600ねん執筆しっぴつ、1600ねん出版しゅっぱん)が『じゅう』の真似まねもしていることから、それ以前いぜんであること、つまり1599ねん1600ねんだという[24]。しかし1601ねんせつ根強ねづよい。年代ねんだいについて確定かくていてきなことをうのは困難こんなんである[25]

テクスト

[編集へんしゅう]

ほんさく正式せいしきなタイトルは Twelfth Night, or What You Will である。芝居しばい副題ふくだいをつけることはエリザベスあさ流行りゅうこうであるが、『ヴェニスの商人しょうにん』 (The Merchant of Venice) のべつだい『ヴェニスのユダヤじん』 (The Jew of Venice) を副題ふくだいとしてあつか場合ばあいがあることをのぞけば、『じゅう』はシェイクスピアげき唯一ゆいいつ出版しゅっぱん副題ふくだいがつけられた作品さくひんである[11]

じゅう』のふる版本はんぽんファースト・フォリオのみで異本いほんはないが、このテクストは以下いかのような問題もんだいはらんでいる。初演しょえんから出版しゅっぱんまで20ねんほど経過けいかしていることから、初演しょえん台本だいほんではなく、上演じょうえんかさねていくうちに改修かいしゅうおこなわれた台本だいほん底本ていほんとしてもちいたためとおもわれる[26]

  • オーシーノ公爵こうしゃく途中とちゅうから伯爵はくしゃくばれている。
  • わたしうたうたえる」といっていたヴァイオラがうたうたわない。
  • マライアがマルヴォーリオいじめを計画けいかくするとき、サー・トビーとサー・アンドルーと阿呆あほうの3にんにマルヴォーリオをかくるようにっているのに、実際じっさいには阿呆あほうではなくフェイビアンなる人物じんぶつがでてくる[27]

上演じょうえん

[編集へんしゅう]

シェイクスピアの時代じだい

[編集へんしゅう]

初演しょえん執筆しっぴつ年代ねんだいふしべたように、最初さいしょ記録きろくのこっている上演じょうえんは1602ねん2がつ2にちミドル・テンプルおこなわれた上演じょうえんである。この上演じょうえんのことを日記にっき記録きろくしたジョン・マニンガムは、あきらかにマルヴォーリオのプロットを一番いちばんたのしかったと評価ひょうかしており、さらにシェイクスピアがまえ執筆しっぴつした芝居しばいである『あいだちがいの喜劇きげき』との共通きょうつうてん指摘してきし、ざいげんのひとつである『インガンニ』との関係かんけいにもれている[28]

初演しょえんはもっとはや時期じきであったかもしれない。初演しょえん執筆しっぴつ年代ねんだいべたレスリー・ホットソンなどの主張しゅちょうただしければ、ホワイトホール宮殿きゅうでんで1601ねん1がつ6にちじゅう祝宴しゅくえんほんさく上演じょうえんされた可能かのうせいもある[29]。『じゅう』は1618ねん4がつ8にちイースターマンデイ宮廷きゅうてい上演じょうえんされ、1623ねんのキャンドルマスにも上演じょうえんされている。

王政おうせい復古ふっこから19世紀せいきまで

[編集へんしゅう]
ウィリアム・ハミルトンによる『じゅう』のいち場面ばめん、1797ねんごろ

じゅう』はイングランド王政おうせい復古ふっこにあたって最初さいしょさい上演じょうえんされた演目えんもくのひとつである。サー・ウィリアム・ダヴェナントは1661ねんにこの戯曲ぎきょく翻案ほんあんしており、トマス・ベタートンをサー・トービー・ベルチのやく起用きようした。サミュエル・ピープスはこのバージョンを「馬鹿ばか芝居しばい」だとかんがえたが、それでも1661ねん9がつ11にち、1663ねん1がつ6にち、1669ねん1がつ20日はつか観劇かんげきしている。べつ翻案ほんあんである Love Betray'd, or, The Agreeable Disappointment が1703ねんリンカーンズ・イン・フィールズ上演じょうえんされている[5]

17世紀せいきから18世紀せいきはじめまでは翻案ほんあんばかり上演じょうえんされていたが、シェイクスピアの原作げんさくばんじゅう』が1741ねんにドルリー・レイン劇場げきじょう再演さいえんされた。1820ねんにはフレデリック・レイノルズがオペラばん上演じょうえんし、音楽おんがくヘンリー・ビショップ担当たんとうした。

20世紀せいきから21世紀せいき

[編集へんしゅう]

1912ねんにハーリィ・グランヴィル=バーカーが非常ひじょう影響えいきょうりょくのある上演じょうえんおこない、1916ねんにはオールド・ヴィック・シアターで『じゅう』が上演じょうえんされた。

イェール大学だいがく演劇えんげき協会きょうかいによる1921ねんの『じゅう上演じょうえんポスター

リリアン・ベイリス長期間ちょうきかん休館きゅうかんしていたサドラーズ・ウェルズ劇場げきじょう再開さいかいし、1931ねんラルフ・リチャードソンがサー・トービーやくジョン・ギールグッドがマルヴォーリオやくで『じゅう』を上演じょうえんした。オールド・ヴィック・シアターは1941ねんロンドンだい空襲くうしゅう深刻しんこく被害ひがいこうむり、1950ねん再開さいかいしたが、そのさいペギー・アシュクロフトをヴァイオラやく起用きようして『じゅう』を上演じょうえんした。ジョン・ギールグッドはシェイクスピア・メモリアル・シアターの一環いっかんとして1955ねんにマルヴォーリオやくローレンス・オリヴィエ、ヴァイオラとセバスチャン両方りょうほうヴィヴィアン・リーえんじる演出えんしゅつ上演じょうえんおこなった。ブロードウェイ・シアター最長さいちょう上演じょうえんはマーガレット・ウェブスターが1940ねん演出えんしゅつした公演こうえんで、マルヴォーリオをモーリス・エヴァンス、ヴァイオラをヘレン・ヘイズえんじた。このプロダクションは129かい公演こうえんおこなったが、これは通常つうじょうのブロードウェイの上演じょうえんの2ばい以上いじょう回数かいすうである。

リヴィウ・チューレイが1984ねん10がつから11がつにかけてミネアポリスのガスリー・シアターでおこなった上演じょうえんは、アーキタイプてきサーカス世界せかい舞台ぶたいとし、祝宴しゅくえんてき、カーニヴァルてき要素ようそ強調きょうちょうした[30]

初演しょえんはすべてのおんなやく男性だんせいによってえんじられていたが、そのすう世紀せいきあいだ女性じょせいおんなやく起用きようするのが普通ふつうであった。ロンドンシェイクスピアズ・グローブのカンパニーでは多数たすう非常ひじょう人気にんきたかいオールメールキャスト上演じょうえん実施じっししており、2002ねんのシーズンでは『じゅう』を上演じょうえんした。これはグローブの芸術げいじゅつ監督かんとくマーク・ライランスがオリヴィアをえんじ、エディ・レッドメインがヴァイオラをえんじるもので、シーズン開幕かいまくまえの2がつに、1602ねんにこの芝居しばい上演じょうえんされたミドル・テンプル・ホールで上演じょうえん400周年しゅうねん記念きねんいわって先行せんこう上演じょうえんされた。2012ねんから2013ねんのシーズンでこの演目えんもく再演さいえんされ、グローブでの上演じょうえんののちウェスト・エンドとブロードウェイに劇場げきじょううつして上演じょうえんされた。上演じょうえん非常ひじょう人気にんきがあり、れとなった。スティーヴン・フライがマルヴォーリオ、ヴァイオラやくはジョニー・フリンがえんじ、『リチャードさんせい』とともにレパートリーの一部いちぶとして上演じょうえんされた[31]

20世紀せいき後半こうはんにはおおくの著名ちょめい女優じょゆうがヴァイオラをえんじており、ステレオタイプてきなジェンダーロールの限界げんかいえる感覚かんかくを、どれほど観客かんきゃく経験けいけんさせられるかが解釈かいしゃくのキーのひとつとなっている[32]。これはときとして、ほんさくのプロダクションがどの程度ていど統合とうごう感覚かんかくさい確認かくにんする方向ほうこうかうかということと関連かんれんする。たとえば、芝居しばい結末けつまつ部分ぶぶんだい世界せかい大戦たいせんのコミュニティのさい統合とうごう強調きょうちょうした1947ねんのプロダクションでは、当時とうじ44さいであったビアトリクス・レーマンがえんじるたくましいヒーロー/ヒロインとしてのヴァイオラがこの再会さいかいさい統合とうごう主導しゅどうした[33]。1966ねんロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのプロダクションでは、ダイアナ・リグえんじるヴァイオラがそれまでの上演じょうえんよりもはるかに公爵こうしゃくたいして肉体にくたいてき魅力みりょく発揮はっきし、宮廷きゅうていもとくに男性だんせいあいだでの肉体にくたいてき誇示こじがあらわになるような場所ばしょとしてえがかれ、ジェンダーの侵犯しんぱんがより明白めいはくになった[34]。ドナルド・シンデンをマルヴォーリオ、ジュディ・デンチをヴァイオラに起用きようしたジョン・バートン演出えんしゅつの1969ねんのプロダクションでは、役者やくしゃ演技えんぎたか評価ひょうかされ、プロダクション自体じたい粉々こなごなくずれてゆくにゆく社会しゃかい提示ていじするものだという評価ひょうかけた[35]

マルヴォーリオは役者やくしゃあいだでは人気にんきのある役柄やくがらである。イアン・ホルムなんもこのやくえんじ、サイモン・ラッセル・ビールドンマー・ウエアハウス、2002ねん)、リチャード・コーデリー(2005ねん)、パトリック・スチュワートチェスター、2007ねん)、デレク・ジャコビ(ドンマー・ウエアハウス、2009ねん)、リチャード・ウィルソン(2009ねん)などがこのやくえんじている[36]

翻案ほんあん

[編集へんしゅう]

舞台ぶたい作品さくひん

[編集へんしゅう]

わか女性じょせいが「おとこ世界せかいおこな自立じりつみち探求たんきゅう、「ジェンダーの曖昧あいまい」、(まわみちではあるが)「同性どうせいあいだ性的せいてきかれい」などのテーマゆえに、ミュージカルなどを中心ちゅうしん多数たすう舞台ぶたい翻案ほんあん制作せいさくされている[37]Your Own Thing (1968ねん)、Music Is (1977ねん)、All Shook Up (2005ねん)、Play On! (1997ねん)などがそのれいであり、最後さいごのふたつはそれぞれエルヴィス・プレスリーデューク・エリントン楽曲がっきょくもちいたジュークボックス・ミュージカルである。ピーター・エリス作曲さっきょくによるミュージカル Illyria制作せいさくされている。シアター・グロテスコはオーシーノ公爵こうしゃくとオリヴィアの召使めしつかいの視点してんから現代げんだいばん翻案ほんあんげき制作せいさくしている。この翻案ほんあん階級かいきゅう差別さべつやリーダーシップなき社会しゃかいについて考察こうさつするものである。

1999ねんに『じゅう』は『じゅう-またはおのぞみのもの-』というタイトルで宝塚歌劇団たからづかかげきだんにより上演じょうえんされたが、この作品さくひんには劇場げきじょう役者やくしゃ役割やくわりについてさらにあきらかな注釈ちゅうしゃくがいくつかくわえられており、さらにすべてのやく女優じょゆうによってえんじられるため、ジェンダーをステージに適応てきおうさせることがより多層たそうてきえがかれた[38]。なお、宝塚歌劇団たからづかかげきだんは1980ねんに『じゅう』の翻案ほんあんによる『こい冒険ぼうけんしゃたち』を上演じょうえんしている。

2005ねんには、尾上おがみ菊之助きくのすけ蜷川にながわ幸雄ゆきお演出えんしゅつ依頼いらいし、『じゅう』を歌舞伎かぶき演目えんもくとしてつくえる『NINAGAWAじゅう』が上演じょうえんされた。ほんさくは2007ねん再演さいえんされ、2009ねんにはロンドンのバービカン・センター上演じょうえんされた[39]

2020ねん舞台ぶたいベル・エポックパリ ピガールうつした「ミュージカル『ピガール狂騒きょうそうきょく』」を宝塚歌劇たからづかかげき上演じょうえん[40]

映画えいが

[編集へんしゅう]

1910ねんにヴァイタグラフ・スタジオがフローレンス・ターナー、ジュリア・スウェイン・ゴードン、マリン・セイス主演しゅえんで『じゅう』のみじかサイレント映画えいがはんつくっている。また、オーストラリアで1986ねんに『じゅう』 (Twelfth Night) として映画えいがされている。

1996ねん映画えいがじゅう』はトレヴァー・ナン監督かんとくによるイギリス映画えいがで、19世紀せいき舞台ぶたいにしている。イモジェン・スタッブスがヴァイオラやくヘレナ・ボナム=カーターがオリヴィアやくトビー・スティーブンスがオーシーノやくである。メル・スミスがサー・トービー、リチャード・E・グラントがサー・アンドルー、ベン・キングズレーがフェステ、イメルダ・スタウントンがマライア、ナイジェル・ホーソーンがマルヴォーリオをえんじた。喜劇きげきてき要素ようそって正攻法せいこうほうのドラマになっているため、批判ひはんけた[41]

2001ねんディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービーモトクロス世界せかい舞台ぶたいえて『モトクロスト』 (Motocrossed) を制作せいさくしている。

2004ねん映画えいがホワイト・ライズ』ではローズ・バーンえんじるアレックスがアマチュアの『じゅう上演じょうえんでヴァイオラをえんじる。

ほんさくは2、アメリカの高校こうこう舞台ぶたいにした作品さくひんとして翻案ほんあんされている。1985ねん制作せいさくされた『彼女かのじょはハイスクール・ボーイ』 (Just One of the Guys) と、2006ねん映画えいが『アメリカン・ピーチパイ』 (She's the Man) である[42]

彼女かのじょはハイスクール・ボーイ英語えいごばん』は、高校生こうこうせいのテリー(ジョイス・ハイザー)がせい差別さべつゆえにあこがれの仕事しごとであった新聞しんぶんしゃのインターンにえらばれなかったとかんがえ、両親りょうしん留守るすちゅう男装だんそうしてライバルの高校こうこう男子だんしとして入学にゅうがくし、そこで友人ゆうじんになったリックにこいしてしまうという物語ものがたりである。設定せっていは『じゅう』にているが、名前なまえ展開てんかいなどは原作げんさくおおきくことなり、自由じゆう翻案ほんあんである。

アメリカン・ピーチパイ』は『彼女かのじょはハイスクール・ボーイ』よりも原作げんさくちか作品さくひんになっている。ほんさくは『こいのからさわぎ』が『じゃじゃうまならし』を現代げんだいしたのと同様どうよう手法しゅほうで『じゅう』を現代げんだいのティーンコメディにつくえており、おなじチームが脚本きゃくほん担当たんとうしている。舞台ぶたいはイリリアというプレップスクールで、芝居しばい主要しゅよう人物じんぶつ名前なまえおなじである。たとえばイリリアの公爵こうしゃくオーシーノは「デューク・オーシーノ」(「公爵こうしゃく」を意味いみする「デューク」がファーストネーム)となっている。ただしヴァイオラは男装だんそう「シザーリオ」ではなく、あに実名じつめい「セバスチャン」を使用しようして男性だんせいのふりをする。物語ものがたりはサッカーチームのライバル関係かんけいをめぐるものにわっているが、混乱こんらんしたロマンスは原作げんさくおなじようにえがかれている。主人公しゅじんこうのヴァイオラはあにセバスチャンのふりをし、オリヴィアはヴァイオラをセバスチャンだとおもってこいちる。「シザーリオ」という名前なまえ高校こうこう生徒せいとたちがくレストランの名前なまえ使つかわれている。イリリア学園がくえんサッカーチームでデュークのチームメイトになるのはアンドルーとトービーである。マルヴォーリオのわきすじはぶかれているが、すこしだけ登場とうじょうするタランチュラにマルヴォーリオという名前なまえがつけられている。モニークやマルカムなど、シェイクスピアの作品さくひんから直接ちょくせつているのではない人物じんぶつ登場とうじょうする。

こいにおちたシェイクスピア』には『じゅう』への言及げんきゅうがある。映画えいが終盤しゅうばんで、ジュディ・デンチえんじるエリザベス1せいジョセフ・ファインズえんじるシェイクスピアにじゅう祝宴しゅくえんよう喜劇きげきくようたのむ。映画えいが登場とうじょうするシェイクスピアの恋人こいびとグウィネス・パルトロウえんじる「ヴァイオラ」であり、富裕ふゆう商人しょうにんむすめで、役者やくしゃになるためおとこのふりをする。シェイクスピアは金銭きんせんてき困窮こんきゅうし、『ロミオとジュリエット』をこうとしてスランプにおちいっているげき作家さっかである。ヴァイオラは映画えいが最後さいごで『じゅう』のヒロインのモデルとして提示ていじされる。『じゅう』が難破なんぱはじまることをふまえ、この映画えいがはヴァイオラが恋人こいびとであるシェイクスピアとかれ、まぬ結婚けっこんいられてアメリカの植民しょくみんかったのち難破なんぱびてヴァージニアのきし場面ばめんふくんでいる。

じゅう』は『Vフォー・ヴェンデッタ』で言及げんきゅうされている。登場とうじょう人物じんぶつであるVがイヴィーとおどりながらヴァイオラの台詞せりふ引用いんようする。

テレビ番組ばんぐみ

[編集へんしゅう]

1937ねん5がつ14にちBBC Oneが『じゅう』の30分間ふんかん抜粋ばっすいをロンドンで放送ほうそうした。これは記録きろくのこっているもののなかでは、シェイクスピアの戯曲ぎきょくがテレビで放送ほうそうされた最初さいしょれいである。ジョージ・モア・オフェラルがあたらしいメディアであるテレビようにプロデュースしたもので、のちにアカデミーしょう受賞じゅしょうする著名ちょめい女優じょゆうグリア・ガースン若手わかてとして出演しゅつえんしている。アレクサンドラ・パレスのBBCスタジオからライヴで放送ほうそうされ、テレビ放送ほうそう記録きろくする技術ぎじゅつ存在そんざいしない時代じだいであったため、スチール写真しゃしん以外いがい映像えいぞう記録きろくのこっていない[43]

1939ねんにマイケル・セイント=デニスの演出えんしゅつにより、こちらも将来しょうらいのアカデミーしょう女優じょゆうであるペギー・アシュクロフト主演しゅえん芝居しばい全編ぜんぺんがテレビ放映ほうえいされた。サー・トービー・ベルチのやくわかのジョージ・ディヴァインがつとめた。

1957ねんにアメリカのNBCが『ホールマーク・ホール・オヴ・フェイム』のプログラムでこの芝居しばい放映ほうえいした。これは『じゅう』がはじめてカラーでテレビ放映ほうえいされた機会きかいであった。モーリス・エヴァンズが舞台ぶたいたりやくであったマルヴォーリオをふたたえんじ、デニス・キング、ローズマリー・ハリス、フランセス・ハイランドも出演しゅつえんした。

1966ねんにオーストラリアでテレビばんの『じゅう』が放映ほうえいされている。

1969ねんにジョン・シッチェルとジョン・デクスターの演出えんしゅつでUKテレビばん制作せいさくされた。ジョーン・プロウライトがヴァイオラとセバスチャンをえんじ、アレック・ギネスがマルヴォーリオ、ラルフ・リチャードソンがサー・トービー・ベルチをえんじ、トミー・スティールが非常ひじょう独創どくそうてきなフェステであった。

1980ねんにさらにテレビばんじゅう (Twelfth Nightつくられた。これは『BBCテレヴィジョンシェイクスピア』シリーズの一部いちぶで、フェリシティ・ケンダル英語えいごばんがヴァイオラ、シニード・キューザックがオリヴィア、アレック・マッコーエンがマルヴォーリオ、ロバート・ハーディがサー・トービー・ベルチであった。1981ねん12月19にちNHK総合そうごう、12月27にちNHK教育きょういくでNHKシェークスピア劇場げきじょうじゅう』として放送ほうそう字幕じまく[44]

1988ねんケネス・ブラナー演出えんしゅつ舞台ぶたいがテムズ・テレヴィジョンのためにテレビされた。フランシス・バーバーがヴァイオラ、リチャード・ブライアーズがマルヴォーリオをえんじた。

1998ねんにリンカーン・センター・シアターがニコラス・ハイトナー演出えんしゅつで『じゅう上演じょうえんおこない、これがPBSライヴ・フロム・リンカーン・センターとして放映ほうえいされた。ヘレン・ハントがヴァイオラ、ポール・ラッドがオーシーノ、キーラ・セジウィックがオリヴィア、フィリップ・ボスコがマルヴォーリオ、ブライアン・マリィがサー・トービー、マックス・ライトがサー・アンドルー、デヴィッド・パトリック・ケリーがフェステであった。

2003ねんにティム・サプル演出えんしゅつによる現代げんだい舞台ぶたいにしたテレビ映画えいがつくられた。デイヴィッド・トロートンがサー・トービーをえんじ、パーミンダー・ナグラがヴァイオラやくチュイテル・イジョフォーがオーシーノやくという民族みんぞくキャストであった。ヴァイオラとセバスチャンがイリリアに到着とうちゃくする場面ばめんは、難民なんみんのニュース映像えいぞうおもわせるものであった。

イギリスのテレビシリーズ『スキンズ』のエピソード「グレイス」 (Grace) で、主要しゅよう登場とうじょう人物じんぶつが『じゅう』をえんじる。フランキー、リヴ、マッティの三角さんかく関係かんけい状態じょうたいにあり、それぞれヴァイオラ、オリヴィア、オーシーノをえんじる。

キャスリーン・ネスビットがBBCのために翻案ほんあんした『じゅう』がイギリスのラジオでシェイクスピアげき全編ぜんぺん放送ほうそうされた最初さいしょれいである。1923ねん5がつ28にちのことであり、ネズビットがヴァイオラとセバスチャン両方りょうほうえんじ、ジェラルド・ローレンスがオーシーノをえんじた[45]

1937ねんの『CBSラジオプレイハウス』による翻案ほんあんオーソン・ウェルズがオーシーノ、タルーラ・バンクヘッドがヴァイオラをえんじるものであった。1ねんにウェルズはみずからの劇団げきだんマーキュリー・シアター・カンパニーでマルヴォーリオをえんじた。

BBCでは『じゅう全編ぜんぺんなんかいかラジオで放送ほうそうされている。1982ねんのラジオ4の放送ほうそうではアレック・マッコーウェンがオーシーノ、ウェンディ・マリーがヴァイオラ、ノーマン・ロドウェイがサー・トービー・ベルチ、アンドルー・サックスがサー・アンドルー、バーナード・ヘプトンがマルヴォーリオをえんじた。1993ねんにBBCラジオ3でカリブ海かりぶかい島々しまじま舞台ぶたいにしたバージョンが放送ほうそうされ、マイケル・マロニーがオーシーノ、イヴ・マシソンがヴァイオラ、イアン・カスバートソンがマルヴォーリオ、ジョス・アクランドがサー・トービー・ベルチをえんじた。2011ねん1がつ6にちにBBCラジオ7(現在げんざいのラジオ4エクストラ)でこの番組ばんぐみさい放送ほうそうされた。1998ねんにはラジオ3でべつ翻案ほんあんつくられており、マイケル・マロニーがふたたびオーシーノをえんじ、ジョセット・サイモンがオリヴィア、ニッキー・ヘンソンがフェステをえんじた。2012ねん4がつにBBCラジオ3はサリー・エイヴンズ演出えんしゅつのバージョンを放映ほうえいしており、ポール・レディがオーシーノ、ナオミ・フレデリックがヴァイオラ、デイヴィッド・テナントがマルヴォーリオ、ロン・クックがサー・トービー・ベルチやくであった。

音楽おんがく

[編集へんしゅう]

1888ねんにアレクサンダー・キャンベル・マッケンジーが『じゅう』にもとづく序曲じょきょく作曲さっきょくしている。

1942ねんジェラルド・フィンジがシェイクスピアのテクストをもちいた連作れんさく歌曲かきょくしゅう花輪はなわささげよう』 (Let Us Garlands Bring) の一部いちぶとして「おい、おれ彼女かのじょ」(O Mistress Mine, だい2まくだい3じょう)と「らいたれ、よ」(Come Away, Come Away, Death だい2まくだい4じょう)にきょくをつけている。

2003ねんアルフレッド・リード吹奏楽すいそうがくきょくじゅう』(シェイクスピアにもとづく音楽おんがく仮面かめんげきぜん楽章がくしょう)を作曲さっきょくしている。

影響えいきょう

[編集へんしゅう]
  • デンマークの哲学てつがくしゃセーレン・キェルケゴール著書ちょしょ哲学てつがくてき断片だんぺん』で「ひどい結婚けっこんをするならよくくびをくくられたほうがマシ」というだい1まくだい5じょうのフェステがマライアに台詞せりふいて「よいくびくくりがずいぶんとわる結婚けっこんふせいでいる」とべている。フリードリヒ・ニーチェは『道徳どうとく系譜けいふ』で、『じゅう』のサー・アンドルーがだい1まくだい3じょう牛肉ぎゅうにくぎると機知きちりなくなるのではと台詞せりふ言及げんきゅうしている。
  • キディ・グレイド』のキャラクターであるヴァイオラとシザーリオは『じゅう』の登場とうじょう人物じんぶつから名前なまえをとっている。
  • エリザベス・ハンドの中編ちゅうへん小説しょうせつ『イリリア』 (Illyria) は『じゅう』の高校こうこうでの上演じょうえんげており、フェステのうたをはじめとして芝居しばいたいするさまざまな言及げんきゅうふくむ。
  • クラブ・ペンギンの Twelfth Fish はシェイクスピアの戯曲ぎきょくのパロディである。
  • アガサ・クリスティによる1940ねんのミステリ小説しょうせつすぎひつぎ』 (Sad Cypress) のタイトルは『じゅうだい2まくだい4じょううたからとられている。
  • アメリカのげき作家さっかケン・ラドウィッグは『じゅう』に触発しょくはつされて Leading Ladies という戯曲ぎきょくいている。
  • カサンドラ・クレアの2009ねん小説しょうせつ硝子がらすまち』 (City of Glass) のあきらタイトルは、アントニオとセバスチャンの台詞せりふ引用いんようからとられている。
  • 1971ねん映画えいが Hotel for Dogsてくるいぬ双子ふたごはセバスチャンとヴァイオラという名前なまえである。
  • クライヴ・バーカー短編たんぺん Sex, Death and Starshine は『じゅう』のうまくいかない上演じょうえんについての物語ものがたりである。

日本語にほんごやく

[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ Thomson, Peter. Shakespeare's Theater. London: Routledge & Kegan Paul, 1983, p. 94. ISBN 0-710-09480-9.
  2. ^ Torbarina, J. "The Setting of Shakespeare's Plays." Studia Romanica et Anglica Zagrabiensia, 17–18 (1964).
  3. ^ Donno, Elizabeth Story, editor. Twelfth Night, or, What You Will. Updated ed. Cambridge: Cambridge University Press, 2003, p. 7.
  4. ^ Caldecott, Henry Stratford (1896). Our English Homer, or, The Bacon-Shakespeare Controversy: A Lecture. Johannesburg: Johannesburg Times. p. 9. OCLC 83492745 
  5. ^ a b Halliday, F. E. (1964). A Shakespeare Companion 1564–1964 (First ed.). Harmondsworth: Penguin. pp. 71, 505. OCLC 69117982 
  6. ^ Griffin, Alice (1966). The Sources of Ten Shakespearean Plays (First ed.). New York: T.Y. Crowell. OCLC 350534 
  7. ^ Laroque, François. Shakespeare's Festive World: Elizabethan Seasonal Entertainment and the Professional Stage. Cambridge University Press, 1991 [フランソワ・ラロック『シェイクスピアの祝祭しゅくさい時空じくう-エリザベスあさ無礼講ぶれいこう迷信めいしん中村なかむら友紀ゆきやくひいらぎふうしゃ、2007ねん)], p. 153.
  8. ^ Laroque, p. 227.
  9. ^ Laroque, p. 254.
  10. ^ Clayton, Thomas. "Shakespeare at The Guthrie: Twelfth Night" in Shakespeare Quarterly 36.3 (Autumn 1985), p. 354.
  11. ^ a b Shakespeare, William; Stephen Greenblatt; Walter Cohen; Jean E. Howard; Katharine Eisaman Maus; Andrew Gurr (1997). The Norton Shakespeare (First ed.). New York: W.W. Norton. pp. 40, 1090. ISBN 0-393-97087-6 
  12. ^ Hodgdon, Barbara: "Sexual Disguise and the Theatre of Gender" in The Cambridge Companion to Shakespearean Comedy, edited by Alexander Leggatt. Cambridge University Press, 2002, p. 186.
  13. ^ Charles, Casey. "Gender Trouble in Twelfth Night." Theatre Journal. Vol. 49, No. 2 (1997): 121-141, p. 124.
  14. ^ Smith, Bruce R. "Introduction." Twelfth Night. Boston: Bedford/St. Martin's, 2001.
  15. ^ Charles, Casey. "Gender Trouble in Twelfth Night." Theatre Journal. Vol. 49, No. 2 (1997): 121-141, p. 124.トマス・ラカー『セックスの発明はつめい性差せいさ観念かんねん解剖かいぼうがくのアポリア』高井たかい宏子ひろこ細谷ほそやひとしやく(工作こうさくしゃ、1998)も参照さんしょう
  16. ^ 河合かわい祥一郎しょういちろう『ハムレットはふとっていた!』(白水しろみずしゃ、2001ねん)、pp. 53 - 54。
  17. ^ Lothian and Craik, p. 30.
  18. ^ Righter, Anne. Shakespeare and the Idea of the Play. Chatto & Windus, 1962, p. 130.
  19. ^ Righter, p. 136.
  20. ^ Righter, p. 133.
  21. ^ Weimann, Robert. Shakespeare and the Popular Tradition in the Theater: Studies in the Social Dimension of Dramatic Form and Function, page 41. The Johns Hopkins University Press, 1978.
  22. ^ Weimann, p. 43.
  23. ^ Hobgood, Allison P. (Fall 2006). “Twelfth Night's "Notorious Abuse" of Malvolio: Shame, Humorality, and Early Modern Spectatorship”. Shakespeare Bulletin. 17 November 2012閲覧えつらん
  24. ^ Kawai Shoichiro, "The Date of Twelfth Night", Shakespeare Studies [Tokyo], 38 (2000), 1–16.
  25. ^ アーデンばんだい3シリーズの序文じょぶんでは、年代ねんだいについて様々さまざませつべられているが、いずれも有力ゆうりょくとはいえないという見解けんかいしめされている。Keir Elam, ed., Twelfth Night, or What You Will, Arden Shakespeare 3rd Series, William Shakespeare (London: Arden Shakespeare, 2008).
  26. ^ 小津おつ岩波いわなみ、p.156-157
  27. ^ じゅう』(岩波いわなみ文庫ぶんこ)の解説かいせつにおいて、この2てんかんする小津おつろう解釈かいしゃく披瀝ひれきされている。小津おつ岩波いわなみ、p.157-159。
  28. ^ Shakespeare, William; Smith, Bruce R. (2001). Twelfth Night: Texts and Contexts. Boston: Bedford/St Martin's. p. 2. ISBN 0-312-20219-9 
  29. ^ Hotson, Leslie (1954). The First Night of Twelfth Night (First ed.). New York: Macmillan. OCLC 353282 
  30. ^ The production was extensively reviewed by Thomas Clayton, "Shakespeare at The Guthrie: Twelfth Night" for Shakespeare Quarterly 36.3 (Autumn 1985:353–359).
  31. ^ Costa, Maddy (1 October 2012). “Stephen Fry's Twelfth Night: this all-male affair is no one-man show”. The Guardian. http://www.guardian.co.uk/stage/2012/oct/01/stephen-fry-twelfth-night-all-male July 2, 2012閲覧えつらん 
  32. ^ Gay, Penny. As She Likes It: Shakespeare's Unruly Heroines. London: Routledge, 1994, p. 15.
  33. ^ Gay, Penny: pp. 18-20.
  34. ^ Gay, Penny, p. 30.
  35. ^ Gay, Penny, p. 34.
  36. ^ Costa, Maddy (20 October 2009). “Malvolio – the killjoy the stars love to play”. The Guardian. http://www.guardian.co.uk/stage/2009/oct/20/twelfth-night-malvolio-richard-wilson 17 November 2012閲覧えつらん 
  37. ^ Examined, for example, in Jami Ake, "Glimpsing a 'Lesbian' Poetics in Twelfth Night", Studies in English Literature, 1500–1900, 43.2, Tudor and Stuart Drama (Spring 2003) pp 375–94.
  38. ^ Epiphany (Star, 1999) Epiphany (Bow Shakespeare Series #8)”. takarazuka-revue.info. 11 December 2010閲覧えつらん
  39. ^ NINAGAWAじゅう”. 歌舞伎かぶき美人びじん. 2016ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  40. ^ <title>つきぐみ公演こうえん 『WELCOME TO TAKARAZUKA -ゆきつきはなと-』『ピガール狂騒きょうそうきょく』 | 宝塚歌劇たからづかかげき公式こうしきホームページ</title>
  41. ^ Twelfth Night: Or What You Will (1996)”. Foster on Film. 11 December 2010閲覧えつらん
  42. ^ 7 Teen Movies Based On Shakespeare That Would Make Him Roll Over In His Grave”. ハフィントンポスト. 2016ねん4がつ29にち閲覧えつらん
  43. ^ Vahimagi, Tise; British Film Institute (1994). British Television: An Illustrated Guide. Oxford: Oxford University Press. p. 8. ISBN 0-19-818336-4 
  44. ^ 日本にっぽん放送ほうそう協会きょうかい へん『ウィンザーの陽気ようき女房にょうぼうたち』日本にっぽん放送ほうそう出版しゅっぱん協会きょうかい、1984ねん7がつ1にち巻末かんまつぺーじISBN 4140340568 
  45. ^ British Universities Film & Video Council. Retrieved 19 April 2016

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • じゅう小津おつろう やく岩波いわなみ文庫ぶんこ、1960ねん
  • Donno, Elizabeth Story (ed.): Twelfth Night (Cambridge, 2003)
  • Mahood, M. M. (ed.) Twelfth Night (Penguin, 1995)
  • Pennington, Michael: Twelfth Night: a user's guide (New York, 2000)
  • Mulherin, Jennifer: Twelfth Night (Shakespeare for Everyone)

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]
  • シーザリオ - シザーリオにちなんで命名めいめいされた競走きょうそう
    • トゥエルフスナイト - シーザリオのさんこま
  • ダブルクロス - リプレイシリーズのひとつ『ダブルクロス・リプレイ・オリジン』に、シザーリオを名乗なの多重たじゅう人格じんかく少女しょうじょ登場とうじょうする。プレイヤーは久保田くぼたゆう

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]