フィリバスター

著名ちょめいなフィリバスターの1人ひとり、ウィリアム・ウォーカー

フィリバスター（filibuster [ˈfɪlɪbʌstər, ˈfɪləbʌstər] ( 音声おんせいファイル)）とは、他国たこくで非合法ひごうほうな軍事ぐんじ行為こういによって、革命かくめい、反乱はんらん、分離ぶんり独立どくりつなどをおこし、政治せいじ的てき、経済けいざい的てきな利益りえきを得えようとする者ものをいう。具体ぐたい的てきには、19世紀せいきのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく人じんで、中南米ちゅうなんべいにおいてそのような行為こういを働はたらいた人々ひとびとを指さすことが多おおい。また、フィリバスターによって行おこなわれた行為こういを指さすためにも用もちいられる。

語源ごげん

フィリバスター（filibuster）は、オランダ語ごで海賊かいぞくを意味いみする単語たんごのひとつ「vrijbuiter」が英語えいご化かした表現ひょうげんである。「freebooter」という綴つづり方かたもあり、この方ほうが古ふるくから用もちいられている。 「freebooter」は、16世紀せいきには王室おうしつなどの私わたし掠かすめ免許めんきょを得えて、敵国てきこく船せんを襲おそう私わたし掠かすめ船せんを意味いみしていたが、時代じだいが下くだるにつれて許可きょかを持もたない海賊かいぞく行為こうい一般いっぱんを指さすようになった。 同おなじ意味いみでは、18世紀せいき頃ごろにはフランス語ふらんすご由来ゆらいと思おもわれる「flibustier」という綴つづりかたも登場とうじょうしている。 いっぽう、19世紀せいき半なかばからはスペイン語ごの影響えいきょうと思おもわれる「filibuster」が使つかわれるようになり、意味いみ内容ないようも、海賊かいぞく行為こういから、革命かくめいなどを扇動せんどうする軍事ぐんじ活動かつどう家かへと変化へんかした。背景はいけいには、当時とうじアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくから中南米ちゅうなんべいへ侵入しんにゅうして、軍事ぐんじ行動こうどうを起おこす事件じけんがたびたび生しょうじたことがある。

19世紀せいきアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの場合ばあい

19世紀せいき半なかばは、アメリカに領土りょうど拡張かくちょうの機運きうんが高たかまっていた時代じだいであり、この動うごきと連動れんどうしてアングロ・アメリカ人じんの冒険ぼうけん家かが武力ぶりょくを以もってカリブ、メキシコ、中米ちゅうべいなどの地域ちいきに侵入しんにゅうして、軍事ぐんじ行動こうどうをおこす人々ひとびとが登場とうじょうした。

この時代じだいを代表だいひょうするフィリバスターとしては、ウィリアム・ウォーカー、ナルシソ・ロペス、ジョン・クイットマンの3人にんが挙あげられる。

ウィリアム・ウォーカーは、1853年ねんにメキシコ北部ほくぶのバハ・カリフォルニア州しゅう、ソノラ州しゅうに侵入しんにゅうして挙兵きょへいし、建国けんこくを宣言せんげんしたが鎮圧ちんあつされた。その後ご、ニカラグア内戦ないせんに赴おもむいて傭兵ようへいとして戦たたかった。当時とうじニカラグアは、ニカラグア湖こを通とおるコース（ニカラグア運河うんが）が中米ちゅうべいを貫つらぬく運河うんがの候補こうほ地ちとして有望ゆうぼう視しされていた。やがて、彼かれはニカラグアの国軍こくぐん最高さいこう司令しれい官かんに就任しゅうにんし、1856年ねんには自みずから大統領だいとうりょうとなった。彼かれは中米ちゅうべいの他ほかの地域ちいきも支配しはい下かに組くみ込こもうとしたが、イギリスの支援しえんを受うけたコスタリカを中心ちゅうしんとする中米ちゅうべい連合れんごう軍ぐんとの戦たたかいの末すえに敗北はいぼく、逮捕たいほされて、本国ほんごくに送還そうかんされた。1860年ねんにはホンジュラスに上陸じょうりくし再起さいきを図はかるが、捕とらえられ処刑しょけいされた。

この他ほかにも、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのフィリバスターとしては、ウィリアム・ブラウント（西にしフロリダ）、アーロン・バー（メキシコ、英えい領りょうカリブ）、オーガスタス・マギー（テキサス）、ジョージ・マシューズ（東ひがしフロリダ）、ジョージ・ロジャース・クラーク（ルイジアナとミシシッピ）、ウィリアム・S・スミス（ベネズエラ）、アイラ・アレン（カナダ）、 ウィリアム・A・チェンラー（キューバ、ベネズエラ）、ジェームズ・ロング（テキサス）などが挙あげられる。

その他た

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく人じん以外いがいでは、スコットランド人じんのグレガー・マグレガー（フロリダ、中米ちゅうべい、南みなみアメリカ）などがフィリバスターとして知しられている。イスパノアメリカでは、革命かくめい家かフランシスコ・デ・ミランダがベネズエラ独立どくりつのためのフィリバスター組織そしきを結成けっせいした。この中なかには後のちにメキシコ合衆国がっしゅうこくからテキサス共和きょうわ国こくが独立どくりつした際さいに暫定ざんてい大統領だいとうりょうとなったデービッド・G・バーネットも居いた。

これらフィリバスターたちの活動かつどうから転てんじて、後のちにアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく上院じょういんで議事ぎじ妨害ぼうがいを指さす比喩ひゆ的てきな表現ひょうげんとして「フィリバスター（filibustering）」が用もちいられるようになった。

参考さんこう文献ぶんけん

• Brown, Charles H. Agents of Manifest Destiny: The Lives and Times of the Filibusters. University of North Carolina Press, 1980. ISBN 0-8078-1361-3.
• May, Robert E. "Manifest Destiny's Filibusters" in Sam W. Haynes and Christopher Morris, eds. Manifest Destiny and Empire: American Antebellum Expansionism. College Station, Texas: Texas A&M University Press, 1997. ISBN 0-89096-756-3.
• ———. Manifest Destiny's Underworld: Filibustering in Antebellum America. University of North Carolina Press, 2002. ISBN 0-8078-2703-7.