イグニッションコイル

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ボッシュせい普通ふつうがたまるがた)イグニッションコイル
サーブ・92のデュアルイグニッションコイル。上記じょうき写真しゃしんおなじボッシュせいコイルが2配置はいちされている(画像がぞう上部じょうぶ)。

イグニッションコイルえい: Ignition coil)は、火花ひばな点火てんか内燃ないねん機関きかん点火てんかプラグ放電ほうでんするためのこう電圧でんあつつく変圧へんあつである。日本語にほんごでは点火てんかコイル[注釈ちゅうしゃく 1]ばれるほか、英語えいごではスパークコイルえい: spark coil)とばれることもある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

イグニッションコイルの概念がいねん内側うちがわくろいコイル(いちコイル)の電圧でんあつがかかった瞬間しゅんかんに、外側そとがわしろいコイル(コイル)にこう電圧でんあつ励起れいきされる。

イグニッションコイルは誘導ゆうどうコイル原理げんり利用りようした変圧へんあつで、内部ないぶには1つのてつしん(コア)に巻数かんすうことなる2つのコイルかれており、巻数かんすうすくないコイルがいちコイル巻数かんすうおおいコイルがコイルばれる[1]いちコイルにはコンタクトブレーカーなどのスイッチ機構きこうかいしてバッテリーなどから電力でんりょく供給きょうきゅうされる[1]。スイッチがじられるといちコイルに磁界じかいしょうじ、コアをつうじてコイルの内側うちがわにも磁界じかい発生はっせいする[1]。スイッチがひらかれると磁界じかい変化へんかして、自己じこ誘導ゆうどう作用さようによりいちコイルに電圧でんあつしょうじ、相互そうご誘導ゆうどうによりコイルにも電圧でんあつしょうじる[1]いちコイルよりコイルの巻数かんすうおお場合ばあいにはいちコイルにあたえた電圧でんあつよりたか電圧でんあつられるが、イグニッションコイルでは点火てんかプラグ放電ほうでん必要ひつような25 - 35 kVの電圧でんあつを、バッテリーマグネトー発生はっせいさせた電気でんきから[1]

いちコイルにはせいきょくきょく端子たんしがある一方いっぽうで、コイルはおおくの場合ばあいせいきょく端子たんし点火てんかプラグやディストリビューター接続せつぞくする端子たんしもうけられ、アースはイグニッションコイル内部ないぶいちコイルと共有きょうゆうする場合ばあいや、イグニッションコイルがいからやアース端子たんしつうじて車体しゃたい直接ちょくせつアースされる場合ばあいがある。1つのコイルで2つのプラグを同時どうじ放電ほうでんさせる構成こうせいでは、コイルの両方りょうほう端子たんし点火てんかプラグが接続せつぞくされる場合ばあいもある[2]

イグニッションコイルのコアの形状けいじょうにより、磁力じりょくせんがコアのそととおひらき磁路じろがたとコアのなかだけをとお閉磁がたがある。ひらき磁路じろがたのコアは直線ちょくせんじょうで、コアの一端いったんから磁力じりょくせんはコイルの外側そとがわ空間くうかんゆみなりにかよってコアの反対はんたいがわ一端いったんもどる。空間くうかん解放かいほうされた磁力じりょくせん機器きき電装でんそうひんなどに悪影響あくえいきょうおよぼすため、コイルの筐体きょうたい磁気じき遮蔽しゃへいする性質せいしつたか金属きんぞく磁気じきてき密閉みっぺいしなければならない。一方いっぽう、閉磁がたはコアが円形えんけい四角形しかっけいなどの環状かんじょうで、磁力じりょくせんはコアの内部ないぶをループする。筐体きょうたいによる磁気じき遮蔽しゃへいおこな必要ひつようがなく、磁界じかいれがすくなくて効率こうりつがよいため小型こがた軽量けいりょう可能かのうであるが、コアの材質ざいしつ依存いぞんする磁気じき飽和ほうわこりやすくなる。かつては円筒えんとうがたをしたひらく磁路じろがたのイグニッションコイルが主流しゅりゅうであったが、磁気じき飽和ほうわこりにくい材質ざいしつのコアを製造せいぞうする技術ぎじゅつ進歩しんぽするとともに、小型こがた軽量けいりょうの閉磁がた普及ふきゅうし、エンジンヘッドカバーのうえにイグニッションコイルをマウントするダイレクトイグニッション可能かのうとなった。

自動車じどうしゃとう[編集へんしゅう]

自動車じどうしゃようでは、1つのイグニッションコイルからられた電気でんきディストリビューターによってかく気筒きとう分配ぶんぱいする方法ほうほうがかつての一般いっぱんてき構成こうせいであった。いちコイルへ電圧でんあつあたえるスイッチはコンタクトブレーカーでおこな機械きかい制御せいぎょしきから、トランジスタでスイッチングをおこなイグナイター利用りようして接点せってん焼損しょうそんこりにくくしたセミ・トランジスタしき、さらに機械きかいてき接点せってん機構きこうはいしたフル・トランジスタしきへと発展はってんした。やがて、かく気筒きとうに1つ、あるいは2気筒きとう同時どうじに1つのイグニッションコイルで点火てんかするディストリビューター・レス・イグニッション(DLI)が登場とうじょうした。この方式ほうしきではディストリビュータを省略しょうりゃくすることでその内部ないぶこる電気でんき接点せってん消耗しょうもう電力でんりょくロスを排除はいじょした。小型こがたされたイグニッションコイルの普及ふきゅうともない、プラグコードもはいして電力でんりょくロスをさらに低減ていげんしたダイレクトイグニッションを採用さいようする車種しゃしゅ一般いっぱんてきになった。ディストリビューターが省略しょうりゃくされた方式ほうしきではダイレクトイグニッションではカムかくセンサーなどにより電子でんしてきにクランクかく検出けんしゅつされて、点火てんか時期じき制御せいぎょされている。

オートバイでは、かく気筒きとう1個いっこのイグニッションコイルで点火てんかする場合ばあいおおいが、並列へいれつ4気筒きとうエンジンでは1個いっこのイグニッションコイルで2気筒きとう同時どうじ点火てんかする2気筒きとう同時どうじ点火てんか方式ほうしきひろ採用さいようされている。2気筒きとう同時どうじ点火てんか方式ほうしきでは4つのシリンダーのうち、クランク位相いそうおなじ2つのシリンダーのプラグを同時どうじ放電ほうでんする。en:wasted sparkシステムともばれ、同時どうじ点火てんかされる2気筒きとうのいずれかが排気はいきじょうてんでも放電ほうでんおこない、エンジンの出力しゅつりょくには無関係むかんけい点火てんかプラグへの負荷ふかやすのみであるが、部品ぶひん点数てんすうすくなく信頼しんらいせいたか機構きこうであることから現在げんざいでも利用りようされている。点火てんか時期じき制御せいぎょ機械きかい制御せいぎょしきからはじまり、キャパシタ蓄電ちくでん作用さようにより断続だんぞくおこなキャパシター・ディスチャージド・イグニッション(CDI)へ変遷へんせんし、ダイレクトイグニッションが普及ふきゅうするようになった。

イグニッションコイルはいちコイルへ電力でんりょく供給きょうきゅうする装置そうちちがいにより、マグネトー点火てんかよう[注釈ちゅうしゃく 2]、バッテリー点火てんかよう[注釈ちゅうしゃく 3]、CDI点火てんかよう[注釈ちゅうしゃく 4]などに区分くぶんされ、それぞれいちコイルのすう抵抗ていこうことなっている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 点火てんか」はignitionの和訳わやくである。
  2. ^ エンジンの回転かいてん速度そくどにより電圧でんあつ変化へんかする。
  3. ^ てい電圧でんあつ供給きょうきゅうされる。
  4. ^ キャパシタの放電ほうでんにより短時間たんじかんたか電圧でんあつくわえられる。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e 点火てんか装置そうち革新かくしんてき技術ぎじゅつ”. デンソー株式会社かぶしきがいしゃ. 2015ねん11月20にち閲覧えつらん
  2. ^ 実践じっせん整備せいび事例じれい”. 一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん 大分おおいた自動車じどうしゃ整備せいび振興しんこうかい. 2015ねん11月20にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]