ルノー・5

ルノー・5(Renault 5,R5)は、ルノーがかつて製造せいぞう、販売はんばいしていた小型こがたハッチバック型かたの乗用車じょうようしゃである。フランス語ふらんすごでは「5」を「サンク」(仏ふつ: cinq)と読よむ。

初代しょだい（1972 - 1985年ねん）

ルノー・5
3ドア フロント
5ドア リア
概要がいよう
製造せいぞう国こく	フランス スペイン ベネズエラ イラン メキシコ 南みなみアフリカ共和きょうわ国こく スロベニア
販売はんばい期間きかん	1972-1985年ねん
ボディ
乗車じょうしゃ定員ていいん	5名めい
ボディタイプ	3/5ドアハッチバック
駆動くどう方式ほうしき	FF
パワートレイン
エンジン	0.8/0.9/1.0/1.1/1.3/1.4L I4
変速へんそく機き	4/5MT 3AT
車両しゃりょう寸法すんぽう
ホイールベース	右側みぎがわ：2,420mm 左側ひだりがわ：2,390mm
全長ぜんちょう	3,520mm
全幅ぜんぷく	1,525mm
全ぜん高こう	1,410mm
車両しゃりょう重量じゅうりょう	730–810kg

1972年ねんに発売はつばいされ、先進せんしん的てきなデザインと高たかい実用じつよう性せいからヨーロッパ中なかでベストセラーとなった。現代げんだいの前輪ぜんりん駆動くどう車しゃとしては珍めずらしい縦たて置おきエンジン配置はいちであり、パワートレインも車体しゃたい前方ぜんぽうからトランスミッション、デフ、エンジンという、あまり類るいを見みない配置はいちとなっている（いわゆるフロントミッドシップに近ちかい）。これはベースとなった4と同おなじ構造こうぞうで、4の先代せんだいであるリアエンジン車くるまの4CVのエンジンと駆動くどう系けいをそのまま前方ぜんぽうに移うつしたことに由来ゆらいする。そのため室内しつない側がわにエンジンの一部いちぶが食くい込こんでおり、エンジンの熱ねつが室内しつないにこもりやすいという欠点けってんがあった。

エンジンは4に搭載とうさいされていた800ccと1,000cc（フランス国内こくない向むけ）のガソリンエンジン。後のちに1,300ccが追加ついかされ、5アルピーヌのベースエンジンとなった。

サスペンションは前まえがダブルウィッシュボーン、後ごがトレーリングアーム。スプリングは前後ぜんご輪わとも、スペース効率こうりつと乗のり心地ごこちに優すぐれるトーションバー（ねじり棒ぼうばね）を用もちいており、フロントは縦たて置おき、リアは横よこ置おきとされた。軸じく重じゅうの軽かるいリアはばねを柔やわらかくする（ばね定数ていすうを下さげる）必要ひつよう性せいから、左右さゆうともトーションバーは車くるま幅はばいっぱいの長ながさを確保かくほしたために同軸どうじく上じょうに配置はいちできず、室内しつないスペースを侵食しんしょくする上下じょうげ配置はいちは避さけて前後ぜんご方向ほうこうに並ならべて取とり付つけられている。それに伴ともない左右さゆうのトレーリングアームの支点してんも同様どうように前後ぜんごにずれているため、ホイールベースが左右さゆうで30mm異ことなる。これは4から受うけ継つがれたアイデアで、5ではこれに留とまらず既存きそんルノー各車かくしゃの部品ぶひんが多用たようされている。

デザインは、世界せかい初はつとなる樹脂じゅしバンパーを前後ぜんごに備そなえた3ドアのハッチバックボディで、5発表はっぴょう直前ちょくぜんにこの世よを去さったルノー社内しゃないデザイナー、ミシェル・ブエ（Michel Bouë ）がほぼ独力どくりょくで作業さぎょうしたものと言いわれている。

フランス内外ないがいで多数たすうの限定げんてい仕様しよう車しゃが発売はつばいされ、1979年ねんに5ドア版ばんを追加ついかし、内装ないそう等とうも大おおきく変更へんこうされるなどして長年ながねんベストセラーの座ざを保たもっていた。1985年ねんをもってフランス本国ほんごくでの生産せいさんを終了しゅうりょうし、後継こうけい車しゃのシュペール5に引ひき継つがれた。またR1229モデルがトヨタ・南みなみアフリカでも生産せいさんされていた。その後ごもイランなどで生産せいさんが継続けいぞくされた。

バリエーション

• ル・カー - アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくではル・カー（Le Car ）の名なでアメリカン・モーターズ（AMC）から販売はんばいされた。このモデルのイメージを追おった仕様しようが、フランスでも同名どうめいで限定げんてい仕様しようとして発売はつばいされた。
• 7 - スペインでの小型こがたファミリーカー需要じゅようの高たかさから、5をベースに開発かいはつされた4ドアセダン。「7」はスペイン語ごで「シエテ」(西にし: siete) と読よむ。車体しゃたい形状けいじょうのほか、バンパーや内装ないそうも異ことなる。
• 5アルピーヌ - 1976年ねん登場とうじょう。ルノー傘下さんかのスポーツカーメーカーであるアルピーヌが手てがけたスポーツバージョン。排気はいき量りょう1.4 L、最高さいこう出力しゅつりょく93 PSのエンジンに5速そくMTが組くみ合あわせられ、より操縦そうじゅう性せいを高たかめたサスペンションを備そなえる。外観がいかんでは、フォグランプ内蔵ないぞうのエアダムフロントバンパーとピンストライプが特徴とくちょう。アルミ製せいのホイールはアルピーヌ・A310と同様どうようの意匠いしょうのものを採用さいようしている。1981年ねんには、ターボチャージャーを搭載とうさいして最高さいこう出力しゅつりょくを110 PSに向上こうじょうさせた5アルピーヌ・ターボが登場とうじょうした。

なお、イギリスでは商標しょうひょう権けんの関係かんけいから「ゴルディーニ」を名乗なのっていた。

• 5ターボ - WRC（世界せかいラリー選手権せんしゅけん）のグループ4ホモロゲーションモデルとして開発かいはつされ、それまでのルノー車中しゃちゅう最高さいこう価格かかくで少量しょうりょう販売はんばいされた。後こう席せきを撤去てっきょしてそこにエンジンを搭載とうさいするミッドシップレイアウトに変更へんこうされており、駆動くどう方式ほうしきも後こう輪わ駆動くどうとなっている。排気はいき量りょう1,397 ccのエンジンにターボチャージャーの組くみ合あわせで、最高さいこう出力しゅつりょく160 PS / 6,000 rpm、最大さいだいトルク21.4 kgm / 3,250 rpmを発生はっせいする。トランスミッションは5速そくMTのみ。後のちに普及ふきゅう版ばんおよびグループBホモロゲーションモデルの5ターボ2も登場とうじょう。

日本にっぽんでの販売はんばい

日本にっぽんでは1976年ねんより導入どうにゅうされた。輸入ゆにゅう元もとはそれまでの日にち英えい自動車じどうしゃに代かわり、新あらたにルノーの代理だいり店てんとなったキャピタル企業きぎょうが、それまで扱あつかっていたミニの代替だいたいとして受うけ持もつことになった。当初とうしょは排気はいきガス対策たいさく用ようの触媒しょくばいを装備そうびしていたことから北米ほくべい仕様しよう車しゃを販売はんばいしていた（大型おおがたバンパー/丸まる形がたヘッドライト装備そうび）が、触媒しょくばいが発はっする高熱こうねつによって塗装とそうにヒビが入はいる、ボンネットに触さわると火傷かしょうするなどの諸しょ問題もんだいが生しょうじ、またさび止どめの処理しょりも不十分ふじゅうぶんであったため、長ながく残のこる個体こたいは少すくなかった。

その後ごフランス本国ほんごく仕様しようをベースに外観がいかんを変更へんこうし、品質ひんしつ向上こうじょうのための改善かいぜんが行おこなわれた。後のちに右みぎハンドルのAT車くるまや5アルピーヌ、さらに5ドアも輸入ゆにゅうされ、5ターボ2も少数しょうすう輸入ゆにゅうされた。

モデル	製造せいぞう期間きかん	モデルコード	排気はいき量りょう	最大さいだい出力しゅつりょく DIN	最大さいだいトルク DIN	最高さいこう速度そくど	パワーウェイト レシオ	前進ぜんしん ギア数すう	ブレーキ 前まえ/後のち
5L	1972年ねん-1976年ねん	R1220	782cc	36ps/5,200rpm	?	120km/h	20.28kg/ps	4MT	ドラム ドラム
	1977年ねん-1984年ねん	R1221	845cc	37ps/5,500rpm	5.9kgm/2,500rpm	126km/h	19.73kg/ps
5Lauréate L	1985年ねん	R1222	956cc	44ps/5,500rpm	6.5kgm/3,500rpm	136km/h	17.61kg/ps		ディスク ドラム
5TL	1972年ねん-1979年ねん	R1222 R1392		47ps/5,500rpm	6.5kgm/3,000rpm	135km/h	16.7kg/ps
	1980年ねん-1984年ねん	R1227 R1397	1,108cc	45ps/4,400rpm	8.7kgm/2,000rpm	137km/h	16.71kg/ps
5Lauréate TL	1985年ねん	R1397					16.56kg/ps
5GTL	1976年ねん-1979年ねん	R1225 R1395	1,289cc	42ps/5,000rpm	8.6kgm/2,000rpm	136km/h	17.74kg/ps
	1980年ねん-1984年ねん	R1227 R1397	1,108cc	45ps/4,400rpm	8.7kgm/2,000rpm	137km/h	16.71kg/ps
5Lauréate GTL	1985年ねん	R1397					17.44kg/ps	5MT
5LS	1974年ねん-1975年ねん	R1224	1,289cc	64ps/6,000rpm	9.6kgm/3,500rpm	155km/h	12.03kg/ps	4MT
5TS	1975年ねん-1981年ねん	R1224				151km/h	12.5kg/ps
5TS 5TX	1982年ねん-1984年ねん	R1229	1,397cc	63ps/5,250rpm	10.5kgm/3,000rpm	154km/h	13.02kg/ps	5MT
5アルピーヌ	1976年ねん-1981年ねん	R1223		93ps/6,400rpm	11.8kgm/4,000rpm	175km/h	9.14kg/ps
5アルピーヌターボ	1982年ねん-1985年ねん	R122B		110ps/6,000rpm	15.2kgm/4,000rpm	186km/h	7.91kg/ps		ディスク ディスク
5オートマチック	1978年ねん-1981年ねん	R1225 R1395	1,289cc	55ps/5,750rpm	9.6kgm/2,500rpm	140km/h	14.73kg/ps	3AT	ディスク ドラム
5オートマチック 5TXオート	1982年ねん-1984年ねん	R1229 R1399	1,397cc	58.5ps/5,250rpm	10.3kgm/3,000rpm	142km/h	14.02kg/ps

• 
  ル・カー（北米ほくべい仕様しよう）
• 
  7
• 
  5アルピーヌ・ターボ
• 
  5ターボ
• 
  5ターボ2

2代目だいめ（1984 - 1996年ねん）

ルノー・5 シュペール5
3ドア フロント
エクスプレス フロント
GTターボ フロント
概要がいよう
製造せいぞう国こく	フランス スペイン スロベニア
販売はんばい期間きかん	1984-1996年ねん
ボディ
乗車じょうしゃ定員ていいん	5名めい
ボディタイプ	3/5ドアハッチバック
駆動くどう方式ほうしき	FF
パワートレイン
エンジン	ガソリン：1.0/1.1/1.2/1.4/1.7L I4 ディーゼル：1.6L I4
変速へんそく機き	4/5MT 3AT
車両しゃりょう寸法すんぽう
ホイールベース	2,405mm (3ドア) 2,465mm (5ドア)
全長ぜんちょう	3,590mm (3ドア) 3,650mm (5ドア)
全幅ぜんぷく	1,585mm
全ぜん高こう	1,385mm (3ドア) 1,295mm (5ドア)
車両しゃりょう重量じゅうりょう	695–840kg
系譜けいふ
後継こうけい	クリオ

1984年ねん10月にフルモデルチェンジ。当時とうじのルノーはモデルチェンジとともに車くるま名めいを変更へんこうするのが通例つうれいだったが、この5に限かぎってはヒット作さくであったため踏襲とうしゅうされた。正式せいしきには旧きゅうモデルと変かわらず単たんに5という車くるま名めいであるが、旧きゅうモデルと区別くべつする目的もくてきで「シュペール5」(Super 5)とも呼よばれる。

ボディは3ドアもしくは5ドアのハッチバック。内うち外装がいそうともイタリアのデザイナーであるマルチェロ・ガンディーニが担当たんとうした。

エンジンは、956cc、1,108cc、1,397ccとそのターボ仕様しよう、1,721ccのガソリンエンジン、1,596ccのディーゼルエンジン。駆動くどう系けいは大おおきく変更へんこうされ、一般いっぱん的てきな横よこ置おきとなった。

サスペンションはフロントがストラット式しき、リアがトレーリングアーム。スプリングは、前輪ぜんりん部ぶがコイルで後こう輪わ部ぶがトーションバーである。

1987年ねんにマイナーチェンジが実施じっしされ、前後ぜんごバンパー、フロントグリルなどのデザインが変更へんこうされた。また、従来じゅうらい中央ちゅうおうにあったルノーのバッジは左側ひだりがわに寄よせて装着そうちゃくされるようになった。また、日本にっぽんへの正規せいき輸入ゆにゅうもジヤクスを通つうじて開始かいしされた。

シュペール5は旧きゅうモデルに続つづきベストセラーとなり、約やく400万まん台だいが生産せいさんされた。1990年ねんに後継こうけいとなるクリオの登場とうじょうでその座ざを譲ゆずったが、スロベニアでは1996年ねん頃ころまで生産せいさんが継続けいぞくされた。

バリエーション

• バカラ（Baccara ） - 豪華ごうか装備そうび車しゃ。レザーシートや革かわ巻まきステアリングが標準ひょうじゅんで用意よういされ、荷に室しつのトレイはそのままレザー製せいのジャケットケースとなっている。高級こうきゅう小型車こがたしゃの元祖がんそとなった。
• GTターボ - 5アルピーヌターボの後継こうけいとなるスポーツバージョン。外観がいかんはオーバーフェンダーやサイドスカート、スポイラー付つきバンパーなどで差別さべつ化かされ、馬力ばりきも115PS（後期こうき型がたは120PS/5750rpm）（『80年代ねんだい輸入ゆにゅう車しゃのすべて』三栄書房さんえいしょぼう、12頁ぺーじ参照さんしょう）まで上あげられた。キャブレター冷却れいきゃく用ように専用せんようの電動でんどうファンを装備そうびする。ボディサイズは全長ぜんちょう3,600×全幅ぜんはば1,600×全高ぜんこう1,360mm、ホイールベース2,405mm、車くるま重じゅう850kg。
• エクスプレス（Express ） - シュペール5をベースにホイールベースを延長えんちょうし、Bピラーから後半こうはん部ぶを箱はこ状じょうの荷に室しつにしたフルゴネットで、4フルゴネットの後継こうけい。商用しょうようタイプがメインだが、貨客兼用けんようタイプや乗用じょうようタイプも設定せっていされた。シュペール5の生産せいさん終了しゅうりょう後ごはスペイン、ブラジル、アルゼンチン、台湾たいわんで生産せいさんが継続けいぞくされ、マイナーチェンジでエンジンの変更へんこうや跳はね上あげ式しきバックドアが加くわわるなど、後継こうけいとなるカングーの登場とうじょうまでその役割やくわりを果はたした。

3代目だいめ（2024年ねん - ）

詳細しょうさいは「ルノー・5 (電気でんき自動車じどうしゃ)」を参照さんしょう

電気でんき自動車じどうしゃとして約やく18年ねんぶりに復活ふっかつ。2021年ねん1月がつ14日にちにコンセプトモデルが発表はっぴょう、2024年ねん2月がつ26日にちに市販しはんモデルが発表はっぴょうされた。

登場とうじょう作品さくひん

小説しょうせつ

『冬ふゆこそ獣ししは走はしる』北方きたがた謙三けんぞう、新潮社しんちょうしゃ、1986年ねん。 ISBN 4-10-356202-1

主人公しゅじんこうの愛車あいしゃとして登場とうじょう。

映画えいが

『トランスポーター』

2003年ねん 劇げき中ちゅうでフランクが使用しよう。

漫画まんが

『軽井沢かるいざわシンドローム』

登場とうじょう人物じんぶつの一人ひとり「田口たぐち修一しゅういち」の愛車あいしゃ。

関連かんれん項目こうもく

• ルノー
• ルノー・4
• ルノー・クリオ
• ルノー・トゥインゴ

外部がいぶリンク

• ルノー
• ルノー・ジャポン