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ロータリーエンジン (星型エンジン) - Wikipedia コンテンツにスキップ

ロータリーエンジン (ほしがたエンジン)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
フランス ノーム・エ・ローヌしゃローヌ 9Cだいいち世界せかい大戦たいせんどき航空機こうくうきようロータリーピストンエンジンのひとつ。どうのパイプは、クランクケースからシリンダーヘッドへ混合こんごうおくインテークマニホールド

ロータリーエンジン英語えいご: rotary engine)は、機体きたい固定こていされたクランクシャフト中心ちゅうしんエンジン本体ほんたいプロペラ一緒いっしょ回転かいてんする空冷くうれいほしがたエンジンである。初期しょき1908ねん - 1918ねんころ)の飛行機ひこうきもちいられた。ロータリー・レシプロエンジンあるいは回転かいてんしきエンジンともばれる。

解説かいせつ[編集へんしゅう]

ロータリーエンジンは、ほしがたエンジンのクランクシャフトを機体きたい固定こていし、エンジン全体ぜんたい回転かいてんする形式けいしきのレシプロエンジンで、プロペラじくクランクケース固定こていされる。150馬力ばりき程度ていどまでのエンジンに使つかわれた[1]ローラン・セガンフランス語ふらんすごばんおとうとルイフランス語ふらんすごばんによって開発かいはつされたノームエンジン(ノーム・エ・ローヌ)が有名ゆうめいで、日本にっぽんでも東京瓦斯とうきょうがす電気でんき工業こうぎょうでライセンス生産せいさんおこなわれた[2]

1910年代ねんだい初頭しょとうにおいては航空こうくうようエンジンとくらべて馬力ばりきあたり重量じゅうりょうがはるかにすくなかったため、世界せかい記録きろくのほとんどがとう形式けいしきのエンジンをつけた航空機こうくうきめられた[3]

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

フォッカー三葉機のカウリング
したはんかれたフォッカー Dr.Iのカウリング

ロータリーエンジンは、トルク変動へんどう吸収きゅうしゅうするフライホイール役割やくわりをエンジンそのものでになうことで軽量けいりょうでき、エンジンがみずか回転かいてんすることでシリンダーの冷却れいきゃく均等きんとうおこなえたため、エンジンがてい出力しゅつりょくてい回転かいてんだった時代じだいには水冷すいれいエンジンよりも軽量けいりょうとすることができた。このエンジンの1910年代ねんだいにおける馬力ばりきあたり重量じゅうりょうは1.3kg程度ていどで、1.5~3.0kgの形式けいしきたいしてきわめて有利ゆうりだった[4]

固定こていしきほしがたエンジンがしだっただいいち大戦たいせん当時とうじ、ロータリーエンジンはすでに近代きんだいてきカウリングそなえていたが、これはエンジンの回転かいてんともなって飛散ひさんする潤滑油じゅんかつゆおさえるのがしゅ目的もくてきだった[4]潤滑油じゅんかつゆまって火災かさいまねかないよう、した半分はんぶんかれたカウリングが外見がいけん特徴とくちょうになっている。

欠点けってん[編集へんしゅう]

ジャイロ効果こうかによって水平すいへい飛行ひこうから旋回せんかいうつさいおおきなちから必要ひつようとし、一旦いったんかたむくとかたむつづけるくせがあった[1]。また、スロットルがつけられないため、出力しゅつりょく調整ちょうせいには燃料ねんりょう空気くうき混合こんごうをかえる面倒めんどう操作そうさをせねばならず、素早すばや調整ちょうせいには「ブリップスイッチ」によるエンジンのオン・オフが多用たようされたが、この操作そうさによる故障こしょうこしやすかった。離着陸りちゃくりく操縦そうじゅうむずかしい機体きたいになる(これによりソッピース キャメルでは事故じこ多発たはつした)短所たんしょがあった。

ジャイロ効果こうかすため、ギヤをもちいてプロペラの回転かいてん方向ほうこうとエンジンの回転かいてん方向ほうこう反転はんてんさせたジーメンス=ハルスケエンジンも開発かいはつされたが、整備せいび手間てまがかかるなど実用じつようせいおとるものであった[5]

また、遠心えんしんりょくにより各部かくぶ負荷ふかがかかるためこう出力しゅつりょくこう回転かいてんおよび大型おおがた)に限界げんかいがあり、だいいち世界せかい大戦たいせんの1920年代ねんだいには冷却れいきゃく効果こうかたかアルミニウムせいシリンダーヘッド固定こていしきほしがたエンジンやこう出力しゅつりょく水冷すいれいエンジンとの馬力ばりき競争きょうそう敗北はいぼく旧式きゅうしきとなった。この時代じだい航空こうくうようエンジンはねつ伝導でんどうりつたか材質ざいしつ、シリンダーとシリンダーヘッド分離ぶんり、より緻密ちみつたか冷却れいきゃくフィン[注釈ちゅうしゃく 1]など、しん技術ぎじゅつ導入どうにゅうによる改良かいりょうにより新型しんがた空冷くうれいほしがたエンジンが続々ぞくぞく登場とうじょうしている。

エンジンの回転かいてんによってつよ遠心えんしんりょくくわわるため潤滑油じゅんかつゆ循環じゅんかんむずかしく、飛散ひさんにより燃料ねんりょうどう程度ていどのオイルを消費しょうひするため、経済けいざいてきには効率こうりつわるかった。飛散ひさんする潤滑油じゅんかつゆゴーグル付着ふちゃくするため、パイロットマフラーっていた[6]飛散ひさんしないエンジンを使用しようするようになっても防寒ぼうかんよう止血しけつたいとしてマフラーを常備じょうびするようになった。潤滑油じゅんかつゆとしてヒマシ使つかわれていたため、飛散ひさんしたあぶらしずくむことでパイロットの下痢げり多発たはつした[よう出典しゅってん]

自動車じどうしゃやオートバイでの利用りよう[編集へんしゅう]

インホイールエンジンとして回転かいてんしきエンジンを採用さいようしたMHV_Megola
RevoPower wheel

19世紀せいきまつから回転かいてんしきエンジンをもちいた自動車じどうしゃオートバイがいくつか製作せいさくされ、販売はんばいされたものもあった。1890年代ねんだいにステファン・バルツァー (Stephen Balzer, 1864-1940) により自動車じどうしゃようロータリーエンジンが製作せいさくされた。1904ねんイギリスのRedrup(en:Charles_Benjamin_Redrup)はみずからの設計せっけいによる2気筒きとうのロータリーエンジン(en:Barry_engine)をフレームない搭載とうさいしたモペッド開発かいはつし、1912ねんに「Redrupほしがたエンジン」を搭載とうさいしたエンジンを搭載とうさいしたモペッドも製作せいさくした[7]。1921ねんから1925ねんにかけて、ロータリーエンジンをフロントホイールうちおさめるインホイールエンジン構成こうせいったメゴラ(en:Megola)がドイツ製造せいぞうされた。生産せいさん台数だいすうすくなかったが、いくつものオートバイレースで優勝ゆうしょうした実績じっせき[よう出典しゅってん]。1940年代ねんだいに、Cyril Pullin(en:Cyril Pullin)がPowerwheel名付なづけられたたん気筒きとうのインホイールエンジンを考案こうあんしたが、製造せいぞうされなかった。アメリカではAdams-Farwellしゃ(en:Adams-Farwell)が4りん自動車じどうしゃであるBailey、Balzer、Intrepidの3車種しゃしゅにロータリーエンジンを搭載とうさいした。2008ねん、アメリカのRevoPowerしゃ(en:RevoPower)は自転車じてんしゃようのちけエンジンであるThe Wheel発売はつばいした。26インチの自転車じてんしゃようホイール内部ないぶに25ccたん気筒きとう2ストロークのロータリーエンジンを内蔵ないぞうしたもので、通常つうじょう自転車じてんしゃのフロントホイールと交換こうかんするだけでけられ、最高さいこう時速じそく32kmで走行そうこう可能かのうであった。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ うす面積めんせきおおきなフィンはエンジンの振動しんどうによってれやすいため、製造せいぞうむずかしかった。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b ライフサイエンスライブラリー 1967, p. 116-117.
  2. ^ 日野自動車ひのじどうしゃの100ねん 2010, p. 16.
  3. ^ 木村きむら 1954, p. 124具体ぐたいてきには1910ねんから1913ねんまで
  4. ^ a b 木村きむら 1954.
  5. ^ ライフサイエンスライブラリー 1967, p. 117.
  6. ^ ライフサイエンスライブラリー 1967, p. 61.
  7. ^ Charles Benjamin Redrup”. 2008ねん4がつ11にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 鈴木すずきたかし日野自動車ひのじどうしゃの100ねん三木みき書房しょぼう、2010ねんISBN 978-4-89522-557-1 
  • 木村きむら秀政ひでまさ (12 1954). “[講座こうざ]過去かこはん世紀せいきにおける飛行機ひこうき設計せっけい進歩しんぽ*”. 日本航空にほんこうくう学会がっかい (日本航空にほんこうくう学会がっかい) 2 (6): 122-135. doi:10.2322/jjsass1953.2.122. 
  • H・ガイフォード・スチーバー,ジェームス・J・ハガチー「やぼな役目やくめたすいきなスカーフ」『ライフサイエンスライブラリー だい4』タイムライフインターナショナル、1967ねん、115-117ぺーじNDLJP:1371134/1/60 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]