フルサイズ

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クライスラー・300F(1957ねん
フォード・サンダーバード(1959ねん
ダッジ・チャレンジャー(1970ねん

フルサイズえい: Full-size car)とは、自動車じどうしゃおおきさの概念がいねんおおきさは時代じだいとともに変化へんかしており、2000年代ねんだいはいるとラージカーえい: Large car)といいかえられる場合ばあいえている[1][2][3][4]

日本語にほんごではとくに、乗用車じょうようしゃバンピックアップトラックスポーツ・ユーティリティ・ビークル (SUV) のうち、大型おおがたアメリカしゃ修飾しゅうしょくする場合ばあいもちいられることがおおく、ほんこう記述きじゅつする。

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だい世界せかい大戦たいせんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国民こくみん消費しょうひきわめて旺盛おうせいであり、工業こうぎょう生産せいさん全般ぜんぱんにおいて供給きょうきゅう需要じゅよう拡大かくだいした。自動車じどうしゃ分野ぶんやでもこうした傾向けいこうられ年々ねんねんボディサイズが大型おおがたし、1950年代ねんだいから1970年代ねんだい前半ぜんはんにかけて、全長ぜんちょう5.5 m、ホイールベース 3 mをえるような乗用車じょうようしゃ次々つぎつぎ出現しゅつげんした。1960年代ねんだいかくメーカー(ブランド)がひとまわりちいさいミッドサイズの販売はんばい開始かいしして以来いらい次第しだい最大さいだいサイズの車種しゃしゅ相対そうたいてきに「フルサイズ」とばれるようになった。この時代じだいのフルサイズカーは、5リッターをえるだい排気はいきりょうエンジンおさめても空間くうかん余裕よゆうがあるほどの長大ちょうだいボンネットや、必要ひつようのないほど肥大ひだいしたテールフィンなど、機能きのうはなれて芸術げいじゅつてき造形ぞうけい傾注けいちゅうしていたことが特徴とくちょうである。

オイルショック以前いぜんのアメリカは、ガソリン価格かかく非常ひじょう安価あんかであったことにくわえ、欧州おうしゅうのようなせま石畳いしだたみ町並まちなみや、悪化あっかする環境かんきょう問題もんだいなどが敬遠けいえんされて郊外こうがい加速かそくしたため、だい排気はいきりょうかつワイドボディのくるまは、アメリカ社会しゃかい適合てきごうする形態けいたいであった。このため、高級こうきゅうしゃばかりではなく、ティーンエイジャーまわ大衆たいしゅうしゃにまでフルサイズおよんだ。

対照たいしょうてき当時とうじ欧州おうしゅうでは、戦災せんさい復興ふっこうおくれや国土こくどせまさなどが手伝てつだい、アメリカのように野放図のほうずにボディサイズが肥大ひだいすることはなく、バブルカーはじまり、小型車こがたしゃ中心ちゅうしん発展はってんつづけた。また、自動車じどうしゃ産業さんぎょう揺籃ようらんにあった日本にっぽんでも、その道路どうろ事情じじょうわるさから欧州おうしゅう以上いじょう小型車こがたしゃ開発かいはつすすみ、輸出ゆしゅつ比率ひりつたかまりとともに品質ひんしつ急速きゅうそく向上こうじょうし、国際こくさい市場いちばでの競争きょうそうりょくたかめつつあったが、大型おおがた乗用車じょうようしゃ輸出ゆしゅつされることはまれであった[5]

ソビエト連邦れんぽう中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくなどの共産きょうさんけんでの大型おおがたしゃは、共産党きょうさんとう幹部かんぶようにごく少数しょうすう生産せいさんされたのみであり、アメリカのようにさまざまな車種しゃしゅまれることはなかった。

オイルショック[編集へんしゅう]

フルサイズカーに転機てんきおとずれたのは1973ねん1978ねんにわたるオイルショックである。ガソリン価格かかく高騰こうとうすると消費しょうひしゃ嗜好しこうは、小型こがた燃費ねんぴいドイツしゃ日本にっぽんしゃながれ、フルサイズカーの市場いちばまたた縮小しゅくしょうした。存続そんぞくしたフルサイズカーも、燃費ねんぴがほどほどで使つか勝手がってミッドサイズ(インターミディエイト)へとダウンサイジングを余儀よぎなくされた。

1990年代ねんだい復興ふっこう[編集へんしゅう]

GMC・シエラ(1996ねん

1980年代ねんだい初頭しょとう、アメリカのビッグスリーは、日本にっぽんしゃ品質ひんしつ向上こうじょう輸出ゆしゅつ攻勢こうせいにより、ふゆ時代じだいむかえたが、1980年代ねんだい後半こうはんからアメリカ経済けいざいきをもどしたこと、くるま品質ひんしつ向上こうじょうしたことなどから、アメリカの消費しょうひしゃ嗜好しこうふたた大型おおがたしゃ、フルサイズカーにかった。

きっかけは、1984ねん発売はつばいされたプリマス・ボイジャー代表だいひょうされるミニバン実質じっしつフルサイズバン)である。ドイツしゃ日本にっぽんしゃにはない、多人数たにんずうがゆったりと移動いどうできる大型おおがた車体しゃたい好評こうひょうた。若者わかもの嗜好しこう次第しだい大型おおがたスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)やピックアップトラックうつった。これらの車種しゃしゅは、自動車じどうしゃ会社かいしゃ利益りえきりつたかかった(コンパクトカーが1台数だいすうせんすうひゃくドルの利益りえきであったのにたいして、フルサイズSUVは1だい1まんドル以上いじょう利益りえきした)ため、積極せっきょくてき商品しょうひん開発かいはつおこなわれきも加速かそく。アメリカの自動車じどうしゃ業界ぎょうかいなおらせる原動力げんどうりょくとなった。日本にっぽんのメーカーもフルサイズ戦略せんりゃくしゃとして、トヨタ自動車とよたじどうしゃタンドラなどを投入とうにゅうするようになった。

この時代じだいのフルサイズカーの特徴とくちょうは、1960年代ねんだい車種しゃしゅくら派手はで装飾そうしょくひかえられていることである。しかし、通勤つうきん通学つうがくもの旅行りょこう用途ようとには通例つうれい使用しようしないあくたいする走破そうは性能せいのう滅多めった荷物にもつせないカーゴスペースなど、無駄むだたのしむ余地よち細分さいぶんしてのこされている。

2000年代ねんだい衰退すいたい[編集へんしゅう]

リンカーン・タウンカー(2007ねん
ダッジ・グランドキャラバン(2008ねん

1999ねん以降いこう原油げんゆ価格かかく高騰こうとう2000年代ねんだい初頭しょとうからたかまった地球ちきゅう温暖おんだん対策たいさくへの配慮はいりょや2001ねんあきアメリカ同時どうじ多発たはつテロ事件じけん消費しょうひしゃびかえなどから、フルサイズカーへの人気にんき徐々じょじょ衰退すいたい傾向けいこうしめした。2003ねんころから活発かっぱつになったインセンティブ乱発らんぱつにより販売はんばい合戦かっせんにより利益りえきりつ低下ていかし、徐々じょじょ経営けいえいあしるようになる。ちをけるように2007ねんはいると原油げんゆ価格かかく高騰こうとう。フルサイズカーを環境かんきょうは、かつてのオイルショックおな状態じょうたいとなった。

2008ねん現在げんざい、アメリカ国内こくない展開てんかいする主要しゅようメーカーは、販売はんばい不振ふしんからフルサイズカーの車種しゃしゅ整理せいり縮小しゅくしょうしており、ふたたふゆ時代じだいおとずれている。

しかし、米国べいこくでは燃料ねんりょうだい上下じょうげ小型車こがたしゃ大型おおがたしゃ人気にんき交互こうごおとずれており、「大型おおがたしゃ体験たいけんした消費しょうひしゃ小型車こがたしゃ満足まんぞくすることはできない」というせつもある。だいいち石油せきゆ危機ききには大型おおがたセダンがサイズダウンされたが、その大型おおがたSUVえただけで、大型おおがたしゃへの嗜好しこう自体じたいけっしておとろえていない。CAFE燃費ねんぴ規制きせいがSUVをライトトラック区分くぶんしており、規制きせいがゆるく大型おおがただい排気はいきりょう車種しゃしゅ販売はんばいしやすいことも原因げんいんとしてかんがえられる。

実際じっさいに、2008ねん8がつから同年どうねんまつにかけて、ガソリン価格かかく下落げらくしたさいには、同年どうねん5がつには56%あったぜん車種しゃしゅちゅうにおけるトラックをのぞ乗用車じょうようしゃ割合わりあいが、同年どうねん12がつには47%に低下ていかしており、ガソリン価格かかく下落げらくによって、ふたたびピックアップトラックやSUVなどの販売はんばい比率ひりつがっていることがかる[6]

かつてはシボレー・カプリスインパラフォード・クラウンビクトリアなどのフルサイズ・モデルが全米ぜんべい乗用車じょうようしゃ最多さいた販売はんばい車種しゃしゅであったが、2000年代ねんだいにはシボレー・マリブトヨタ・カムリホンダ・シビックなどコンパクト(1970年代ねんだい以前いぜんのフルサイズと比較ひかくして)なくるま最多さいた販売はんばい車種しゃしゅとなっている[7]。しかし、乗用車じょうようしゃ限定げんていせず総合そうごうげで場合ばあいは、依然いぜんとしてフルサイズ・ピックアップトラックのフォード・Fシリーズシボレー・シルバラード全米ぜんべいもっとれている車種しゃしゅである。

そして2011ねんにフォードがフルサイズセダンを代表だいひょうする車種しゃしゅとしてながしたしまれてきたフォード・クラウンビクトリアマーキュリー・グランドマーキーリンカーン・タウンカー生産せいさんしていたカナダ・オンタリオしゅうセント・トーマス工場こうじょう閉鎖へいさすることとなり、これら3車種しゃしゅ相次あいついで生産せいさん終了しゅうりょうとなり、直系ちょっけい後継こうけいしゃはなく市場いちばからフルサイズ乗用車じょうようしゃえた。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Consumer Guide, Car and Driver, Hertzなど
  2. ^ 欧州おうしゅうでディーゼルしゃばなれの傾向けいこう目立めだ小型車こがたしゃでのシェア縮小しゅくしょう フォーブス ジャパン
  3. ^ 【キャデラック CT6 試乗しじょう】アメリカンもついにここまでたか…中村なかむら孝仁たかひと レスポンス
  4. ^ トヨタ4しゃ、スバル2しゃ、コンシューマー・レポートがえらぶ10ベストカー[2019年版ねんばん] BUSINESS INSIDER JAPAN
  5. ^ トヨタ・センチュリー日産にっさん・プレジデント日本にっぽん事情じじょうわせたショーファードリブンカーであり、一般いっぱんけの商品しょうひんとはがたい。
  6. ^ Lower gas prices send buyers after big cars again | USA TODAY英語えいご
  7. ^ | Auto Sales英語えいご

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]