フリーウィル・バプテスト

フリーウィル・バプテスト（Free Will Baptist、自由じゆう意志いしハプテスト）は、ジェネラル・バプテストの一派いっぱである。キリスト教きょうの教派きょうはであり、自由じゆうな恵めぐみ、自由じゆうな救済きゅうさい、自由じゆう意志いしを信しんじる人々ひとびとのグループである^[1]。その正式せいしきな成立せいりつは、バプテスト運動うんどうを率ひきいて一般いっぱん贖罪しょくざいを信しんじたイギリスの神学しんがく者しゃ、トマス・ヘルウィス（英語えいご版ばん）に広ひろく結むすびついている。信教しんきょうの自由じゆうの擁護ようご者しゃであり、そのような考かんがえを持もつことが危険きけんであり、死刑しけいになる可能かのう性せいがあった時代じだいに、彼かれは信教しんきょうの自由じゆうの擁護ようご者しゃだった。彼かれは、ジェームズ1世せいの下したでの非ひ国くに教徒きょうとに対たいする宗教しゅうきょう的てき迫害はくがいの結果けっか、獄中ごくちゅうで死去しきょした。

1702年ねんにポール・パーマー（英語えいご版ばん）がノースカロライナ州しゅうで運動うんどうを起おこし、1727年ねんにチョウォーンでフリーウィル・バプテスト教会きょうかいを結成けっせいした。19世紀せいきには多おおくのカルヴァン派はがフリーウィル・バプテストとなった。南部なんぶでフリーウィル・バプテストが成立せいりつすると、ベンジャミン・ランドール（英語えいご版ばん）（1749-1808）はアメリカ北東ほくとう部ぶ、特とくにメイン州しゅう、マサチューセッツ州しゅう、ニューハンプシャー州しゅうでこの運動うんどうを展開てんかいするようになった。

フリーウィル・バプテストは、当初とうしょから、イングランド国教こっきょう会かいに反対はんたいする非ひ国くに教徒きょうとやピューリタンのグループと同様どうように、地域ちいき教会きょうかいの自治じちの概念がいねんに従したがうブラウン派は(en:Brownists)であった。自由じゆう意志いしの概念がいねんは、その全体ぜんたい的てきな宗教しゅうきょう的てき信念しんねんと社会しゃかい的てき流動りゅうどう性せいの欠如けつじょから、清教徒せいきょうと運動うんどうを体系たいけい的てきに否定ひていするものであった。

歴史れきし[編集へんしゅう]

フリーウィル・バプテストは、17世紀せいき後半こうはんにアメリカ植民しょくみん地ちに入植にゅうしょくしたイングランドのジェネラル・バプテストにまでさかのぼることができる。1611年ねんにロンドン近郊きんこうで行おこなわれたトマス・ヘルウィス（英語えいご版ばん）の宣教せんきょうに端はしを発はっする最初さいしょのバプテストは、ジェネラル・バプテストであった。つまり、イエス・キリストの贖罪しょくざいは「特殊とくしゅ」（選民せんみんのみ）ではなく、「一般いっぱん」（万まん人にんのため）であると信しんじていたのである。その歴史れきし、名称めいしょう、アルミニウス主義しゅぎの受容じゅようを共有きょうゆうしている。

ベンジャミン・レイカー（Benjamin Laker）は、早はやくも1685年ねんにカロライナ植民しょくみん地ちに到着とうちゃくしたイングラント人じんバプテストである。レイカーは、著名ちょめいなジェネラル・バプテスト神学しんがく者しゃであり作家さっかであるトマス・グランサム（英語えいご版ばん）と関係かんけいがあり、1663年版ねんばんのジェネラル・バプテスト「標準ひょうじゅん信仰しんこう告白こくはく」に署名しょめいしている。アメリカにおける最古さいこのフリーウィル・バプテストは、カロライナのイングランド人じんジェネラル・バプテストから発展はってんし、彼かれらは敵対てきたい者しゃによって「フリーウィラー（Freewillers）」と呼よばれ、後のちにその名なを引ひき継ついだ^[2]。

アメリカでは、フリーウィル・バプテストの二ふたつの異ことなる分派ぶんぱが発展はってんした。最初さいしょのものは、ノースカロライナ州しゅうのパーマー運動うんどうとして知しられる上記じょうきのジェネラル・バプテスト運動うんどうで、現代げんだいのフリーウィル・バプテスト派はの大だい多数たすうはここから派生はせいしている。もう一ひとつは、18世紀せいき末まつにニューハンプシャーで起おこったランドール運動うんどうである。この2つのグループは互たがいに独立どくりつして発展はってんした^[3]。

パーマー派は[編集へんしゅう]

1702年ねん、カロライナのジェネラル・バプテストの無む組織そしきのグループが、イギリスのジェネラル・バプテスト連合れんごうに助たすけを求もとめる手紙てがみを書かいた。しかし、ベンジャミン・レイカーの継つぎ娘むすめであるヨハンナを妻つまに持もつポール・パーマー（英語えいご版ばん）は、25年ねん後ごにこれらの人々ひとびとの間あいだで働はたらき、1727年ねんにノースカロライナ州しゅうチョウォーン郡ぐんに最初さいしょのフリーウィル・バプテスト教会きょうかいを設立せつりつした^[4]。彼かれの働はたらきは、重要じゅうようではあったが、短期間たんきかんであった。その指導しどうはジョセフ・パーカー、ウィリアム・パーカー、ジョサイア・ハート、ウィリアム・ソジャーナーらに受うけ継つがれた。ジョセフ・パーカーはチョウォーン教会きょうかいの一員いちいんであり、60年ねん以上いじょうにわたってカロライナ教会きょうかいの中なかで宣教せんきょうを行おこなった。1727年ねんに1つの教会きょうかいであったのが、1755年ねんには20以上いじょうの教会きょうかいに成長せいちょうした。1755年ねん以降いこう、フィラデルフィア・バプテスト連合れんごうが行おこなった宣教せんきょう活動かつどうにより、これらの教会きょうかいのほとんどが、無条件むじょうけん選民せんみんと限定げんてい的てき贖罪しょくざいというパティキュラー・バプテストの立場たちばに改宗かいしゅうした。1770年ねんには、ジェネラル・バプテスト派はの教会きょうかいと牧師ぼくしはわずか4人にんしか残のこっていなかった。18世紀せいき末まつには、これらの教会きょうかいは一般いっぱんに「フリーウィル・バプテスト」と呼よばれるようになり、これは後のちに「フリーウィル・バプテストのパーマー派は」と呼よばれるようになる。パーマー派はの諸しょ教会きょうかいは、さまざまな連合れんごうや会議かいぎを組織そしきし、1921年ねんについに総会そうかいを組織そしきした。19世紀せいきには、分離ぶんり派はを中心ちゅうしんとするカルヴァン派はバプテスト（パティキュラー・バプテスト）出身しゅっしん者しゃの多おおくがフリーウィル・バプテストとなった^[5]。

ランドール派は[編集へんしゅう]

南部なんぶの運動うんどうが苦戦くせんする一方いっぽうで、北部ほくぶではベンジャミン・ランドール（英語えいご版ばん）の働はたらきによって新あたらしい運動うんどうが興おこった。ランドールは当初とうしょ、1776年ねんにパティキュラー・バプテストと合同ごうどうしたが、1779年ねんに予よ定説ていせつに対たいする厳きびしい見解けんかいから彼かれらと決別けつべつした。1780年ねん、ランドールはニューハンプシャー州しゅうニュー・ダーラム（英語えいご版ばん）で「自由じゆう」または「自由じゆう意志いし」（ランドールは「自由じゆう」と「意志いし」を一ひとつの言葉ことばにまとめていた）のバプテスト教会きょうかいを設立せつりつした。1782年ねんまでに12の教会きょうかいが設立せつりつされ、四半期しはんき毎ごとの会議かいぎ（Quarterly Meeting）が組織そしきされた。1792年ねんには年次ねんじ総会そうかい（Yearly Meeting）が組織そしきされた。

ランドール派は自体じたいは、1835年ねんに2つのグループに分わかれた。

創設そうせつ者しゃジェレマイア・ブロック（Jeremiah Bullock）の名なを冠かんした「ブロック派は」（"Bulloch"または "Bullochites"と表記ひょうきされることもある）は、メイン州しゅうとニューハンプシャー州しゅうの少数しょうすうの会衆かいしゅうに枝分えだわかれしている。
創業そうぎょう者しゃジョン・バゼル（英語えいご版ばん）にちなんだ「バゼル派は」（Buzzelites）。

ブロック派はは主おもに「フリーウィル・バプテスト」の名なで20世紀せいき初頭しょとうまでメイン州しゅうで続つづいたが、バゼル派はは設立せつりつ後ごまもなく消滅しょうめつした^[6]。

フリーウィル・バプテストのランドール派はは急速きゅうそくに発展はってんした。しかし、1911年ねん、ランドール派はの教会きょうかいの大だい部分ぶぶん（と教団きょうだん財産ざいさんすべて）は北きたバプテスト連盟れんめいに合併がっぺいされた。合併がっぺいせずフリーウィル・バプテストを維持いじした教会きょうかいは、南西なんせい部ぶと中西部ちゅうせいぶの他ほかのフリーウィル・バプテストと合流ごうりゅうして、1916年ねんにthe Cooperative General Association of Free Will Baptistsを組織そしきした^[7]。

各派かくはの合同ごうどう[編集へんしゅう]

北部ほくぶと南部なんぶのフリーウィル・バプテスト間あいだには友好ゆうこう関係かんけいが存在そんざいしたが、奴隷どれい制せいの問題もんだい、そして後のちに南北戦争なんぼくせんそうが発生はっせいし、20世紀せいきまで正式せいしきな合同ごうどうが阻はばまれていた。1935年ねん11月5日にち、テネシー州しゅうナッシュビルで総会そうかい（パーマー派は）と協同きょうどう組合くみあい連合れんごう（ミシシッピー以西いせいのランドール派はとパーマー派はの混合こんごう）の代表だいひょう者しゃが集あつまり、ナショナル・アソシエーション・オブ・フリーウィル・バプテスト（en:National Association of Free Will Baptists）に統一とういつして組織そしきすることになった。フリーウィル・バプテスト教会きょうかいの大だい多数たすうはこの傘下さんかに組織そしきされ、今日きょうまでフリーウィル・バプテスト派はの中なかで最大さいだいである^[8]^[9]。

神学しんがくと実践じっせん[編集へんしゅう]

フリーウィル・バプテスト信徒しんとは聖書せいしょが神かみの言葉ことばそのものであり、それが断言だんげんするすべてのことにおいて誤あやまりがないと信しんじている。フリーウィル・バプテストの教義きょうぎは、神かみがすべての人ひとのために救すくいを望のぞみ、すべての人ひとのためにイエスは死しなれたと教おしえている^[10]。それでも、フリーウィル・バプテストは神かみが人間にんげんに、キリストの犠牲ぎせいに同意どういするか拒絶きょぜつするか選択せんたくの自由じゆうを与あたえておられると信しんじている。そのため、フリーウィル・バプテストは相対そうたい的てき保証ほしょうを保持ほじしている^[11]。個人こじんは「信仰しんこうによって救すくわれ、信仰しんこうによって保たもたれる」。この概念がいねんを支持しじするために、フリーウィル・バプテストの中なかには、欽定きんてい訳やく聖書せいしょ訳わけのヨハネ3:16にある「信しんじる」と訳やくされたギリシャ語ごに言及げんきゅうする者ものがいる。これは連続れんぞく動詞どうしであり、「誰だれでも信しんじて信しんじ続つづける者ものは滅ほろびることなく、永遠えいえんの命いのちを持もつ」と読よみ取とることができる。この概念がいねんは、誰だれかが時々ときどき罪つみを犯おかし、その結果けっか偶然ぐうぜんに「救すくわれない」状態じょうたいになるのではなく、誰だれかがキリストへの信仰しんこうを「否認ひにんする」ことにある^[12]。従したがって「一度いちど救すくわれたら、いつでも救すくわれている」ことは教派きょうはによって否定ひていされている^[11]。

公式こうしきな見解けんかいによる聖人せいじんの忍耐にんたいについて「真しんに再生さいせいした者ものは、その支援しえんのために誓約せいやくされた神かみの恵めぐみの力ちからによって、最後さいごまで忍耐にんたいし、救すくわれることを望のぞむ強つよい根拠こんきょがある。しかし、弱よわさとさまざまな誘惑ゆうわくによって倒たおれる危険きけんがあるので、彼かれらの将来しょうらいの従順じゅうじゅんと最終さいしゅう的てきな救すくいは決定けっていされていないし確実かくじつでもない。従したがって信仰しんこうが失うしなわれないように目めを覚さまして祈いのらなければならない」^[13]。

フリーウィル・バプテストは少すくなくとも3つの儀式ぎしきを守まもっている。バプテスマ、主おもの晩餐ばんさん、洗足せんそく式しきであるが、これは他たの福音ふくいん主義しゅぎグループの間あいだでは行おこなわれているが、洗足せんそく式しきはバプテスト教派きょうはの大だい部分ぶぶんでは行おこなわれていない儀式ぎしきである。

フリーウィル・バプテスト信徒しんとは終末しゅうまつ論ろんに関かんして異ことなる見解けんかいを持もっており、あるものは前ぜん千せん年ねん王国おうこく説せつ、あるものは後こう千せん年ねん王国おうこく説せつの見解けんかいを有ゆうしている。教会きょうかいは、（自発じはつ的てきな）什一献金けんきん、絶対ぜったい禁酒きんしゅ主義しゅぎ、安息日あんそくびである日曜日にちようびには仕事しごとをしないことを提唱ていしょうしている。