バラ (行政ぎょうせい区画くかく)

バラ (英えい：borough) は、様々さまざまな国々くにぐにに存在そんざいする行政ぎょうせい区画くかくの一ひとつである。原則げんそくとして、バラ (borough) という用語ようごは自治じち制せいをもったタウンシップを指さすが、実際じっさいには公的こうてきにも幅広はばひろい意味いみを持もつ用語ようごとして使用しようされる。

概要がいよう[編集へんしゅう]

boroughはゲルマン祖語そごで砦とりでを意味いみする*burgzに由来ゆらいする語かたりで、イングランドのbury、スコットランドのburgh、ドイツのBurg、スカンディナビア地方ちほうのborg、オランダのburcht等ひとしの地名ちめい接尾せつび辞じの他ほかに、イタリア語ごのborgo、フランス語ふらんすごのbourg、スペイン語ごとポルトガル語ごのburgo等ひとしのインド・ヨーロッパ語族ごぞくの各かく言語げんごにもゲルマン語ごからの借用しゃくよう語ごとして使用しようが見みられる。たとえば、Canterbury（カンタベリー）、Strasbourg（ストラスブール）、Luxembourg（ルクセンブルク市し）、Edinburgh（エディンバラ）、Hamburg（ハンブルク）、Göteborg（イェーテボリ）、Санкт-Петербург（サンクトペテルブルク）等とう、実際じっさいに各地かくちの地名ちめい接尾せつび辞じにこれらの単語たんごが影響えいきょうしており、これらの都市としはいずれもかつて要塞ようさい都市としであったことを示しめしている。

中世ちゅうせいにおいては、バラは自治じちを認みとめられた政府せいふの置おかれたイングランドやスコットランドの入植にゅうしょく地ちを指さした。中世ちゅうせいのイングランドでは、議会ぎかいの選挙せんきょ区くとしても用もちいられた。boroughという単語たんごを使用しようした起源きげんは、おそらくアルフレッド大王だいおうのバラール・システム (the burghal system) だと考かんがえられる。大王だいおうはこれらの入植にゅうしょく地ちを維持いじするため、防衛ぼうえいを強化きょうかした拠点きょてんシステムをき上ずきあげ、ある程度ていどの自治じち権けんを住民じゅうみんに与あたえた。ノルマン征服せいふく以後いご、自治じちを認みとめられた町まちが増ふえるに従したがって、バラ (borough) の概念がいねんは「自治じちされた土地とち」を意味いみする用語ようごとして再さい使用しようされるようになった。

バラの概念がいねんは英語えいごを話はなす地域ちいき全体ぜんたいを通とおして、繰くり返かえし（また、しばしば異ことなった意味いみで）使用しようされた。多おおくの場合ばあい、バラは自身じしんの地方ちほう政府せいふを持もつ単一たんいつの町まちである。一方いっぽうで、（例たとえば、ロンドン、ニューヨーク、モントリオールのように）都市としの内部ないぶにおける下位かいの行政ぎょうせい区画くかくとして使用しようされることもある。そのような場合ばあい、バラには都市としの政府せいふから一部いちぶの権限けんげんが与あたえられるか、全まったく権限けんげんが与あたえられないか、のいずれかである。ロンドンがまだ市し全域ぜんいきを統治とうちする政府せいふを持もっていなかった頃ころは、ロンドン市民しみんにとって自治じちの基盤きばんとなったのはバラであった。アラスカでは、州しゅう内ないの地方ちほう一帯いったいを一ひとつのバラとして指定していしており、例たとえばノーススロープ・バラ^[1]はイギリスと同どう規模きぼの面積めんせきを有ゆうしている。

オーストラリアでは、バラ (borough) は町まちまたはその周辺しゅうへん地域ちいきを指定していする用語ようごとして使用しようされる。

行政ぎょうせい単位たんいとしてのバラはアイルランドやイギリス（特とくにイングランドおよび北きたアイルランド）で使用しようが見みられる。このほか、カナダのケベック州しゅうや以前いぜんのオンタリオ州しゅう、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの一部いちぶの州しゅう、イスラエルおよび以前いぜんのニュージーランドで使用しようされた。

語源ごげん[編集へんしゅう]

boroughという単語たんごは、「要塞ようさい化かされた地ち」を意味いみする古こ英語えいごの単語たんごburhから派生はせいして生うまれた。burhから派生はせいした他ほかの英単語えいたんごにはburyとbroughがある。これらは明あきらかに他たの印欧語いんおうご族ぞくと同系どうけいの語かたりであると考かんがえられており、たとえば、スコットランド語ごおよび中世ちゅうせい英語えいごのburgh、ドイツ語ごおよび古こ英語えいごのburg^[2]、スカンディナビア諸語しょごのborgが挙あげられる。他たに、ラテン語らてんごのparcusとギリシャ語ごのpyrgosも同どう語源ごげんとされる。

ヨーロッパにおける他たの多おおくの言語げんごにも、中世ちゅうせいの頃ころにゲルマン語ごから借入かりいれした同どう語源ごげんの単語たんごが存在そんざいする。アイルランド語ごにおけるbrog、ウェールズ語ごで壁かべや城壁じょうへきを意味いみするbwrおよびbwrc、フランス語ふらんすごにおけるbourg、カタルーニャ語ごにおけるburg^[3]、イタリア語ごにおけるborgo、スペイン語ごにおけるburgo^[4]等ひとしがその例れいである。

'burg'の要素ようそはしばしば丘おかや山やまを意味いみする'berg'と混同こんどうされる。そのため、ベルゲンにみられるような'berg'の要素ようそは砦とりでよりもむしろ丘おかに関連かんれんした語かたりとなっている。

他方たほうでは、fernaberga（「シダの丘おか」の意い）に由来ゆらいするFarnboroughの例れいのように、地名ちめいにおける'berg'の要素ようそがburgやboroughに結むすびつく場合ばあいもある。

発音はつおん[編集へんしゅう]

イギリスの多おおくの地域ちいきにおいて、"borough"は独立どくりつした単語たんごとして[ˈbʌrə] ( 音声おんせいファイル)と発音はつおんされる。また、地名ちめいの接尾せつび語ごとしては[brə]の発音はつおんもみられる。接尾せつび辞じとしては"-brough"と綴つづられることもある。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは、"borough"は[ˈbʌroʊ]または[ˈbʊəroʊ]と発音はつおんされる。地名ちめいの接尾せつび辞じ"-burg(h)"としては、[bɜːrɡ]と発音はつおんされる。

用例ようれい[編集へんしゅう]

イギリス[編集へんしゅう]

イングランド及およびウェールズ[編集へんしゅう]

北きたアイルランド[編集へんしゅう]

北きたアイルランドでは1973年ねんに地方ちほう政府せいふが再さい編成へんせいされた。この新しん制度せいどの下もとで、26の地方ちほう区分くぶん (district) が設置せっちされ、旧来きゅうらいのmunicipal borough（自治じちバラ）はその新あたらしい地方ちほう区分くぶんに組くみ込こまれる形かたちで存続そんぞくしている。

スコットランド[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「バラ (スコットランドの行政ぎょうせい区く)」を参照さんしょう

カナダ[編集へんしゅう]

ケベック州しゅうにおけるboroughはフランス語ふらんすごのArrondissement（アロンディスマン）に対応たいおうする英語えいごの訳語やくごとして一般いっぱん的てきに用もちいられる。州しゅう内ないの8つの自治体じちたいにおいてバラが定さだめられている。詳細しょうさいはケベック州しゅうの地方ちほう行政ぎょうせい区くを参照さんしょう。

また、かつてはオンタリオ州しゅうメトロポリタントロントでも、スカボロ、ヨーク、ノースヨーク、エトビコ等ひとし、トロント市し郊外こうがいにある自治体じちたいが市しへの昇格しょうかくを目指めざした合併がっぺい計画けいかくの中なかで自みずからを指さす語かたりとして用もちいられていた。しかし、結局けっきょくこれらの地域ちいきは独立どくりつ都市としとしての合併がっぺいを断念だんねんしてトロント市しと合併がっぺいすることとなり、1998年ねん1月がつ1日にちに合併がっぺいしたバラ・オブ・イーストヨークを最後さいごにバラは廃止はいしされた。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「バラ (アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく)」を参照さんしょう

メキシコ[編集へんしゅう]

メキシコでは、メキシコシティ内うちの16の行政ぎょうせい区く(delegación)が英語えいごでboroughと訳やくされる。ただし、2016年ねんにメキシコシティが連邦れんぽう区くでなくなり、独立どくりつした州しゅうとして扱あつかわれるようになったことにともない、従来じゅうらいの16区くは他た州しゅうの市しに相当そうとうする管轄かんかつ区域くいき（demarcación territorial）に格上かくあげされる予定よていである^[5]。

メキシコの一部いちぶの州しゅうにある自治体じちたいでは、郡ぐん(municipio)の下したに区く(delegación)などの下位かい行政ぎょうせい区分くぶんが設もうけられていることがあり（バハ・カリフォルニア州しゅうなど）、これも英語えいごではboroughと呼よばれる。

オーストラリア[編集へんしゅう]

オーストラリアにおいて、"borough"の用語ようごは地方ちほう政府せいふの行政ぎょうせい区画くかくとして時折ときおり使用しようされる。かつては豪州ごうしゅう内ないに複数ふくすうあったバラも、現在げんざいはビクトリア州しゅうにあるクイーンズクリフ・バラの一ひとつのみである。

アイルランド[編集へんしゅう]

ニュージーランド[編集へんしゅう]

イスラエル[編集へんしゅう]

オランダ[編集へんしゅう]

オランダの大都市だいとしは、しばしば複数ふくすうのBoroughまたはStadsdeelに細分さいぶんされる。

脚注きゃくちゅう・出典しゅってん[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

^ 日本語にほんごでは通常つうじょう、アラスカのバラ (borough) はすべて「郡ぐん」と訳やくされる。
^ The American Heritage Dictionary of the English Language: Fourth Edition (2000)
^ 実際じっさいに、カタルーニャ地方ちほうにはBurgという名なの町まちが存在そんざいする。
^ Burgos（ブルゴス）の地名ちめいの由来ゆらいである。
^ 『メキシコ政治せいじ情勢じょうせい』在ざいメキシコ日本国にっぽんこく大使館たいしかん、2016年ねん1月がつ。