ハードコア (科学かがく的てきリサーチプログラム)

ハードコア（Hard core）とは、(1)反証はんしょう不可能ふかのうな命題めいだいあるいは反証はんしょう可能かのうであるけれどもとりあえず反証はんしょうされないとみなされた命題めいだいであり、かつ、(2)ある理論りろん体系たいけいの指導原理しどうげんりに位置付いちづけられたものを言いう。

ハードコアの意義いぎ

ハードコアと理論りろん

人間にんげんがある仮説かせつを検証けんしょうしようとするとき、研究けんきゅう者しゃは自身じしんの思想しそう信条しんじょうによってある程度ていどの先入観せんにゅうかんを抱だいてそれに臨のぞむのが普通ふつうである。特とくに、心霊しんれい実験じっけんなどのオカルトにおいて、論者ろんしゃはあらかじめ肯定こうてい的てきな態度たいどか否定ひてい的てきな態度たいどのいずれかを取とることが多おおい。また、量子力学りょうしりきがくの解釈かいしゃくをめぐるアインシュタインとボーアらの論争ろんそうのように、自然しぜん科学かがくの分野ぶんやでも、研究けんきゅう者しゃが自身じしんの自然しぜん観かんや科学かがく観かんを前提ぜんていとして仮説かせつを組くみ立たてていくことがある。通常つうじょう、人間にんげんはこの前提ぜんていをなるべく変更へんこうしないように思考しこうする習性しゅうせいがある。

ハードコアと命令めいれい

すなわちハードコアは、理論りろんの構築こうちくの方針ほうしんとなり、論者ろんしゃはこの前提ぜんていを擁護ようごする方向ほうこうで思考しこうを重かさねていく。例たとえば、ある論者ろんしゃが「心霊しんれい現象げんしょうは存在そんざいしないものとせよ」という命題めいだいを自身じしんのハードコアとするならば、彼かれは目めの前まえで心霊しんれい現象げんしょうらしきものが起おきてもそれによってこのハードコアが反証はんしょうされたとは考かんがえず、「これは錯覚さっかくである」とか「これは手品てじなである」という補助ほじょ的てきな仮説かせつによって自身じしんの前提ぜんていを擁護ようごするだろう。ときとして、論者ろんしゃが自身じしんのハードコアの擁護ようごのためにアドホックな仮説かせつを持もち出だすことがあり、これは反証はんしょう主義しゅぎの立場たちばなどから非ひ科学かがく的てきな行為こういであると解ほぐされている。

ハードコアと反証はんしょう主義しゅぎ

反証はんしょう可能かのう性せいを科学かがくの特徴とくちょうのひとつとする反証はんしょう主義しゅぎとの関係かんけいが問題もんだいになる。この点てん、反証はんしょう可能かのう性せいは個々ここの命題めいだい全すべてに認みとめられる必要ひつようはなく、理論りろん全体ぜんたいが反証はんしょう可能かのう性せいを有ゆうしている（特とくに、アドホックな仮説かせつが存在そんざいしない）場合ばあいに限かぎっては反証はんしょう可能かのう性せいの要件ようけんを満みたしていると解ほぐされる。

参考さんこう文献ぶんけん

• 戸田とだ山さん 和久わぐ『科学かがく哲学てつがくの冒険ぼうけん―サイエンスの目的もくてきと方法ほうほうをさぐる』日本にっぽん放送ほうそう出版しゅっぱん協会きょうかい、2005年ねん
• 伊勢田いせだ 哲治てつじ『疑似ぎじ科学かがくと科学かがくの哲学てつがく』名古屋大学出版会なごやだいがくしゅっぱんかい、2002年ねん
• ドーキンス リチャード『神かみは妄想もうそうである』早川書房はやかわしょぼう、2007年ねん

関連かんれん項目こうもく

• パラダイム（科学かがく哲学てつがく）
• 確証かくしょうバイアス
• 固定こてい観念かんねん、先入観せんにゅうかん
• プログラム規定きてい説せつ（法学ほうがく）