ポペットバルブ

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ポペットバルブとその周辺しゅうへん部品ぶひんうえからコッター2、バルブスプリングリテーナー、バルブステムオイルシール、バルブスプリング。

ポペットバルブえい: Poppet Valve)は、JISにおいて「べんたいわきまえシートめんから直角ちょっかく方向ほうこう移動いどうする形式けいしきバルブ」と定義ていぎされている[1]レシプロエンジン吸気きゅうき掃気排気はいき制御せいぎょするためにおおもちいられるべん機構きこうであり、とく自動車じどうしゃようエンジンなどではたんにバルブとばれることもおおい。

語源ごげん[編集へんしゅう]

ポペットバルブのポペットPoppet)とは、人形にんぎょう意味いみする「Puppet」(パペット)と語源ごげん共有きょうゆうする。"若者わかもの"か"人形にんぎょう"を意味いみするちゅうフランスの「poupette」や、ちゅう英語えいごの「popet」(popetはpoupeの縮小しゅくしょう)が語源ごげんであるとされている。

ポペットバルブにポペットの単語たんごあたえられた理由りゆうは、操縦そうじゅうしゃのリモート操作そうさによって一定いっていうごきをおこなマリオネットと、ポペットバルブの単調たんちょう往復おうふく運動うんどうかさわされたからである[2]。よって、かつてはポペットバルブとパペットバルブ (Puppet Valve) というかた混在こんざいし、同義語どうぎごとしてもちいられていた時期じきもあったが、現在げんざいではパペットバルブという用語ようご完全かんぜんすたれてしまっている[3][4]

作動さどう原理げんり[編集へんしゅう]

ポペットバルブはステムとばれる棒状ぼうじょう部分ぶぶんと、円形えんけいまたは楕円だえんがたかさがた(キノコがた)のかさから構成こうせいされる。バルブ全体ぜんたいがステムのじく方向ほうこうすりどうすることにより、べん(バルブシート)とかさ間隔かんかく変化へんかして流量りゅうりょう制御せいぎょする。このためにすりどうりょう制御せいぎょ機構きこう別途べっと必要ひつようとなる。ひらき方向ほうこうのみを制御せいぎょしてじるちからはバルブスプリングによることがおおいが、ポペットバルブもわきまえとも精密せいみつ加工かこうされているため、じた状態じょうたいであれば流体りゅうたい圧力あつりょくさえられるだけでも気密きみつせい発揮はっきできる[5]

圧力あつりょくのみを利用りようしてポペットバルブの開閉かいへい制御せいぎょしている機器ききおおい。そのいちれいタイヤのエアバルブとしてもちいられる仏式ぶっしきバルブべいしきバルブである。べいしきバルブはがわ制御せいぎょようのスプリングがそなえられているが、仏式ぶっしきバルブはこうしたスプリングを一切いっさいたず、純粋じゅんすいにタイヤの内部ないぶ空気圧くうきあつのみでポペットバルブをじている。

用途ようと[編集へんしゅう]

レシプロエンジン以外いがいにも、ポペットバルブはおおくのロケット燃料ねんりょう流量りゅうりょう制御せいぎょや、ミルク流量りゅうりょう制御せいぎょする工業こうぎょうプロセス、油圧ゆあつシステムで使用しようされる。半導体はんどうたい産業さんぎょう遮断しゃだんべんとしてしばしばごく清浄せいじょうポペットバルブを使用しようする。 ここに、一般いっぱんてきなポペットバルブのアニメーションしめす。

レシプロ内燃ないねん機関きかん[編集へんしゅう]

典型てんけいてき4ストロークDOHCレシプロ内燃ないねん機関きかん概念がいねん
(E) 排気はいきカムシャフト
(I) 吸気きゅうきカムシャフト
(S) 点火てんかプラグ
(V) ポペットバルブ
(P) ピストン
(R) コネクティングロッド
(C) クランクシャフト
(W) 冷却れいきゃくすいとおるウォータージャケット
4ストロークDOHC火花ひばな点火てんか機関きかん動作どうさ概略がいりゃく
(1) 吸入きゅうにゅう行程こうてい
(2) 圧縮あっしゅく行程こうてい
(3) 燃焼ねんしょう膨張ぼうちょう行程こうてい
(4) 排気はいき行程こうてい

ポペットバルブはクランクケース圧縮あっしゅくしきガソリン2ストロークエンジンのぞ現代げんだいのほとんどのレシプロエンジンで使用しようされていて、シリンダーヘッド吸気きゅうきポートと排気はいきポートに配置はいちされている。バルブステムがシリンダーヘッドのバルブガイドにとおされており、気流きりゅう制御せいぎょするためのべん開閉かいへいカムシャフトのカムによっておこなわれる。ポペットバルブはバルブリフターかいしカムにされるか、タペットかいしてカムシャフトで作動さどうするロッカーアームされることでひらかれる。

イタリアオートバイメーカー、ドゥカティのエンジンではバルブスプリングをたず、カムシャフトが機械きかいてきにポペットバルブを閉鎖へいさするデスモドロミック採用さいようしている。これはちょうこう回転かいてんいきにおけるカムへの追従ついしょうせい悪化あっかによるバルブサージング防止ぼうしするための機構きこうである。通常つうじょうのエンジンではがわにコイルスプリングを使用しようすることがおおく、サージング防止ぼうしのため、摩擦まさつ増大ぞうだいえにばね定数ていすうたかめる、固有こゆう振動しんどうかずことなる2つのスプリングをわせる、スプリングそのものを不等ふとうピッチや円錐えんすいじょうとする、などの対策たいさく共振きょうしんふせいでいる。常用じょうよう回転かいてんすうが18,000 rpmたっしたF1ようエンジンなどでは、コイルスプリングで共振きょうしんふせぐことはむずかしく、共振きょうしん周波数しゅうはすうたかトーションバースプリングや、こうあつ気体きたいもちいてバルブをじるニューマチックバルブスプリングもちいている。

ポペットバルブは鋼鉄こうてつなどの頑丈がんじょう金属きんぞくもちいて製造せいぞうされるが、一部いちぶこう出力しゅつりょくエンジンではバルブの材料ざいりょうチタンもちいることもある。これはポペットバルブの慣性かんせい質量しつりょうらすための措置そちであり、バルブコッターやリテーナーも同様どうよう軽量けいりょうおこなわれることもおおい。また、部位ぶいによって要求ようきゅうされる性質せいしつことなるため、ステムやステムはしかさ別々べつべつ材料ざいりょうつくったりすることがある。こう出力しゅつりょくエンジンの場合ばあいとくたか温度おんど排気はいきさらされる排気はいきバルブのねつ伝導でんどう特性とくせい改良かいりょうするため、ナトリウム封入ふうにゅうバルブをもちいることがある。ステムをドリル切削せっさくするなどして中空ちゅうくう構造こうぞうとし、この半分はんぶん程度ていどにナトリウムを封入ふうにゅうしたものである。ポペットバルブの往復おうふくによりナトリウムがステムない往復おうふくし、燃焼ねんしょうしつがわからバルブガイドへとねつがしやすくする。また、中空ちゅうくうはがねより密度みつどひくいナトリウムを使用しようすることでポペットバルブの軽量けいりょう見込みこめる。排気はいきバルブにはたい熱性ねっせいたかめるためインコネルひとしたいねつ合金ごうきん使用しようすることもある。

ポペットバルブは吸気きゅうき排気はいきに1シリンダーあたりそれぞれ1ほん以上いじょうずつもちいられる。OHVSOHC主流しゅりゅう時代じだいには吸排気はいき効率こうりつ向上こうじょうのためにポペットバルブのそとみちおおきくするビッグバルブがもちいられたが、バルブの慣性かんせい質量しつりょう増加ぞうかこう回転かいてんでの追従ついしょうせい悪化あっかし、そのわり開口かいこう面積めんせきがさほど拡大かくだいされず効率こうりつがらないため、のちに吸排気はいきそれぞれに複数ふくすうのバルブを配置はいちするマルチバルブ構成こうせい普及ふきゅうした。はじめは吸気きゅうき2・排気はいき1の3バルブ構成こうせいのちDOHC普及ふきゅうとともに吸気きゅうき2・排気はいき2の4バルブ構成こうせい一般いっぱんし、一部いちぶには吸気きゅうき3・排気はいき2の5バルブのエンジンもある。1シリンダーあたり最大さいだいのバルブすう現在げんざいまでに市販しはんされたエンジンは、楕円だえんピストン採用さいよう吸気きゅうき4・排気はいき4の8バルブとしたホンダ・NRのものである。

また、吸気きゅうきバルブの開閉かいへいタイミングやリフトりょう回転かいてんすう負荷ふかおうじて可変かへんさせることで燃焼ねんしょうしつへの混合こんごう流入りゅうにゅう速度そくど変化へんかさせ、こう回転かいてんいきでの出力しゅつりょくてい回転かいてんいきでの実用じつようトルクの両立りょうりつ実現じつげんした可変かへんバルブ機構きこうは、近年きんねんでは軽自動車けいじどうしゃ大衆たいしゅうしゃなどでも自動車じどうしゃ排出はいしゅつガス規制きせいなどへの対応たいおう燃費ねんぴ向上こうじょうのためにごく一般いっぱんてき使用しようされるようになった。さらには吸気きゅうきバルブのタイミングやリフトの変量へんりょう拡大かくだいして、その制御せいぎょスロットルバルブわって出力しゅつりょく制御せいぎょするバルブトロニックのような技術ぎじゅつあらわれている

かつての鋳鉄ちゅうてつせいシリンダーヘッドでは、シリンダーヘッドに穿うがたれたバルブあなにポペットバルブが直接ちょくせつまれていたが、のち摩耗まもうおさえるために鋼鉄こうてつリン青銅せいどうなどで製作せいさくされたバルブガイドがヘッドに挿入そうにゅうされるようになり、燃焼ねんしょうしつがわにもかさとの接触せっしょくめんにバルブシートがけられるようになった。

ポペットバルブのステムはヘッドカバーない直接ちょくせつかたちになるため、そのままでは吸排気はいきポートのガスがカムシャフトがわけたり、カムシャフトルームないエンジンオイルが吸排気はいきポートないされるオイルがりが発生はっせいする。そのため、バルブステムにはねつ摩擦まさつつよフッ素ふっそゴムせいのバルブステムシールが挿入そうにゅうされ、密封みっぷうせいたもつようになっている。

バルブガイド、バルブシート、バルブステムシールともに今日きょうでは消耗しょうもう部品ぶひんひとつであり、これらが摩耗まもう劣化れっかすることでオイルがりがこる。このような状態じょうたい車両しゃりょうはシリンダーないでエンジンオイルがえるため、始動しどうやエンジンブレーキ使用しよう排気はいきしろけむりとなり、オイルのえるにおいもするので判別はんべつ可能かのうである。

バルブ配置はいち[編集へんしゅう]

だい世界せかい大戦たいせん前後ぜんごまでの黎明れいめい車両しゃりょうようエンジンは、ポペットバルブはシリンダーと平行へいこうさかさの状態じょうたい配置はいちされた。これは一般いっぱんてきにはサイドバルブ(SV)とばれ、シリンダーヘッドの外形がいけいひらたかったためにしばしばフラットヘッドともばれた。この形式けいしききわめて簡素かんそ構造こうぞう信頼しんらいせい耐久たいきゅうせいたかかったことからだい世界せかい大戦たいせんなか軍用ぐんよう車両しゃりょうでは積極せっきょくてきもちいられたこともあった。しかし燃焼ねんしょうしつよこながびる形状けいじょうとなることと、吸気きゅうき排気はいきおながわかうターンフロー(カウンターフロー)構造こうぞうしかれなかったことから、吸排気はいき効率こうりつ非常ひじょうわるくて最高さいこう回転かいてんすうは2000-3000rpm程度ていど限定げんていされ、またこの燃焼ねんしょうしつ形状けいじょうではおおきな表面積ひょうめんせきにより冷却れいきゃく損失そんしつおおきいためにねつ効率こうりつひくく、しかも排気はいきがシリンダー側面そくめんうようにくために放熱ほうねつさまたげるなど、エンジン性能せいのうめんでは不都合ふつごうおおかった。

そのため、戦前せんぜんごろからSVをベースにシリンダーヘッドがわにポペットバルブを配置はいちするOHV(頭上ずじょうべん)形式けいしき登場とうじょうした。当初とうしょのOHVはくさび(ウェッジ)かたち燃焼ねんしょうしつやターンフローなどのSV時代じだい影響えいきょうつよいデザインがおおかったが、のちクライスラー・ヘミエンジンなどから、吸排気はいきバルブあいだ角度かくどたせて配置はいちすることで燃焼ねんしょうしつ形状けいじょう表面積ひょうめんせきちいさな半球はんきゅうがたへとわるとともに、吸気きゅうきから排気はいきへとヘッドを横切よこぎってながれていくクロスフロー構造こうぞう移行いこうしていき、ねつ効率こうりつ最高さいこう回転かいてんすう大幅おおはば向上こうじょうしたOHVがSVにわって主流しゅりゅうとなった。

当初とうしょのOHVでロッカーアームをしてポペットバルブをひらいていたのは、クランクシャフトとほぼおなたかさにあるカムシャフトからのながプッシュロッドだった。しかしこれの慣性かんせい質量しつりょうおおきさが追従ついしょうせいげていてこう回転かいてん高性能こうせいのうさまたげだったため、プッシュロッドをみじかかるくしたハイカムOHVをて、ついにはプッシュロッドをくしたOHC形式けいしき(SOHCあるいはDOHC)が登場とうじょうし、現在げんざいではおおくのエンジンに採用さいようされている。ただしとくVがたエンジンにおいては、りょうバンクのバルブ開閉かいへいをバンクあいだ配置はいちした1ほんのカムシャフトでまかなえ、その場合ばあいでもハイカムにはなることから、OHCだけでなくプッシュロッドをもちいるOHVも採用さいようされつづけている。

バルブ保護ほごのためのゆうなまりガソリン[編集へんしゅう]

初期しょきのガソリンエンジンでは現在げんざいよりも冶金やきん技術ぎじゅつ稚拙ちせつだったこともあり、ポペットバルブの摩耗まもうおおきな問題もんだいとしてあつかわれた。バルブの潤滑じゅんかつかんする問題もんだい蒸気じょうき機関きかん時代じだいの1866ねん物理ぶつりがくもののジョン・エリスのにより鉱物こうぶつ開発かいはつされ、バルボリンが「バルブ・オイル」として開発かいはつしたことで解決かいけつしていたが、バルブガイドとバルブシートの摩耗まもうについてはやく2ねんいちかい程度ていど割合わりあいで、後述こうじゅつのバルブメンテナンス専門せんもん技術ぎじゅつしゃおこなわなければならず、車両しゃりょうのオーナーは多大ただい労力ろうりょく出費しゅっぴはらわなければならなかった。しかし、燃料ねんりょうテトラエチルなまりくわえることでなまり成分せいぶんがバルブシートやバルブガイドをおおい、摩耗まもう大幅おおはば減少げんしょうすることがあきらかとなり、ゆうなまりガソリンとして幅広はばひろもちいられるようになった。

ゆうなまりガソリンは1970年代ねんだいごろまでは市販しはんガソリンの主流しゅりゅうであったが、有毒ゆうどくテトラエチルなまり環境かんきょう対策たいさく規制きせいされはじめたことや、ステライトやリン青銅せいどうなどのたい摩耗まもうせい非常ひじょうおおきい合金ごうきん実用じつようされると、ゆうなまり燃料ねんりょう不要ふようとなり、次第しだい姿すがたしていった。

ガソリン無鉛むえん過渡かとには、それまでのゆうなまりガソリン仕様しようのエンジンについてはバルブシートやバルブガイドを対策たいさく部品ぶひん交換こうかんしたり、新車しんしゃでも走行そうこうじょうきょうおうじて高速こうそくゆうなまりなどの表記ひょうきおこなわれた車両しゃりょう存在そんざいするなどしていた。現在げんざいでもまだ無鉛むえん対策たいさくおこなっていない車両しゃりょうように、ガソリンスタンドにはゆうなまりガソリンしゃけの燃料ねんりょう添加てんかざい販売はんばいされていることもある。

レシプロがいもえ機関きかん[編集へんしゅう]

自動車じどうしゃようエンジンでのメンテナンス[編集へんしゅう]

たい摩耗まもうせい非常ひじょうたかいバルブガイドやバルブシートが一般いっぱんした現在げんざい自動車じどうしゃようエンジンでは、10まんキロ以上いじょうどうべんけいメンテナンス不要ふようなこともめずらしくはなくなった。

しかし、経年けいねん使用しようおうじて各部かくぶ摩耗まもう確実かくじつすすんでいくため、下記かきのメンテナンスを必要ひつようおうじて実施じっしすることでエンジンの初期しょき性能せいのう長期ちょうきにわたって適正てきせいたもつことが可能かのうとなる。

バルブクリアランス調整ちょうせい
つねにバルブクリアランスをゼロにたもラッシュアジャスター場合ばあい、バルブクリアランスを調整ちょうせいする必要ひつようがある。
ポペットバルブとカムシャフト、あるいはロッカーアームのあいだにはバルブリフター、またはタペットとばれる部品ぶひん存在そんざいし、バルブクリアランスと隙間すきま確保かくほしている。ひやあいだにバルブクリアランスを確保かくほしておかないと、ゆたかあいだにはねつ膨張ぼうちょうによっておもにバルブステムがび、バルブがひらきっぱなしになってしまうし、バルブクリアランスをおおきくしすぎると、ゆたかかんでも隙間すきまいてしまいおとおおきくなってしまう。したがって、バルブクリアランスは適正てきせい調整ちょうせいしなければならない。
バルブクリアランスはそのエンジンの素材そざいねつ膨張ぼうちょうりつ考慮こうりょして決定けっていされているため、隙間すきま許容きょよう範囲はんいはメーカーによりまちまちである。バルブクリアランスがせまくなるほど、カムシャフトにされるバルブリフトりょうえることになるし、かくシリンダーあいだのタペット隙間すきま完全かんぜん一致いっちしていることがのぞましい。エンジンのメンテナンスとして、バルブクリアランス調整ちょうせいかせない作業さぎょうであった。
バルブクリアランス調整ちょうせいちょくしき場合ばあいには、カムシャフトとポペットバルブのあいだにバルブリフターとばれる部品ぶひんけられているため、カムシャフトをはずしてバルブリフターの外側そとがわ内側うちがわはさまれているシムを交換こうかんして隙間すきま調整ちょうせいおこなっていた。シムはメーカーにより複数ふくすうあつさのもの純正じゅんせい部品ぶひんとして用意よういされているため、測定そくていおこないながら部品ぶひんせてけをおこなう。なお現在げんざいでは、リフター自体じたいあつみでクリアランスを調整ちょうせいするシムレスリフターも普及ふきゅうしている。シムという余計よけい部品ぶひんぶんどうべんけい質量しつりょうかるくできる。バルブクリアランスの調整ちょうせい方法ほうほうはシムしきまったおなじである。
ロッカーアームしき場合ばあいは、ロッカーアームのバルブがわにネジしきのボルトがダブルナットで固定こていされており、このボルトちょう調整ちょうせいすることでクリアランス調整ちょうせいおこなう。
一部いちぶのOHVやSVの場合ばあいは、エンジン側面そくめんのプッシュロッド(SVの場合ばあいはバルブそのもの)に調整ちょうせいネジがもうけられているため、このネジを開閉かいへいすることでカムシャフトとロッドの隙間すきま調整ちょうせいすることになる。
なお、近年きんねんのエンジンではバルブクリアランスのメンテナンスフリーのために油圧ゆあつ自動的じどうてきにタペット隙間すきま調整ちょうせいするハイドロリックラッシュアジャスター(オイルタペット)が装備そうびされており、これらの作業さぎょう不要ふようであるものもおおいが、ラッシュアジャスター自体じたい経年けいねん劣化れっかでオイルかすまるなどしてうごきがわるくなることがあるため、年数ねんすう経過けいかしたエンジンの場合ばあいはラッシュアジャスターを分解ぶんかい清掃せいそうするか、新品しんぴん交換こうかんすることがのぞましい。
バルブステムシール
バルブステムシールは長年ながねん使用しようで膨潤劣化れっかしていき、次第しだい密閉みっぺいせいうしなってくる。こうなるとエンジンの燃焼ねんしょうしつないにオイルががり、性能せいのう低下ていか一因いちいんになるだけでなく、オイル消費しょうひりょう増加ぞうかになるため、バルブまわりを分解ぶんかいしたさいにはかなら新品しんぴん交換こうかんすることがのぞましい。
バルブガイド
バルブガイドも経年けいねん使用しようにより摩耗まもうして、バルブステムとのあいだにガタが発生はっせいする場合ばあいがある。そのまま放置ほうちすればバルブがよこ方向ほうこうあばれてエンジンの圧縮あっしゅくれが発生はっせいしたり、最悪さいあく場合ばあいバルブガイドが破壊はかいされたり、バルブががりエンジン破損はそんいた事例じれいもあるため、バルブまわりを分解ぶんかいしたさい目立めだったガタがあった場合ばあいには内燃ないねん機屋はたや依頼いらいしてガイドのえをおこなうことがのぞましい。
バルブガイドとバルブステムのあいだ隙間すきま非常ひじょうせまいため、オイルのない状態じょうたいでガタがあっても、オイルをステムに塗布とふするとガタがえる場合ばあいもある。しかし、エンジンがうごいている最中さいちゅうにはオイルは非常ひじょう高温こうおんになり、バルブステムとバルブガイドあいだ隙間すきまはオイルがない状態じょうたいちかくなるため、このような状態じょうたい場合ばあいにはちか将来しょうらい交換こうかん必要ひつようになることを自覚じかくしておくべきである。
なお、ゆうなまりガソリン時代じだいふるいエンジンなどで、無鉛むえん対策たいさく部品ぶひんのバルブガイドなどがメーカー製造せいぞう廃止はいしにより入手にゅうしゅ出来できないような場合ばあいには、旋盤せんばん加工かこう業者ぎょうしゃにリン青銅せいどうなどからバルブガイドをけずりだしてもらってえることで、無鉛むえん対応たいおう摩耗まもう対策たいさく両立りょうりつ出来できる。
バルブシートとバルブのわせ
バルブシートとバルブかさ接触せっしょくめん加工かこうにより非常ひじょう精密せいみつつくられている。しかし、経年けいねん使用しようにより次第しだい接触せっしょくめんれていき、圧縮あっしゅくける要因よういんとなるため、ふるいエンジンの場合ばあいにはバルブのわせとばれる作業さぎょう必要ひつようになる。
  1. まず、シリンダーヘッドをエンジンからろし、カムシャフトやロッカーアームなどをすべはずす。
  2. つぎにバルブスプリングコンプレッサーという工具こうぐでバルブスプリングをさえておき、ステムはしのコッターをはずす。これでバルブスプリングとリテーナーがステムからけるようになる。
  3. スプリングなどをはずしたら一度いちどヘッドからバルブをく。このさいにステムのコッターがまれている部分ぶぶん長年ながねんねつ衝撃しょうげき変形へんけいしている場合ばあいがあり、バルブガイドからけにくいことがあるので、このようなとき無理むりかずにいちあらめのサンドペーパーでコッター修正しゅうせい研磨けんましてからバルブガイドをきずつけないようにくようにする。
  4. バルブをさいにはバルブステムシールもはずし、げるさいには出来できるだけ新品しんぴん使用しようするようにする。
    • バルブわせ作業さぎょうはいまえに、ポペットのバルブシートたりめんとバルブシート表面ひょうめんをよく観察かんさつする。とく排気はいきバルブの場合ばあいたりめんがボロボロになっている場合ばあいがあるので、そうしたときにはポペットバルブをル盤るばんなどにけ、ななめ45たりめん慎重しんちょうにサンドペーパーで修正しゅうせい研磨けんまする。バルブシートの劣化れっかいちじるしい場合ばあいには、内燃ないねん機屋はたや依頼いらいしてポペットのたりめん修正しゅうせい同時どうじにバルブシートカットとばれる修正しゅうせい研磨けんま依頼いらいするか、新品しんぴんバルブシートへのえをおこなってもらう。
  5. バルブのステムにオイルを塗布とふし、ポペットの燃焼ねんしょうしつがわタコぼうばれる吸盤きゅうばんきのぼうける。そしてバルブシートとのたりめん専用せんようのコンパウンドを塗布とふし、ステムをガイドにんだのちなんもバルブシートにポペットをたたけるようにける。
  6. ある程度ていどける作業さぎょう終了しゅうりょうしたら、たりめんのコンパウンドの様子ようする。たりめんぜんしゅうわたってコンパウンドが均等きんとうならされているようであれば、一旦いったんコンパウンドをって光明こうみょうまことをエンジンオイルでばしてうすり、たりめん隙間すきまがないかをたしかめる。
  7. ぜんバルブのわせが一段落いちだんらくしたら、一度いちどバルブとバルブスプリングるいすべてシリンダーヘッドにける。そしてシリンダーヘッドを裏返うらがえして燃焼ねんしょうしつがわ灯油とうゆたす。バルブたりが問題もんだいなければこの状態じょうたい灯油とうゆがポートにさないが、かり燃焼ねんしょうしつがあった場合ばあいにはその箇所かしょふたたわせ、れがない状態じょうたいまで作業さぎょうかえす。
これをぜんバルブでおこない、均等きんとうたりめん確保かくほ出来できたら元通もとどおりになおして作業さぎょう完了かんりょうする。なお、バルブわせによりバルブステムのカムシャフトがわへのりょう若干じゃっかん増加ぞうかするため、わせ作業さぎょうにはかならずバルブクリアランスのさい調整ちょうせいおこなうこと。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ (JIS B 0142)油圧ゆあつおよび空気圧くうきあつ用語ようごによる。
  2. ^ Poppet at Merriam-Webster
  3. ^ Puppet valve from 1913 Webster's dictionary
  4. ^ U.S. Patent No. 339809, "Puppet Valve", issued April 13, 1886
  5. ^ How Poppet Valves Work”. lexairinc.com (2007ねん). 2007ねん6がつ28にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]