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バルブタイミング

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

バルブタイミング (valve timing) とは、レシプロエンジン吸入きゅうにゅう排気はいきおこなうためのバルブ開閉かいへい時期じきあらわ言葉ことばである。

ほとんどのエンジンでは、バルブタイミングはクランクシャフト角度かくどおよびピストンシリンダーうちでの位置いち関連付かんれんづけられ、決定けっていされている。そのため、ピストンのうえてんおよびしたてん開閉かいへいタイミングのひとつの基準きじゅんとなる。

この項目こうもくでは4ストロークエンジンにおけるバルブタイミングのほか、2ストロークエンジンにおけるポートタイミング (port timing) もあわせて記述きじゅつする。

概要がいよう

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直進ちょくしん運動うんどう回転かいてん運動うんどう変換へんかんするレシプロエンジンでは、混合こんごうちょく場合ばあいには空気くうき)をみ、圧縮あっしゅくし、燃焼ねんしょうさせ、排気はいきするという過程かていかえす。このとき、燃焼ねんしょうしつうち外界がいかいへだてるための機構きこうがバルブである。一般いっぱんてきな4ストロークエンジンと、ほとんどのユニフロー掃気ディーゼルエンジン排気はいきバルブにはポペットバルブもちいられている。

  1. 吸入きゅうにゅうには吸入きゅうにゅうするためのバルブをひら
  2. 圧縮あっしゅく燃焼ねんしょうには気密きみつするため、すべてのバルブをじる
  3. 排気はいきには排気はいきするためのバルブをひら

上記じょうきがバルブのおも役目やくめである。一般いっぱんてきな4ストロークエンジンの場合ばあい、クランクシャフトの1/2の回転かいてんすうにて回転かいてんするカムシャフト存在そんざいし、バルブはこのカムによって駆動くどうされる。

吸入きゅうにゅう効率こうりつ排気はいき効率こうりつたかめ、混合こんごう燃焼ねんしょうをスムーズにおこなわせるためには、バルブタイミングを回転かいてんすう負荷ふかおうじてえる必要ひつようがあり、これを実現じつげんしたのが可変かへんバルブ機構きこうである。この機構きこうには、バルブタイミングを段階だんかいてきえるもの、連続れんぞくてきえるもの、さらにはバルブのリフトりょう段階だんかいてきえるもの、連続れんぞくてきえるもの、以上いじょう複数ふくすうわせたものなど、さまざまなバリエーションが提案ていあんされている。

4ストロークエンジンのバルブタイミング

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4ストロークエンジンのバルブタイミング
あか排気はいきバルブひらきべん
あお吸気きゅうきバルブひらきべん
くろバルブオーバーラップ
をそれぞれしめしている

4ストロークエンジンは1かいのサイクルをクランクシャフトが2回転かいてん(720°)するあいだおこなう。そのため、バルブタイミングはIOからスタートして2回転かいてんするように必要ひつようがあり、にはやや複雑ふくざつ解釈かいしゃくもとめられる。

4つのバルブタイミングパラメータ

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  1. IO (Intake Valve Open) — 吸気きゅうきバルブ開放かいほう — このタイミングからシリンダーない混合こんごう吸入きゅうにゅうされはじめ、吸入きゅうにゅう行程こうていがスタートする。うえてんすこ手前てまえ(BTDC)からひらくことで、排気はいきバルブと同時どうじひらいているオーバーラップ時間じかんつくし、吸気きゅうき効率こうりつたかめる効果こうか発揮はっきする。
  2. IC (Intake Valve Close) — 吸気きゅうきバルブ閉鎖へいさ — このタイミングで吸入きゅうにゅう行程こうてい終了しゅうりょうする。このICをて1回転かいてんうえてん圧縮あっしゅくじょうてん)に到達とうたつするまでの区間くかん圧縮あっしゅく行程こうていとなる。したてんぎた位置いち(ABDC)までバルブをけているのは、吸気きゅうき自体じたい慣性かんせいりょくもちいてさら充填じゅうてん効率こうりつたかめるためである。
  3. 点火てんかから膨張ぼうちょう行程こうていへ — ICから1回転かいてんうえてん圧縮あっしゅくじょうてん)に到達とうたつする直前ちょくぜん(BTDC)で点火てんかプラグによる点火てんかおこなわれ、つぎのEOまでの区間くかん膨張ぼうちょう行程こうていとなる。
  4. EO (Exhaust Valve Open) — 排気はいきバルブ開放かいほう膨張ぼうちょう行程こうてい中途ちゅうとにあるこのタイミングから排気はいきバルブがひらき、排気はいき行程こうていがスタートする。実際じっさいにはしたてんすこ手前てまえ(BBDC)からひらはじめ、膨張ぼうちょう圧力あつりょく利用りようして排気はいきガスを強制きょうせいてき排出はいしゅつさせる効果こうか利用りようする。
  5. EC (Exhaust Valve Close) — 排気はいきバルブ閉鎖へいさ — このタイミングで排気はいきバルブがじて排気はいき行程こうてい終了しゅうりょうする。実際じっさいにはうえてん排気はいきじょうてん)のすこ(ATDC)でじるうえに、吸気きゅうきバルブの開放かいほう(IO)が排気はいきじょうてんすこ手前てまえ(BTDC)からはじまるため、排気はいき行程こうてい吸気きゅうき行程こうてい同時どうじおこなわれる区間くかん存在そんざいすることになる。これが後述こうじゅつオーバーラップである。

バルブタイミングれい

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エンジン種別しゅべつ 吸気きゅうきひらけ(IO) 吸気きゅうき閉(IC) 排気はいきひらけ(EO) 排気はいき閉(EC)
自然しぜん吸気きゅうきガソリンエンジン 0–30° BTDC 30–50° ABDC 3–60° BBDC 10–30° ATDC
ターボディーゼルエンジン 50–80° BTDC 30–50° ABDC 30–60° BBDC 40–85° ATDC

バルブオーバーラップ

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くわしくはバルブオーバーラップ参照さんしょう

シリンダーが排気はいき行程こうていから吸気きゅうき行程こうてい移行いこうするさいに、排気はいきバルブ閉鎖へいさまえ吸気きゅうきバルブ開放かいほうはじまることで、吸排気はいきバルブが同時どうじひら混合こんごう流入りゅうにゅう排気はいきガスの流出りゅうしゅつ同時どうじきる区間くかん発生はっせいする。これがバルブオーバーラップとばれるものである。排気はいきガスが排気はいきポート排出はいしゅつされるさいあつ排気はいきパルス)のちから利用りようして、混合こんごうをシリンダーないんで充填じゅうてん効率こうりつすために、このような区間くかんもうけられている。

一般いっぱんてき排気はいきガスのちからきゅう回転かいてんさせて強制きょうせいてき混合こんごうをシリンダーないむエンジンでは、きゅうあつ混合こんごう排気はいきポートへされてしまわないように、バルブオーバーラップはややみじかめになっている。ぎゃくきゅう圧力あつりょく利用りよう出来できない自然しぜん吸気きゅうきエンジンでは、排気はいきパルスのちから最大限さいだいげん利用りようするため、バルブオーバーラップはおおきめにられることがおおい。

作用さようかく・リフトりょうおおきいハイカム使用しようすることこう回転かいてんでも吸気きゅうきりょう確保かくほすることこう出力しゅつりょくられる。しかし作用さようかく。リフトりょうおおきくなることで結果けっかてきにバルブオーバーラップ領域りょういき拡大かくだいされるため、アイドリング始動しどう発進はっしん困難こんなんけい負荷ふか燃焼ねんしょう不安定ふあんていになるなどのデメリットも発生はっせいする。

2ストロークエンジンのポートタイミング

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排気はいきデバイスたない2ストロークエンジンのポートタイミング
あか排気はいきポート開放かいほう
あお吸気きゅうきポート開放かいほう
くろ掃気ポート開放かいほうおよび掃気区間くかん
をそれぞれしめしている

2ストロークエンジンはクランクシャフトが1回転かいてん(360°)するあいだに1かいのサイクルが完了かんりょうするため、ポートタイミングも4ストロークのように2回転かいてんいかける必要ひつようはなく、単純たんじゅんに1回転かいてんればよい。

なお2ストロークエンジンでは、ピストンの上下じょうげによってシリンダー内壁ないへきもうけられた掃気・排気はいきポートが開閉かいへいされる構造こうぞうじょう、ポートタイミングではうえてんしたてんむすんだ中心ちゅうしんせん沿って、開閉かいへいタイミングがかなら左右さゆう対称たいしょうとなって図示ずしされることが特徴とくちょうとしてげられる。また、掃気によってシリンダーない排気はいきガスと混合こんごうえがおこなわれる関係かんけいじょう、4ストロークのバルブオーバーラップに相当そうとうする掃気区間くかん非常ひじょうおおきいこと特徴とくちょうである。

排気はいきデバイス装備そうびされたエンジンの場合ばあいは、排気はいきポートのポートタイミングが回転かいてんいきおうじて変化へんかする。また、一部いちぶのエンジンでは特殊とくしゅな掃気ポート形状けいじょうにより、掃気ポートタイミングを左右さゆう非対称ひたいしょうとしたものやイソ・イセッタのように掃気ポートのみのシリンダーをゆうしたたん気筒きとうダブルピストンなども存在そんざいする。

6つのポートタイミングパラメータ

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  1. IO (Intake Port Open) — 吸気きゅうきポート開放かいほう — このタイミングからクランクケースない混合こんごう吸入きゅうにゅうされはじめる。シリンダーないはこのとき上昇じょうしょう行程こうてい圧縮あっしゅく行程こうてい)を点火てんかおこなわれている。
  2. IC (Intake Port Close) — 吸気きゅうきポート閉鎖へいさ — このタイミングでクランクケースないへの混合こんごう吸入きゅうにゅう終了しゅうりょうする。シリンダーない点火てんか下降かこう行程こうてい膨張ぼうちょう行程こうてい)がはじまっており、ピストンの下降かこうあわせてクランクケースない混合こんごういち圧縮あっしゅくおこなわれる。
  3. EO (Exhaust Port Open) — 排気はいきポート開放かいほう下降かこう膨張ぼうちょう行程こうてい中途ちゅうとにあるこのタイミングから排気はいきポートがひらき、シリンダーない排気はいきがスタートする。実際じっさいにはしたてん手前てまえ(BBDC)からひらはじめ、膨張ぼうちょう圧力あつりょく利用りようして排気はいきガスを強制きょうせいてき排出はいしゅつさせる効果こうか利用りようする。
  4. SO (Scavenging Port Open) — 掃気ポート開放かいほう排気はいきポートの開放かいほうからすこおくれて掃気ポートが開放かいほうされ、掃気区間くかんはじまる。掃気ポートもしたてん手前てまえ(BBDC)からひらはじめ、クランクケースいち圧縮あっしゅく圧力あつりょく利用りようして混合こんごうをシリンダーないみつつ、排気はいきガスのしも同時どうじおこなう。
  5. SC (Scavenging Port Close) — 掃気ポート閉鎖へいさ — このタイミングで掃気ポートからの混合こんごう吸入きゅうにゅう停止ていしする。したてんすこ(ABDC)に閉鎖へいさされ、ピストンはすで上昇じょうしょう行程こうていてんじているため、クランクケースがわ若干じゃっかんもどしが発生はっせいする。このときクランクケースからキャブレターがわ混合こんごう逆流ぎゃくりゅうしないように、吸気きゅうきポートにはリードバルブロータリーディスクバルブもうけられることが一般いっぱんてきである。
  6. EC (Exhaust Port Close) — 排気はいきポート閉鎖へいさ — このタイミングで排気はいきポートがじてシリンダーない排気はいき終了しゅうりょうする。実際じっさいにはしたてん排気はいきじょうてん)のすこ(ABDC)でじるため、シリンダーない混合こんごう若干じゃっかんエキゾーストチャンバーうち流出りゅうしゅつしてしまう。しかしこのときさきにエキゾーストチャンバーに排出はいしゅつされた排気はいきガスがチャンバー内部ないぶ応力おうりょくとなって排気はいきポートまでもどってくるため、適切てきせつ排気はいきポートタイミングとチャンバー容量ようりょう選択せんたくおこなわれたエンジンであれば応力おうりょくによって流出りゅうしゅつした混合こんごうふたたびシリンダーないもどされ、充填じゅうてん効率こうりつす。これはエンジンの回転かいてんすうによって効果こうか変化へんかするため、最大さいだい充填じゅうてん効率こうりつ達成たっせいされる回転かいてんいきぞくパワーバンドび、この回転かいてんいきはいることをパイプインするともいう。

ポートタイミングれい

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エンジン種別しゅべつ 吸気きゅうきひらけ(IO) 吸気きゅうき閉(IC) 排気はいきひらけ(EO) 掃気ひらけ(SO) 掃気閉(SC) 排気はいき閉(EC)
対称たいしょう掃気ポート 55–70° BTDC 55–70° ATDC 30–50° BBDC 20–35° BBDC 20–35° ABDC 30–50° ABDC
非対称ひたいしょう掃気ポート 55–70° BTDC 55–70° ATDC 30–50° BBDC EOのBBDC ECと同時どうじかECまえのABDC 30–50° ABDC
排気はいきデバイス 55–70° BTDC 55–70° ATDC SOまえのBBDC↓
SOと同時どうじまで可変かへん
20–35° BBDC 20–35° ABDC SCと同時どうじ
SCのABDCまで可変かへん

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう資料しりょう

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Trnka J., Urban J.: Spaľovacie motory. Alfa Bratislava, 1992.

外部がいぶリンク

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