(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ビオ・サバールの法則 - Wikipedia コンテンツにスキップ

ビオ・サバールの法則ほうそく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ビオ・サバールの法則ほうそく(ビオ・サバールのほうそく、えい: Biot–Savart law)とは電流でんりゅう存在そんざいによってそのまわりにしょうじる磁場じば計算けいさんするため電磁気でんじきがくにおける法則ほうそくである。この法則ほうそくしずか電場でんじょうたいするクーロンの法則ほうそく対応たいおうする。

この法則ほうそくによって磁場じば距離きょり方向ほうこう、およびその電流でんりゅうおおきさなどに依存いぞんすることがろんじられる。この法則ほうそく静的せいてき近似きんじもとではアンペールの法則ほうそくおよび磁場じばたいするガウスの法則ほうそく同等どうとうである。

1820ねんフランス物理ぶつり学者がくしゃジャン=バティスト・ビオフェリックス・サヴァールによって発見はっけんされた。

概要がいよう[編集へんしゅう]

微小びしょうながさの電流でんりゅう要素ようそ I dl によって r はなれた位置いちつくられる微小びしょう磁場じば dH

あらわされる。ここで r := |r| である。

電流でんりゅうがある程度ていどはばをもってながれているとき(すなわち、ふと無限むげんしょうせんでなく領域りょういき Vめているとき)、電流でんりゅう密度みつど j使つかった積分せきぶんがた必要ひつようがある:

なおうえしきでは左辺さへん磁場じば H微小びしょうりょうではない。

この法則ほうそく積分せきぶん実行じっこうしてはじめて有効ゆうこうる、すなわち実験じっけんてき検証けんしょう間接かんせつてきにならざるをない欠点けってんがある。

歴史れきし[編集へんしゅう]

1820ねん4がつデンマーク物理ぶつり学者がくしゃハンス・クリスティアン・エルステッドコペンハーゲン大学だいがくでの講義こうぎちゅう電気でんき回路かいろをいじっていたときちかくにあった方位ほうい磁石じしゃくきたではない方角ほうがくししていることにき、電流でんりゅう磁場じば関係かんけいについてすうげつ研究けんきゅうすえ電流でんりゅう磁気じき作用さよう発表はっぴょうした。 これをけ、ジャン・バティスタ・ビオとフェリックス・サバールは共同きょうどう実験じっけんおこない、この法則ほうそく発表はっぴょうするにいたった。さらにこのすうヵ月かげつにはフランソワ・アラゴー電磁石でんじしゃく原理げんりを、アンドレ・マリー・アンペールがアンペールの法則ほうそく発見はっけんしている。これらの功績こうせきがエルステッドの発見はっけんからわずいちねん以内いないのことであったのはおどろくべきことである。

さらに3ねんの1823ねんにスタージャンが実際じっさい電磁石でんじしゃく作成さくせいし、24ねんにアラゴーは回転かいてん磁気じき発見はっけんしている。この1820ねんからのすう年間ねんかん科学かがく史上しじょう重要じゅうよう期間きかんである。

その形式けいしき[編集へんしゅう]

均一きんいつ電流でんりゅう[編集へんしゅう]

電流でんりゅうI如何いかなるてんにおいても一定いってい場合ばあい磁場じばH は、

となる。

とう速度そくど運動うんどうするてん電荷でんか[編集へんしゅう]

てん電荷でんかq一定いってい速度そくどv運動うんどうしているとき、特殊とくしゅ相対性理論そうたいせいりろんマクスウェルの方程式ほうていしきより以下いかでんたば密度みつど磁場じばあたえられる[1]

ただし、βべーた = v / cθしーたvr のなすかくであり、c光速こうそくである。

vcたいして十分じゅうぶんちいさい()ときは、近似きんじてき

あらわすことができる。

これらのでんたば密度みつど磁場じばかんするしきは、てん電荷でんかたいするビオ・サバールの法則ほうそくばれ、1888ねんオリヴァー・ヘヴィサイドによってみちびかれた。

計算けいさんれい[編集へんしゅう]

無限むげんなが直線ちょくせん電流でんりゅうまわりの磁場じば[編集へんしゅう]

ビオ・サバールの法則ほうそく積分せきぶんすることによりアンペールの法則ほうそく磁場じば一致いっちする。 たとえば無限むげんなが直線ちょくせん電流でんりゅうであれば、より、

したがって

となるから、ビオ・サバールの法則ほうそく積分せきぶんして、

る。これはアンペールの法則ほうそく磁場じばおおきさと一致いっちする。

立体りったいかくもちいた解析かいせき[編集へんしゅう]

閉経へいけいC1から回路かいろC2を俯瞰ふかんする立体りったいかくΩおめがとする。

以下いかのようにしてもビオ・サバールの法則ほうそくからアンペールの法則ほうそくつことをしめすことができる[2]

閉回C1うえてんPから回路かいろC2俯瞰ふかんする立体りったいかくΩおめが とする。ここで回路かいろC1うえてんPから微小びしょう距離きょり ds だけ移動いどうしたてんをP′とすると、てんP′から回路かいろC2俯瞰ふかんする立体りったいかくΩおめが+dΩおめが は、−ds だけ平行へいこう移動いどうされた回路かいろ俯瞰ふかんする立体りったいかくひとしい。

このとき、回路かいろじょう微小びしょうながさ ds′ と平行へいこう移動いどうした微小びしょう距離きょり −ds によってつくられるめんめんもとベクトル dS

であるが、てんPから回路かいろじょう微小びしょうながさ ds′ へかうベクトルを r とすると、てんPからめんもと dS立体りったいかく

あらわすことができる。 これを ds′ にかんして回路かいろ一周いっしゅうぶんせん積分せきぶんすれば立体りったいかく変化へんかdΩおめがることができる。

回路かいろじょう微小びしょう電流でんりゅう要素ようそてんPにつく磁場じばはビオ・サバールの法則ほうそく積分せきぶんして、

られるが、この両辺りょうへんに ds内積ないせきじょうじ、さきしき代入だいにゅうすると

関係かんけいられる。 てんPが閉曲線へいきょくせんC1うえ一周いっしゅうするようなΩおめが変化へんか

であるので、

とする、アンペールの法則ほうそくそのものがみちびかれる。

この場合ばあい、C1かこ領域りょういき D赤色あかいろ)の面積めんせきS1とすると、めんS1たいする電流でんりゅうめん密度みつどおおきさj

となるが、たとえば閉曲線へいきょくせんC1が1しゅうするあいだ回路かいろC2が3しゅうするような場合ばあいには電流でんりゅうめん密度みつどおおきさは 3j閉曲線へいきょくせんC1が2しゅうするあいだ回路かいろC2が1しゅうするような場合ばあいには電流でんりゅうめん密度みつどおおきさは j/2 である。このことを考慮こうりょすれば、

くことができる。

円形えんけい電流でんりゅう中心ちゅうしん付近ふきんける磁場じば[編集へんしゅう]

中心ちゅうしんしょうじる磁場じば

アンペールの法則ほうそく使つかった場合ばあいではもとめることがむずかしい場合ばあいも、ビオ・サバールの法則ほうそくもちいることで簡易かんい計算けいさんできる場合ばあいがある。たとえば円形えんけい電流でんりゅう中心ちゅうしん付近ふきん発生はっせいする磁場じばもとめる場合ばあいがそうである。まず、みぎのような半径はんけい a円周えんしゅうじょうPてん存在そんざいする電流でんりゅう I によって、中心ちゅうしんOにしょうじる磁場じばについてかんがえる。

dsr角度かくどφふぁい とおくと、より

となり、また

であるので、

である。これを円周えんしゅうじょう積分せきぶんして、

となる。

中心ちゅうしんよりzだけずれた位置いちしょうじる磁場じば

つぎに、みぎのようなOよりめん垂直すいちょくz だけずれた位置いちQにしょうじる磁場じばについてかんがえる。より、

である。

dH はビオ・サバールの法則ほうそくより dsr垂直すいちょくで、めん平行へいこう成分せいぶん 対称たいしょうせいにより円周えんしゅうじょう積分せきぶんすると 0 になってしまうので、めん垂直すいちょく成分せいぶん のみをかんがえればよい。

ここで、ds = a dθしーた であることをもちいて、

ここで、z = 0 とすれば、えん中心ちゅうしんしょうじている磁場じばHOられる。すなわち、

であり、これはさきほどもとめたものに一致いっちする。

発散はっさん回転かいてん[編集へんしゅう]

発散はっさん[編集へんしゅう]

ビオ・サバールの法則ほうそく両辺りょうへん発散はっさんる。

ここで、ベクトル解析かいせき恒等こうとうしきより

また、

なので、これを代入だいにゅうすると、

る。これは、磁場じばたいするガウスの法則ほうそくよりみちびかれる結果けっかひとしい。

回転かいてん[編集へんしゅう]

ビオ・サバールの法則ほうそく両辺りょうへん回転かいてんる。

ここで、ベクトル解析かいせき恒等こうとうしきより

また、

なので、

られる。これはアンペールの法則ほうそくそのものである。

ただし、このえはしずか磁場じばでのみ有効ゆうこうであることに留意りゅういしなければならない。

ベクトルポテンシャル[編集へんしゅう]

せい磁場じばで、ベクトルポテンシャル

定義ていぎ出来できるとき、

であるので、ベクトルの恒等こうとうしき

からビオ・サバールの法則ほうそくはベクトルポテンシャル A によって

えられることになる。ここで、真空しんくうとおる磁率電流でんりゅう密度みつど+磁化じか電流でんりゅう密度みつどである。

また、ビオ・サバールの法則ほうそくしずか電場でんじょうにおけるクーロンの法則ほうそく対応たいおうするものであるが、同様どうよう電場でんじょうスカラーポテンシャル φふぁい

によってしずか電場でんじょうにおけるクーロンの法則ほうそく、あるいはガウスの法則ほうそくえると

となり対称たいしょうせいることができる。ここで真空しんくう誘電ゆうでんりつ電荷でんか密度みつど+分極ぶんきょく電荷でんか密度みつどである。

マクスウェル方程式ほうていしきからの導出どうしゅつ[編集へんしゅう]

もちろん、電磁気でんじきがく法則ほうそくなのでマクスウェル方程式ほうていしきから導出どうしゅつすることができる。前節ぜんせつにおいて電場でんじょう磁場じばのそれぞれがスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルによって記述きじゅつされ、しかもかたや電荷でんか密度みつど、かたや電流でんりゅう密度みつど距離きょりぎゃくおもけして積分せきぶんするという形式けいしきになっていることをみたが、その対称たいしょうせい説明せつめいもできる。

まずクーロンの法則ほうそくをマクスウェル方程式ほうていしきから導出どうしゅつするプロセスをかんがえる。これはしずか電場でんじょう仮定かていでのポテンシャルと電場でんじょう関係かんけい

もちいて、ガウスの法則ほうそく

変形へんけいすると

られる。これをたいする微分びぶん方程式ほうていしきだとかんがえると、グリーン関数かんすうほうによってくことができる。すなわち、方程式ほうていしき両辺りょうへんをフーリエ変換へんかんして、かくモードにたいするウェイトの方程式ほうていしきとしてえ、ウェイトがわかったところでフーリエぎゃく変換へんかんによってかい構成こうせいする。かい前節ぜんせつとおりで

となる。本題ほんだいのビオ・サバールの法則ほうそく場合ばあいはアンペール・マクスウェルの法則ほうそく

をやはりしずか電場でんじょう仮定かてい右辺うへんだいこう無視むししたうえで、ポテンシャル表示ひょうじ

適用てきようする。すると

となるが、および、クーロンゲージ適用てきようすることで

となる。今度こんどはベクトルになっているが、演算えんざんがスカラーなのでかくベクトル成分せいぶんたいして独立どくりつおな方程式ほうていしきてているにぎず、また、しきかたちじょうもスカラーポテンシャルのとき係数けいすうのぞいておなじなのでおな方法ほうほう使つかって構成こうせいすれば

ることになる。これに回転かいてんればビオ・サバールの法則ほうそくられる。

以上いじょうのことをまとめると、

  • かんがえているベクトルじょうなんらかのベクトルじょう回転かいてん記述きじゅつできる()
  • ベクトルじょう回転かいてんがベクトルじょう比例ひれいする
  • 空間くうかん次元じげんが3であるとき(グリーン関数かんすうほう結果けっかがこのようなおもけになるじょう必要ひつよう)

ビオ・サバールの法則ほうそくが(比例ひれい係数けいすうのぞいて)られることになる。

流体りゅうたい力学りきがく[編集へんしゅう]

前節ぜんせつ説明せつめいしたように、数式すうしきじょう性質せいしつさえ共通きょうつうすればビオ・サバールの法則ほうそくることになる。それは具体ぐたいてきには流体りゅうたい力学りきがく好例こうれいである。

流体りゅうたい力学りきがくにおけるうず流速りゅうそく回転かいてんとして定義ていぎされている。

したがって、うず具体ぐたいてきることができ(それ自身じしんなので比例ひれい係数けいすう1で比例ひれいしているとみなす)、える場合ばあいには、(もちろん空間くうかん次元じげん3の領域りょういき問題もんだいあつかうので)からベクトルじょうをビオ・サバールの法則ほうそくによって記述きじゅつできる。

具体ぐたいてきには

という結果けっかることができる。

上記じょうき結果けっかうずいと適用てきようしてその微小びしょう部分ぶぶん寄与きよすことでつぎのように記述きじゅつされるビオ・サバールの法則ほうそくをみる[3]

ただし変数へんすう意味いみ以下いかのようにえる。

  • dv観測かんそくてん誘導ゆうどうされる速度そくど
  • Γがんまうずいとまわりの循環じゅんかん
  • dsうずいと微小びしょう部分ぶぶん
  • θしーたds方向ほうこうとそこから観測かんそくてんむす直線ちょくせんとのなすかく
  • rds観測かんそくてん距離きょり

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Griffiths, David J. (1998). Introduction to Electrodynamics (3rd ed.). Prentice Hall. pp. 222–224, 435–440. ISBN 0-13-805326-X
  2. ^ 伊藤いとう敏夫としお朝倉あさくら物理ぶつりがく選書せんしょ2 電磁気でんじきがく』。ISBN 978-4-254-13757-6 
  3. ^ 小池こいけまさる流体りゅうたい機械きかい工学こうがく』コロナしゃ、2009ねん、29ぺーじISBN 978-4-339-04474-4 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]