AC・コブラ

AC・コブラ
MK I
MK II
MK III
概要がいよう
販売はんばい期間きかん	1962年ねん – 1967年ねん
ボディ
乗車じょうしゃ定員ていいん	2名めい
ボディタイプ	ロードスター
パワートレイン
エンジン	XHP-260 チャレンジャー289ハイパフォーマンスV8 サンダーバード427ハイパフォーマンスV8 インターセプターV8

AC・コブラ（AC Cobra 、エーシーコブラ）は1960年代ねんだいを中心ちゅうしんに製造せいぞうされたイギリス及およびアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのスポーツカーである。

開発かいはつまでの経緯けいい

ACコブラのエンブレム

1950年代ねんだいまでACカーズは他たの多おおくのイギリス中小ちゅうしょう自動車じどうしゃメーカーと同様どうよう、他社たしゃ製せいエンジンを取とり入いれていた。AC・エースなどのエンジンはブリストル・カーズから供給きょうきゅうされた直列ちょくれつ6気筒きとうだが、これは元々もともと第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん前まえにBMWが設計せっけいしたものであった。ボディは鉄てつ製せいのフレームにアルミニウムのハンドメイドである。

1961年ねん、ブリストルはエンジンの生産せいさんを中止ちゅうし。そしてクライスラー製せいの313 in³（5.1 L）V8エンジンの採用さいようを決きめた。この事態じたいを受うけてACカーズは経営けいえい難なんに陥おちいった。その後ご、ACカーズはイギリス・フォード製せいゼファーの2.6 L 直ちょく6エンジンを採用さいよう。同年どうねん9月がつ、アメリカ人ひとレーサーのキャロル・シェルビーはV8エンジンを搭載とうさいした車くるまの製作せいさくを同社どうしゃに提案ていあん。シェルビー自身じしんがエンジンを調達ちょうたつすることを条件じょうけんとして合意ごういが成立せいりつした。シボレーは同社どうしゃのコルベットの対抗たいこう車種しゃしゅに成なり得えるという懸念けねんからエンジン提供ていきょうを断ことわったが、フォードから最新さいしんのチャレンジャーV8の供給きょうきゅうを受うけられることになった。

1962年ねん1月がつ、ACカーズのメカニックであるテムズ・ディットンはチャレンジャー221V8を搭載とうさいした試作しさく車しゃ、シャシナンバーCSX0001を製作せいさく。同年どうねん2月がつ2日にち、同どう試作しさく車しゃの走行そうこうテストを終おえた後のち、エンジンとトランスミッションを取とり外はずし、シャシのみをロサンゼルスのシェルビーの下したに空輸くうゆ。彼かれのチームは8時じ間あいだ足たらずでエンジンを取とり付つけ、さっそくロードテストを開始かいしした。

ACカーズ自体じたいもV8新型しんがた車しゃを生産せいさんラインに乗のせることはフォード2.6 L ゼファーエンジン採用さいようの経験けいけんと現行げんこう型がたACエースのフロントエンドの拡張かくちょうのみ、という点てんから比較的ひかくてき容易よういであった。それよりも重点的じゅうてんてきな改良かいりょうが必要ひつようだったのは強大きょうだいな出力しゅつりょくに耐たえうるリアデフで、旧式きゅうしきのENVユニットに代かわり、ソールズベリー4HUユニットを選択せんたく、同時どうじにインボードディスクブレーキを一体化いったいかし、バネ下か重量じゅうりょうの軽量けいりょう化かをも図はかった（ジャガー・Eタイプも同おなじ形式けいしきを採用さいようしている。ACエースのリアはドラムブレーキ。）。しかし、量産りょうさんモデルではコスト削減さくげんの目的もくてきから、一般いっぱん的てきなアウトボードタイプになっている。ACエース2.6から第だい一いち号ごうコブラへのフロントエンドの改良かいりょうは、幅はばの広ひろいV8エンジンとの干渉かんしょうを避さけるために外側そとがわに移動いどうされたステアリングギアボックスのみにとどまった。

モデルの変遷へんせん

初期しょき型がたである75 Cobra Mk I（試作しさく車しゃも含ふくむ）はチャレンジャー260V8 (XHP-260) を搭載とうさい。51 Mk Iモデルにはチャレンジャー289ハイパフォーマンスV8が載のせられた。1962年ねん末すえ、ACカーズのチーフ・エンジニア アラン・ターナーはフロントエンドのデザインの最終さいしゅう決定けっていを下くだし、前後ぜんご共どもにアッパーが横よこ置おきリーフスプリング、ロワがウィッシュボーンの4輪りん独立どくりつサスペンションを引ひき続つづき使用しようしつつ、ラック・アンド・ピニオン式しきのステアリングギアボックスを流用りゅうようした。MK Iは1963年ねん明あけに本格ほんかく的てきな生産せいさん体制たいせいに入はいった。

MK Iの量産りょうさん開始かいしと前後ぜんごして、次期じき型がたとなるMK IIのデザインもスタートし、1965年ねん夏なつより528 Mark II Cobraとして生産せいさんされた。MK IIのステアリングラックはMGBの流用りゅうよう、ステアリングコラムもフォルクスワーゲン・タイプ1にも採用さいようされていた新型しんがたのものを流用りゅうようした。

1963年ねん、シェルビーはコブラMK IIにサンダーバード390V8を搭載とうさいしてレースに挑いどんだものの、ドライバーのケン・マイルズはコントロールすることができず、"The Turd"（クソったれ）と罵ののしった。これを機きに、さらなる巨大きょだい出力しゅつりょくに耐たえうる新あたらしいシャシを求もとめてMK IIIの開発かいはつが始はじまった。新型しんがたのMk IIIはフォードの協力きょうりょくで開発かいはつが進すすめられた。フレームを構成こうせいする2本ほんのメインチューブ径みちを3インチから4インチに太ふとくし、前後ぜんごにコイルスプリングによるダブルウィッシュボーン式しきサスペンションを採用さいようするなど、シャシは近代きんだい化かされた。同時どうじにエクステリアデザインも変更へんこうされ、大おおきく膨ふくらんだ前後ぜんごフェンダーと、ラジエーターが覗のぞく大だい開口かいこうのグリルレスエアインテークのフロントエンドとされた。この結果けっか、ホイールベースは2,286 mmのまま、全幅ぜんぷくは175mm拡大かくだいされた。排気はいき量りょう427 in³（7.0 L）、最高さいこう出力しゅつりょく425馬力ばりき（317 kW）のサンダーバード427ハイパフォーマンスV8の軽量けいりょう型がたを搭載とうさいしたスタンダードモデルは最高さいこう速度そくどが262 km/hで、485馬力ばりき（362 kW）エンジンを搭載とうさいしたコンペティションモデルは290 km/hに達たっした。1964年ねん10月に2台だいの試作しさく車しゃが未み塗装とそうのローリングシャシのみでアメリカに輸送ゆそうされ、エンジンなどはシェルビーのもとで組くみ上あげられ、完成かんせいされた。

ACコブラのエンジン

1965年ねん1月がつ1日にちにMK IIIの生産せいさんが始はじまった。MK IIIは強つよい印象いんしょうを与あたえるモデルではあったがセールスの面めんではあまり振ふるわず、ACカーズの経営けいえいは良よい状態じょうたいとはいえなかった。コスト削減さくげんから多おおくのMK IIIは一般いっぱん道どうで使用しようするニーズに応こたえ、スモールボア・ロングストロークでより低てい価格かかくのインターセプターV8が搭載とうさいされた（427は107.5 mm x 96.1 mm、428は105.0 mm x 101.1 mm）。コンペティションモデルを含ふくめ、1965年ねんから1966年ねんにかけてアメリカのシェルビーの下したに約やく300台だいのMK IIIが輸出ゆしゅつされたとみられる。小こぶりなフェンダーのAC289は主おもにヨーロッパ市場いちばで販売はんばいされた。不運ふうんなことに、Mk IIIのFIAホモロゲーション取得しゅとくが1965年ねんのレースシーズンに間まに合あわず、シェルビーチームによる参戦さんせんは叶かなわなかった。しかし市販しはんされたコンペティションモデルは1970年代ねんだいに入はいっても数すう多おおくのプライベーターを勝利しょうりに導みちびき、圧倒的あっとうてきな強つよさを誇ほこった。31台だいあった売うれ残のこりのコンペティションモデルは、一般いっぱん公道こうどう向むけにデチューンされ、ストリート用ようのフロントウインドシールドが取とり付つけられており、S/C（セミ・コンペティション）と呼よばれている。これらは世界せかいで最もっとも希少きしょう価値かちのある自動車じどうしゃとして有名ゆうめいで現在げんざいでは市場いちばで1億おく5000万まん円えん程度ていどの値段ねだんが付つけられたこともある。

その後ごの動向どうこう

ACコブラ427

コブラのレーシングキャリアにおいてはシェルビーが「打倒だとうコルベット」（Corvette-Beater）を掲かかげた（コブラはコルベットよりも227kg軽かるい）。「イギリスの公道こうどうに速度そくど制限せいげんが設もうけられたのはコブラのせい」と言いわれるほどで、1964年ねんにはル・マン24時じ間あいだレースを控ひかえたレーシングドライバー、ジャック・シアーズとピーター・ボルトンのテスト走行そうこうで、イギリスの幹線かんせん高速こうそく道路どうろM1モーターウェイにて298 km/hを叩たたき出だしている。

レースでは輝かがやかしい成績せいせきを残のこしたものの、ACカーズの事業じぎょう体たいとしての経営けいえいは悪化あっかしており、1967年ねんにはフォードとシェルビーともにイギリスから同社どうしゃ製せいの自動車じどうしゃ輸入ゆにゅうを止とめることになってしまった。ACカーズはそれでもなおフォード289エンジンを積つんだコイルスプリングのロードスターであるAC289の生産せいさんを続つづけ、1969年ねん末すえまでヨーロッパ市場いちばで販売はんばいしていた。このモデルは後ごの1982年ねんにMK IIIをベースとしたフォード製せい5.0 L V8エンジンにボルグワーナーT5トランスミッションを積つんでAutokraft MkIVとして再さい発売はつばいされた。

ACカーズはまた、1973年ねんまでAC・フルア販売はんばいするが、同車どうしゃの販売はんばいが落おち込こむとともに生産せいさん数すうも減少げんしょうし、1970年代ねんだい後半こうはんにはついに倒産とうさんするに至いたった。

同社どうしゃの商標しょうひょうはオートクラフトに譲渡ゆずりわたされ、AC289の後継こうけい車しゃとしてMK IVの生産せいさんを行おこなうが、その直後ちょくごシェルビーはACカーズとオートクラフトをロサンゼルス地方裁判所ちほうさいばんしょに提訴ていそ。その結果けっか、コブラの商標しょうひょう権けんはシェルビーのものとなった。シェルビーモータースは現在げんざいもシェルビー・コブラとしてFIA289や427S/Cなど様々さまざまなバリエーションでラスベガス工場こうじょうで生産せいさんしている。2006年ねんにはシェルビー自身じしんが所有しょゆうしていたシェルビー・コブラがアリゾナ州しゅうでオークションにかけられ、280万まんポンド（約やく4億おく円えん超ちょう）の値段ねだんが付つけられた。

また、日本にっぽんではシェルビージャパンによって販売はんばいされていた。現在げんざいは米国べいこくスーパフォーマンス社しゃと提携ていけいした代理だいり店てん数すう社しゃが販売はんばいしている。

クーペ仕様しよう

デイトナ・クーペ（1965年ねん撮影さつえい）

ル・マン24時じ間あいだレースで使用しようされるサルト・サーキットにおいてのトップスピードの向上こうじょうを図はかるため、ACシェルビーMK IIをベースにしたクーペの開発かいはつが行おこなわれた。その中なかで最もっとも有名ゆうめいなものはシェルビー・デイトナ・コブラ・クーペで、6台だいが製作せいさくされ、フェラーリやポルシェなどのライバルを上回うわまわる大おおきな成功せいこうを収おさめた。

またACカーズはル・マン・クーペ、ジョン・ウィルメント・レーシングチームはウィルメント・コブラ・クーペを同様どうようの手法しゅほうにより製作せいさく、実戦じっせんにも投入とうにゅうされたが、デイトナのような成功せいこうを得えることはなかった。

これらの車両しゃりょうは世界中せかいじゅうのコレクターの元もとに保管ほかんされている。

Continuation Cars/後継こうけい車しゃ

ACコブラのインテリア

1980年代ねんだい後半こうはん、キャロル・シェルビーと彼かれを取とり巻まく企業きぎょうはシェルビー認可にんか付つきオリジナルACボディ及およびシェルビー・コブラ・シリーズを（道楽どうらく的てきに）製作せいさくするコンセプト"Continuation Cars"（直訳ちょくやく:後継こうけい車しゃ）を立たち上あげた。当初とうしょ、Continuation Carsが望のぞんだ車種しゃしゅはCSX4000シリーズとして知しられる427S/Cモデルであった。これは1960年代ねんだい、シリアルナンバーCSX3560当あたりをめどに生産せいさんを中止ちゅうしした427S/Cの復刻ふっこくが望のぞまれていたことになる。

SCX4000シリーズはシェルビーが個人こじん的てきに保有ほゆうしていたスペアのパーツを寄よせ集あつめ、新品しんぴんを組くみ合あわせての製作せいさくとなった。ヴィンテージパーツと化かした同どうモデルの部品ぶひんの供給きょうきゅうは非常ひじょうに薄うすかったため、フレームは新品しんぴんを製作せいさくしボディパネルは様々さまざまな場所ばしょから集あつめられた。CSX4001からCSX4999までの約やく1000台だいを製作せいさくするのにおよそ20年ねんの歳月さいげつを費ついやし、その中なかで新あらたなビジネスも展開てんかいしていった。

260 Slab Side Street Car Mk I 260-289、Mk II 289、The FIA Race Cars, The Mk III 427、などの車種しゃしゅはContinuation（後継こうけい車しゃ）として現在げんざいも市場いちばに出回でまわっている。2009年ねんにはCSX4999が完成かんせいしシリアルナンバー4000シリーズの終幕しゅうまくを迎むかえ、今後こんごは6000シリーズの製作せいさく・販売はんばいが進行しんこう中ちゅうである。6000シリーズではコイルオーバー・サスペンションに改良かいりょうが加くわえられる予定よていで、289FIAのリーフ・スプリング付づけレースモデルはCSX7000、オリジナルのSlab Side リーフ・スプリング・ストリートカーはCSX8000シリーズになる。これらの新型しんがた車種しゃしゅは基本きほん的てきにガラス繊維せんい製せいのボーンを使用しようしているが、稀まれに顧客こきゃくのカスタム仕様しよう用ようとしてアルミニウムやカーボンファイバーが使用しようされる場合ばあいがある。