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T-VIS

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
インテークマニホールドにT-VIS搭載とうさいのロゴが貼付ちょうふされただい1世代せだい4A-GE。

T-VISToyota Variable Induction Systemのりゃくトヨタ自動車とよたじどうしゃが1982ねんより採用さいようした可変かへん吸気きゅうきシステムの名称めいしょう

概要がいよう

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T-VISは、かく気筒きとうに2ほんずつある吸気きゅうきバルブにたいしそれぞれ独立どくりつしたインテークマニホールドち、てい回転かいてんでは片側かたがわバタフライバルブによりじ1ほんとし、こう回転かいてんでは2ほんえる構造こうぞう作動さどうあつアクチュエータもちいており、エンジン回転かいてんすうが4,650rpmをえるとバキュームスイッチングバルブであつをアクチュエータにおくり、バタフライバルブをひらかせる[1]

これにより、てい回転かいてんではインテークマニホールドのだん面積めんせきちいさくなり、吸気きゅうき流入りゅうにゅう速度そくどがり慣性かんせいりょく充填じゅうてん効率こうりつがる(慣性かんせいきゅう効果こうか)。さらに、混合こんごうがシリンダー中心ちゅうしんたいしオフセットして流入りゅうにゅうするため、つよいスワールうず発生はっせい燃焼ねんしょう効率こうりつがる。これらにより発生はっせいトルクの向上こうじょうはかれる。こう回転かいてんではインテークマニホールドないだん面積めんせきおおきくなり、吸入きゅうにゅう抵抗ていこうがることにより充填じゅうてん効率こうりつがり、最高さいこう出力しゅつりょく向上こうじょうはかれる。

このような機構きこう登場とうじょうした背景はいけいとしては、1970年代ねんだい後半こうはんにトヨタをはじめとする自動車じどうしゃ各社かくしゃ対応たいおう苦慮くりょした自動車じどうしゃはいガス規制きせいげられる。トヨタトータルクリーンシステム熟成じゅくせいにより昭和しょうわ53ねん排出はいしゅつガス規制きせい(日本にっぽんばんマスキーほう)をクリアしたトヨタではあったが、昭和しょうわ48ねん排出はいしゅつガス規制きせい以前いぜんのフルパワーエンジンを世代せだいからの評価ひょうかけっしてかんばしいものではなかった。そのようななか、トヨタは1979ねん昭和しょうわ54ねん)よりさんげん触媒しょくばいわせてDOHC導入どうにゅうし、市場いちばにツインカム旋風せんぷうこし[2]いで1980ねんには1G-EUがた1981ねん1S-Uがた公募こうぼで「ライトウエイト(軽量けいりょう)・アドバンスト(進歩しんぽ)・スーパーレスポンス(こう応答おうとうせい)・エンジン」を意味いみするLASRE(Light-weight Advanced Super Response Engine)の愛称あいしょうけ、はいガス規制きせい低下ていかしたトヨタのスポーツイメージの回復かいふくねらった。このDOHC旋風せんぷうとLASREエンジンの集大成しゅうたいせいとして、市販しはんしゃでは一部いちぶ高級こうきゅうスポーツカーにしか採用さいよう実績じっせきかった1気筒きとう4バルブ大衆たいしゅうしゃ量産りょうさんエンジンにも展開てんかいすることを計画けいかくした[3]。DOHC 4バルブは高性能こうせいのう発揮はっきすることができるが、吸気きゅうきポートやインテークマニホールドの内径ないけいひろげていくとてい回転かいてん吸気きゅうき流速りゅうそく低下ていかしてエンジン出力しゅつりょく低下ていか、つまり低速ていそくトルクの低下ていかまねき、低速ていそくトルクの向上こうじょうねらったほそせま吸気きゅうきポートはこう回転かいてん出力しゅつりょく低下ていか、つまり最大さいだい馬力ばりき低下ていか回転かいてんすう頭打あたまうちといったを事態じたいまねいてしまう。スポーツカーではドライバーのうでにより低速ていそくトルクのほそさをカバーできるが、老若男女ろうにゃくなんにょあらゆる世代せだい運転うんてんしうる大衆たいしゅうしゃではこのような欠点けってんはできるだけ解消かいしょうしなければならない。T-VISはこのような状況じょうきょう解決かいけつする手法しゅほうとして考案こうあんされたものである[4]

ヤマハ・コミュニケーションプラザ所蔵しょぞうの1982ねんだい1世代せだい1G-GE。12ほんかれたT-VISきインテークマニホールドが確認かくにんできる。

最初さいしょ採用さいようされたエンジンは1982ねんトヨタ・1G-GE[5]、その1984ねん4A-GE3S-GEなどにも展開てんかいされた。公式こうしきにはれられていないが[6]、T-VISは当時とうじのトヨタのスポーツエンジン(4A-GEなど"-G"がくエンジン)の4バルブシリンダーヘッドとともヤマハ発動機やまははつどうき開発かいはつしたものである。より正確せいかくにはトヨタが開発かいはつし、1978ねん米国べいこく特許とっきょ取得しゅとくしたダウンドラフトしきキャブレターけの「出力しゅつりょくおうじて2系統けいとう吸気きゅうきポートをえる機構きこう[7]や、本田技研工業ほんだぎけんこうぎょうが1979ねん米国べいこく特許とっきょ取得しゅとくした「出力しゅつりょくおうじて2つの吸気きゅうきバルブをえる3バルブエンジン」[8]引用いんようしたうえで、ヤマハが1981ねんあらためて欧州おうしゅう特許とっきょ取得しゅとくしたもの[9]であり、T-VISバルブユニットにはヤマハの社名しゃめいこくされている[10]。その1G-GEでは不等ふとうちょうインテークマニホールドがた採用さいようされ、てい回転かいてんがわインテークマニホールドがながくされ、脈動みゃくどう効果こうか利用りようしさらに充填じゅうてん効率こうりつおおきくすることができた。

メーカーでは、この時期じき日産にっさんRB20DE[11]CA16DEGA15Sなどに、同様どうよう可変かへん吸気きゅうきシステムのNICSNissan Induction Control System)を採用さいようしている[12]。また、おなじトヨタないでは1983ねんにT-VISに構造こうぞう類似るいじしたあつもちいたインテークマニホールド切替きりかえ機構きこうもちいて、おもてい回転かいてんのみにシリンダーないにスワール(うずりゅう)を発生はっせいさせることを目的もくてきとしたスワールコントロールバルブ(SCV)を3A-LU採用さいようしている[13]機械きかいてき手法しゅほうでスワールを発生はっせいさせる機構きこう三菱自動車工業みつびしじどうしゃこうぎょうMCA-JET存在そんざいしていたが、SCVはこう回転かいてんには全開ぜんかい状態じょうたいとなることでスワールの発生はっせいめ、最大さいだい吸気きゅうき効率こうりつ発揮はっきさせられる利点りてんがあった[14]

トヨタは1987ねんしきトヨタ・カムリ1VZ-FEより可変長かへんちょうインテークマニホールド英語えいごばん概念がいねんれたACIS英語えいごばんハイメカツインカムとも導入どうにゅうし、1991ねん以降いこう可変かへんバルブ機構きこうVVT-i導入どうにゅうされたことにより、それ以降いこうはT-VISという名称めいしょうでは採用さいようされなくなった[15]

車両しゃりょうチューニングにおけるT-VIS

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T-VISのバタフライバルブはこう回転かいてんまで使用しようしない場合ばあいに、ブローバイ(燃焼ねんしょうガス)のかえしによるカーボン堆積たいせきによりうごきがわるくなりレスポンスが悪化あっかしたり、とき完全かんぜん固着こちゃくするトラブルも発生はっせいし、チューニングカーではT-VISをはずしたり最初さいしょから全開ぜんかい状態じょうたい固定こていする改造かいぞうおこなわれたこともあった。てい回転かいてんにはじているバタフライバルブがわ吸気きゅうきバルブかさ燃料ねんりょう噴射ふんしゃ装置そうちからの噴射ふんしゃによる洗浄せんじょう効果こうか期待きたいできないため、カーボンが非常ひじょう堆積たいせきしやすく、吸気きゅうきポートの有効ゆうこう面積めんせきってしまい性能せいのう低下ていかこしやすいことどころであった。あつアクチュエータの開閉かいへい制御せいぎょECUおこなわれており、ROMチューンにより作動さどう回転かいてんすう変更へんこうおこなえるが、2000年代ねんだいまではプライベートチューナーによるECUのさいセッティングの手段しゅだんきわめて限定げんていされており、T-VISの機構きこうのこしたままカムシャフト交換こうかんなどをおこなうと、バルブえの回転かいてんすうバルブタイミングたいして不適合ふてきごうとなり、かえって性能せいのう悪影響あくえいきょうあたえることもチューニングカーでT-VISが忌避きひされた理由りゆうでもあった。

本来ほんらいT-VISが搭載とうさいされたトヨタ・4A-GEトヨタ・1G-GEなどは吸気きゅうきポートの形状けいじょうはT-VISが存在そんざいすることを前提ぜんていポート加工かこうされており、単純たんじゅんにT-VISをはずことはあまりのぞましい行為こういであるとはいえない。そのため、トヨタ・AE86の4A-GEではシリンダーヘッドインテークマニホールドすべてを、T-VISが廃止はいしされた世代せだいであるAE92後期こうきがたかわそうする改造かいぞうおこなわれたりもしており、AE101で4A-GEが5バルブされる直前ちょくぜん一時期いちじきにT-VISが廃止はいしされた事実じじつは、4A-GEユーザーのあいだに「T-VISは失敗しっぱいさく」というあく印象いんしょうのこすことにもつながってしまった[16]

しかし、2000年代ねんだい以降いこうノートパソコンなどを利用りようするサブコンピュータでプライベーター英語えいごばんでも容易よういにECUのセッティングがおこなえるようになったことにより、T-VISのユーザーによる作動さどうタイミングの最適さいてき容易よういおこなえるようになり[17]、1980年代ねんだい当時とうじ量産りょうさんエンジンにおけるアルミ鋳造ちゅうぞう技術ぎじゅつ限界げんかいからしょうじている不適切ふてきせつ内部ないぶ形状けいじょう修正しゅうせいなど[18]、メカチューンてき手法しゅほうふくめたT-VISのさい評価ひょうかおこなわれてきている。

なお、1GエンジンではT-VISがツインターボの1G-GTEにも採用さいようされ、スーパーチャージャーの1G-GZEのみがT-VIS採用さいようであった。自然しぜん吸気きゅうきエンジンはハイメカツインカムの1G-FEにえられた。トヨタ・3S-GEは1984ねんからT-VISを採用さいようし、自然しぜん吸気きゅうきは1990ねんにACISにえられるかたち姿すがたしている。ターボエンジンの3S-GTEでは1993ねんだい2世代せだいまでT-VISが採用さいようされており、同年どうねんまつST205がたセリカ登場とうじょうと3S-GTEエンジンのだい3世代せだい移行いこうともないT-VISが廃止はいしされているが、3Sエンジンや1GエンジンではT-VISのはずしは4A-GEほど活発かっぱつではない。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ ブライアン・ロン『Toyota MR2 Coupe & Spyders』、ベローチェ・パブリッシング英語えいごばん、2013ねん11月11にち
  2. ^ 排出はいしゅつガス規制きせい低減ていげん技術ぎじゅつはなし(その5 ガソリンエンジンの場合ばあい:マスキーほう以降いこうふく館長かんちょう 成田なりたねんしげる - あかレンガ通信つうしん Vol.79 - 産業さんぎょう技術ぎじゅつ記念きねんかん
  3. ^ だい2 だい2しょう だい4せつ - だい6こう レーザーエンジンの開発かいはつ - トヨタ自動車とよたじどうしゃ75ねん
  4. ^ Toyota T-VIS System Variable Air Induction Systems - turbomr2.com
  5. ^ 技術ぎじゅつ開発かいはつ エンジン - トヨタ自動車とよたじどうしゃ75ねん
  6. ^ 1982ねん TOYOTA 1G-GEU - ヤマハ発動機やまははつどうき
  7. ^ US 4271801  "Internal combustion engine with twin intake ports for each cylinder"
  8. ^ US 4317438  "High power output engine"
  9. ^ EP 0054964  "Multi-intake valve type internal combustion engine"
  10. ^ 1G-GT インテークマニホールド&TVIS ~研究けんきゅう実験じっけんしつ - 自動車じどうしゃ修理しゅうりマニア
  11. ^ 日産にっさん PLASMA エンジン RB20(DET) オーバーホール - AutoGarage TAMAI
  12. ^ B12 brochures - datsunclubuk.proboards.com
  13. ^ ●5代目だいめカローラのエンジン - カローラはなかんむり!
  14. ^ US 4499868  "Intake device of an internal combustion engine"
  15. ^ Vがた6気筒きとうガソリンエンジン(1VZ-FE) - トヨタ自動車とよたじどうしゃ75ねん
  16. ^ About T-VIS
  17. ^ いまさらT-VISのセッティングなんて必要ひつようないでしょうが・・・ - しん・ALEXのハチロク生活せいかつ
  18. ^ 見直みなおされるT-VIS - 工業こうぎょうてきエンジンチューニング

関連かんれん項目こうもく

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