トールキンのドワーフ
J・R・R・トールキン の架空 かくう 世界 せかい である中 なか つ国 くに においてドワーフ (英語 えいご : Dwarf 、複数 ふくすう 形 がた : Dwarves )は背 せ の低 ひく い頑健 がんけん な種族 しゅぞく であり、全員 ぜんいん がひげを生 は やしている事 こと が特徴 とくちょう である。他 た 種族 しゅぞく に対 たい して植物 しょくぶつ や動物 どうぶつ を含 ふく めてあまり親密 しんみつ とは言 い えず、ホビット に対 たい してはまだ友好 ゆうこう 的 てき な場合 ばあい が多 おお いが、エルフ に対 たい しては昔 むかし から不信 ふしん 感 かん を抱 だ いていることが見 み られる(一部 いちぶ 除 のぞ く)。典型 てんけい 的 てき なドワーフは鍛冶 たんや や石工 せっこう を職業 しょくぎょう としており、かれらが作 つく り出 だ す作品 さくひん の中 なか にはエルフの作品 さくひん よりも優 すぐ れたものもある。また礼儀 れいぎ もあり義 ぎ を重 おも んじるものの、他 た 種族 しゅぞく とは不和 ふわ になることさえある。
エルフや人間 にんげん と異 こと なり、ドワーフはイルーヴァタールの子 こ ら には数 かぞ えられない。ドワーフは鍛冶 たんや を司 つかさど るアウレ によって作 つく られた。しかしアウレには自 みずか らの作品 さくひん に独立 どくりつ した生命 せいめい を与 あた える力 ちから がなかった。その力 ちから はイルーヴァタール のみが持 も っているのであり、万物 ばんぶつ の父 ちち たるイルーヴァタールの模倣 もほう であったからである。アウレはこれを懺悔 ざんげ し、イルーヴァタールにドワーフを作 つく り出 だ したことを告白 こくはく し打 う ち壊 こわ そうとした。これを見 み たイルーヴァタールはアルダの創造 そうぞう の計画 けいかく にドワーフを加 くわ えることを約束 やくそく し、ドワーフにすでに独立 どくりつ した生命 せいめい が宿 やど っていることを告 つ げる。このことからドワーフはイルーヴァタールの養子 ようし と呼 よ ばれる。アウレは七 なな 人 にん のドワーフの父祖 ふそ を作 つく り、すべてのドワーフはかれらの子孫 しそん であった。かれらはエルフが創造 そうぞう されるまでは眠 ねむ りにつかされた。ドワーフはアウレの影響 えいきょう からか工芸 こうげい 品 ひん の加工 かこう を好 この み、よく木 き を斧 おの で切 き り倒 たお し、木 き の牧人 ぼくじん エント がヤヴァンナの願 ねが いによって生 う みだされる原因 げんいん ともなる。
トールキンの作品 さくひん に登場 とうじょう するドワーフのほとんどはドゥリンの民 みん である。ドゥリンの民 みん はカザド=ドゥーム のドゥリン1世 せい に始 はじ まる部族 ぶぞく であり、長 ちょう 鬚 ひげ 族 ぞく とも呼 よ ばれる。著名 ちょめい な例外 れいがい としては『シルマリルの物語 ものがたり 』で語 かた られる青 あお の山脈 さんみゃく のドワーフの街 まち ノグロドとベレゴストに住 す むドワーフがある。
かれらは中 なか つ国 くに の山々 やまやま から貴金属 ききんぞく を採掘 さいくつ し、加工 かこう した。最 もっと も有名 ゆうめい なドワーフの貴金属 ききんぞく はミスリル である。さまざまな点 てん で、ドワーフはエルフと人間 にんげん の中間 ちゅうかん に位置 いち している。かれらは不死 ふし ではないが、250年 ねん 以上 いじょう の寿命 じゅみょう を持 も っている。かれらは一般 いっぱん 的 てき に人間 にんげん よりも堕落 だらく しがたい種族 しゅぞく であるが、欲 よく に駆 か られて性急 せいきゅう な行 おこな いをする点 てん では共通 きょうつう している(特 とく に有名 ゆうめい なのはエル・シンゴル の殺害 さつがい とアーケン石 せき をめぐる諍 いさか いであろう)。
ドワーフの言語 げんご はアウレによって創造 そうぞう され、クズドゥル と呼 よ ばれている。ドワーフは自分 じぶん たちの言葉 ことば を秘密 ひみつ にしていたため、人間 にんげん やエルフにとってはなじみのない言語 げんご である。ただし、ひとつだけ有名 ゆうめい なドワーフの言葉 ことば がある。それは古 ふる くは第 だい 一紀 かずのり までさかのぼる古代 こだい の鬨 かちどき の声 こえ である。「バルク カザード!カザード アイ=メーヌ!」"Baruk Khazâd! Khazâd ai-mênu!"と発音 はつおん され、「ドワーフの斧 おの だ!ドワーフが汝 なんじ らを討 う つぞ!」の意 い である。
トーリン・オーケンシールド は『ホビットの冒険 ぼうけん 』において、12人 にん のドワーフを伴 ともな って袋小路 ふくろこうじ 屋敷 やしき を訪 おとず れ、財宝 ざいほう を取 と り戻 もど す旅 たび にビルボ を加 くわ える。
ギムリ は『指輪 ゆびわ 物語 ものがたり 』において指輪 ゆびわ の仲間 なかま に加 くわ わり、エルフのレゴラス と親友 しんゆう になる。
『指輪 ゆびわ 物語 ものがたり 』及 およ び『ホビット 』にはドワーフの女性 じょせい は登場 とうじょう しない。『指輪 ゆびわ 物語 ものがたり 』追 つい 補 ほ 編 へん の『ドゥリンの一族 いちぞく 』の章 しょう にはドワーフの女性 じょせい は男性 だんせい と全 まった く見分 みわ けがつかないと言 い う記述 きじゅつ があり、このことから女性 じょせい も髭 ひげ が生 は えているのだろうと言 い う推測 すいそく が生 う まれた。しかしながら、2022年 ねん から始 はじ まったドラマシリーズ『ロード・オブ・ザ・リング: 力 ちから の指輪 ゆびわ 』には複数 ふくすう のドワーフ女性 じょせい が登場 とうじょう し、男性 だんせい と見分 みわ けがつき髭 ひげ も生 は えていない。
ドワーフは自分 じぶん たちの種族 しゅぞく をカザド (Khazad ) と呼 よ んでいる。これはアウレがかれらに与 あた えた名前 なまえ である。この言葉 ことば はシンダール語 ご においてはハゾドリム (Hadhodrim ) 、クウェンヤ においてはカサリ (Casari ) と訳 やく された。ノルドール の間 あいだ ではカサリがドワーフを指 さ す一般 いっぱん 的 てき な言葉 ことば であったが、シンダール はナウグリム (Naugrim ) あるいはノゴスリム (Nogothrim ) 、つまり「成長 せいちょう を阻害 そがい された者 もの 」と呼 よ ぶ。
中 なか つ国 くに のドワーフの名前 なまえ は、その多 おお くが古 こ エッダ の『巫女 ふじょ の予言 よげん 』から取 と られている。
英語 えいご への影響 えいきょう [ 編集 へんしゅう ]
トールキンの著作 ちょさく である『ホビットの冒険 ぼうけん 』と『指輪 ゆびわ 物語 ものがたり 』が人気 にんき を博 はく したことにより、ファンタジー 文学 ぶんがく においてこの種族 しゅぞく をあらわす用語 ようご としてdwarves を使 つか うことが普及 ふきゅう した。トールキン以前 いぜん はdwarfs (綴 つづ りが異 こと なる)が用 もち いられていた。たとえばディズニー の『白雪姫 しらゆきひめ と七 なな 人 にん の小人 こども 』Snow White and Seven Dwarfs においてもdwarfs が用 もち いられていた。事実 じじつ 、後者 こうしゃ の綴 つづ りが一般 いっぱん 的 てき であったため、『指輪 ゆびわ 物語 ものがたり 』の植字 しょくじ 工 こう はトールキンのdwarves をdwarfs に「訂正 ていせい 」したほどである[1] 。
トールキンによれば、dwarf の「本当 ほんとう の『歴史 れきし 的 てき 』な」複数 ふくすう 形 がた はdwarrows かdwerrows であるという。かれはかつてdwarves を「個人 こじん 的 てき な誤 あやま った文法 ぶんぽう 」と述 の べている[2] 。しかし『指輪 ゆびわ 物語 ものがたり 』の追 つい 補 ほ 編 へん Fにおいて、ドワーフが現在 げんざい の英語 えいご で語 かた られることが多 おお かったならば、人間 にんげん (man )の複数 ふくすう 形 がた men が保持 ほじ されているごとく、dwarf の特殊 とくしゅ な複数 ふくすう 形 がた も保持 ほじ されたはずであると述 の べている。dwarrow という形 かたち はモリアの名前 なまえ であるDwarrowdelf にのみ現 あらわ れている。トールキンは代 か わりにElf の複数 ふくすう 形 がた Elves に対応 たいおう するDwarves を用 もち い、意味 いみ が読者 どくしゃ にとってわかりやすいようにした。一般 いっぱん と異 こと なる用語 ようご を用 もち いたことは、神話 しんわ やおとぎ話 ばなし に登場 とうじょう する同 おな じような名前 なまえ を持 も つ生 い き物 もの とトールキンのドワーフを区別 くべつ する役割 やくわり も果 は たした。
作中 さくちゅう に登場 とうじょう するドワーフ[ 編集 へんしゅう ]
エレボール遠征 えんせい に向 む かった13人 にん のドワーフ
その他 た
スロール(Thrór)
スライン2世 せい (Thráin II)
ダインⅡ世 せい (Dáin II)
^ (The Letters of J. R. R. Tolkien , 138)
^ (The Letters of J. R. R. Tolkien , 17)