燃焼ねんしょうしつ

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燃焼ねんしょうしつ(ねんしょうしつ)は、燃料ねんりょう燃焼ねんしょうする空間くうかんであり、ねつ機関きかんにおいては燃焼ねんしょう酸化さんか)によりねつエネルギーを発生はっせいする部位ぶいである。

内燃ないねん機関きかん[編集へんしゅう]

ジェットエンジン内燃ないねんしつしき

内燃ないねん機関きかんにおける燃焼ねんしょうしつは、内燃ないねんしつばれることもある。

燃焼ねんしょう発生はっせいした高熱こうねつガス排気はいきガス)は、元々もともと燃料ねんりょう混合こんごうよりもはるかにおおきな容積ようせき膨張ぼうちょうし、おおきな圧力あつりょく熱量ねつりょう放出ほうしゅつする。たとえば、ガスタービン場合ばあいにはこの圧力あつりょく利用りようしてじく接続せつぞくされたタービンブレード回転かいてんさせることが可能かのうであり、ロケットエンジン場合ばあいには噴射ふんしゃノズルによって圧力あつりょく解放かいほうされる方向ほうこう指定していすることで、圧力あつりょく推力すいりょくとして利用りよう出来できる。

レシプロエンジンなどは間欠かんけつ燃焼ねんしょうであり、吸気きゅうきによっても燃焼ねんしょうしつ表面ひょうめん温度おんどげられるのにたいし、ロケットエンジンジェットエンジンガスタービンなどは基本きほんてき連続れんぞく燃焼ねんしょうであり、燃焼ねんしょうしつ冷却れいきゃく機関きかん寿命じゅみょうおおきく影響えいきょうする。

レシプロエンジン[編集へんしゅう]

レシプロエンジンの燃焼ねんしょうしつは、うえてん付近ふきんにあるときピストンシリンダーシリンダーヘッドなどでかこまれた空間くうかんである。

ガソリンエンジンの燃焼ねんしょうしつ[編集へんしゅう]

通常つうじょうはシリンダーヘッドに点火てんかプラグ排気はいきバルブもうけた半球はんきゅうがたへこみがもうけられ、ピストンかんむりめんやシリンダー上端じょうたんとともに「混合こんごう燃焼ねんしょうさせる部屋へや」である燃焼ねんしょうしつ形成けいせいする。ピストンかんむりめん平面へいめんもしくはかるい膨隆があるが、バルブに対応たいおうするへこみがもうけられることがおおい。ターボチャージャーなどのきゅうきエンジンでは圧縮あっしゅくげる目的もくてきくぼみがもうけられる場合ばあいもある。

ガソリンエンジンの燃焼ねんしょうしつには様々さまざま形状けいじょうのものが存在そんざいし、その形状けいじょうによってそのエンジンの圧縮あっしゅくおおきく左右さゆうされ、エンジンの効率こうりつ出力しゅつりょく燃費ねんぴ)に影響えいきょうする。

エンジン設計せっけいしゃは、燃焼ねんしょうしつやシリンダーない過熱かねつ機械きかいてき強度きょうどげるとともに、NOx生成せいせいうながす)をけつつ冷却れいきゃく損失そんしつちいさくし、混合こんごう完全かんぜん燃焼ねんしょう目的もくてき様々さまざま燃焼ねんしょうしつ形状けいじょう考案こうあんしてきた。そのために有効ゆうこうなのが、ねつ効率こうりつ低下ていかする表面積ひょうめんせきおおきくなる細長ほそながおおきな燃焼ねんしょうしつではなく、できるだけ表面積ひょうめんせきちいさいコンパクトな燃焼ねんしょうしつ採用さいようであった。

こうした改良かいりょうなか混合こんごう燃焼ねんしょうしつのなかでらんりゅう形成けいせいすることが燃焼ねんしょう効率こうりつ改善かいぜんいこともかってきた。半球はんきゅうがた英語えいごばんペントルーフがたなどでは、スワールよこうずりゅう)やタンブルたてうずりゅう)を形成けいせいするようにヘッドとインテークの形状けいじょう工夫くふうしている。またシリンダだん面積めんせきとヘッドだん面積めんせきをかえてピストン上昇じょうしょうにははさまれた部分ぶぶん噴流ふんりゅう発生はっせいするスキッシュエリアがもうけらえることもおおい。初期しょき排気はいき対策たいさくではCVCCのように希薄きはく混合こんごう点火てんかするために補助ほじょ燃焼ねんしょうしつ補助ほじょ吸気きゅうきバルブなどが付加ふかされることがあった。

通常つうじょう点火てんかプラグは燃焼ねんしょう伝播でんぱする速度そくど見込みこんで圧縮あっしゅくじょうてんすこまえ点火てんかおこなうが、それ以前いぜんにシリンダーない自己じこ着火ちゃっかするノッキング発生はっせいすることがある。ノッキングによる衝撃しょうげきはピストンやシリンダーヘッドの損傷そんしょうにつながるため、通常つうじょう圧縮あっしゅく制限せいげんしたりノッキングセンサーによりノッキングを検知けんちすると点火てんか時期じきおくらせる方法ほうほうがとられる。

燃焼ねんしょうしつによるノッキングのきにくさはメカニカルオクタン価おくたんかばれ、これがたかいエンジンはよりたか圧縮あっしゅく実現じつげんできるためこう出力しゅつりょくこう燃費ねんぴとなる。メーカーはメカニカルオクタン価おくたんかげるためにさまざまなシミュレーションや燃焼ねんしょう状態じょうたい観察かんさつおこなっている。

初期しょきのガソリンエンジンでおおられたサイドバルブ燃焼ねんしょうしつでは、ひらたくよこ方向ほうこうなが形状けいじょうていしており、この形状けいじょうしてフラットヘッドばれる場合ばあいおおかった。しかしこのような形状けいじょう燃焼ねんしょうしつ表面積ひょうめんせきおおきいため燃焼ねんしょう効率こうりつおとり、圧縮あっしゅくもある程度ていどまでで頭打あたまうちとなる一方いっぽうていオクタン価おくたんか燃料ねんりょう使用しよう可能かのうなことから、発電はつでんなどでは依然いぜんとしておお使つかわれている。一方いっぽう出力しゅつりょくもとめた頭上ずじょうべんしきOHVOHC)エンジンでは、下記かきのような燃焼ねんしょうしつ登場とうじょうした。

バスタブがた[編集へんしゅう]

サイドバルブからOHVに移行いこうした初期しょき段階だんかい登場とうじょうした形式けいしきで、燃焼ねんしょうしつ形状けいじょう文字通もじどお洋式ようしき浴槽よくそうのような長方形ちょうほうけい形状けいじょうっている。吸排気はいきバルブはシリンダーヘッドにたいして垂直すいちょく配置はいちされるため、機械きかい加工かこう容易ようい最低限さいていげん設計せっけい変更へんこうでサイドバルブをOHV可能かのうであったため、おおくのエンジンでこの形式けいしき採用さいようされた。しかし、燃焼ねんしょうしつないらんりゅう形成けいせい比較的ひかくてき容易ようい反面はんめん燃焼ねんしょう効率こうりつおとるため、次第しだい後述こうじゅつ形式けいしき改良かいりょうされていくことになった。また、トヨタ1Eがた、および2Eがた、3Eがたガソリンエンジンのように1気筒きとうあたり3バルブのSOHCでありながらバスタブがた燃焼ねんしょうしつ採用さいようしたエンジンも存在そんざいする。

くさびがた(ウェッジがた)[編集へんしゅう]

燃焼ねんしょうしつ形状けいじょうが、よこからくさびのような、細長ほそなが三角形さんかっけいじょうていしているもの。吸排気はいきバルブがシリンダーヘッドにたいしてななめに配置はいちされるため、ターンフローエンジンにおいては排気はいきポートがりがゆるやかに設計せっけいでき、圧縮あっしゅくもバスタブがた比較ひかくしてたかることが可能かのうとなった。OHVのみならずOHC形式けいしきでも、ターンフローエンジンにおいては、後述こうじゅつたまがた燃焼ねんしょうしつ登場とうじょうするまで主流しゅりゅう形式けいしきであった。

半球はんきゅうがた[編集へんしゅう]
イタリアMalossiしゃスクーターよう2ストロークエンジンのシリンダーヘッド
2ストロークようヘッドは燃焼ねんしょうしつ点火てんかプラグのみをそなえたもので吸排気はいきバルブによる燃焼ねんしょうしつ形状けいじょう制約せいやくがないため今日きょうでもおおきなスキッシュエリアをった理想りそうてき半球はんきゅうがた燃焼ねんしょうしつ採用さいようするものがおお

燃焼ねんしょうしつ形状けいじょうたま半分はんぶんもしくは1/3程度ていどった形状けいじょうていしているもの。クロスフローしきシリンダーヘッドの登場とうじょうともあらわれた形式けいしきで、燃焼ねんしょうしつ表面積ひょうめんせき容積ようせきたいしてちいさくなるので冷却れいきゃく損失そんしつちいさくでき、燃焼ねんしょう圧力あつりょく均等きんとうひろがる流体りゅうたい力学りきがくてき理想りそうてき形状けいじょうのため、おおくのエンジンでこの形状けいじょう使用しようされた。

代表だいひょうてきなものとしてはHemispherical(ヘミスフェリカル:半球はんきゅうじょうの~)という燃焼ねんしょうしつ形状けいじょうがそのまま名称めいしょうとなっているHEMIエンジンがある[注釈ちゅうしゃく 1]

わったところでは吸気きゅうきをOHV、排気はいきをサイドバルブでおこなうとなるローバーIOEエンジン傾斜けいしゃした平面へいめんのシリンダーヘッドと独特どくとくなピストンヘッドおよび排気はいきバルブまわりの形状けいじょうにより半球はんきゅうがた(正確せいかくにはぎゃく半球はんきゅうがた)に近似きんじした燃焼ねんしょうしつ形成けいせいする。

しかし、欠点けってんとして燃焼ねんしょうしつない流体りゅうたい効率こうりつすぎるゆえみだれりゅう形成けいせいおこないにくいというてんげられ、一部いちぶのエンジンでは吸気きゅうきバルブ以外いがいにごくちいさな補助ほじょ吸気きゅうきバルブをおくなどの手法しゅほうらんりゅう強制きょうせいてきこす対策たいさくられることもあった(三菱みつびし・MCA-JETバルブなど)。

またおおきな半球はんきゅう形状けいじょうった場合ばあい圧縮あっしゅくたかめていくにはピストンがわのピストントップをおおきくげる加工かこう不可欠ふかけつであったため、ピストンがわ重量じゅうりょう増加ぞうかきらった設計せっけいしゃによっては、後述こうじゅつたまがた燃焼ねんしょうしつ採用さいようして燃焼ねんしょうしつ燃焼ねんしょう効率こうりつ低下ていか最小限さいしょうげんおさえながら、ピストンの軽量けいりょう同時どうじ圧縮あっしゅくたかめる手法しゅほうられることもあった。

DOHCやSOHCマルチバルブ普及ふきゅうで吸排気はいきバルブ2ほんずつの4バルブ構成こうせい登場とうじょうしてくるとひらたいポペットバルブ先端せんたん半球はんきゅう形状けいじょうくずれてしまいやすいことや、半球はんきゅう曲線きょくせんわせてバルブを配置はいちするとバルブはさかく極端きょくたんひろくなってしまいがちなことからマルチバルブエンジンでは後述こうじゅつのペントルーフがた主流しゅりゅうとなった。なお、2019ねん7がつにフルモデルチェンジを実施じっしした4代目だいめダイハツ・タントから搭載とうさい開始かいしされただい4世代せだいKF-VEがた(NA)およびKF-VETがた(ターボ仕様しようは、軽自動車けいじどうしゃふくむ4りんしゃよう4バルブヘッドのガソリンエンジンとしては世界せかいはつとなる半球はんきゅうがた燃焼ねんしょうしつ採用さいようした。

RFVC
特殊とくしゅ半球はんきゅうがた燃焼ねんしょうしつ採用さいようれいとしては、本田技研工業ほんだぎけんこうぎょうオートバイ部門ぶもん1982ねんBaja_1000ようワークスレーサーとして開発かいはつしたXR500R、それに採用さいようしたRFVCRadial Four Valve Combustion Chamber/放射状ほうしゃじょう4バルブ燃焼ねんしょうしつ)がげられる。RFVCは複雑ふくざつロッカーアーム配置はいちにより、ひろはさかくの4ほんのバルブを放射状ほうしゃじょう配置はいちした事例じれいであり、しん半球はんきゅうがた燃焼ねんしょうしつ実現じつげんするとともに、バルブみち限界げんかいまでひろげていた。SOHCにおけるマルチバルブ技術ぎじゅつ先駆せんくともいえる事例じれいでもある。
この技術ぎじゅつ1983ねんXLX250Rより市販しはんしゃにも導入どうにゅうされ、のちDOHCヘッドされてCBX250RSGB250クラブマンなどのかくオンロードバイクにも搭載とうさいされた。しかし容易ようい想像そうぞう出来できるように、RFVCはシリンダーヘッドがおおきくなりやすく、とな気筒きとうあいだでバルブ開閉かいへい機構きこう同士どうし干渉かんしょうこしやすい。そのため個々ここのシリンダーが独立どくりつしているエンジン、すなわちたん気筒きとうVがた2気筒きとう水平すいへい対向たいこう2気筒きとう以外いがいには採用さいようむずかしいという、おおきな欠点けってんがあった。実際じっさいにホンダも、たん気筒きとうにしか採用さいようしていない。しかしホンダは、1つの排気はいきポートたり、1つのキャブレターと1ほんエキゾーストパイプ配置はいちするというきわめて精緻せいち機構きこう採用さいようし、たん気筒きとうながらも直列ちょくれつ2気筒きとうせまる12,000rpm以上いじょう最大さいだい回転かいてんすうほこるハイチューンエンジンとしてそのひろられた。
ただし、4ほんのバルブを放射状ほうしゃじょう配置はいちし、それによってしん半球はんきゅうがた燃焼ねんしょうしつ最大さいだいのバルブみち実現じつげんする、という発想はっそうはホンダが最初さいしょではない。1930年代ねんだいに、すくなくとも試作しさくはされたことがわかっており、1967ねんには、BMWおな発想はっそうもとづくレーシングエンジンを開発かいはつしている[1]。このM10がたエンジンは1,991ccの直列ちょくれつ気筒きとうで、2ほんずつの吸気きゅうきバルブと排気はいきバルブが、それぞれかいわせに配置はいちされるという、ターンフローでもクロスフローでもない、特殊とくしゅきゅう排気はいき方式ほうしき採用さいようしていた。バルブ開閉かいへい機構きこう同士どうし干渉かんしょうする問題もんだいは、バルブ配置はいちを(真上まうえからて)21ねじることによって解決かいけつしている。しかし複雑ふくざつ構造こうぞうわりに、後述こうじゅつのペントルーフがた燃焼ねんしょうしつの4バルブエンジンにたい明確めいかくなメリットがく、成功せいこうさくとはえなかった。
たまがた[編集へんしゅう]
フォード・302エンジンの4.9L V8シリンダーヘッド。ハートがた燃焼ねんしょうしつつOHVヘッドである

半球はんきゅうがた亜種あしゅべる形式けいしきで、燃焼ねんしょうしつ形状けいじょう複数ふくすう球面きゅうめんわせた形状けいじょうていしているもの。おおくの場合ばあい排気はいきバルブと点火てんかプラグにあわせて3つの球面きゅうめんとすることがおおかったため、燃焼ねんしょうしつハートかたちていし、ハートがた燃焼ねんしょうしつばれることもあった。

半球はんきゅうがたくらべて流体りゅうたい力学りきがくてきには不利ふり形状けいじょうであるが、ピストントップをおおきくげることなく圧縮あっしゅくたかくとることが可能かのうであり、らんりゅう形成けいせい比較的ひかくてき良好りょうこうであったことから、吸気きゅうき1・排気はいき1の2バルブ構成こうせいるシリンダーヘッドではOHV、OHC、ターンフロー、クロスフローのべつなく幅広はばひろくこの形式けいしき採用さいようされた。半球はんきゅうがた燃焼ねんしょうしつからの移行いこうれいとしては三菱みつびし・4G54エンジンにおいて、旧来きゅうらい半球はんきゅうがた燃焼ねんしょうしつ+MCI-JETバルブのわせがオーストラリアの三菱みつびし・マグナでの最終さいしゅうがたエンジンではハートがた燃焼ねんしょうしつ変更へんこうされ、結果けっかてきにMCI-JETバルブが廃止はいしできた事例じれいがあげられる。

また、バスタブがた燃焼ねんしょうしつくさびがた燃焼ねんしょうしつをプライベーターがチューンするさいにもこの形式けいしき燃焼ねんしょうしつ多用たようされた。具体ぐたいてきにはもと燃焼ねんしょうしつ一度いちどアルゴン溶接ようせつなどでめてしまい、あらためて吸排気はいきバルブ周辺しゅうへんにスキッシュエリアと半球はんきゅう形成けいせいするようにけずなおすのである。場合ばあいによってはバルブシートを一度いちどはずして、バルブ自体じたいもステムがながもの交換こうかんすることでバルブ全体ぜんたいをピストントップにちかづけ、ピストントップやときにシリンダー側面そくめんにバルブリセスをもうけることで極限きょくげんまで圧縮あっしゅく向上こうじょうさせる手法しゅほうもビッグバルブへの交換こうかんさいにはおこなわれることがあった。

STDCC
ハートがた以外いがい形状けいじょう採用さいようれいとしては、スズキオートバイ部門ぶもんが1982ねんスズキ・GS125Eから採用さいようしたSTDCCSuzuki Twin Dome Combasjon Chamber/2ドームしき燃焼ねんしょうしつ)がげられる。STDCCは点火てんかプラグをセンタープラグとして吸排気はいきバルブの中間ちゅうかん配置はいちし、吸排気はいきバルブを中心ちゅうしんに2つの半球はんきゅうならべることで、ダルマ形状けいじょう燃焼ねんしょうしつ形成けいせいされた。STDCCはおもに2バルブエンジンにたいしてひろ採用さいようされており、燃焼ねんしょうしつないらんりゅう形成けいせい良好りょうこうことから低速ていそくいきでのねばづよいトルク特性とくせいこう燃費ねんぴ実現じつげんできるとした。
TSCC
STDCCは1980ねんスズキ・GSX750E導入どうにゅうされたTSCCTwin Swirl Combasjon Chamber/2うずりゅうしき燃焼ねんしょうしつ)がベースとなっている技術ぎじゅつである。TSCCはDOHC4バルブエンジンにたまがた燃焼ねんしょうしつ概念がいねんんだ事例じれいであり、吸排気はいきバルブを中心ちゅうしんに4つの半球はんきゅうわされ、ダルマがふたならんだような形状けいじょう[1]しめことになる。TSCCは後述こうじゅつのペントルーフがた燃焼ねんしょうしつわされたニューTSCCに発展はってんし、現在げんざいスズキ・GSX-Rシリーズにもつづ採用さいようされつづけている。
ペントルーフがた[編集へんしゅう]
DOHCシリンダーヘッドのカットモデル。吸排気はいきバルブの設置せっち角度かくど(バルブはさかく)がせまくなればなるほど、ペントルーフの頂点ちょうてんたいらにちかづいてゆき、圧縮あっしゅくたかまることになる

DOHCやSOHCのマルチバルブエンジンの登場とうじょうとも登場とうじょうした形式けいしきおもに4ほんの吸排気はいきバルブ[注釈ちゅうしゃく 2]先端せんたん形状けいじょうわせて、建物たてもの屋根やねのような三角形さんかっけい形状けいじょうていした燃焼ねんしょうしつである。半球はんきゅうがたくらべて若干じゃっかん流体りゅうたい力学りきがくてきには不利ふり形状けいじょうであるが、点火てんかプラグを吸排気はいきバルブのあいだ配置はいち出来できセンタープラグ容易ようい実現じつげんでき、火花ひばな伝播でんぱ効率こうりつ非常ひじょうくなることや、バルブはさかくせまることで三角形さんかっけい頂点ちょうてんひくくして圧縮あっしゅくたかめることも可能かのうで、カムシャフトの間隔かんかくせばめることでDOHCシリンダーヘッドの小型こがた軽量けいりょう可能かのうとなることから、現在げんざいのガソリンエンジンの主流しゅりゅうえる形式けいしきとなっている。

この形式けいしき半球はんきゅうがた燃焼ねんしょうしつ同様どうよう燃焼ねんしょうしつない流体りゅうたいながれる効率こうりつすぎるゆえみだれりゅう形成けいせいおこないにくいというてんげられ、メーカーによっては吸気きゅうきバルブの片方かたがたてい回転かいてんいき作動さどうとすることで吸入きゅうにゅう空気くうき流速りゅうそくたかめてらんりゅう形成けいせいうなが機構きこう採用さいようされること(トヨタ・T-VISなど)もあった。今日きょうでは可変かへんバルブ機構きこう発達はったつにより吸気きゅうきバルブの休止きゅうし機構きこうともにバルブタイミングを可変かへんさせる手法しゅほう確立かくりつされ、こう出力しゅつりょくこう燃費ねんぴ両立りょうりつすることが可能かのうとなっている。

プレチャンバーがた[編集へんしゅう]

ディーゼルエンジンの技術ぎじゅつ由来ゆらいするふくしつしきについては、過去かこホンダCVCCエンジンなど一部いちぶ採用さいようれいがあるが、このさい採用さいよう一時いちじてきなものにとどまっていた。しかし2010年代ねんだいはいり、おもにレーシングカーようのターボエンジンにおいて「プレチャンバー」とばれるふくしつしき採用さいようするれいられるようになった。

具体ぐたいてきには、点火てんかプラグの周辺しゅうへんをキャップのようなものでおおふく燃焼ねんしょうしつ(プレチャンバー)とし、しゅ燃焼ねんしょうしつとのあいだほそいオリフィスでむすぶ。そしてしゅ燃焼ねんしょうしつにおける圧縮あっしゅく行程こうていすすむと、オリフィスを経由けいゆして混合こんごうがプレチャンバーにながむ(パッシブしきにプレチャンバーに直接ちょくせつ混合こんごうおくるアクティブしきもある)。その状態じょうたい点火てんかプラグが点火てんかすると、プレチャンバーない発生はっせいした火炎かえんがオリフィス経由けいゆしゅ燃焼ねんしょうしつにジェット噴流ふんりゅうとなってし、しゅ燃焼ねんしょうしつない混合こんごう一気いっき燃焼ねんしょうさせる[2]

プレチャンバーがたは、2014ねんからのF1使つかわれる1.6L・V6ターボエンジンで採用さいようされているほか(2014ねんメルセデス採用さいようしたのを皮切かわきりに、2017ねんまでに全車ぜんしゃ採用さいようした)、スーパーフォーミュラSUPER GT(GT500クラス)で使つかわれているNRE(Nippon Race Engine)にも2016ねんころからその技術ぎじゅつ投入とうにゅうされた[3]市販しはんしゃでは2020ねん発表はっぴょうマセラティ・MC20はじめて採用さいようされた[2]。2023ねん10がつJAPAN MOBILITY SHOWでは、日本特殊陶業にっぽんとくしゅとうぎょう既存きそん点火てんかプラグと交換こうかん可能かのうなプレチャンバープラグを参考さんこう出品しゅっぴんした[4]

ディーゼルエンジンの燃焼ねんしょうしつ[編集へんしゅう]

ディーゼルエンジン燃焼ねんしょうしつは、燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうち方式ほうしきによって、下記かき種類しゅるい大別たいべつ出来できる。ディーゼルエンジンのシリンダーヘッド下面かめんたいらで、吸排気はいきバルブのあいだにはバルブはさかくく、すべ平行へいこう配置はいちである。

直接ちょくせつ噴射ふんしゃしき[編集へんしゅう]

オープンチャンバーしきたんしつしきともばれるこの形式けいしきは、噴射ふんしゃノズルが直接ちょくせつシリンダーない燃料ねんりょう噴射ふんしゃする[注釈ちゅうしゃく 3]。そのため、シリンダーヘッドがわにはガソリンエンジンのようなへこんだ燃焼ねんしょうしつ存在そんざいせず、ピストントップのキャビティばれるへこみに燃料ねんりょう噴射ふんしゃされて燃焼ねんしょうおこなう。すなわちこのピストンキャビティが燃焼ねんしょうしつである[5]。なお、キャビティ形状けいじょうはトロイダルがたあささら)、トロイダルがたふかさら)、リエントラントがたとうがある。

また、対向たいこうピストンエンジンにはシリンダーヘッドが存在そんざいせず、対向たいこうする2のピストンかんむりめんとシリンダーかべ燃焼ねんしょうしつ構成こうせいする。シリンダーの中程なかほど燃焼ねんしょうしつとなり、この側面そくめん噴射ふんしゃノズルがそなわる直接ちょくせつ噴射ふんしゃしきである。

ふくしつしき[編集へんしゅう]

直接ちょくせつ噴射ふんしゃしきことなり、シリンダーヘッドにもうけられたふく燃焼ねんしょうしつない燃料ねんりょう噴射ふんしゃおこな形式けいしきふく燃焼ねんしょうしつ形式けいしきにより、燃焼ねんしょうしつしきうずりゅうしつしき細別さいべつできる。どちらの形式けいしきでもピストントップのへこみがしゅ燃焼ねんしょうしつばれるが、直接ちょくせつ噴射ふんしゃしきのそれにくらべるとごくあさい。しゅ燃焼ねんしょうしつたいするふく燃焼ねんしょうしつ容積ようせきは、燃焼ねんしょうしつしき場合ばあいで30 - 40 %程度ていどうずりゅうしつしき場合ばあいで70 - 80 %程度ていどである。

ふく燃焼ねんしょうしつないグロープラグ噴射ふんしゃノズルがもうけられており、寒冷かんれいでの始動しどうはグロープラグからのねつで、ふく燃焼ねんしょうしつ空気くうき事前じぜん予熱よねつすることにより始動しどう容易よういにさせて、運転うんてん開始かいし圧縮あっしゅくによってねっせられた空気くうきふく燃焼ねんしょうしつはいむことで着火ちゃっかする。着火ちゃっかした燃料ねんりょうたか流速りゅうそく火炎かえんとなってしゅ燃焼ねんしょうしつ放出ほうしゅつされる。ふく燃焼ねんしょうしつしゅ燃焼ねんしょうしつがわ開口かいこうは「噴口」とばれ、ここでながれほそしぼることで吸気きゅうき火炎かえんたか流速りゅうそくあたえて拡散かくさん燃焼ねんしょうたすけている。

直接ちょくせつ噴射ふんしゃしきくらべるとねつ損失そんしつおおきいが、すべての回転かいてんいき容易ようい安定あんていした燃焼ねんしょう状態じょうたいられ、燃焼ねんしょう時間じかんながいため燃焼ねんしょう圧力あつりょく温度おんど変化へんかおだやかで窒素ちっそ酸化さんかぶつ炭化たんか水素すいそ発生はっせいすくなく、騒音そうおん(ディーゼルノック)がひくこう回転かいてんにもてきしている。このため、コモンレール以前いぜん乗用車じょうようしゃようはじめとした小型こがただか回転かいてんがたエンジンに多数たすう採用さいようれいがある。

燃焼ねんしょうしつしき
ボア中心ちゅうしん付近ふきんに、細長ほそながくややちいさめのふく燃焼ねんしょうしつつ。この噴口付近ふきん通路つうろちいさな焼玉やきだまつものもある。
うずりゅうしつしき
半分はんぶんほどボアからはみ位置いちに、球形きゅうけいのややおおきめのふく燃焼ねんしょうしつつ。燃焼ねんしょうしつしきよりおおきくすることにより容積ようせきあたりの表面積ひょうめんせき最小さいしょうとして、シリンダーヘッドや冷却れいきゃくすいねつうばわれることをふせぎ、また、噴口をたま中心ちゅうしんからオフセットすることにより、圧縮あっしゅくふく燃焼ねんしょうしつない強力きょうりょくなスワール(よこうずりゅう)を発生はっせいし、燃焼ねんしょう効率こうりつがさらにたかめられている。ピストンがわしゅ燃焼ねんしょうしつ形状けいじょうには「ハートかたち」や「双葉ふたばかたち」があり、した火炎かえんがシリンダーないでもスワールを形成けいせいするようになっている。
日産にっさん・CDエンジンのように、噴射ふんしゃノズルからの燃料ねんりょう一部いちぶがピストントップのしゅ燃焼ねんしょうしつに「直接ちょくせつとどく、噴口よりさらに小径しょうけいの「ふく噴口」をつものがある[6]

ロータリーエンジン[編集へんしゅう]

ロータリーエンジン(ヴァンケルエンジン)の燃焼ねんしょうしつとは、うえてん付近ふきんローターやローターハウジング、サイドハウジング、点火てんかプラグでかこまれた扁平へんぺい空間くうかんす。レシプロエンジンとはことなり、ローターの回転かいてんとともに燃焼ねんしょうしつがハウジングないひろ範囲はんい移動いどうする。

ガスタービンエンジン[編集へんしゅう]

ジェットエンジン[編集へんしゅう]

ロケットエンジン[編集へんしゅう]

ロケットエンジンの燃焼ねんしょうしつ燃焼ねんしょうによる反動はんどう推進すいしんするために使用しようされる。

そともえ機関きかん[編集へんしゅう]

蒸気じょうき機関きかん[編集へんしゅう]

一般いっぱんてきにはボイラーで燃料ねんりょう燃焼ねんしょうねつみずあたえ、こうあつ蒸気じょうき機関きかん動作どうささせる。蒸気じょうき機関きかんしゃにおいては、そのうち燃料ねんりょう燃焼ねんしょうさせる空間くうかんしつばれ、そのふくしつ燃焼ねんしょうしつばれる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ なお現行げんこうのHEMIエンジンは完全かんぜん半球はんきゅうがたではなくなっている。
  2. ^ DOHCの場合ばあいは3ほん吸気きゅうきバルブ・2ほん排気はいきバルブ(=5バルブ)も混在こんざいする。またSOHCの場合ばあいは2ほん吸気きゅうきバルブ・1ほん排気はいきバルブ(=3バルブ)も混在こんざいする。
  3. ^ ポート噴射ふんしゃしきたんしつしき一種いっしゅであるが、一般いっぱんてきには直接ちょくせつ噴射ふんしゃしきにはポート噴射ふんしゃしきふくまない。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 勝利しょうりのエンジン50せん」カール・ルドヴィクセンちょ 二玄社にげんしゃ 2004ねん11がつ10日とおか発行はっこう 167ページ
  2. ^ a b F1の燃焼ねんしょう技術ぎじゅつ「プレチャンバー」をまさかマセラティがしてくるとは!しん3.0ℓV6ターボエンジンのプレチャンバー技術ぎじゅついてみる - MotorFan・2020ねん7がつ3にち
  3. ^ プレチャンバーも開発かいはつ焦点しょうてんに。“燃費ねんぴターボ”NREは最新さいしんかつ最後さいご大技おおわざか【スーパーGT驚愕きょうがくメカ大全たいぜん最終さいしゅうかい - オートスポーツ・2020ねん7がつ9にち
  4. ^ 日本特殊陶業にっぽんとくしゅとうぎょうふく燃焼ねんしょうしつき「プレチャンバープラグ」公開こうかい - Car Watch・2023ねん10がつ26にち
  5. ^ 6BB1”. 日本にっぽん自動車じどうしゃ技術ぎじゅつ330せん. 自動車じどうしゃ技術ぎじゅつかい. 2020ねん7がつ21にち閲覧えつらん
  6. ^ 杉原すぎはら邦彦くにひこ田中たなか利明としあき佐々木ささき正博まさひろ上田うえだ隆正たかまさふく噴口うずしつしきディーゼル機関きかん開発かいはつ」『日本にっぽん機械きかい学會がっかいだい91かんだい834ごう、1988ねん5がつ5にち、414-415ぺーじNAID 110002474402  - 昭和しょうわ62年度ねんど 日本にっぽん機械きかい学会がっかいしょう技術ぎじゅつしょう

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]