フリーホイールハブ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
1986ねんしき 三菱みつびし・パジェロ自動じどう切替きりかえしきフリーホイールハブ

フリーホイールハブ(free wheeling hubs)とは、自動車じどうしゃもちいられるホイールハブ一種いっしゅであり、ドライブシャフトからの駆動くどうりょくをドライバーの任意にんいはなすことが出来でき機構きこうそなえている。おもにパートタイムしき4WDくるまもちいられ、ロッキングハブ(Locking hubs)とばれることもある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

おおくのパートタイムしき4WDくるまとくにヘビーデューティタイプのクロカン4WDや4x4トラックなどでは、前後ぜんご車軸しゃじくつなぐプロペラシャフトにトランスファー[1]そなえており、原則げんそくとして登坂とさかあくなど強力きょうりょく駆動くどうりょく必要ひつようとされる局面きょくめんにのみよんりん駆動くどうとすることがのぞましいとされているため、普段ふだん走行そうこうはほとんどの場合ばあいりん駆動くどうのままで運用うんようされることがおおくなる。

フリーホイールハブはこのような車両しゃりょうりん駆動くどうに、駆動くどうではない車軸しゃじく車輪しゃりんをドライブシャフトからはなすためにもちいられる。フリーホイールハブを作動さどうさせると、車輪しゃりんとドライブシャフトあいだ駆動くどう伝達でんたつたれ、作動さどうしたままよんりん駆動くどうえたとしても車輪しゃりんには駆動くどうりょくつたわらなくなる。

このような機構きこう考案こうあんされた背景はいけいとしては、パートタイムよん車両しゃりょうりん駆動くどうにおける駆動くどうと、それに連動れんどうしたドライブシャフト、ディファレンシャルおよびプロペラシャフト空転くうてんによる回転かいてん抵抗ていこう無視むしできないほどおおきかったことげられる。この回転かいてん抵抗ていこうはそのまま燃費ねんぴ悪化あっか振動しんどう増大ぞうだい旋回せんかいのステアリングのおもさなどに直結ちょっけつするため、フリーホイールハブの実装じっそうはパートタイムよん車両しゃりょうりん駆動くどう車両しゃりょう同様どうようのドライバビリティや燃費ねんぴ性能せいのうたせるじょうおおきな意義いぎがあった。

現在げんざい、フリーホイールハブはおおきくけて種類しゅるい分類ぶんるいできる。

ひとつは旧式きゅうしきよんりん駆動くどうしゃおおもちいられている手動しゅどうしきのフリーホイールハブで、ハブ先端せんたんにツマミがいており、ハブの直結ちょっけつ解放かいほう操作そうさのためにはドライバーはその都度つどしゃりて操作そうさおこな必要ひつようがある。トランスファーの駆動くどう状態じょうたいかかわらずハブのえが可能かのうなため、ながあく区間くかんはし場合ばあいにはりん駆動くどう状態じょうたいであってもあらかじめハブを直結ちょっけつ状態じょうたいにしたままはしることがのぞましいとされる。また、トランスファーふく変速へんそくそなえている車種しゃしゅで、2H-4H-4Lなどの、低速ていそくレンジにするさいトランスファーが強制きょうせいてきよんになってしまうシフトパターンをもつものでは、4Lにえたのちにフリーホイールハブを解放かいほうすることで「りん駆動くどう低速ていそくレンジ」という状態じょうたい意図いとてきつくすことも可能かのうとなる。 そのためあく走行そうこう趣味しゅみとするものなかには、後述こうじゅつ自動じどうしきフリーホイールハブにくらべて構造こうぞう単純たんじゅん軽量けいりょう信頼しんらいせいすぐれる、駆動くどう形式けいしきふく変速へんそくギアレンジのわせの自由じゆうたかいなどの理由りゆうから、自動じどうしきフリーホイールハブをえて手動しゅどうしき交換こうかんするもの存在そんざいする。しかし、ハブえツマミにはとくかぎなどがいていないため、ドライバー以外いがい第三者だいさんしゃ悪意あくいってえをおこなってしまう可能かのうせい[2]がある。

もうひとつは近年きんねんよんりん駆動くどうしゃのほとんどにもちいられている自動じどうしきのフリーホイールハブである。このタイプのハブはあつ油圧ゆあつ電気でんきモーター駆動くどうなどにより、ドライバーのトランスファー操作そうさ同時どうじ自動的じどうてきにハブの直結ちょっけつ解放かいほうおこなうため、走行そうこうちゅうであってもトランスファーえが容易よういおこなえ、二輪にりん駆動くどうでもフリーホイールハブのわすれによる燃費ねんぴ悪化あっか発生はっせいしないという利点りてんがある。

しかし、この形式けいしきのハブのおおくはトランスファー瞬時しゅんじにハブを直結ちょっけつ解放かいほうするのではなく、一定いっていそらはし距離きょりおおくの場合ばあい前進ぜんしんがわ)をおいてからハブのえをおこなうため、二輪にりん駆動くどう状態じょうたい完全かんぜんにスタックしてしまったような状況じょうきょうときには、よんりん駆動くどうえても自動じどうハブが作動さどうせず、スタックから脱出だっしゅつできない状況じょうきょうこりうる欠点けってんがあるとされる。そのため、あくはしさいにはあらかじ路面ろめん状態じょうたい判断はんだんしたうえでスタックの危険きけんがある箇所かしょ通過つうかするさいにははやめによんりん駆動くどうえておく必要ひつようがある。

フリーホイールハブを実装じっそうするじょうでのデメリットとしては、前述ぜんじゅつとお手動しゅどうしき場合ばあい作動さどうたびりが必要ひつようとなること、自動じどうしき場合ばあいにはむなしはし距離きょりれない状況じょうきょうとき自体じたいおこなえなくなる危険きけんせいがあることがげられるが、それ以外いがいにも巨大きょだいなハブ部分ぶぶん存在そんざいから、装着そうちゃくできるホイールのデザインや種類しゅるいがある程度ていど限定げんていされてしまうこと、あく走行そうこうにおいてはハブ先端せんたん障害しょうがいぶつたることでハブ本体ほんたい破損はそんして走行そうこう不能ふのうおちいってしまう可能かのうせいなどもげられる。

フリーアクスル[編集へんしゅう]

近年きんねん自動じどうすすんだ4WDしゃでは、従来じゅうらいのフリーホイールハブと同様どうよう目的もくてきで、フリーアクスル(Free Axle)とばれる機構きこうもちいられる場合ばあいもある。フリーホイールハブはハブとドライブシャフトあいだ駆動くどう伝達でんたつのにたいして、フリーアクスルは駆動くどうじくがわデフケース付近ふきんもうけられ、デフとドライブシャフトあいだ駆動くどう伝達でんたつこと特徴とくちょうである。その実装じっそう形態けいたいから、ほとんどの場合ばあいはバキュームダイヤフラムしくは電動でんどうモーターで動作どうさする自動じどうしきフリーアクスル形態けいたいもちいられる。

フリーアクスルは車体しゃたい中央ちゅうおう付近ふきんのデフケースに機構きこう集中しゅうちゅうできるために、車輪しゃりんのハブそのものをよりシンプル軽量けいりょう出来でき利点りてんがある。反面はんめん、ハブとドライブシャフトが機械きかいてき連結れんけつされたままとなるため、駆動くどう損失そんしつ低減ていげんというめんではフリーホイールハブよりもやや不利ふりとなる。

フリーアクスルには駆動くどうじくがわデフケースの左右さゆう両側りょうがわのドライブシャフトをはなすものと、左右さゆうどちらか片方かたがたのドライブシャフトのみをはなすもの大別たいべつされる。後者こうしゃ構造こうぞうは、所謂いわゆるオープンデフの欠点けってん逆手さかてったものであり、どう装置そうちかた完全かんぜん負荷ふかとなる状態じょうたい擬似ぎじてきつくすものである。よって、フリーアクスルにはなされたドライブシャフトがわのピニオンギアはプロペラシャフトの回転かいてんとも高速こうそく空転くうてんつづけ、ぎゃく連結れんけつされているがわのドライブシャフトにはプロペラシャフトの回転かいてんつたわらなくなり、同時どうじ車輪しゃりんからのバックトルクもプロペラシャフトにはつたわらなくなる。後者こうしゃ構造こうぞうはフリーアクスルをよりシンプル合理ごうりてき実現じつげんできる反面はんめん駆動くどうじくがわデフケースに内蔵ないぞう可能かのうどう装置そうちがオープンデフに限定げんていされるという欠点けってんもある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ フルタイム4WDの場合ばあいセンターデフビスカスカップリング代用だいようされることもある。
  2. ^ とくかたのみを駆動くどうしくは駆動くどう状態じょうたいとされてしまった場合ばあい駆動くどうじくにもLSDそなえている車両しゃりょうでは、かた空転くうてんしつづけるためにLSDの不要ふよう磨耗まもう破損はそんまねくことにもつながりかねない。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]