ハンス・ベルガー

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曖昧さ回避 「ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー」とは別人べつじんです。
ハンス・ベルガー
1920年ねん頃ごろ
生誕せいたん (1873-05-21) 1873年ねん5月21日にち
ドイツの旗 ドイツ帝国ていこく ノイゼス
死没しぼつ (1941-06-01) 1941年ねん6月1日にち（68歳さい没ぼつ）
ナチス・ドイツの旗 ドイツ国こく イェーナ
自殺じさつ
国籍こくせき ドイツの旗 ドイツ
出身しゅっしん校こう イェーナ大学だいがく
主おもな業績ぎょうせき 脳波のうは
プロジェクト:人物じんぶつ伝でん
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ハンス・ベルガー（ドイツ語ご: Hans Berger, 1873年ねん5月21日にち - 1941年ねん6月1日にち）は、ドイツの神経しんけい科学かがく者しゃ、精神せいしん科か医い。

生涯しょうがい[編集へんしゅう]

テューリンゲン州しゅうコーブルク近郊きんこうのノイゼスに生うまれ、当初とうしょは天文学てんもんがくを志こころざしていた。1890年代ねんだいはじめにドイツ軍ぐんで働はたらいていた折おり、乗のっていた馬うまが堤防ていぼうを転ころげ落おち、騎き砲ほうの車輪しゃりんに轢ひき殺ころされそうになるという出来事できごとがあった。この時とき、彼かれの姉あね[1]ははるか離はなれた土地とちにいたにもかかわらずベルガーの危険きけんを感かんじ取とり、父ちちに頼たのんで電報でんぽうを打うたせた。この出来事できごとはベルガーを非常ひじょうに驚おどろかせ、心理しんり学がくへと転向てんこうするきっかけになった[2]。

ベルガーはイェーナ大学だいがくで医学いがくを学まなび、1897年ねんに博士はかせ号ごうを得えたのち、1900年ねんに同どう大学だいがくの精神せいしん・神経しんけい科か医院いいんの院長いんちょうであるオットー・ビンスヴァンガー (1852 - 1929) の助手じょしゅとして職しょくを得えた。そこで2人ふたりの高名こうみょうな科学かがく者しゃかつ医師いし、オスカー・フォクト (1870 - 1959) とコルビニアン・ブロードマン (1868 - 1918) の脳のう機能きのう局在きょくざいに関かんする共同きょうどう研究けんきゅうに参加さんかした。1906年ねんに教授きょうじゅとなり、1919年ねんにビンスヴァンガーの後任こうにんとなった。のちイェーナ大学だいがくの学長がくちょうを務つとめ (1927 - 1928)、最終さいしゅう的てきには、1938年ねんに心理しんり学がくの名誉めいよ教授きょうじゅとなったが、公的こうてき・私的してき生活せいかつが第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんとナチズムによって妨さまたげられたことにより、1941年ねん6月がつ1日にちに縊首自殺じさつした。

研究けんきゅう[編集へんしゅう]

体験たいけんしたテレパシー現象げんしょうの衝撃しょうげきと脳神経のうしんけい機能きのうへの興味きょうみから、彼かれは神経しんけい学がくにおいて多おおくの面めんで研究けんきゅう意欲いよくを示しめしたが、中なかでも脳のうにおける循環じゅんかん器き、神経しんけい生理学せいりがく、脳のう温度おんどの研究けんきゅうを行おこなった[3]。 しかし医学いがくと神経しんけい学がくにおける彼かれの最大さいだいの貢献こうけんは、人間にんげんの脳のうにおける電気でんき活動かつどうを系統的けいとうてきに研究けんきゅうし、脳波のうは (EEG) 研究けんきゅうを発展はってんさせたことである。これはイギリスでリチャード・カートン (1842 - 1926) が動物どうぶつで行おこなった草分くさわけ的てき研究けんきゅうの後のちを継ついたものである。1924年ねんにベルガーは人間にんげんでは初はじめてとなる脳波のうは記録きろくを行おこない、これを Electroencephalogram（脳波のうは）と名付なづけ1929年ねんに発表はっぴょうした[4]。また彼かれはこの脳波のうはを用もちい、健常けんじょう者しゃや患者かんじゃの脳のうから得えられる、様々さまざまなパターンの波形はけいやリズムを初はじめて記述きじゅつした。具体ぐたい的てきには、ベルガー波はとしても知しられるアルファ波は (8-12 Hzへるつ) の存在そんざい、および被験者ひけんしゃが開眼かいがんした時ときにそれが（より速はやいベータ波はによって）抑制よくせいされること、いわゆる「アルファ・ブロケード」を指摘してきした。彼かれはまた、てんかんのような脳のう障害しょうがいにおける脳波のうはの変容へんようの性質せいしつについて初はじめて記述きじゅつした。

彼かれの手法しゅほうは、前頭まえがしらと後こう頭あたまに各かく一いち箇所かしょずつ、患者かんじゃの頭皮とうひ下したへ銀ぎん製せいのワイヤを挿入そうにゅうするというものだった。彼かれは後のちに、銀箔ぎんぱくを施ほどこした電極でんきょくをゴムバンドで頭部とうぶへ装着そうちゃくさせる手法しゅほうを用もちいた。記録きろく装置そうちとしては、彼かれはまずガブリエル・リップマンの毛細管もうさいかん電位でんい計けいを用もちいたが、満足まんぞくな結果けっかを得えられなかった。次ついで彼かれは単線たんせん検けん流りゅう計けいを用もちい、後のちにシーメンス製せいの二に重じゅうコイル記録きろく検けん流りゅう計けいを用もちいた。これによって彼かれは1万まん分ぶんの1ボルトという微小びしょう電圧でんあつを記録きろくできるようになった。最長さいちょう3秒びょうにわたる波形なみかた出力しゅつりょくは助手じょしゅによって写真しゃしん撮影さつえいされた。

ベルガーによる初期しょきの脳波のうは記録きろく
1935年ねんの時点じてんで、ベルガーは同僚どうりょうからドイツの精神せいしん科か医いとして高たかく評価ひょうかされていたとは言いえず、どちらかというと変人へんじん扱あつかいされていた。私わたしの印象いんしょうとしては、彼かれは謙虚けんきょかつ威厳いげんがあり、ユーモアを解かいし、世間せけんから認みとめられない時ときも、後のちに名声めいせいを獲得かくとくした時ときも平静へいせいさを失しつなわなかった。しかし彼かれには一ひとつ致命ちめい的てきな欠点けってんがあった。彼かれは自みずからの手法しゅほうの技術ぎじゅつ的てき・身体しんたい的てきな基盤きばんについて全まったく知識ちしきを欠かいていた。彼かれは力学りきがくや電気でんき学がくに関かんしては何なにも分わかっていなかった。
—W.G. ウォルター、『生いきている脳のう』懸かか田た克かつ躬・内うち薗その耕こう二に訳わけ、岩波書店いわなみしょてん、1959年ねん

ベルガーは後のちに国際こくさい的てきな評価ひょうかを得えるようになった。彼かれの実験じっけん結果けっかはエドガー・エイドリアンらイギリスとアメリカの科学かがく者しゃ達たちによって確認かくにんされた。ベルガーは 1937 年ねんに国際こくさい会議かいぎに招まねかれ研究けんきゅう発表はっぴょうを行おこない、そこで彼かれの発見はっけんの重要じゅうよう性せいと革新かくしん性せいが顕彰けんしょうされた。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Tudor, Mario; Tudor, Lorainne; Tudor, Katarina Ivana (2005), “[Hans Berger (1873-1941)--the history of electroencephalography]”, Acta medica Croatica : casopis Hravatske akademije medicinskih znanosti 59 (4): 307–13, PMID 16334737 
  • Gerhard, U-J; Schönberg, A; Blanz, B (2005), “["If Berger had survived the second world war - he certainly would have been a candidate for the Nobel Prize". Hans Berger and the legend of the Nobel Prize]”, Fortschritte der Neurologie-Psychiatrie 73 (3): 156–60, 2005 Mar, doi:10.1055/s-2004-830086, PMID 15747225 
  • Haas, L F (2003), “Hans Berger (1873-1941), Richard Caton (1842-1926), and electroencephalography.”, J. Neurol. Neurosurg. Psychiatr. 74 (1): 9, 2003 Jan, doi:10.1136/jnnp.74.1.9, PMID 12486257 
  • Karbowski, K (2002), “Hans Berger (1873-1941).”, J. Neurol. 249 (8): 1130–1, 2002 Aug, doi:10.1007/s00415-002-0872-4, PMID 12420722 
  • Millett, D (2001), “Hans Berger: from psychic energy to the EEG.”, Perspect. Biol. Med. 44 (4): 522–42, doi:10.1353/pbm.2001.0070, PMID 11600799 
  • Wiedemann, H R (1994), “Hans Berger (1873-1941).”, Eur. J. Pediatr. 153 (10): 705, 1994 Oct, PMID 7813523 
  • Walsa, R (1991), “[Hans Berger (1873-1941)]”, Orvosi hetilap 132 (42): 2327–30, 1991 Oct 20, PMID 1945370 
  • Wieczorek, V (1991), “[In memory of Hans Berger (1873-1941). Inventor of the human electroencephalogram]”, Der Nervenarzt 62 (8): 457–9, 1991 Aug, PMID 1944707 
  • Cortez, P; Crotez-Sărmăşanu, M L, “[Hans Berger (1873-1941)]”, Revista de medicină internă, neurologie, psihiatrie, neurochirurgie, dermato-venerologie. Neurologie, psihiatrie, neurochirurgie 21 (4): 304–5, PMID 799341 
  • Kolle, K (1970), “[40 years of electroencephalography (EEG). In memoriam Hans Berger (May 21, 1873-June 1, 1941)]”, Münchener medizinische Wochenschrift (1950) 112 (5): 712–3, 1970 Apr 10, PMID 4939408 
  • Klapetek, J (1969), “[Reminiscence of Hans Berger]”, Dtsch. Med. Wochenschr. 94 (41): 2123–6, 1969 Oct 10, PMID 4898295 
  • Gloor, P (1969), “The work of Hans Berger.”, Electroencephalography and clinical neurophysiology 27 (7): 649, 1969 Sep, doi:10.1016/0013-4694(69)91207-3, PMID 4187257 
  • Gloor, P (1969), “Hans Berger and the discovery of the electroencephalogram.”, Electroencephalography and clinical neurophysiology: Suppl 28:1–36, PMID 4188910 
  • Andreae, H (1967), “[To the great psychiatrist, Professor Hans Berger, an exemplary physician and genial researcher. To the 25th year of remembrance (1873-1941)]”, Deutsches medizinisches Journal 18 (3): 83–4, 1967 Feb 5, PMID 4876739 
  • Fischgold, H (1967), “[Hans Berger and his time]”, Beiträge zur Neurochirurgie 14: 7–11, PMID 4873369 
  • FISCHGOLD, H (1962), “[HANS BERGER AND HIS TIME.]”, Actualités neurophysiologiques 4: 197–221, PMID 14072351 
  • SCHULTE, W (1959), “[Hans Berger: a biography of the discoverer of the electroencephalogram.]”, Münchener medizinische Wochenschrift (1950) 101 (22): 977–80, 1959 May 29, PMID 13674375 

関連かんれん文献ぶんけん[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ マイケル・コーバリス著ちょ『意識いしきと無意識むいしきのあいだ―「ぼんやり」したとき脳のうで起おきていること―』鍛きたえ原はら多惠子たえこ訳やく、講談社こうだんしゃ、2015年ねん
  2. ^ Blakemore, Colin (1977), Mechanics of the mind, London: Cambridge University Press, pp. 49–51 
  3. ^ 宮内みやうち哲あきら「Hans Bergerの夢ゆめ — How did EEG become the EEG? —　その3」『臨床りんしょう神経しんけい生理学せいりがく』第だい44巻かん第だい3号ごう、日本にっぽん臨床りんしょう神経しんけい生理せいり学会がっかい、2017年ねん7月がつ1日にち、doi:10.11422/jscn.44.106。 
  4. ^ Berger, Hans (1929). “Über das Elektroenkephalogramm des Menschen.”. Archiv für Psychiatrie und Nervenkrankheiten 87: 527-570. 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]

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