トーマス・クーン

トーマス・クーン
Thomas Kuhn

生誕せいたん	(1922-07-18) 1922年ねん7月がつ18日にち アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく・オハイオ州しゅうシンシナティ市し
死没しぼつ	(1996-06-17) 1996年ねん6月17日にち（73歳さい没ぼつ） アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく・ケンブリッジ (マサチューセッツ州しゅう)
時代じだい	20世紀せいきの哲学てつがく
地域ちいき	西洋せいよう哲学てつがく
学派がくは	分析ぶんせき哲学てつがく、新しん科学かがく哲学てつがく
研究けんきゅう分野ぶんや	科学かがく史し、科学かがく哲学てつがく
主おもな概念がいねん	パラダイム、科学かがく革命かくめい、通約つうやく不可能ふかのう性せい、通常つうじょう科学かがく、異常いじょう科学かがく
影響えいきょうを受うけた人物じんぶつ イマヌエル・カント、アレクサンドル・コイレ、マイケル・ポランニー、ジョン・ヴァン・ヴレック、ガストン・バシュラール、ジャン・ピアジェ、バートランド・ラッセル、カール・ポパー、ノーウッド・ラッセル・ハンソンなど、その他た多数たすう
影響えいきょうを与あたえた人物じんぶつ ポール・ファイヤアーベント、ラカトシュ・イムレ、フィリップ・キッチャー、リチャード・ローティ、その他た後ごの科学かがく哲学てつがく全般ぜんぱん

トーマス・クーン

トーマス・サミュエル・クーン（Thomas Samuel Kuhn、1922年ねん7月がつ18日にち - 1996年ねん6月17日にち）は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの哲学てつがく者しゃ、科学かがく者しゃ。専せん門もんは科学かがく史し及および科学かがく哲学てつがく。邦訳ほうやく著作ちょさくにおける名前なまえの表記ひょうきはいずれも「トーマス・クーン」であるが、場合ばあいによって「トマス・クーン」と表記ひょうきされることもある。

経歴けいれき

米国べいこくオハイオ州しゅうシンシナティ市しのドイツ系けいユダヤ人じん（ユダヤ系けい）移民いみんの家庭かていに生うまれる（もともとの姓せいはCohenという）。

ハーバード大学だいがくで物理ぶつり学がくを専攻せんこうし、1943年ねんにBachelor of Science（B.S.）、1946年ねんにMaster of Science（M.S.）取得しゅとく。大学院だいがくいん在学ざいがく中ちゅうに科学かがく史し・科学かがく哲学てつがく研究けんきゅうに興味きょうみを持もつようになったが、博士はかせ号ごう（Doctor of Philosophy（Ph.D.））は1949年ねんにそのまま物理ぶつり学がくの研究けんきゅうで取得しゅとくした。ハーバード大学だいがく在学ざいがく中ちゅうは物理ぶつり学者がくしゃのジョン・ヴァン・ヴレックの指導しどうを受うけている。博士はかせ号ごうを取得しゅとくしたのち、カリフォルニア大学だいがくバークレー校こうの教授きょうじゅとなり、哲学てつがく部ぶ及および歴史れきし学部がくぶの両方りょうほうで、科学かがく史しと科学かがく哲学てつがくを教おしえた。1964年ねんからはプリンストン大学ぷりんすとんだいがくの教授きょうじゅ（科学かがく史し・科学かがく哲学てつがく）を務つとめ、1969年ねんから1970年ねんにはアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの科学かがく史し学会がっかい会長かいちょう、1979年ねんからはマサチュまさちゅーセッツ工科大学せっつこうかだいがくの教授きょうじゅも務つとめている。そして1994年ねん、肺癌はいがんと診断しんだんされ、1996年ねんに死亡しぼうした。

上述じょうじゅつに加くわえ、ハーバード大学だいがく（母校ぼこう）やボストン大学だいがくでも教鞭きょうべんを執とった経歴けいれきがある。

クーンの最もっとも有名ゆうめいな業績ぎょうせきは、1962年ねんに発表はっぴょうされた主著しゅちょ『科学かがく革命かくめいの構造こうぞう』で、科学かがくの歴史れきしがつねに累積るいせき的てきなものではなく、断続だんぞく的てきに革命かくめい的てき変化へんかすなわち「パラダイムシフト」が生しょうじると指摘してきしたことである。

しかし、ポパー、ラカトシュ、ファイアアーベントらはパラダイム概念がいねんに対たいして否定ひてい的てきで、クーンと彼かれらの間あいだにパラダイムをめぐる論争ろんそうが起おきた。特とくに、1965年ねん7月がつ13日にちに行おこなわれた「批判ひはんと知識ちしきの成長せいちょう」と題だいするシンポジウムにおいて、クーンは徹底的てっていてきに批判ひはんされた（後のちにこのシンポジウムは、「ポパー派はによるクーンの袋叩ふくろだたき」と評ひょうされている）。クーンが目指めざしたものは、科学かがくの研究けんきゅう現場げんばに内在ないざい的てきで堅実けんじつな科学かがく史し研究けんきゅうであり、彼かれらの論争ろんそうはすれ違ちがいの気配けはいが濃厚のうこうであった。

また、クーンのパラダイム概念がいねんは、科学かがく史し・科学かがく哲学てつがくだけではなく、社会しゃかい科学かがくや人文じんぶん科学かがく、果はてはビジネス本ほんにまで登場とうじょうするなど、広ひろく知しられるようになったが、多おおくの場合ばあい、クーン自身じしんが意図いとした限定げんてい的てきな内実ないじつからは外はずれている。こうした「流行りゅうこう」の要因よういんには、時代じだい（1960年代ねんだい）的てきなものもあるが、クーン自身じしんの記述きじゅつの曖昧あいまいさも指摘してきされている。曖昧あいまいさについての指摘してきを受うけたこと、概念がいねんの安易あんいな拡大かくだい利用りようを嫌きらったことから、クーンはのちに、パラダイム概念がいねんに加くわえ、より定義ていぎを明確めいかく化かした専門せんもん母型ぼけい（disciplinary matrix）という概念がいねんを発表はっぴょうし、『科学かがく革命かくめいの構造こうぞう』にも改版かいはんに際さいして加筆かひつしている。

クーンから影響えいきょうを受うけた有名ゆうめいな哲学てつがく者しゃには、ポスト分析ぶんせき哲学てつがくのリチャード・ローティなどがいる。

著書ちょしょ

• The Copernican Revolution: Planetary Astronomy in the Development of Western Thought, (Harvard University Press, 1957).

  常石つねいし敬一けいいち訳わけ『コペルニクス革命かくめい――科学かがく思想しそう史し序説じょせつ』（紀伊國屋きのくにや書店しょてん, 1976年ねん/講談社こうだんしゃ［講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ］, 1989年ねん）ISBN 4-06-158881-8

• The Structure of Scientific Revolutions, (University of Chicago Press, 1962).

  中山なかやま茂しげる訳わけ『科学かがく革命かくめいの構造こうぞう』（みすず書房しょぼう, 1971年ねん）ISBN 4-62-201667-2

  青木あおき薫かおる訳わけ『科学かがく革命かくめいの構造こうぞう 新版しんぱん』（イアン・ハッキング序説じょせつ、みすず書房しょぼう, 2023年ねん6月がつ）ISBN 978-4622096122

• The Essential Tension: Selected Studies in Scientific Tradition and Change, (University of Chicago Press, 1977).

  安孫子あびこ誠まこと也・佐野さの正博まさひろ訳やく『本質ほんしつ的てき緊張きんちょう――科学かがくにおける伝統でんとうと革新かくしん（1・2）』（みすず書房しょぼう, 1987年ねん-1992年ねん）ISBN 4-622-01691-5 ISBN 4-622-01692-3

  安孫子あびこ誠まこと也・佐野さの正博まさひろ訳やく『科学かがく革命かくめいにおける本質ほんしつ的てき緊張きんちょう――トーマス・クーン論ろん文集ぶんしゅう』（みすず書房しょぼう, 1998年ねん） ISBN 4-622-04963-5

• Black-Body Theory and the Quantum Discontinuity, 1894-1912, (Oxford University Press, 1978).
• The Road since Structure: Philosophical Essays, 1970-1993, with an Autobiographical Interview, ed., by James Conant and John Haugeland, (University of Chicago Press, 2002).

  佐々木ささき力つとむ訳わけ『構造こうぞう以来いらいの道みち――哲学てつがく論集ろんしゅう 1970-1993』（みすず書房しょぼう, 2008年ねん）ISBN 9784622073536

外部がいぶリンク

• Thomas Kuhn Online (News, Philosophy, Biography, Bibliography)
• Thomas Kuhn （英語えいご） - スタンフォード哲学てつがく百科ひゃっか事典じてん「トーマス・クーン」の項目こうもく。