ハエ取とり紙し

粘着ねんちゃく式しき蝿取はいとり紙しの広告こうこく（1898年ねん頃ごろ・アメリカ）。

蝿取はいとり紙し（はえとりがみ、はえとりし。表記ひょうき揺ゆれ：蝿はえ取と紙し、ハエ取とり紙し、ほか。読よみの転訛てんか形かたち：はいとりがみ、はいとりし。歴史れきし的てき仮名遣かなづかい：はへとりがみ、はへとりし）とは、蝿はえ（はえ、ハエ）を駆除くじょするために用もちいられる紙し。

予あらかじめ殺ころせ蝿はえ効果こうかのある薬剤やくざいを染しみ込こませた紙かみを水みずに浸ひたし、薬物やくぶつが滲出しんしゅつした水みずを舐なめた蝿はえを殺ころす浸水しんすい式しきのものと、紙かみなどシート状じょうのものに誘引ゆういん剤ざいを含ふくむ粘着ねんちゃく性せい物質ぶっしつを塗ぬり、そこにとまった蝿はえを物理ぶつり的てきに捕とらえる粘着ねんちゃく式しきのものとがある。

英語えいごでは "flypaper（日本語にほんご音おと写うつし例れい：フライペーパー）"、中国ちゅうごく語ごでは「捕と蝇纸（繁体字はんたいじ：捕と蠅はえ紙し）」のほか、様々さまざまな名称めいしょうで呼よばれる。また特とくに吊つり下さげタイプの粘着ねんちゃく式しき蝿はえ取と紙しは、日本にっぽんではその形状けいじょうや商品しょうひん名めいから蝿取はいとりリボンやリボン蝿取はいとりとも呼よばれ、英語えいごでも fly ribbon（日本語にほんご音おん写うつし例れい：フライ リボン）とも言いう。なお漢字かんじ「蝿はえ」（拡張かくちょう新しん字体じたい）には旧きゅう字体じたい「蠅はえ」があるため、全すべての熟字じゅくじは2種類しゅるいある。

概要がいよう

浸水しんすい式しきの蝿取はいとり紙し（昭和しょうわ前期ぜんき）。

浸水しんすい式しきの蝿取はいとり紙し専用せんようの皿さら（イギリス・19世紀せいき末まつ）。蝿はえの絵柄えがらと吊つり紐ひも用ようの穴あながある。

平ひら紙型しけいの粘着ねんちゃく式しき蝿取はいとりシート／数すう多おおくの飛翔ひしょう性せい昆虫こんちゅうを“一網打尽いちもうだじん”にした状態じょうたい。

吊つり下さげタイプの粘着ねんちゃく式しき蝿取はいとり紙しは20世紀せいき初頭しょとうにドイツで開発かいはつされ大正たいしょう時代じだいには日本にっぽんでも輸入ゆにゅう販売はんばいされるようになった。

吊つり下さげタイプの粘着ねんちゃく式しき蝿取はいとり紙し。

粘着ねんちゃく式しきのものは主おもにロジンと油あぶら（ひまし油ゆなど）などを原料げんりょうとする粘着ねんちゃく性せいの強つよい粘性ねんせいを持もった液体えきたいが塗布とふされており、これに接触せっしょくした昆虫こんちゅうなど小しょう動物どうぶつがベタベタ粘ねばりつくことで捕とらえられる。これは所謂いわゆる接着せっちゃくではないため、揮発きはつ性せいの高たかい溶剤ようざいが乾かわくことで固化こかしないようになっており、概おおむね塗布とふされた液体えきたいの面めんが出でている限かぎりは対象たいしょうを捉とらえることが出来できるが、大抵たいていは（大量たいりょうの虫むしが貼はり付ついている状態じょうたいは見みた目めの上じょうでも衛生えいせい的てきに見みえないなどの事情じじょうで）ある程度ていどの期間きかんが経たったら新あたらしいものに交換こうかんされる。 その多おおくでは1つのパッケージに何なん本ほんかがセットになっており、数箇所すうかしょに同時どうじに設置せっちしたり、定期ていき的てきに交換こうかんされる替かえとして利用りようされる。このタイプは、高たかさ8センチメートル程度ていどの紙かみ筒とうに入はいったテープを引ひき出だして使用しようする。テープ先端せんたんには画鋲がびょうが取とり付つけられている製品せいひんもあり、これを天井てんじょうや鴨居かもいなどに刺さして固定こていする。近年きんねんでは、シートタイプやスティックタイプも散見さんけんされるようになった。古典こてん的てきな製品せいひんではあるが、基本きほん的てきに殺虫さっちゅう剤ざい成分せいぶんを含ふくまないため、食品しょくひんを取とり扱あつかう事業じぎょう所しょなどでよく使つかわれる。日本にっぽんでは製造せいぞう会社かいしゃの商品しょうひん名めいである「リボンハイトリ」や「ハエ取とりリボン」がそのまま通称つうしょうとして用もちいられることも多おおかった。

一方いっぽう殺虫さっちゅう効果こうかのある薬剤やくざいを染しみ込こませた浸水しんすい式しきの蝿取はいとり紙しにはかつてヒ素ひそが使つかわれたことがあり、、水みずに浸ひたすと人体じんたいにも有害ゆうがいなヒ素ひそを抽出ちゅうしゅつできることから、フレデリック・セドンやフローレンス・メーブリックといった毒殺どくさつ者しゃが使用しようしたことでも知しられている 。

注意ちゅうい点てん

粘着ねんちゃく式しきのものは強つよい粘着ねんちゃく力りょくを持もつため、人ひとや動物どうぶつが誤あやまって触ふれると容易よういに取とれなくなるので注意ちゅういが必要ひつようである。また、風ふうが吹ふき抜ぬける場所ばしょでは埃ほこりや葉は屑くずなどのゴミが付着ふちゃくして機能きのうが早期そうきに低下ていかすることにも留意りゅういしなければならない。

応用おうよう

設置せっち場所ばしょを通とおる小しょう動物どうぶつをすべて捕獲ほかくするトラップであるために、動物どうぶつ相しょうの調査ちょうさに使つかえる。生態せいたい学がく的てき研究けんきゅうに利用りようされる場合ばあいがある。例たとえば目的もくてきの場所ばしょにぶら下さげると、そこを通とおる昆虫こんちゅうをその高たかさ別べつに採集さいしゅうできる。池いけの水面すいめんに設置せっちしたところ、アメンボが意外いがいに水面すいめんより少すこし上じょうで捕つかまるのが多おおかった、などという例れいもある。

主要しゅようメーカー

カモ井加工紙かもいかこうし株式会社かぶしきがいしゃは、1923年ねん（大正たいしょう12年ねん）創業そうぎょうの日本にっぽん企業きぎょうで、日本にっぽん初はつの蝿取はいとり紙しとして平たいら紙しタイプを創業そうぎょう時じから製造せいぞう販売はんばいしている。1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）には吊つり下さげリボン型がたを開発かいはつ・発売はつばいしている。

その他たメーカーは、小林こばやし製薬せいやく（桐きり灰はい ハエ取とりリボン）、シマダ商事しょうじ（SHIMADA ハエ取とりリボン）等ひとしがある。

季語きご

季語きご・季題きだいとしての蝿はえ取と紙し/蝿取はいとり紙し/蠅はえ取と紙し/蠅はえ取とり紙し（はえとりがみ、歴史れきし的てき仮名遣かなづかい：はへとりがみ、別べつの読よみ：はいとりがみ）は、夏なつの季語きご（三夏みかの季語きご）である。蝿はえ/蠅はえ（はえ、歴史れきし的てき仮名遣かなづかい：はへ）を親おや季語きごとする数かずある子こ季語きごの一ひとつ。

転義てんぎ

税制ぜいせいにおける「ハエ取とり紙しの理論りろん」とは、蝿取はいとり紙しの持もつ「最初さいしょに触ふれた場所ばしょにくっついて離はなれない」という特徴とくちょうを、「地方ちほう政府せいふに入はいった補助ほじょ金きんが、住民じゅうみんに還元かんげんされることもなく、財政ざいせい支出ししゅつという形かたちで最初さいしょに入はいった地方ちほう政府せいふという場所ばしょに張はり付ついて離はなれない」ことや「税ぜい負担ふたんというものが直接ちょくせつ課税かぜい対象たいしょうから少すこしも離はなれない考かんがえられない」ことに譬たとえることにより、地方ちほう政府せいふの構造こうぞう的てき問題もんだいを揶揄やゆして指摘してきする理論りろんである。

関連かんれん作品さくひん

アメリカ映画えいが『フライペーパー! 史上しじょう最低さいていの銀行ぎんこう強盗ごうとう』（原題げんだい：Flypaper ）は「フライペーパー（蝿取はいとり紙し）」を題名だいめいとする。

関連かんれん項目こうもく

• 蝿取はいとり
  • 蝿叩はいたたき、蝿取はいとり器き
  • 蝿取草はえとりぐさ（ハエトリグサ）
• 蝿はえ払はらい - 蝿はえや蚊かを払はらう道具どうぐ。ただし、他たに多数たすうの語義ごぎあり。

外部がいぶリンク

• カモ井加工紙かもいかこうしのホームページ
• 桐きり灰はい化学かがくのホームページ