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前輪ぜんりん駆動くどう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

前輪ぜんりん駆動くどう(ぜんりんくどう、英語えいご: front wheel drive略称りゃくしょう: FWD)は、車輪しゃりんゆうする輸送ゆそう機器きき駆動くどう方式ほうしきひとつで、前後ぜんご車輪しゃりんのうち前方ぜんぽう車輪しゃりん駆動くどうする方式ほうしきである。対比たいひされる駆動くどう方式ほうしきこう駆動くどう

自動車じどうしゃでは駆動くどうちか車体しゃたい前方ぜんぽうにエンジンを搭載とうさいされたものがおおく、その場合ばあいフロントエンジン・フロントドライブ (FF: Front-engine Front-drive) 方式ほうしきばれる。ほん記事きじではとく注釈ちゅうしゃくがないかぎり、フロントエンジン・フロントドライブ方式ほうしきについての記述きじゅつとする。

概要がいよう

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フロントエンジン・フロントドライブ方式ほうしき概念がいねん

21世紀せいき初頭しょとう時点じてんでは、乗用車じょうようしゃ中心ちゅうしんとするよんりん自動車じどうしゃひろもちいられる。とくに4気筒きとう以下いかのエンジンをんでいるしょう中型ちゅうがた乗用車じょうようしゃのほとんどは前輪ぜんりん駆動くどう、およびそれを基本きほんとしたよんりん駆動くどうしゃである。近年きんねん大型おおがたしゃ高級こうきゅうしゃ一部いちぶでもられるようになっている。

一方いっぽうでそれ以外いがいもの具体ぐたいてきには大型おおがたしゃ高級こうきゅうしゃ専用せんよう設計せっけいスポーツカー商用しょうようしゃ(バン・トラック・重機じゅうきなど)、バギー自転車じてんしゃオートバイなどはこう駆動くどうまたはそれをベースにしたよんりん駆動くどうりょうじく駆動くどう主流しゅりゅうで、前輪ぜんりん駆動くどうすくない。操舵そうだ駆動くどうの2つの機能きのう同一どういつ車軸しゃじくわせるのは本来ほんらい自然しぜんとはがたいものであるが、しょう中型ちゅうがた市販しはん乗用車じょうようしゃ市場いちばにおける熾烈しれつ技術ぎじゅつ競争きょうそう市場いちばのニーズにより実用じつようレベルに昇華しょうかされて、こう駆動くどうわって普及ふきゅうした特殊とくしゅ駆動くどう形式けいしきであるともえる。

トランスミッションエンジン搭載とうさい方法ほうほうは1970年代ねんだい以降いこうおもよこきエンジン配置はいちもちいられるようになっているが、それ以前いぜんからの歴史れきしがあるたてきエンジンれい若干じゃっかんすうのこっており、スバルインプレッサひとしがある。

なおリアエンジン・フロントドライブ方式ほうしき(RF)は、公道こうどうはしれるような自動車じどうしゃではこのレイアウトにする利点りてんがないため存在そんざいしない。しかし、二輪にりん駆動くどうフォークリフトでは、運転うんてんせき下部かぶ後部こうぶにエンジンを搭載とうさい前輪ぜんりん駆動くどうする方式ほうしき(MFもしくはRF)が主流しゅりゅうである。これは用途ようとじょうバックで運転うんてんすることがおおいことと、おもいエンジンを積荷つみにカウンターウエイトとして利用りようできるからである。また戦車せんしゃでもかさ変速へんそく前部ぜんぶ搭載とうさい前輪ぜんりん駆動くどうとしたRFに相当そうとうするものが存在そんざいする。

ミッドシップエンジン・前輪ぜんりん駆動くどう(MF)はリアミッドシップではやはり一般いっぱんてき自動車じどうしゃには存在そんざいしないが、「FFミッドシップ」というフロントミッドシップの一種いっしゅとしてなら存在そんざいする(後述こうじゅつ)。

オートバイオートさんりん場合ばあい前輪ぜんりん真上まうえないし側面そくめんにエンジンを搭載とうさいし、チェーン駆動くどうもしくはタイヤハブをローラーで摩擦まさつ駆動くどうする前輪ぜんりん駆動くどうがあったが、操縦そうじゅうせい制約せいやく駆動くどう摩擦まさつりょくるための荷重かじゅう不足ふそくによって一般いっぱんはしなかった。簡易かんい車両しゃりょう主流しゅりゅうめたこれら前輪ぜんりん駆動くどうオートバイのなかでも特異とくい例外れいがいてき大型おおがたしゃドイツのレースようオートバイのメゴラドイツばん・1921で、640 ccのほしがた5気筒きとうエンジンを前輪ぜんりんハブない搭載とうさい[注釈ちゅうしゃく 1]変速へんそくやクラッチもなしに前輪ぜんりん直接ちょくせつ駆動くどうしたきわめて異様いようなオートバイであった。

自転車じてんしゃチェーンによるのち駆動くどう確立かくりつされる以前いぜんの19世紀せいきに、前輪ぜんりん直接ちょくせつペダル駆動くどうするものが主流しゅりゅうだった。こう駆動くどうしゃ普及ふきゅうしてからは絶滅ぜつめつしたが、リカンベント一部いちぶ補助ほじょ動力どうりょく自転車じてんしゃ補助ほじょ動力どうりょくなどで、前輪ぜんりん駆動くどうするものが出現しゅつげんしている(この場合ばあいこうあわせて前輪ぜんりん「も」駆動くどうする自転車じてんしゃなので、くわしくはりん駆動くどう自転車じてんしゃ参照さんしょう)。

特徴とくちょう

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長所ちょうしょ

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エンジンやトランスミッションなどのおもいコンポーネントるい前方ぜんぽう集中しゅうちゅうするため、いわゆるフロントヘビー英語えいごばん前輪ぜんりん荷重かじゅうこう荷重かじゅうよりおおきい)状態じょうたいとなる[注釈ちゅうしゃく 2]。そのため直進ちょくしん安定あんていせいたかく、あめゆき、オフロードなどの悪条件あくじょうけんでも安定あんていせいすぐれる。りん駆動くどうなかではリアエンジン・こう駆動くどう(RR)方式ほうしきつぎトラクションやすい。

床下ゆかしたプロペラシャフト独立どくりつしたどう装置そうち必要ひつようとせず、駆動くどうりょく負担ふたんしないリアサスペンションの構造こうぞう簡素かんそできる。これによって車両しゃりょう重量じゅうりょう軽減けいげんや、ていゆか平床ひらとこによる居住きょじゅうせい積載せきさいせい向上こうじょうはかれる。

よこきエンジンの場合ばあい伝達でんたつじくがすべて平行へいこうであることから、伝達でんたつ損失そんしつすくなくはぶけ燃費ねんぴ走行そうこうにもくとされ、内燃ないねん機関きかんもちいたてい燃費ねんぴしゃ(いわゆるエコカー)にも積極せっきょくてき採用さいようされる。またパワートレインしょうスペースにより、車体しゃたいちょう短縮たんしゅくくるましつ拡大かくだい容易よういである。

近年きんねんではパワートレインモジュールによって、時間じかん短縮たんしゅく車種しゃしゅえた流用りゅうよう容易よういとしている。これによりおおくの実験じっけん結果けっかられ、開発かいはつ期間きかん短縮たんしゅく寄与きよしている。まれにパワートレインモジュールから操舵そうだ機構きこうをオミットして、こう駆動くどうミッドシップしゃ駆動くどうけい転用てんようされたこともあった。

短所たんしょ

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駆動くどうりょく操舵そうだ同時どうじ前輪ぜんりん負担ふたんするため、こう比較ひかくして前輪ぜんりん摩耗まもうはげしく、駆動くどうりょくちゃく力点りきてん操舵そうだちゃく力点りきてんのずれによるワンダリング発生はっせいしやすい。また、コーナリングにはアンダーステア特性とくせいタックイン傾向けいこうつよしょうじるため、くせつよ挙動きょどうしめす。サスペンションとタイヤの改良かいりょうにより、実用じつようじょうはほぼ問題もんだいのないレベルの操縦そうじゅうせいているが、駆動くどう方式ほうしきくらべた場合ばあい絶対ぜったいてき運動うんどう性能せいのうではおとる。

前述ぜんじゅつのとおりフロントヘビーという特性とくせいゆえに、こう荷重かじゅうがかかる加速かそく登坂とさかにはトラクションが不足ふそくしがちで、こう出力しゅつりょくしゃには不向ふむきとされる[1]。さらに、凍結とうけつとくくだざか)ではこう駆動くどうくらべてブレーキングでバランスをくずしやすい。積雪せきせつおよび寒冷かんれいではスタッドレスタイヤと金属きんぞくせいチェーンを併用へいようしたり、前輪ぜんりんだけをスパイクタイヤ交換こうかんするユーザーも存在そんざいする。

自在じざい継手つぎてもちいる構造こうぞうから前輪ぜんりんかくおおきくれず、旋回せんかい半径はんけい方式ほうしきくらべておおきくなりがちでまわしがわるい。これの克服こくふくには特殊とくしゅ構造こうぞうひとしそくジョイントをあたえる必要ひつようがある。なお、自在じざい継手つぎてもちいない前輪ぜんりん駆動くどうこう操舵そうだのフォークリフトは操舵そうだかくおおきくれるため、旋回せんかい半径はんけいちいさくまわしがい。

よこきエンジンの場合ばあい操舵そうだちゅう角度かくどのついた自在じざい継手つぎてちからくわわることによりトルクステア発生はっせいする。左右さゆうジョイントの位置いち車体しゃたい中央ちゅうおうからどういち距離きょり配置はいちしたり、ドライブシャフトを左右さゆう均等きんとうながさにすることで対処たいしょしている。また、近年きんねんではパワーステアリングの普及ふきゅうでこの問題もんだいさら軽減けいげんされている。

こう駆動くどうして低級ていきゅう振動しんどうやすいため、高級こうきゅうしゃ採用さいようされにくい傾向けいこうがある。よこきエンジンの場合ばあい車体しゃたい方向ほうこうはたら振動しんどう(エンジンによる振動しんどうスナッチ)をおさえることはむずかしい。しかし、近年きんねん普及ふきゅうした電子でんし制御せいぎょエンジンマウントは振動しんどう減少げんしょうおおきく貢献こうけんしている。

また、乗用車じょうようしゃ直列ちょくれつ6気筒きとう以上いじょうのエンジンをよこ配置はいちする場合ばあいはスペースのめんから実用じつようじょう制約せいやくともなう。

歴史れきし

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キュニョーの砲車ほうしゃ

最初さいしょ前輪ぜんりん駆動くどうといえるくるまは、1769ねんつくられた世界せかいはつ自動車じどうしゃでもあるキュニョーの砲車ほうしゃであった。キュニョーの砲車ほうしゃまえ1りんこう2りんさんりん自動車じどうしゃ前部ぜんぶ動力どうりょくげん蒸気じょうき機関きかん)を前輪ぜんりん駆動くどうした。

この当時とうじはそもそも比較ひかくする対象たいしょうがなかった(世界せかい最初さいしょ自動車じどうしゃのため、参考さんこうとすべきほか方式ほうしき存在そんざいしなかった)ために前輪ぜんりん駆動くどうこう駆動くどうという概念がいねん自体じたい存在そんざいしなかったが、キュニョーが駆動くどう操舵そうだけい前方ぜんぽう集中しゅうちゅうさせた意図いとは、当時とうじ荷車にぐるま同様どうよう固定こてい2りんとした後部こうぶ車台しゃだいじょう大砲たいほう搭載とうさいするためであり、前輪ぜんりん駆動くどうのメリットのひとつであるスペース効率こうりつ当時とうじからすでに企図きとされていたともえる。このため、前輪ぜんりん駆動くどう自動車じどうしゃ歴史れきしなかでもっともふる駆動くどう方式ほうしきであるが、こう駆動くどうくらべて技術ぎじゅつてき障害しょうがいおおく、蒸気じょうき自動車じどうしゃやその内燃ないねん機関きかんしき自動車じどうしゃではなかなか主流しゅりゅうになりなかった[2]

自動車じどうしゃ本格ほんかくてき普及ふきゅうはじめた19世紀せいきまつはプロペラシャフトの自在じざい継手つぎてかんする技術ぎじゅつがまだ発達はったつで、旋回せんかいかじかくいた前輪ぜんりん円滑えんかつ駆動くどうりょく伝達でんたつする手段しゅだんとぼしかった。1950年代ねんだいまでの前輪ぜんりん駆動くどうしゃは、こう駆動くどう方式ほうしきのプロペラシャフトにも使つかわれる十字じゅうじがたジョイント(カルダンジョイント)を2つわせた「ダブルカルダン・ジョイント」や、その圧縮あっしゅく形態けいたいである「トラクタ・ジョイント」「Lがたジョイント」で対応たいおうしていたが、それらはいずれも耐久たいきゅうせい円滑えんかつせいめん不完全ふかんぜんであった。金属きんぞくボールをジョイントない複数個ふくすうこ配置はいちし、ボールのめん接触せっしょく利用りようすることでジョイントが屈曲くっきょくしても駆動くどうりょくひとしそく伝達でんたつできるようにした「ボール・ジョイント」の着想ちゃくそう自体じたいはすでに1920年代ねんだいからあらわれており、1930年代ねんだいには「ワイス・ジョイント」「ツェッパ・ジョイント」などとして実用じつようされていたが、精密せいみつ加工かこう必要ひつようとするためきわめて高価こうか採用さいよう一部いちぶ高級こうきゅうしゃかぎられ、生産せいさんせい耐久たいきゅうせいにも課題かだいかかえていたことから普及ふきゅうにはいたらなかった[2]

このため、初期しょき前輪ぜんりん駆動くどうしゃはジョイント技術ぎじゅつ発達はったつ普及ふきゅう条件じょうけんであった。その改良かいりょうは、むしろ前輪ぜんりん駆動くどうしゃよりも先行せんこうして普及ふきゅうした、こう駆動くどう構造こうぞう基礎きそとするパートタイムがたよんりん駆動くどうくるま前輪ぜんりんようジョイントの改良かいりょう発展はってんによってたすけられためんがある。

ぜん1りんのオートバイやさんりん自動車じどうしゃでは、小型こがたのガソリンエンジンを直上ちょくじょう搭載とうさいし、チェーン[よう曖昧あいまい回避かいひ]駆動くどう車輪しゃりん直接ちょくせつローラー駆動くどうする軽便けいべんながら原始げんしてき前輪ぜんりん駆動くどう事例じれいが20世紀せいき初頭しょとうからあらわれているが、エンジンの大型おおがた振動しんどうめん制約せいやくおおく、こう駆動くどうのオートバイや三輪車さんりんしゃたいして優位ゆういられなかったために実用じつようれいはごく小型こがたてい出力しゅつりょく車種しゃしゅ限定げんていされ、傍系ぼうけい技術ぎじゅつとどまっている。

初期しょき前輪ぜんりん駆動くどうしゃ

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ミラー・レーサー

20世紀せいき初頭しょとうだいいち世界せかい大戦たいせんのち高速こうそく戦車せんしゃ開発かいはつ成功せいこうおさめるアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく発明はつめいジョン・W・クリスティーが、ガソリン前輪ぜんりん駆動くどうしゃ開発かいはつ先鞭せんべんをつけた。クリスティーは1904ねん以降いこうやく10年間ねんかんにわたって特異とくい前輪ぜんりん駆動くどうしゃ設計せっけいみ、1905ねんヴァンダービルトはい1906ねんフランスグランプリなど、初期しょきだいレースにもさかんに参加さんかした。クリスティーの前輪ぜんりん駆動くどうしゃ巨大きょだいVがた4気筒きとうエンジンを車両しゃりょう前部ぜんぶよこきし、そのエンジンのクランクシャフト両端りょうたんにクラッチをかいして直接ちょくせつ左右さゆう前輪ぜんりん接続せつぞくするという、変速へんそく搭載とうさいしないきわめて粗野そや構造こうぞうであった(ただしスライディングピラーしき前輪ぜんりん独立どくりつ懸架けんかきであった)。最大さいだい排気はいきりょう19,981 ccにもおよんだだい出力しゅつりょくエンジンによって高速こうそく走行そうこう実現じつげんしたが、操縦そうじゅうむずかしく、クリスティー本人ほんにんふく運転うんてんしゃ重傷じゅうしょう事故じこ多発たはつし、死者ししゃている。

その、クリスティーは1909ねん市販しはん企図きとしたタクシーけの前輪ぜんりん駆動くどうしゃ開発かいはつした。それははるか後年こうねんのジアコーサ方式ほうしきにもた、エンジンとトランスミッションをよこきで直列ちょくれつ配置はいちし、真下ましたぜん車軸しゃじく動力どうりょく伝達でんたつする手法しゅほう採用さいよう前輪ぜんりん独立どくりつ懸架けんか採用さいようしていた。さらに1912ねんには、既存きそん馬匹ばひつ牽引けんいんしき蒸気じょうき消防車しょうぼうしゃ前方ぜんぽう前輪ぜんりん駆動くどう走行そうこうユニットをけるタイプのはし消防車しょうぼうしゃ開発かいはつした。しかしクリスティーの開発かいはつした各種かくしゅ野心やしんてき前輪ぜんりん駆動くどうしゃは、当時とうじ技術ぎじゅつ水準すいじゅんたいして着想ちゃくそう高度こうどすぎたうえ商業しょうぎょうてきにも高価こうかで、いずれも成功せいこうしなかった。クリスティーはだいいち世界せかい大戦たいせんちゅう戦車せんしゃ開発かいはつ注力ちゅうりょくするようになり、前輪ぜんりん駆動くどうしゃ開発かいはつからははなれいった。

1920年代ねんだいには、変速へんそくどう装置そうち一体化いったいかしたトランスアクスルそなえるより現実げんじつてき前輪ぜんりん駆動くどうしゃ出現しゅつげんした。四輪よんりん自動車じどうしゃ前輪ぜんりん駆動くどうかんする理論りろんてき解析かいせきがいしてとぼしい状態じょうたいであったが、感覚かんかくてきに「こうによる推進すいしんよりも、前輪ぜんりんによる牽引けんいんほう安定あんていせいすぐれているであろう」とかんがえた技術ぎじゅつしゃたちが、レーシングカーに前輪ぜんりん駆動くどう導入どうにゅうしていた。1925ねんから1926ねんにかけて、アメリカの自動車じどうしゃ設計せっけいしゃであるハリー・ミラー英語えいごばんによる1.5 L 8気筒きとうエンジンの「ミラー・レーサー」と、フランスの技術ぎじゅつしゃジャン=アルベール・グレゴワールフランス語ふらんすごばんおよびピエール・フナイユ (Pierre Fenaille) による1.1 L 4気筒きとうエンジンの「トラクタ・ジェフィ (Tracta Gephi)」がおくされた。いずれもてい重心じゅうしんシャーシときゅう高性能こうせいのうエンジンとのわせで潜在せんざい能力のうりょくたかく、前者ぜんしゃインディ500すう年間ねんかんにわたって上位じょうい入賞にゅうしょう後者こうしゃル・マン24あいだレースに1927ねん設計せっけいしゃ自身じしん完走かんそう、1930ねんには1,100 ccクラスの12入賞にゅうしょう達成たっせいするなど、サーキットですぐれた成績せいせきおさめた。

コード・L29

この実績じっせきかして、ミラーは自動車じどうしゃディーラーのエレット・ロヴァン・コードの依頼いらい大型おおがた高級こうきゅうしゃコード英語えいごばん・L29」(1929ねん)を、グレゴワールは「トラクタ英語えいごばん」の市販しはんモデル(1927ねん)をそれぞれ開発かいはつしたが、いずれも少量しょうりょう生産せいさんわっている[注釈ちゅうしゃく 3]

F1前身ぜんしんとなるグランプリレースにも、英国えいこくのアルヴィス・カーが1927ねん英国えいこくグランプリに前輪ぜんりん駆動くどうしゃを2だいエントリーさせたが、マシントラブルによりどちらも出走しゅっそうできなかった[3]

どきおなじくして、ミラーの成功せいこう刺激しげきされたアメリカの大手おおて自動車じどうしゃメーカーが前輪ぜんりん駆動くどう方式ほうしき検討けんとうするようになるが、ジョイントの問題もんだいから頓挫とんざした。

これらをふくめてだい世界せかい大戦たいせん以前いぜん開発かいはつされた初期しょき前輪ぜんりん駆動くどうしゃおおくが商業しょうぎょうてき技術ぎじゅつてき成功せいこうしなかったのは、前輪ぜんりん駆動くどうするジョイントが円滑えんかつせい耐久たいきゅうせいめん未熟みじゅくであったことや、前輪ぜんりん車体しゃたい最先端さいせんたんき、エンジンはそれより後方こうほうたてきするという、どう時代じだいのち駆動くどうしゃ影響えいきょうされたレイアウト(いわゆるフロントミッドシップ)を採用さいようしており、駆動くどう荷重かじゅう不足ふそく十分じゅうぶん駆動くどうりょくられなかったためである。これは発進はっしん登坂とさかにおいて顕著けんちょ問題もんだいとなった。ぜん車軸しゃじく車体しゃたい最先端さいせんたん位置いちしたコード・L29の場合ばあい前後ぜんご荷重かじゅう比率ひりつは38:62で、駆動くどうである前輪ぜんりん荷重かじゅう不足ふそくはなはだしかった。また、ジョイントの制約せいやくから回転かいてん半径はんけいおおきくなった。

これらとはべつに、1920年代ねんだいのアメリカでは前輪ぜんりん駆動くどうおもとなるフォークリフトの開発かいはつ普及ふきゅうはじまった。

前輪ぜんりん駆動くどうしゃ普及ふきゅう

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DKW・F1

大衆たいしゅうけの量産りょうさん前輪ぜんりん駆動くどうしゃは、1931ねんにドイツで開発かいはつされた500 ccエンジン搭載とうさいの「DKW・F1」がその嚆矢こうしとなった。DKWの成功せいこうつづいて、アドラーも1932ねん発売はつばい小型車こがたしゃ「トルンプ」で前輪ぜんりん駆動くどう採用さいよう1933ねんにはDKWとおなじアウトウニオン・グループのアウディから、前輪ぜんりん駆動くどう中型ちゅうがたしゃアウディ・UW 220発売はつばいされた。リアエンジン流行りゅうこうしていた当時とうじのドイツであったが、アウトウニオンとアドラーは小型車こがたしゃでの前輪ぜんりん駆動くどう傾倒けいとうし、他方たほうでは1949ねんサーブ・92や1957ねんトラバントなど、社会しゃかい主義しゅぎこくのメーカーにも影響えいきょうあたえた。

シトロエン・トラクシオン・アバン

ドイツでのトレンドはフランスにもした。1934ねんシトロエンから発表はっぴょうされた中型ちゅうがたしゃトラクシオン・アバンフランス語ふらんすごで「前輪ぜんりん駆動くどう」の意味いみ正式せいしきくるまめいは「7CV」)[4]は、従来じゅうらい同様どうようたてきエンジンしゃではあったが、前輪ぜんりん駆動くどうのメリットを最大限さいだいげんかし、ぜん金属きんぞく車体しゃたい軽量けいりょうていゆか構造こうぞうなどの先進せんしん設計せっけい導入どうにゅうして高性能こうせいのう達成たっせい1957ねんまでなが生産せいさんされた。だい世界せかい大戦たいせん以前いぜん前輪ぜんりん駆動くどうしゃとしてはもっと成功せいこうした事例じれいえる。以後いごシトロエン前輪ぜんりん駆動くどう先駆せんくメーカーとして、ほとんどの車種しゃしゅ前輪ぜんりん駆動くどう採用さいようする当時とうじとしては稀有けうなメーカーへと変貌へんぼうしていった。

また、パナールしゃDBしゃが、軽量けいりょう・コンパクトなボディをかした前輪ぜんりん駆動くどうのスポーツカーやレーシングカーを次々つぎつぎ開発かいはつしており、一定いってい成功せいこうおさめている。

どう時期じきこう駆動くどうしゃにも共通きょうつうして、車両しゃりょう前方ぜんぽうに50%かそれ以上いじょう荷重かじゅうをかけて直進ちょくしん安定あんていせいたかめるアンダーステアかた重量じゅうりょう配分はいぶん普及ふきゅうするようになり、小型こがた前輪ぜんりん駆動くどうしゃではエンジンをぜん車軸しゃじくじょうぜん車軸しゃじく前方ぜんぽうへのオーバーハングに配置はいちして駆動くどうりょく不足ふそく克服こくふくする傾向けいこうしょうじた。1955ねんシトロエン・DSでは、前輪ぜんりん荷重かじゅう比率ひりつを70%ちかくにまでたかめて十分じゅうぶん駆動くどうりょく確保かくほしたほか、1960年代ねんだい富士重工業ふじじゅうこうぎょうげん・SUBARU)が前輪ぜんりん駆動くどう導入どうにゅうけた研究けんきゅう開始かいししたさいには、実車じっしゃもちいた試験しけんによって「前輪ぜんりん荷重かじゅう比率ひりつ60%程度ていど以上いじょう確保かくほできれば、こう駆動くどうしゃ遜色そんしょくない実用じつよう駆動くどうりょくられる」ことを確認かくにんしている。

これによってだい世界せかい大戦たいせんいたり、ヨーロッパの小型こがた乗用車じょうようしゃ中心ちゅうしんに、つづとうそくジョイントの性能せいのう問題もんだいかかえながらも徐々じょじょ前輪ぜんりん駆動くどうひろまっていった。

よこきエンジン

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イシゴニス方式ほうしきひとしそくジョイント

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よこきエンジンによる前輪ぜんりん駆動くどう概念がいねん
よこきエンジン構造こうぞう採用さいようしたミニのエンジンルーム

世界せかい大衆たいしゅうしゃ前輪ぜんりん駆動くどうひろ普及ふきゅうするきっかけをつくったのは、1959ねん発表はっぴょうされたイギリスBMCミニとされる。それまで前輪ぜんりん駆動くどうたてきエンジン配置はいち主流しゅりゅうであったが、ミニはよこきエンジン配置はいちとし、そのしたトランスアクスルいてそう配置はいちする方式ほうしき採用さいようした。このよこきエンジンによるそう構造こうぞうは、開発かいはつしゃアレック・イシゴニスってイシゴニス方式ほうしきばれる。

ミニがこのような配置はいちったのは、前後ぜんごちょうがそれほどみじかくない既存きそん直列ちょくれつ4気筒きとうエンジンをコンパクトなエンジンルームにおさめねばならない制約せいやくがあったからである。それ以前いぜんにも直列ちょくれつ2気筒きとうエンジンの前輪ぜんりん駆動くどうしゃよこきエンジン配置はいち先例せんれいはあったが、直列ちょくれつ4気筒きとうエンジンをよこ配置はいちするという着想ちゃくそうは、プロペラシャフトのあるFRくるまでは容易ようい採用さいようない手法しゅほうであり、前輪ぜんりん駆動くどう方式ほうしきいちじるしいスペース節減せつげん効果こうか可能かのうせいがあることを実証じっしょうした。

ミニのブレイクスルーの背景はいけいには、ひとしそくジョイントの改良かいりょうおおきく寄与きよしている。フォード・モーター技術ぎじゅつしゃであるアルフレート・ハンス・ツェッパ英語えいごばん1938ねん考案こうあんし、そのイギリスのバーフィールドしゃによって開発かいはつされ、ミニで採用さいようされた「バーフィールド・ツェッパ・ジョイント」は、完全かんぜん実用じつようせいそなえる量産りょうさんがたのボールしきとうそくジョイントであり、操舵そうだどきおおきな屈曲くっきょくかくでも円滑えんかつ駆動くどうりょくつたえることができ、長年ながねんにわたる前輪ぜんりん駆動くどうしゃ課題かだい克服こくふくするものとなった。

ミニのバーフィールド・ツェッパ・ジョイントは条件じょうけんきびしい車輪しゃりんがわ採用さいようされたものであり、車体しゃたいがわどう装置そうちがわ)には従来じゅうらいのカルダン・ジョイントや、不等ふとうそくがたながら車体しゃたいがわ使用しようする場合ばあい一応いちおう実用じつよう水準すいじゅんった三叉みつまたがたの「トリポッド・ジョイント」がもちいられていた。それらを性能せいのうめん上回うわまわり、どう装置そうちがわでの使用しようてきした柔軟じゅうなんせいつボールしきとうそくジョイントは、バーフィールドの原案げんあんもとづいて日本にっぽん東洋とうようベアリング(げんNTN)が「ダブルオフセット・ジョイント」(DOJ) として実用じつようした。これは1966ねんスバル・1000けではじめて採用さいようされている。

これらのボールしきとうそくジョイントの改良かいりょうはさらなる前輪ぜんりん駆動くどうしゃ普及ふきゅう貢献こうけんし、1960年代ねんだい欧州おうしゅうしゃ皮切かわきりに、急速きゅうそく世界せかい自動車じどうしゃメーカーおおくの小型車こがたしゃ前輪ぜんりん駆動くどうした。このころまれた前輪ぜんりん駆動くどうしゃに、プジョー・204/304ルノー・5ランチア・フルヴィア日産にっさん・チェリーマツダ・ルーチェロータリークーペなどがある。

ジアコーサ方式ほうしき

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ジアコーサ方式ほうしき採用さいようしたフィアット・128

ここからさら一段いちだん飛躍ひやくし、1969ねん発表はっぴょうイタリアフィアット・128は、トランスミッションと直列ちょくれつ4気筒きとうエンジンを一直線いっちょくせんつなよこきするという方式ほうしき採用さいようした。こちらも開発かいはつしゃダンテ・ジアコーサってジアコーサ方式ほうしきばれる。

この方式ほうしきは、最初さいしょからよこきを前提ぜんていとしたながさ(はば)のみじかいデフいち体型たいけいトランスアクスルあらたに開発かいはつすること可能かのうになったものである。イシゴニス方式ほうしきよりも設計せっけい自由じゆうたかく、ていコストな前輪ぜんりん駆動くどう方式ほうしき決定的けっていてきなシステムとなった。現在げんざいではおおくがフィアット・128にならったジアコーサしきよこきレイアウトを踏襲とうしゅうしている。

このジアコーサしきもちいて、フォルクスワーゲンゴルフ/ポロ/シロッコホンダシビックアコードなど、現在げんざいまでつづ著名ちょめい前輪ぜんりん駆動くどうしゃ次々つぎつぎおくした。とくにゴルフのだいヒットの影響えいきょうおおきく、以降いこう中型ちゅうがたクラスまでのセダンハッチバック前輪ぜんりん駆動くどうながれを決定的けっていてきにした。

たてきエンジン

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たてきエンジンによる前輪ぜんりん駆動くどう概念がいねん
スバル・インプレッサ
水平すいへい対向たいこうエンジンたてきで搭載とうさいする

よこきが主流しゅりゅうとなるなかたてきレイアウトにこだわりつづけるメーカーも存在そんざいし、アウディ一部いちぶはフォルクスワーゲンとしても販売はんばい)とSUBARUきゅう富士重工業ふじじゅうこうぎょう)がよくられている。両社りょうしゃよんりん駆動くどうくるま付加ふか価値かちとしているため、よんりん駆動くどう容易よういたてきレイアウトを積極せっきょくてき採用さいようしているものである。両社りょうしゃともエンジンの後方こうほうぜん車軸しゃじくまたぐようにしてトランスアクスルを配置はいちするレイアウトをっているが、このような構造こうぞうこう駆動くどうくるまをベースによんりん駆動くどうとしたものと比較ひかくして、独立どくりつしたフロントデフケースおよびトランスファーとフロントデフを連結れんけつするプロペラシャフト必要ひつようとしないため部品ぶひん点数てんすうすくなくできるメリットも存在そんざいする[5]

過去かこにはトヨタ自動車とよたじどうしゃ上述じょうじゅつターセルおよコルサ)、ルノーサーブ・オートモービルなどが1980年代ねんだい前半ぜんはんまでたてきの前輪ぜんりん駆動くどうしゃ製造せいぞうしていたが、それらの車種しゃしゅもその後継こうけい車種しゃしゅではすべてよこきレイアウトに変更へんこうされた。

1966ねんしきオールズモビル・トロネード

アメリカしゃでは1966ねんオールズモビル・トロネードが、Vがた8気筒きとうエンジンとトランスミッションを平行へいこう配置はいちしてたてきするユニタイズド・パワーパッケージしょうする手法しゅほう採用さいようした。エンジンとトランスミッションあいだ駆動くどうりょくだい容量ようりょう特殊とくしゅチェーンドライブにて伝達でんたつされ、トランスミッションにちょくけされたフロントデフによりぜん車軸しゃじく駆動くどうりょく伝達でんたつされる。この方式ほうしきは、ゼネラルモーターズうち部門ぶもんにおけるのち駆動くどうしゃ量産りょうさんオートマチックトランスミッション(AT)を、内部ないぶ構造こうぞうはほぼそのままに流用りゅうようできるという利点りてんがあった。トロネードはAT専用せんようしゃとすることでチェーンドライブ部分ぶぶん構造こうぞう簡素かんそし、こう駆動くどうしゃよりはるかにコンパクトなパワートレインの実現じつげん成功せいこうした。同様どうよう構造こうぞうは1973 - 78ねんGMC・モーターホーム英語えいごばん、1967ねん以降いこうキャデラック・エルドラド、1979ねん以降いこうビュイック・リヴィエラでもほぼそのままのかたち採用さいようされ、トロネードのエンジンがよこしき変更へんこうされる1986ねんまで存続そんぞくしていた。

リアサスペンションの進化しんかによるハンドリングの改善かいぜん

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前輪ぜんりん駆動くどう登場とうじょう当初とうしょからトルクステアタックイン運転うんてん特性とくせい問題もんだいされていたが、フロントにくらべてリアのサスペンションの設計せっけい軽視けいしされがちであったことが、前輪ぜんりん駆動くどう運転うんてん特性とくせい問題もんだい複雑ふくざつなものとしていた。初期しょき前輪ぜんりん駆動くどうしゃのち採用さいようれいおおかった車軸しゃじく懸架けんかトレーリングアームしきサスペンションは、高速こうそく旋回せんかいちゅうにアクセルをかずにステアリングのかじかくつづけると、こう車軸しゃじく受動じゅどうてきにトー・アウトがわいてスピンを誘発ゆうはつするリバース・ステア[6]こしやすく、リバース・ステアとタックインの双方そうほう特性とくせいで、初期しょき前輪ぜんりん駆動くどうしゃ非常ひじょうくせつよ運転うんてん特性とくせいをドライバーにいることとなった[7]。リバース・ステアはコンプライアンスステア一種いっしゅであり、ワットリンク英語えいごばんひとしリンクしきサスペンションや、セミトレーリングアームしきサスペンション採用さいようするこう駆動くどうくるまでもすでによくられた問題もんだいであった。

BDがたマツダ・ファミリア

この問題もんだい抜本ばっぽんてき解決かいけつかっていくきりかけとなったのは、1980ねんのBDがたマツダ・ファミリア採用さいようされたセルフ・スタビライジング・サスペンション(SSサスペンション)の登場とうじょうであった。SSサスペンションは台形だいけいのリンクアームがもちいられたストラットしきサスペンションであり、旋回せんかい制動せいどうこうをトー・インがわ積極せっきょくてき変化へんかさせる特性とくせいたせられ、それまでの前輪ぜんりん駆動くどうしゃにつきものだったタックインやリバース・ステアを大幅おおはばおさむことに成功せいこうした[7]。このような受動じゅどうてきのち操舵そうだパッシブ・リアホイール・ステアリング (PRS) とばれており、BDがたファミリア以前いぜんにはイギリス・フォードの1966とししきフォード・ゼファー英語えいごばんマークIV[8]や、1978ねんポルシェ・928採用さいようされたヴァイザッハ・アクスル英語えいごばんられていたが、SSサスペンション以降いこう前輪ぜんりん駆動くどうしゃ開発かいはつするメーカーでもトーションビームしきサスペンション[9]とうへのPRSの概念がいねん導入どうにゅうや、トレーリングアームにおけるロールセンターやアームのめんかく研究けんきゅうすすんでいき、前輪ぜんりん駆動くどうしゃ運転うんてん特性とくせい改善かいぜんとその普及ふきゅうおおきく貢献こうけんした。

BA5がたホンダ・プレリュード

こうしたながれから1980年代ねんだい中期ちゅうきには、こう能動のうどうてき操舵そうだするアクティブ4WSによって、前輪ぜんりん駆動くどうしゃさらなる運動うんどうせい向上こうじょう模索もさくされた。1983ねん、マツダはコンセプトカーの「MX-02」で低速ていそくぎゃく位相いそうがわのみに操舵そうだする電動でんどうしき4WSを発表はっぴょう、1987ねん油圧ゆあつしきパワーステアリング連動れんどうして電子でんし制御せいぎょされる電動でんどうしき4WSとして、GD/GVがたマツダ・カペラ搭載とうさいされた[10]同年どうねん、ホンダがBA5がたホンダ・プレリュードにて前輪ぜんりんこう操舵そうだ機構きこう機械きかいてき完全かんぜん連動れんどうした機械きかいしき4WSを採用さいよう[11]三菱みつびしやトヨタは4WSにアクティブサスペンションわせ、タックインを機構きこうてき抑止よくしする技術ぎじゅつてきこころみをおこなった[12][13]。またL220Sがたダイハツ・ミラ軽自動車けいじどうしゃ唯一ゆいいつ機械きかいしき4WSを採用さいようしたり[14]いすゞ自動車ずじどうしゃは1991ねんニシボリック・サスペンションによって、可動かどう角度かくどおおきくしたPRSのメカニズムで「アクティブ4WS+アクティブサス」が目指めざしたのち操舵そうだ再現さいげんねらうなど、各社かくしゃがこぞって技術ぎじゅつ投入とうにゅうした。しかしアクティブ4WSは本質ほんしつてき高価こうか複雑ふくざつ機構きこうであったこともあり、2000年代ねんだいまでにはおおむね採用さいようする車種しゃしゅくなった。

結局けっきょく主流しゅりゅうとしてのこったのは、簡易かんいかつていコストによこ剛性ごうせい確保かくほできて、車内しゃない空間くうかん幅広はばひろれるトーションビームしきであった。1970年代ねんだいからトーションビームしきはしばしもちいられてきたが、前述ぜんじゅつとおりPRSの思想しそうれつつ1980年代ねんだいにビームアクスルしき、1990年代ねんだいにカップルドビームしきへと姿すがたえながら発展はってん[15]良質りょうしつかつ安価あんか前輪ぜんりん駆動くどうしゃ量産りょうさんおおきな役割やくわりたした。またダブルウィッシュボーンしきも、シャシー開発かいはつ技術ぎじゅつ進捗しんちょく前輪ぜんりん駆動くどうこう価格かかくたいへの普及ふきゅう後述こうじゅつ)ととももちいられるようになっていった。

大衆たいしゅうしゃへの普及ふきゅう高級こうきゅうしゃへの波及はきゅう

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FFミッドシップ方式ほうしき概念がいねん
BMW・2シリーズ アクティブツアラー
BMW史上しじょうはつ前輪ぜんりん駆動くどうしゃ

オイルショック以降いこうしょう燃費ねんぴ志向しこう燃費ねんぴ規制きせい強化きょうか実用じつようせい重視じゅうし風潮ふうちょう背景はいけいに、前輪ぜんりん駆動くどう小型車こがたしゃ主流しゅりゅうとなっている。日本にっぽん国内こくないでは本田技研工業ほんだぎけんこうぎょう(ホンダ)が、創業そうぎょうしゃ本田ほんだそう一郎いちろう提唱ていしょうするMM思想しそう(マンマキシム・メカミニマム、ひとのためのスペースは最大さいだいに、メカのためのスペースは最小さいしょうに)の一環いっかんとして、乗用車じょうようしゃはもちろんスポーツモデルやハイエンドの高級こうきゅうしゃでも積極せっきょくてき前輪ぜんりん駆動くどう採用さいようした[16]。ホンダはつ前輪ぜんりん駆動くどうしゃである1967ねんN360よこきレイアウトだったが、1989ねん発売はつばいしたアコード・インスパイアでは、あえて当時とうじすでめずらしくなっていたたてきレイアウト(FFミッドシップ)を採用さいようした。そのレジェンドなども同様どうようのレイアウトを採用さいようしたが、「#初期しょき前輪ぜんりん駆動くどうしゃこうべた弱点じゃくてん露呈ろていしたこともあって、現在げんざいではすべてよこきに変更へんこうされている。

世界せかい最大さいだい市場いちばであったアメリカは2オイル・ショック結果けっか従来じゅうらいのような燃費ねんぴわる大型おおがたしゃやマッスルカーよりもてい燃費ねんぴ小型こがたセダンが大衆たいしゅう支持しじされるようになり、1980年代ねんだいにビッグ3(GMフォードクライスラー)が前輪ぜんりん駆動くどうしょう中型ちゅうがたセダンの開発かいはつした[17]日本にっぽん国内こくないでも1980年代ねんだいトヨタ・カローラ/コロナ日産にっさん・サニー/ブルーバードマツダ・ファミリアなどのながらくこう駆動くどうだった人気にんきセダンたちが軒並のきな前輪ぜんりん駆動くどうわり、21世紀せいきはいころには世界中せかいじゅう排気はいきりょう2,000 ccまでのセダンハッチバックはほとんどが前輪ぜんりん駆動くどうとなった。またおなじプラットフォームをもちいて、前輪ぜんりん駆動くどうクーペ多数たすう製造せいぞうされた。

前輪ぜんりん駆動くどうのネックとされる重量じゅうりょう負担ふたんと、駆動くどうりょくによる姿勢しせい変化へんかなん(タックインやトルクステアひとし)は、どう時期じき普及ふきゅうすすんだパワーステアリングやサスペンション技術ぎじゅつ進歩しんぽタイヤ高性能こうせいのうなど、あらゆるめんでの技術ぎじゅつ進歩しんぽによっておおきく改善かいぜんされている。そのため運転うんてん質感しつかんこう駆動くどうけをらないレベルにちかづいており、近年きんねんこう駆動くどうをアイデンティティの一部いちぶとしてきたBMW前輪ぜんりん駆動くどう採用さいようしたり、レクサス前輪ぜんりん駆動くどうセダンをラインナップしたりと、高級こうきゅうしゃのエントリークラスでも前輪ぜんりん駆動くどうめずらしくなくなりつつある。

モータースポーツ

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サーキットレース

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JTCCトヨタ・コロナEXiV
ホンダ・シビック TCR
日産にっさん・GT-R LM NISMO

乾燥かんそうした舗装ほそう路面ろめんのサーキットでは、前輪ぜんりん駆動くどうこう駆動くどうくら以下いかてん不利ふりとされる。

  • 加速かそくでは慣性かんせい法則ほうそくにより後方こうほう荷重かじゅうがかかるため、トラクションが不足ふそくしやすい
  • コーナリングではフロントヘビーやよこ方向ほうこうのグリップ不足ふそく[注釈ちゅうしゃく 4]により、強烈きょうれつアンダーステア発生はっせいする
  • ブレーキングではフロントヘビーにより前方ぜんぽう荷重かじゅうかたより、こうのグリップをかしきれない
  • 前輪ぜんりん酷使こくしするのでフロントタイヤの摩耗まもうはげしい

つまり自動車じどうしゃ基本きほんである「はしる・がる・まる」にくわえタイヤめんでもおおきなデメリットがあるため、完全かんぜんどう条件じょうけん場合ばあいこう駆動くどうしゃ対等たいとう勝負しょうぶおこなうのはむずかしい。そのためツーリングカーレースでは、性能せいのう調整ちょうせい[注釈ちゅうしゃく 5]けることで対等たいとうなバトルを可能かのうとしているれいおおい。1980年代ねんだい以降いこうはベースとなる市販しはん車両しゃりょう前輪ぜんりん駆動くどうえた(たいするのち駆動くどう稀少きしょうになった)ため、性能せいのう調整ちょうせい期待きたいしたうえ前輪ぜんりん駆動くどうしゃ参戦さんせんすることは一般いっぱんてきになっているが、それでもこう駆動くどうほう比較的ひかくてき安定あんていした結果けっかせる傾向けいこうにある。またアンダーステアがつよ特性とくせいきらいがかれ、レーシングドライバーで前輪ぜんりん駆動くどう苦手にがてきらいだと公言こうげんするものすくなくない[18][19]

しかしデメリットばかりというわけではなく、たとえばリアがすべってもアクセルをめば態勢たいせいなおせるため、ぶつかりいの接近せっきんせんではぶんがある[20]。またこう駆動くどうなかでも、FR形式けいしきプロペラシャフト必要ひつようとするぶんくるまじゅうおも駆動くどう損失そんしつおおきい、てい摩擦まさつ路面ろめんでのトラクション・直進ちょくしん安定あんていせいけるなどの弱点じゃくてんがあるため、しょう排気はいきりょうクラスや路面ろめんれている状況じょうきょうでは、FRより前輪ぜんりん駆動くどうほうはやいケースもある。具体ぐたいてきれいでは1971ねん富士ふじマスターズ250kmレースにおいて、雨天うてんなか日産にっさん・チェリーがFRぜいやぶって1-2フィニッシュをたしたほか、1980年代ねんだいのJTC(全日本ぜんにほんツーリングカー選手権せんしゅけん)においても1.6 L自然しぜん吸気きゅうきエンジンのホンダ・シビック[21]トヨタ・カローラFX[22]などが乾燥かんそう路面ろめんでもどうクラスのFRぜい圧倒あっとうし、雨天うてんではかくじょうの2.0LのFRぜいをもくだして総合そうごう優勝ゆうしょうたしたこともある。

1990年代ねんだい世界せかい各国かっこくもちいられたスーパーツーリング(クラス2)規定きていでは、前輪ぜんりん駆動くどうはじめて国際こくさいツーリングカーレースの主役しゅやくとなり、日本にっぽんでもJTCC多数たすう前輪ぜんりん駆動くどうしゃ参戦さんせんした。

1990年代ねんだい末期まっき全日本ぜんにほんGT選手権せんしゅけん(JGTC、現在げんざいSUPER GT)の、まだ馬力ばりきあらわしていたころのGT300クラスには三菱みつびし・FTOトヨタ・セリカ(T202がた)などの前輪ぜんりん駆動くどうしゃ参戦さんせんした。タイヤがうまくマッチングしたり、JTCCのコンポーネントを流用りゅうようしたりしたこともあってFTOは表彰台ひょうしょうだい、セリカはポールポジション優勝ゆうしょう記録きろくしている。またセリカは1998ねんシリーズランキング2よく1999ねんには首位しゅいから3ポイントの3好成績こうせいせきのこしている[23]

現在げんざい前輪ぜんりん駆動くどう乗用車じょうようしゃをベースとする国際こくさいてきなレーシングカー規定きていとしてはTCRがよくられ、日本にっぽんふく世界せかいすうじゅうカ国かこくでTCRによるレースがおこなわれている。それ以外いがいにも前輪ぜんりん駆動くどうこう駆動くどう混在こんざいするBTCC(イギリスツーリングカー選手権せんしゅけん)や、前輪ぜんりん駆動くどうしゃのみであらそわれるTC2000アルゼンチン選手権せんしゅけんのような歴史れきしあるトップカテゴリも健在けんざいである。

市販しはんしゃをベースとしない規定きていではきわめてれいすくないが、前項ぜんこうべたとおりインディ500では前輪ぜんりん駆動くどうしゃ優勝ゆうしょうたしたことがある[24]現代げんだいではLMP1規定きてい日産にっさん・GT-R LM NISMOが、「そらりょく優先ゆうせんしデザインに自由じゆうたせるため」として、エンジン駆動くどうにおいてFFレイアウトを採用さいようしていたことがられている。加速かそくのみこうモーター駆動くどうするため実質じっしつてきにはよんりん駆動くどう方式ほうしきとなる予定よていであったが、実戦じっせんではモーターの開発かいはつ不足ふそくにより前輪ぜんりん駆動くどう状態じょうたい走行そうこうせざるをず、大敗たいはいきっした[25]同車どうしゃ参戦さんせんはこのいちせんかぎりとなったが、MRレイアウトでよりハイパワーなエンジンをっていたLMP2クラス[注釈ちゅうしゃく 6]よりもはやいラップタイムを記録きろくしており、コンセプト自体じたい否定ひていするにははやかったとする見方みかたもある[26]

ラリー/ラリーレイド

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シトロエン・クサラのF2キットカー
全日本ぜんにほんラリー選手権せんしゅけんスズキ・スイフトスポーツ

ラリー世界せかいにおけるりん駆動くどうしゃクラス[注釈ちゅうしゃく 7]ERC3APRC3JN2など)では、ほぼすべてのマシンがBセグメントハッチバックかた前輪ぜんりん駆動くどうしゃ採用さいようしている。これは、ラリーにおおてい摩擦まさつ路面ろめんでは前項ぜんこうべた前輪ぜんりん駆動くどうのデメリットが緩和かんわされる[注釈ちゅうしゃく 8]ことにくわえて直進ちょくしん安定あんていせい操作性そうさせいわる有利ゆうりなこと、軽量けいりょう全長ぜんちょうみじか小回こまわりがきやすいことなどが理由りゆうである[注釈ちゅうしゃく 9][27]。ミニやサーブ、シトロエンなどはこの特性とくせいかし、前輪ぜんりん駆動くどう技術ぎじゅつ進歩しんぽがまだ十分じゅうぶんとはえなかった1960年代ねんだいから真冬まふゆラリー・モンテカルロなん優勝ゆうしょうかさねていた。また特殊とくしゅ事例じれいであるがWRC(世界せかいラリー選手権せんしゅけん)では、多大ただい規則きそくじょう優遇ゆうぐうけた前輪ぜんりん駆動くどうF2キットカーシトロエン・クサラ)が、1999ねんのターマックイベントでよんりん駆動くどうWRカーやぶって2総合そうごう優勝ゆうしょうしたことがある。

下位かいクラスの前輪ぜんりん駆動くどうしゃつちかったマシン開発かいはつノウハウや運転うんてん技術ぎじゅつが、世界せかいレベルのよんりん駆動くどうしゃ役立やくだったという事例じれいおおい。そのなかもっと成功せいこうおさめたれいセバスチャン・ローブシトロエンである。ローブの技術ぎじゅつ根底こんていにあったのは、前輪ぜんりんのグリップを大切たいせつにする前輪ぜんりん駆動くどうしゃはしかたであった。かれ免許めんきょ取得しゅとくからWRカーデビューまでのあいだ前輪ぜんりん駆動くどうしゃぎながらあらゆる運転うんてん可能かのうせいためし、ドリフトを極力きょくりょくせず無駄むだのないドライビングにいたとわれている[28]。シトロエンも上述じょうじゅつのクサラ・キットカーで知見ちけんにより前輪ぜんりん駆動くどう主体しゅたいとする4WDラリーカーを開発かいはつ[注釈ちゅうしゃく 10][29]、それにローブのドライビングスタイルがマッチしたことで、かれはWRC(世界せかいラリー選手権せんしゅけん)で前人未到ぜんじんみとうの9連覇れんぱ達成たっせいすることになる。

アンダーステアなよんりん駆動くどうしゃれるというてんでも前輪ぜんりん駆動くどうしゃ有用ゆうようであり、国内こくないでサーブをもちいてながらく活躍かつやくしたスティグ・ブロンクビストは、強烈きょうれつなアンダーステアを発生はっせいしたグループBアウディ・クワトロに、こう駆動くどうしゃれていたハンヌ・ミッコラよりも順応じゅんのう容易よういだったとかたっている[30]。またWRCを史上しじょうはじめて4連覇れんぱしたトミ・マキネンも、日産にっさん・サニーGTI日本にっぽんめいパルサーGTI)ではじめて経験けいけんした前輪ぜんりん駆動くどうのラリーカーが、成功せいこう役立やくだったと回想かいそうしている。

前輪ぜんりん駆動くどうは、当然とうぜんアンダーステアでのコントロール、そして駆動くどうりょくをうまく使つかいこなしてはしることがもとめられる。それができなければ、はやはしることはできないんだ。そのテクニックは、4WDマシンでも活用かつようすることができる。このまなびがあったおかげでわたしは94ねんのフィンランドでWRCはつ優勝ゆうしょう達成たっせいできたし、三菱みつびしランサーエボリューションに短時間たんじかんれることにも、かなり貢献こうけんしてくれたと確信かくしんしているよ。 — トミ・マキネンわけ伊藤いとう敬子けいこ)、『サンエイムック RALLY CARS 22』 P95 (2018ねん11月28にち発行はっこう

かれらの活躍かつやくは、こう駆動くどうてきなドリフトはしほうから前輪ぜんりん駆動くどうてきなグリップはしほうへと、業界ぎょうかい常識じょうしき自体じたいぎゃくえてしまった。またこのパラダイムシフトによって、前輪ぜんりん駆動くどうしゃもちいられていた左足ひだりあしブレーキがWRCで必須ひっすテクニックとなった[31]。こうした変化へんかともない、よんりん駆動くどうのラリーカーで駆動くどう配分はいぶん変更へんこうできる場合ばあい前後ぜんご50:50もしくは前輪ぜんりんをややおおめにするのがセオリーとなった[32]

ラリーレイド(クロスカントリーラリー)においても、サーキットレーサー時代じだいにMINIで活躍かつやくした菅原すがわら義正よしまさは、フロントヘビーなカミオン(トラック)の運転うんてん感覚かんかく前輪ぜんりん駆動くどうしゃちかいということにづいてから、カミオンのはしらせかたかるようになったとかたっている[33]前輪ぜんりん駆動くどうしゃ自体じたい参戦さんせん事例じれいとしては、まだいまほど高速こうそくすすんでいなかった1970ねん後半こうはん〜1980年代ねんだい前半ぜんはんには、シトロエン・CXのワークスマシンが各地かくちのラリーレイドイベントで優秀ゆうしゅう成績せいせきおさめ、総合そうごう表彰台ひょうしょうだいのぼることもあった[34][35]が、現在げんざいはほぼまったられなくなっている。

ドリフト

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前輪ぜんりん駆動くどうしゃおこなドリフト走行そうこうぞくに『Fドリ』とばれ、ラリーやジムカーナダートトライアルなどでは重要じゅうよう技術ぎじゅつである。しかし安定あんていしやすい前輪ぜんりん駆動くどうしゃのちもしくはぜんすべらせるには工夫くふうした荷重かじゅう移動いどうおこな必要ひつようがあり、それでいて限界げんかいいきでのコントロールもむずかしいため、Fドリではやはしるにはそれなりの訓練くんれん習熟しゅうじゅくもとめられる。またかつて前輪ぜんりん駆動くどう特有とくゆうのデメリットであったタックインも、ドライビングテクニックとしてもちいられていたことがあった。

採点さいてん競技きょうぎとしてのドリフトではFRレイアウトよりいちじるしく不利ふりなため、ごく一部いちぶのぞけばもちいられることはほぼい。ただしFドリのうできそ走行そうこうかい各地かくち存在そんざいする。

ドラッグレース

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直線ちょくせん加速かそくのみをきそドラッグレースでは、あえてトラクションで不利ふり前輪ぜんりん駆動くどうこのんでもちいる競技きょうぎしゃすくなからずおり、『FFドラッグ』(えい:FWD Drag)というひとつのジャンルとして成立せいりつしている。前輪ぜんりん駆動くどうしゃせんもんのシリーズせん各地かくち存在そんざいする。

一般いっぱんてき前輪ぜんりん駆動くどうのレーシングカーでは300~400 PS程度ていど限界げんかいであるが、おもった重量じゅうりょう配分はいぶんができるドラッグレーサーはそれよりはるかに限界げんかいてんたかく、最大さいだいで1900 PSにたっする前輪ぜんりん駆動くどうマシンも存在そんざいする[36]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 『トラクション』 ってなんだ? 『パワー』ってなんだ? ①だいパワーのFFがない理由りゆう(トラクション効率こうりつ
  2. ^ a b 武田たけだたかし世界せかい日本にっぽんのFFしゃ歴史れきし』 グランプリ出版しゅっぱん 2009ねん5がつ25にち p.9-11, 32, 33
  3. ^ Lone FWD Alvis Grand Prix Car Resurrected
  4. ^ 前輪ぜんりん駆動くどう衝撃しょうげき(1934ねんGAZOO.com 2022ねん3がつ7にち
  5. ^ スバルの4WDが雪国ゆきぐに圧倒的あっとうてきあいされる理由りゆう - 森口もりぐち将之まさゆき東洋とうよう経済けいざいオンライン、2016ねん02がつ18にち
  6. ^ リバース・ステアとは - オートモーティブ・ジョブズ
  7. ^ a b 抜群ばつぐん操縦そうじゅう安定あんていせい!マツダの「SSサスペンション」はなにすごかったのか? - CarMe
  8. ^ Theme : Suspension - When Independence Goes Wrong - Driven To Write
  9. ^ いいサスってなに?ダブルウイッシュボーンがいいの?トーションビームはダメなの? Vol.4 実際じっさいのクルマをながらたしかめてみよう - Honda
  10. ^ PRESSE-INFORMATION4WS-Allradlenkung -Das erste elektronische Vierrad-Lenksystem - Mazda Press Portal
  11. ^ かたぎたいこと | かじかくおうどうがた4りん操舵そうだシステム(4WS) / 1987 - Honda
  12. ^ 吉田よしだひろし, 田中たなか忠夫ただおアクティブサスペンションと4WS」『精密せいみつこう学会がっかいだい55かんだい5ごう精密せいみつこう学会がっかい、1989ねん、810-813ぺーじdoi:10.2493/jjspe.55.810ISSN 0912-0289NAID 110001369945 
  13. ^ あぶらそらあつしきアクティブサスペンションと4WSの総合そうごう制御せいぎょシステムの開発かいはつ実用じつよう (専門せんもんけ) - 発見はっけん発明はつめいのデジタル博物館はくぶつかん
  14. ^ 軽自動車けいじどうしゃ唯一ゆいいつの4WSしゃ!!ダイハツミラTR4/TR-XXアバンツァート4WSの小回こまわりがすぎる! - Motorz
  15. ^ 意外いがい重要じゅうような「FFしゃ」のリアサスペンション 進歩しんぽ変遷へんせんるクルマのありかたYahoo!ニュース 池田いけだただしわたし 2022ねん5がつ8にち閲覧えつらん
  16. ^ いまさらけない】実用じつようしゃがFFレイアウトばかりなのはなぜ? (2/2ページ)Web CARTOP 2021ねん8がつ11にち閲覧えつらん
  17. ^ 現地げんち生産せいさん国内こくない空洞くうどう(1988ねん
  18. ^ 「ミスタースカイラインの素顔すがお天才てんさいドライバー『長谷見はせみ昌弘まさひろ』のざま
  19. ^ 土屋つちやけいがSたい現役げんえき復帰ふっき!! ターボのタイプRに本田ほんだそう一郎いちろうイズムはあるのか!?
  20. ^ 『AUTOSPORT No.1177 2008ねん10がつ16にちごう』P32 三栄書房さんえいしょぼう刊行かんこう
  21. ^ 【グループAの名車めいしゃ 06】FFのピュアレーシングカー「無限むげんシビック」はBMWをもしのはやさをつ! webモーターマガジン 2021ねん3がつ20日はつか閲覧えつらん
  22. ^ 【グループAの名車めいしゃ10】カローラFX(AE82)はコーナリングマシン。1.6Lクラスでシビックと勝負しょうぶ webモーターマガジン 2021ねん3がつ20日はつか閲覧えつらん
  23. ^ 『トヨタ・セリカ(ST202)』JTCCエクシヴをかしてまれたFF GTマシンの快走かいそうげきわすれがたきめいしゃたち】As-web 2022ねん3がつ19にち閲覧えつらん
  24. ^ Auto Messe Web編集へんしゅう (2019ねん8がつ29にち). “FFしゃはレースに不向ふむき? 全米ぜんべい最高峰さいこうほうレース「INDY500」で前輪ぜんりん駆動くどう勝利しょうりしていた事実じじつ”. Auto Messe web. 2021ねん5がつ12にち閲覧えつらん
  25. ^ 国沢くにさわ光宏みつひろ (2015ねん6がつ20日はつか). “ハイブリッド「レス」でたたかっていた日産にっさんGT-R LMニスモの真実しんじつ”. WEB CARTOP. 2021ねん5がつ12にち閲覧えつらん
  26. ^ GT-R LMニスモは失敗しっぱいれいではない。ニッサンは挑戦ちょうせんほこりにおもうべき【日本にっぽんのレースどおりサム・コリンズのわすれられない1せんAS-web 2022ねん8がつ5にち閲覧えつらん
  27. ^ Are Rally Cars FWD, RWD, or 4WD?
  28. ^ 『AUTOSPORT No.1044』P47 2005ねん12月25にち発売はつばい 三栄書房さんえいしょぼう刊行かんこう
  29. ^ 『WRC PLUS 2006 Vol.6』P37
  30. ^ Stig Blomqvist drive
  31. ^ ラリーマシンのブレーキングRed Bull公式こうしきサイト 2022ねん8がつ14にち閲覧えつらん
  32. ^ 『AUTO SPORT No.1098 2019ねん2がつ1にちごう』P74-78 三栄書房さんえいしょぼうかん
  33. ^ 『*78さいラリードライバー : ギネス・ホルダー菅原すがわら義正よしまさ挑戦ちょうせん』(2019ねん12月/しん紀元きげんしゃ)P142-143
  34. ^ history of a rally legend
  35. ^ ダカールクラシックではしるパリダカの歴代れきだいのマシン -ワークスへん -寺田てらだ昌弘まさひろ連載れんさいコラム
  36. ^ This 1900-HP Front-Drive Drag Car Is Delightfully Absurdroadandtrack.com 2021ねん9がつ16にち閲覧えつらん

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ インホイールエンジンともばれる。元々もともと初期しょき航空機こうくうきられたロータリーエンジン回転かいてんしきほしがたエンジン)の技術ぎじゅつ応用おうようである。
  2. ^ 一般いっぱんてき前輪ぜんりん駆動くどう市販しはん乗用車じょうようしゃだと前後ぜんご60:40〜65:35程度ていど。なお前輪ぜんりん駆動くどうしゃ前後ぜんご50:50を目指めざすのは、トラクションの関係かんけいかえってバランスがわるくなる。
  3. ^ 若手わかて設計せっけいしゃコンビによる小型こがたレーサー「トラクタ」開発かいはつ前輪ぜんりん駆動くどう導入どうにゅうされたのは、資産しさんしゅたる出資しゅっししゃでもあったフナイユが「前輪ぜんりん駆動くどう優位ゆういがある」と(根拠こんきょもなく直感ちょっかんで)強硬きょうこう主張しゅちょうしたためである。フナイユは前輪ぜんりん駆動くどうしゃように、不等ふとうそくがたジョイントで耐久たいきゅうせいなんがあるがコンパクトで製造せいぞうしやすい「トラクタ・ジョイント」も考案こうあんした。こう駆動くどう想定そうていしていたグレゴワールはフナイユの主張しゅちょうにやむなく前輪ぜんりん駆動くどうしゃ設計せっけいしたが、完成かんせいした試作しさくしゃ運転うんてんしてたかいポテンシャルに驚嘆きょうたん前輪ぜんりん駆動くどう転向てんこう以後いご1950年代ねんだいいたるまでのフランス自動車じどうしゃかいで、前輪ぜんりん駆動くどうしゃ開発かいはつ主導しゅどうした。
  4. ^ 前輪ぜんりん駆動くどう操舵そうだねていることに起因きいんする
  5. ^ ここではBoPのほか、参加さんか条件じょうけん規則きそくじょう優遇ゆうぐうなどもふく
  6. ^ GT-R LM NISMOはV6ターボでやく300馬力ばりき、LMP2のV8エンジンは450馬力ばりき以上いじょう。なおくるまじゅうはGT-R LM NISMOが880kg、LMP2は場合ばあい900kgだった
  7. ^ ここでは前輪ぜんりん駆動くどうこう駆動くどうのどちらかをえらべるクラスのこと。こう駆動くどうしゃせんもんのラリーカーのクラスや規定きてい存在そんざいする。
  8. ^ 加速かそくでは駆動くどう十分じゅうぶん荷重かじゅうがあるためトラクション不足ふそく心配しんぱいすくない。コーナリングではこうすべらせやすいのでアンダーステアをおさみやすい。ブレーキングでは前輪ぜんりんのグリップがすぐ限界げんかいむかえるため極端きょくたんぜん荷重かじゅうにはならず、車両しゃりょう姿勢しせい安定あんていのグリップも使つかいやすくなる。
  9. ^ いくつかのてんについておなじことはMRやRRでもえるが、小型車こがたしゃでMR・RRを採用さいようする市販しはんしゃきわめて稀少きしょうになってしまっているため、メインにおどるまでにいたっていない。ただしクーペタイプけのグループR-GT規定きていでは、MR・RR車両しゃりょうだい一線いっせん活躍かつやくしている。
  10. ^ 開発かいはつ責任せきにんしゃのジャン=クロード・ボカールは、前輪ぜんりんだけで300馬力ばりきめる必要ひつようせいなかで「こう接地せっち性能せいのうたかめて前輪ぜんりん余裕よゆうたせることが大切たいせつ」という知見ちけんたとかたっている

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