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ハイパーピクナル流 りゅう (ハイパーピクナルりゅう、英 えい :Hyperpycnal flow)は、持続 じぞく 時間 じかん の長 なが い安定 あんてい した混 こん 濁流 だくりゅう 。 洪水 こうずい の発生 はっせい 時 じ に河口 かこう から海 うみ へ濁 にご った水 みず が放出 ほうしゅつ されて発生 はっせい する。堆積 たいせき 順序 じゅんじょ や堆積 たいせき の様式 ようしき が通常 つうじょう と異 こと なる異常 いじょう タービダイト の形成 けいせい を説明 せつめい するために提唱 ていしょう されており、地層 ちそう 学 がく 的 てき 意義 いぎ が大 おお きい[1] 。
河川 かせん 水 すい が海 うみ に流出 りゅうしゅつ する際 さい の形態 けいたい は、ハイポピクナル流 りゅう (海水 かいすい よりも河川 かせん 水 すい の密度 みつど が小 ちい さい)・ホモピクナル流 りゅう (海水 かいすい と河川 かせん 水 すい の密度 みつど が等 ひと しい)・ハイパーピクナル流 りゅう の3つに分類 ぶんるい される。ハイパーピクナル流 りゅう は海水 かいすい よりも河川 かせん 水 すい の密度 みつど が大 おお きい場合 ばあい に発生 はっせい する。多様 たよう な溶質 ようしつ が溶解 ようかい している海水 かいすい の方 ほう が淡水 たんすい よりも密度 みつど が高 たか いことが一般 いっぱん 的 てき であるが、高密度 こうみつど の混 こん 濁流 だくりゅう であればハイパーピクナル流 りゅう を生 しょう じさせられることになる。なお、ハイポピクナル流 りゅう であっても、温度 おんど 差 さ ・塩分 えんぶん 差 さ ・堆積 たいせき 物 ぶつ 濃度 のうど 差 さ による対流 たいりゅう が同時 どうじ に発生 はっせい して対流 たいりゅう 不安定 ふあんてい の状態 じょうたい に陥 おちい り、二 に 次 じ 的 てき にハイパーピクナル流 りゅう が生 しょう じることもある[1] 。
Mulder and Syvitski (1995)[注釈 ちゅうしゃく 1] では、ハイパーピクナル流 りゅう が発生 はっせい するための最低限 さいていげん の堆積 たいせき 物 ぶつ 濃度 のうど (臨界 りんかい 堆積 たいせき 物 ぶつ 濃度 のうど )は 36 - 42 kg /cm^3 であるとされた。対流 たいりゅう 不安定 ふあんてい による二 に 次 じ 的 てき なハイパーピクナル流 りゅう の発生 はっせい を加味 かみ した Parsons et al . (2001)[注釈 ちゅうしゃく 2] では、臨界 りんかい 堆積 たいせき 物 ぶつ 濃度 のうど はMulder and Syvitski (1995) の見積 みつ もりを大 おお きく下回 したまわ る1 kg/cm^3とされている[1] 。
流 なが れ込 こ んだハイパーピクナル流 りゅう は、懸 かか 濁 にご 粒子 りゅうし が沈降 ちんこう するにつれて、流 なが れを生 う み出 だ している淡水 たんすい と周囲 しゅうい の海水 かいすい との密度 みつど 差 さ が失 うしな われ、やがて逆転 ぎゃくてん する。すなわち、粒子 りゅうし を失 うしな って密度 みつど の小 ちい さくなった淡水 たんすい が浮力 ふりょく を得 え て、海水 かいすい 中 ちゅう を浮揚 ふよう するのである。こうしてハイパーピクナル流 りゅう は終 お わりを迎 むか える[1] 。
ハイパーピクナル流 りゅう は準 じゅん 定常 ていじょう 的 てき な流 なが れであり、数日 すうじつ から数 すう 週間 しゅうかん もの間 あいだ 持続 じぞく すると推定 すいてい されている。流量 りゅうりょう 変化 へんか はサージ型 がた 混 こん 濁流 だくりゅう と比 くら べ穏 おだ やかで、徐々 じょじょ に増大 ぞうだい した後 のち に1回 かい あるいは複数 ふくすう 解 かい のピークを迎 むか えて徐々 じょじょ に減衰 げんすい する。また、流 なが れている間 あいだ に規則 きそく 的 てき な流速 りゅうそく の変化 へんか が生 しょう じるが、これはハイパーピクナル流 りゅう とそれ以外 いがい の水 みず 塊 かたまり との間 あいだ で密度 みつど 境界 きょうかい 層 そう が生 しょう じ、内部 ないぶ 流 りゅう が発生 はっせい するためである[1] 。
内部 ないぶ 流 りゅう の発生 はっせい により、ハイパーピクナル流 りゅう に起因 きいん する堆積 たいせき 層 そう は塊状 かいじょう 部 ぶ と葉 は 理 り 部 ぶ (平行 へいこう 葉 は 理 り とクライミングリップル葉 は 理 り )の相互 そうご 層 そう や、砂 すな と粘土 ねんど (シルト)の相互 そうご 層 そう が見 み られると推測 すいそく される[1] 。ある単 たん 層 そう についてハイパーピクナル流 りゅう 堆積 たいせき 物 ぶつ (ハイパーピクナイト)を認 みと めるための有力 ゆうりょく な特徴 とくちょう には以下 いか の5つがあるが、これらが必要 ひつよう 十 じゅう 分 ふん 条件 じょうけん であるわけではない[1] 。
逆 ぎゃく 級 きゅう 化 か で始 はじ まって正 せい 級 きゅう 化 か で終 お わる。
内部 ないぶ 侵食 しんしょく 面 めん を含 ふく む。
細 ほそ 粒 つぶ 部 ぶ と粗 ほぼ 粒 つぶ 部 ぶ 、ないしトラクション構造 こうぞう と塊状 かいじょう 部 ぶ の互層をなしている。
層 そう が沖 おき で急激 きゅうげき に薄 うす くなる。
陸上 りくじょう に起源 きげん をもつ植物 しょくぶつ 片 へん を含 ふく む。
ハイパーピクナル流 りゅう は流 りゅう 化 か するにつれて先端 せんたん 部 ぶ が減速 げんそく し、先端 せんたん に比 くら べて流速 りゅうそく の大 おお きい後部 こうぶ が追 お い付 つ くため、追 お いつかれたハイパーピクナル流 りゅう によるハイパーピクナイトは級 きゅう 化 か 層 そう しか持 も たないと考 かんが えられている。この場合 ばあい 、サージ型 がた タービダイト とハイパーピクナイトは区別 くべつ ができないことになる[2] 。
Mulder and Syvitski (1995) の推定 すいてい では世界 せかい の147河川 かせん のうち81の河川 かせん において100年 ねん に1回 かい 、Parsons et al . (2001) の推定 すいてい では61の河川 かせん において毎年 まいとし 、ハイパーピクナル流 りゅう が発生 はっせい している。実際 じっさい に、アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく カリフォルニア州 しゅう を流 なが れるサリナス川 かわ (英語 えいご 版 ばん ) では12年間 ねんかん に4回 かい のハイパーピクナル流 りゅう が確認 かくにん されている[1] 。
南極大陸 なんきょくたいりく のカンブリア系 けい のスターショット層 そう では、波浪 はろう 作用 さよう を示 しめ す構造 こうぞう の他 ほか に級 きゅう 化 か 層 そう 理 り が確認 かくにん されており、傾斜 けいしゃ の緩 ゆる い陸棚 りくだな で発生 はっせい した混 こん 濁流 だくりゅう のメカニズムとしてハイパーピクナル流 りゅう が候補 こうほ に挙 あ がっている[1] 。日本 にっぽん でも新潟 にいがた 県 けん ・富山 とやま 県 けん [2] や千葉 ちば 県 けん [3] からハイパーピクナイトが報告 ほうこく されている。
^ Mulder, T; Syvitski, J.P.M. (1995). “Turbidity currents generated at river mouths during exceptional discharges to the world oceans”. Journal of Geology 103 : 285-299.
^ Parsons, J.D.; Bush, J.W.M.; Syvitski, J.P.M. (2001). “Hyperpycnal plume formation from riverine outflows with small sediment concentrations”. Sedimentology 48 : 465-478. doi :10.1046/j.1365-3091.2001.00384.x .