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SOHC

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

SOHC(エスオーエイチシー、Single OverHead Camshaft)とは、レシプロエンジンのうちきゅう排気はいきべんつようなタイプにおけるべん駆動くどう機構きこう配置はいち形態けいたい一種いっしゅで、1ほんカムシャフトがピストンの頭上ずじょうにあるような形態けいたいシリンダーヘッドとおっている形態けいたい)のことである。DOHCえる以前いぜんにはたんOHCともばれることもあったが、DOHCと明確めいかく区別くべつするために使つかわれるレトロニムてき由来ゆらいもある[注釈ちゅうしゃく 1]ほか、シングルカムばれることもある。

構造こうぞう

排気はいきレイアウトにクロスフロー方式ほうしきもちいたホンダせいD15Aがた(EWがた北米ほくべい仕様しよう4気筒きとうSOHC12バルブエンジンのシリンダーヘッド
排気はいきレイアウトにカウンターフロー方式ほうしきもちいたフォルクスワーゲンせい・RPがた4気筒きとうSOHC8バルブエンジンのシリンダーヘッド

バルブ位置いちOHVDOHCなどとおなじく、燃焼ねんしょうしつうえである。カムシャフトはシリンダーヘッドに1ほんかれている。カムシャフトは、タイミングチェーンギアトレーンタイミングベルトなどでクランクシャフトとつながれており、回転かいてんする。くさびがた燃焼ねんしょうしつ(ウェッジシェイプ)やバスタブがた燃焼ねんしょうしつつターンフロー(カウンターフロー)のエンジンでは、カムが直接ちょくせつバルブをげるちょくどうしきか、シーソーしきロッカーアームによる駆動くどうとなる[注釈ちゅうしゃく 2]半球はんきゅうがた燃焼ねんしょうしつ球形きゅうけい燃焼ねんしょうしつ、ペントルーフがた燃焼ねんしょうしつつクロスフローのエンジンでは、バルブの配置はいち関係かんけいからシーソーしきロッカーアームをかいしての駆動くどうとなる。OHVでは、カムシャフト→プッシュロッド→ロッカーアームのじゅんにバルブを開閉かいへいするうごきがつたえられるが、SOHCではプッシュロッドが不要ふようになりカウンターフローとSがたクロスフローではそれぞれロッカーアームも不要ふようにできる。DOHCとのちがいはカムシャフトの本数ほんすうで、DOHCでは吸気きゅうきバルブおよび排気はいきバルブをそれぞれ独立どくりつしたカムシャフトで駆動くどうするが、SOHCでは1ほんのカムシャフトを共用きょうようする。

歴史れきし

ひろ使つかわれるようになる以前いぜん事例じれいとしては、1897ねんルドルフ・ディーゼル開発かいはつしたディーゼルエンジンはOHCであった。

20世紀せいき初頭しょとう以後いご高性能こうせいのう自動車じどうしゃエンジンや航空機こうくうきようエンジンには使つかわれるようになった。一般いっぱん乗用車じょうようしゃようのエンジンがサイドバルブ以下いかSV)からOHVをてSOHCが普及ふきゅうするのは、1960年代ねんだいから1970年代ねんだいにかけてである。

しかし1990年代ねんだい以降いこうさらきびしくなるてい排出はいしゅつガス規制きせい対応たいおうするためDOHCが一般いっぱん乗用車じょうようしゃ普及ふきゅうし、SOHCは少数しょうすうとなっている。一方いっぽう原付げんつきしょう排気はいきりょうオートバイではコスト低減ていげん重視じゅうしするためSOHCが依然いぜんとして採用さいようされることがおおい。

特徴とくちょう

OHVと比較ひかくした場合ばあいどうべんけい慣性かんせい質量しつりょうらしやすくなるため、結果けっかとしてバルブの開閉かいへいタイミング管理かんり容易よういになり、DOHCほどではないが、それなりにこう回転かいてんこう出力しゅつりょくやすいという特徴とくちょうをもち、ホンダ・ビートのように一般いっぱんてきなDOHC以上いじょうこう回転かいてんエンジンを搭載とうさいした特殊とくしゅれい存在そんざいする。 かつてはシリンダーヘッドじょうのカムシャフトを駆動くどうするためにはベベルギアカムギアトレーンもちいられていたために、OHVよりもコストのかかるシステムであった。現在げんざい安価あんかなタイミングベルトやチェーンによる駆動くどう一般いっぱんてきとなり、量産りょうさんされている。部品ぶひん点数てんすうがOHVやDOHCよりすくなくなるので、小型こがた軽量けいりょう安価あんかになり、整備せいびせいもよくなる。

DOHCと比較ひかくした場合ばあい、カムシャフトが1ほんすくないぶんすりどう抵抗ていこうるため燃費ねんぴのいいエンジンにしやすく、SVやOHVほどではないがエンジンの重心じゅうしんひくくすることができる。また、SVしきOHVしきくらべると、燃費ねんぴめん有利ゆうりなことはもちろんのこと、年々ねんねんきびしくなる自動車じどうしゃ排出はいしゅつガス規制きせいへの対応たいおうせい有利ゆうりであるというてんもある。

ぎゃくに、DOHCにくらべ、1ほんのカムシャフトでロッカーアームをかいしてバルブを駆動くどうさせるという構造こうぞうから、きゅう排気はいきバルブのかずやしにくいため、こう回転かいてんがたのエンジンをつくりにくい。同様どうよう理由りゆうにより、だい出力しゅつりょく一環いっかんでビッグバルブなどをんださいのバルブ一本いっぽんたりの慣性かんせい重量じゅうりょうがDOHCよりもおおきくなりがちになる。また、1ほんのカムシャフトできゅう排気はいき両方りょうほうのバルブを開閉かいへいするため、バルブはさかくなどのバルブのレイアウトの許容きょよう範囲はんいせまい。調整ちょうせいしきカムスプロケットでバルブタイミングを調整ちょうせいする場合ばあいにおいて、DOHCのように吸気きゅうき排気はいき別々べつべつほろ調整ちょうせいすることが不可能ふかのうであり、この条件じょうけん同時どうじ満足まんぞくするためにはそのつどカムシャフトの新造しんぞう必須ひっすとなる。

また、ロッカーアームがバルブを開閉かいへいするちからによって弾性だんせい変形へんけいするため、こう回転かいてんになるほどバルブ開閉かいへい精度せいどち、バルブジャンプバルブサージング発生はっせいする。

プライベートチューンにおいてはロッカーアームのながさ(ロッカーアームレシオ)を変更へんこうするだけで、カムシャフトを変更へんこうすることなくバルブリフトりょう増大ぞうだいはかれる場合ばあいもあるが、クロスフロー燃焼ねんしょうしつでカムシャフトをはさんで左右さゆうにロッカーアームがけられている場合ばあいには、レシオの変更へんこうにより吸気きゅうきがわ排気はいきがわバルブタイミングぎゃく方向ほうこうにずれる(つまりバルブオーバーラップ直接ちょくせつ変化へんかする)ため、カムシャフトも同時どうじ変更へんこうしなければ性能せいのう低下ていかする場合ばあいもある。

一般いっぱんてきに、SOHCはDOHCより性能せいのうおとっているとられがちだが、かならずしもそうではない。歴史れきしてきにはOHV V8フォード・FEエンジンをSOHCしてこう出力しゅつりょくはかり、結局けっきょくNASCARからレギュレーション規制きせいしをけてしまったフォード・427 SOHC "Cammer"エンジンのようなれい存在そんざいした。カムシャフトのかずよりも燃焼ねんしょうしつ形状けいじょうカムかたちおおきさ(カムプロフィール)とったもののほう性能せいのうめるさいのウェイトはたかく、SOHCではなくDOHCにする意義いぎは、その自由じゆうたかめるための手段しゅだんであって、かならずしもこう回転かいてんこう出力しゅつりょくなエンジンをねらうものではない。

また、ターボ装着そうちゃくきゅう排気はいき特性とくせい改善かいぜんするためのDOHCおおられたが、日本にっぽん軽自動車けいじどうしゃにおいてターボチャージャーによる出力しゅつりょく競争きょうそう熾烈しれつだったころスーパーチャージャー採用さいようしていた富士重工業ふじじゅうこうぎょうげんSUBARU)のスバル・レックスだけは、モデル消滅しょうめつまでSOHCのままであった[注釈ちゅうしゃく 3]

わったところではスズキが20ねん以上いじょうにわたって使用しようつづけたFがたでは、燃焼ねんしょうしつ形状けいじょうをハートがたちかづけること燃焼ねんしょう効率こうりつ向上こうじょうさせていた。Fがたには4バルブDOHCや4バルブSOHC、3バルブSOHC[注釈ちゅうしゃく 4]存在そんざいするが、バルブ配置はいち関係かんけいのためこの設計せっけいくずれている。

シリンダーあたりのバルブすう吸気きゅうき×1、排気はいき×1の2バルブが基本きほんであったが、吸排気はいき効率こうりつたかめるために、吸気きゅうき×2、排気はいき×1の3バルブや、吸気きゅうき×2、排気はいき×2の4バルブのマルチバルブエンジンも登場とうじょうした。また、カムシャフトの干渉かんしょうのため理想りそうてきなセンタープラグ配置はいちむずかしいという弱点じゃくてんおぎな燃料ねんりょう完全かんぜん燃焼ねんしょううながすために、ツインプラグ方式ほうしきをSOHCエンジンで実現じつげんするものもある[注釈ちゅうしゃく 5]

上記じょうきのようにカムシャフト干渉かんしょうによりセンタープラグ配置はいちおこないにくいが、マルチバルブ・ペントルーフがた燃焼ねんしょうしつ・センタープラグが要求ようきゅうされる現代げんだいにおいてはプラグをかたむけカムシャフトを回避かいひするかたちでセンターに配置はいちするのが一般いっぱんてきである。ただしこの場合ばあい、プラグホールがななめにヘッドを貫通かんつうする関係かんけいからポート形状けいじょう冷却れいきゃくりゅう設計せっけいなどで制限せいげんけやすい。 これにたいしカムシャフトをオフセットすることでプラグのかたぶけおさえつつセンターに配置はいちすることでコンパクトなレイアウトとするれい[1]などがある。さらにこう効率こうりつ要求ようきゅうされる現代げんだいではせまいバルブはさかく要求ようきゅうされるが、ロッカーアーム(シーソーしき)の構造こうぞうじょうバルブはさかくはあまりちいさくしにくい。このてんもホンダのユニカム[2]のように吸気きゅうきバルブをちょくどう排気はいきバルブをロッカーアームで駆動くどうすることでセンタープラグおよびバルブはさかくせまかくおこなっているれい存在そんざいする。

カムシャフトをセンターからオフセットする場合ばあい手法しゅほうとしては吸排気はいきバルブのロッカーアームを不等ふとうちょうとするれい(ホンダDがたエンジンSOHC4バルブ)や吸気きゅうきバルブをスイングアームしき排気はいきバルブをシーソーしきロッカーアームとするれい(スズキGがた一部いちぶのぞくSOHC)、吸気きゅうきバルブをちょくどう排気はいきバルブをロッカーアームとするれい(トライアンフSlant-Four Engine、および前述ぜんじゅつのユニカム)などがある。わったところではen:Alfa Romeo V6 engineのように吸気きゅうきバルブをちょくどう排気はいきバルブをプッシュロッドとロッカーアームをかいして駆動くどうさせDOHCと同様どうようのセンタープラグ配置はいちとするれいがある。またフィアットアルファロメオ可変かへんバルブ機構きこうであるマルチエア(ツインエア)では排気はいきバルブをカムシャフトで直接ちょくせつもしくはスイングアームにて駆動くどう吸気きゅうきバルブは油圧ゆあつかいした可変かへんバルブ機構きこう駆動くどうさせており、センタープラグ配置はいちとバルブはさかくせまかく実現じつげんしている。

トライアンフ・ドロマイトのスポーツモデル「スプリント」に搭載とうさいされていたSlant-Four 16Valve Engine
トライアンフのSlant-Four 16Valve Engineのべん機構きこうのメカニズム
三菱自工みつびしじこうしんMIVEC採用さいようした4J1がたエンジンのSOHCヘッドのカットモデル

以上いじょうのようにSOHCはかならずしもDOHCにおとるわけではなく実用じつようじょう有利ゆうりめんおおくあるが、一部いちぶメーカー(トラック・バス専業せんぎょうメーカーをのぞ国内こくないメーカーでは2022ねん7がつ現在げんざいホンダNSXようのぞくほとんどのVがた6気筒きとうエンジン〉と三菱自工みつびしじこう〈4G1がたけい・4G6がたけい・6G7がたけい・4J1がたけい各種かくしゅエンジンのみ〉がこれに該当がいとうする)をのぞくとSOHCへの回帰かいきはあまりおこなわれていない。これはマーケットめんでの要求ようきゅうもさることながら、近年きんねん一般いっぱんてきとなった位相いそう変化へんかがた可変かへんバルブ機構きこうはSOHCでは効果こうかられにくいことからメリットがちいさいというてん理由りゆうにあげられる。SOHCは単一たんいつのカムシャフトで吸気きゅうきバルブと排気はいきバルブを作動さどうさせる構造こうぞうじょう、カムの位相いそう変化へんかさせると吸気きゅうきのタイミングが変化へんかするのと同時どうじ排気はいきのタイミングも同時どうじ変化へんかしてしまうためオーバーラップ領域りょういき変化へんかられない。ただし、SOHCにおいても負荷ふか回転かいてんすうたい最適さいてきなバルブタイミング制御せいぎょおこなうことで、オーバーラップの変化へんかはなくとも一定いってい効果こうかられるため、だい排気はいきりょうSOHCエンジン(れい:en:Ford Modular engine)などでは採用さいようされている。 国内こくないにおいては、吸気きゅうきバルブのリフトりょう変化へんか位相いそう変化へんか連動れんどうする連続れんぞく可変かへんリフト機構きこう採用さいようした、三菱自工みつびしじこうしんMIVECエンジン(4J10がた、および4J11がた、4J12がたエンジン)が、連続れんぞく可変かへんリフト機構きこう協調きょうちょう作動さどうさせるかたちでSOHCでありながらカムシャフトの位相いそう変化へんかおこなっている[3]単一たんいつのカムシャフトで吸排気はいき位相いそう独立どくりつ変化へんかさせ、オーバーラップりょう変化へんかさせる手法しゅほうとしては、吸気きゅうき排気はいきのカムローブが独立どくりつしてうごじゅう構造こうぞうのカムシャフトをもちいる手法しゅほうがある。これはすで一部いちぶのアメリカのだい排気はいきりょうきゅうVがた8気筒きとう各種かくしゅOHVエンジンで採用さいようされており、機構きこうじょうはSOHCでも利用りようできる。

脚注きゃくちゅう

注釈ちゅうしゃく

  1. ^ ガソリン機関きかんないしディーゼル機関きかん発達はったつ過程かていにおいて、サイドバルブ→OHV→SOHC→DOHC といったように、わきまえおよびその駆動くどう機構きこうおも性能せいのう向上こうじょう目的もくてきとしてピストンの頭上ずじょう移動いどうしていった、という経緯けいい背景はいけいにある。
  2. ^ くさびがた燃焼ねんしょうしつやバスタブがた燃焼ねんしょうしつったターンフローのエンジンでロッカーアームがもちいられたものとしてはプリンス自動車じどうしゃげん日産自動車にっさんじどうしゃ)のG7がたエンジン日産自動車にっさんじどうしゃLがたエンジントヨタ自動車とよたじどうしゃ1G-EAがたエンジン(DOHCをのぞく)Eがたエンジン(DOHCをのぞく)などがある。
  3. ^ 後継こうけいしゃスバル・ヴィヴィオではホットモデルの「RX」シリーズにかぎり、トヨタハイメカツインカムエンジンに類似るいじした機構きこうもちいたDOHCを採用さいようしているが、これはおもにマーケットめんでの要求ようきゅうによるものである。
  4. ^ 同社どうしゃ9代目だいめキャリイ専用せんよう
  5. ^ 日産にっさんZがた(Z18、Z20など)およびCAがたホンダi-DSILがたおよびPがたなど)。

出典しゅってん

関連かんれん項目こうもく