フーリエ変換 へんかん NMR (フーリエへんかんNMR、FT-NMR )とは、静 せい 磁場 じば 中 なか のサンプルにパルス 磁場 じば を与 あた え、その後 ご 観察 かんさつ されるインパルス応答 おうとう である自由 じゆう 誘導 ゆうどう 減衰 げんすい (FID) をフーリエ変換 へんかん することで核 かく 磁気 じき 共鳴 きょうめい (NMR) の吸収 きゅうしゅう スペクトルを得 え る手法 しゅほう である。
フーリエ変換 へんかん NMRの概要 がいよう
連続 れんぞく 波 は (CW)法 ほう では様々 さまざま な周波数 しゅうはすう の磁場 じば を掃引 そういん しながら系 けい に与 あた える。一方 いっぽう でフーリエ変換 へんかん NMRではパルス磁場 じば を系 けい に与 あた える。この2つの入力 にゅうりょく 、つまり「多数 たすう の周波数 しゅうはすう 成分 せいぶん の和 わ 」と「パルス」は、互 たが いにフーリエ変換 へんかん の関係 かんけい になっている。また系 けい が線形 せんけい 応答 おうとう するときは、入力 にゅうりょく の間 あいだ の数学 すうがく 的 てき 関係 かんけい (つまりフーリエ変換 へんかん )が、そのまま出力 しゅつりょく の数学 すうがく 的 てき 関係 かんけい に伝達 でんたつ される。つまりCW法 ほう で得 え られる応答 おうとう と、パルス法 ほう で得 え られる応答 おうとう との間 あいだ にもフーリエ変換 へんかん の関係 かんけい が成 な り立 た っている。このことからパルス磁場 じば を与 あた えたときのインパルス応答 おうとう をフーリエ変換 へんかん することにより、CW法 ほう で得 え られる吸収 きゅうしゅう 曲線 きょくせん と分散 ぶんさん 曲線 きょくせん と同 おな じものが得 え られる。
線形 せんけい 応答 おうとう 理論 りろん によればインパルス応答 おうとう 関数 かんすう のフーリエ変換 へんかん は周波数 しゅうはすう 応答 おうとう 関数 かんすう を与 あた える。周波数 しゅうはすう 応答 おうとう 関数 かんすう はある周波数 しゅうはすう の電磁波 でんじは が吸収 きゅうしゅう される程度 ていど を表 あらわ す関数 かんすう であるから、これはNMRスペクトルに他 た ならない。それゆえにインパルス(パルス状 じょう の電磁波 でんじは )を試料 しりょう に当 あ ててすべての核 かく を一斉 いっせい に励起 れいき し、その結果 けっか 生 しょう じる磁化 じか ベクトルの変化 へんか 、すなわち自由 じゆう 誘導 ゆうどう 減衰 げんすい (Free Induction Decay, FID) を測定 そくてい し、これをフーリエ変換 へんかん したものは虚 きょ 部 ぶ が分散 ぶんさん スペクトル 、実 み 部 ぶ が吸収 きゅうしゅう スペクトル (エネルギー散逸 さんいつ 、パワーロス)になっている。またこの2つのスペクトルの間 あいだ にはクラマース・クローニッヒの関係 かんけい が成立 せいりつ する。
NMRのほとんどの応用 おうよう は、完全 かんぜん なNMRスペクトル、つまり周波数 しゅうはすう の関数 かんすう としてのNMRシグナルの強度 きょうど を含 ふく む。単純 たんじゅん な連続 れんぞく 波 は (CW) 法 ほう よりも効率 こうりつ 的 てき にNMRスペクトルを得 え るための初期 しょき の試 こころ みでは、2つ以上 いじょう の周波数 しゅうはすう で同時 どうじ に標的 ひょうてき に光 ひかり を当 あ てる手法 しゅほう が使 つか われていた。NMRにおける革命 かくめい は、高周波 こうしゅうは の短 たん パルスが使 つか われ始 はじ めた時 とき に起 お こった。簡単 かんたん に言 い えば、任意 にんい の「キャリア」周波数 しゅうはすう の矩形 くけい パルスは、さまざまな範囲 はんい の周波数 しゅうはすう を「含 ふく んで」おり、励起 れいき の幅 はば (バンド幅 はば )はパルスの持続 じぞく 時間 じかん と反比例 はんぴれい する。近似 きんじ 方形 ほうけい 波 は のフーリエ変換 へんかん は、主 しゅ 周波数 しゅうはすう の隣接 りんせつ 領域 りょういき における全 すべ ての周波数 しゅうはすう の寄与 きよ を含 ふく んでいる。NMR周波数 しゅうはすう の範囲 はんい が制限 せいげん されていることによって、全 ぜん NMRスペクトルを励起 れいき するための短 みじか い(ミリ秒 びょう からマイクロ秒 びょう )高周波 こうしゅうは パルスを使 つか うことが比較的 ひかくてき 容易 ようい となっている。
こういったパルスを一連 いちれん の核 かく スピン に印加 いんか すると、全 すべ ての単一 たんいつ 量子 りょうし NMR遷移 せんい が同時 どうじ に励起 れいき される。総 そう 磁化 じか ベクトルの観点 かんてん からは、(外部 がいぶ 磁場 じば に沿 そ って並 なら んだ)平衡 へいこう 位置 いち から磁化 じか ベクトルが傾 かたむ くことに対応 たいおう する。平衡 へいこう から外 はず れた磁化 じか ベクトルは、スピンのNMR周波数 しゅうはすう における外部 がいぶ 磁場 じば ベクトルに対 たい して歳 とし 差 さ 運動 うんどう する。この周期 しゅうき 的 てき に振動 しんどう する磁化 じか ベクトルはすぐ近 ちか くの検出 けんしゅつ コイルに電流 でんりゅう を誘導 ゆうどう し、NMR周波数 しゅうはすう における電気 でんき シグナルの周期 しゅうき 的 てき な振動 しんどう を作 つく る。このシグナルは自由 じゆう 誘導 ゆうどう 減衰 げんすい (FID) として知 し られており、全 すべ ての励起 れいき スピンからのNMR応答 おうとう のベクトル和 わ を含 ふく んでいる。周波数 しゅうはすう 領域 りょういき のNMRスペクトル(NMR吸収 きゅうしゅう 強度 きょうど vs. NMR周波数 しゅうはすう )を得 え るためには、この時間 じかん 領域 りょういき シグナル(強度 きょうど vs. 時間 じかん )をフーリエ変換 へんかん しなければならない。幸運 こううん なことに、フーリエ変換 へんかん NMRの開発 かいはつ は、デジタルコンピュータやデジタル高速 こうそく フーリエ変換 へんかん の開発 かいはつ と同 どう 時期 じき に起 お こった。フーリエ法 ほう は多 おお くの分光 ぶんこう 法 ほう の種類 しゅるい に適応 てきおう することができる。
1948年 ねん にRussell H. Varianがヴァリアン・アソシエイツ を設立 せつりつ して自由 じゆう 誘導 ゆうどう 減衰 げんすい 信号 しんごう の検出 けんしゅつ に関 かん して記述 きじゅつ した "Method and means for correlating nuclear properties of atoms and magnetic fields" を出願 しゅつがん した[1] 。1954年 ねん に久保 くぼ 亮 あきら 五 ご 、冨田 とみた 和久 かずひさ らにより線形 せんけい 応答 おうとう 理論 りろん に基 もと づいたフーリエ変換 へんかん NMR の基礎 きそ 理論 りろん が提唱 ていしょう された。1956年 ねん にRussell H. Varianがフーリエ変換 へんかん NMRの概念 がいねん に関 かん して記述 きじゅつ した "Gyromagnetic resonance methods and apparatus" を出願 しゅつがん した[2] 。1957年 ねん にフッ化 か カルシウムを用 もち いてフーリエ変換 へんかん NMRがはじめて測定 そくてい された。1964年 ねん にヴァリアン社 しゃ のパルスNMRの先駆 せんく 者 しゃ の一人 ひとり であるリヒャルト・R・エルンスト とWeston A. Andersonによってフーリエ変換 へんかん NMRが開発 かいはつ された[3] [4] 。エルンストは1968年 ねん に帰国 きこく してチューリヒ工科 こうか 大学 だいがく で1971年 ねん にジャン・ジェーネル (英語 えいご 版 ばん ) (Jean Jeener)が発表 はっぴょう した二 に 次元 じげん NMR の着想 ちゃくそう を基 もと に二 に 次元 じげん フーリエ変換 へんかん 分光 ぶんこう 法 ほう を開発 かいはつ して、フーリ変換 へんかん NMRと多次元 たじげん NMRの開発 かいはつ における業績 ぎょうせき [5] [6] [7] で1991年 ねん のノーベル化学 かがく 賞 しょう を受賞 じゅしょう した。
以下 いか では、磁気 じき 共鳴 きょうめい に関 かん する議論 ぎろん を総括 そうかつ した久保 くぼ 亮 あきら 五 ご と冨田 とみた 和久 かずひさ の論文 ろんぶん [8] による理論 りろん 的 てき 展開 てんかい について説明 せつめい する。彼 かれ らは階段 かいだん 型 がた の磁場 じば に対 たい する応答 おうとう を考 かんが えた。
動 どう 磁化 じか 率 りつ を用 もち いた磁化 じか の記述 きじゅつ [ 編集 へんしゅう ]
z軸 じく 方向 ほうこう の静 せい 磁場 じば
B
0
{\displaystyle \mathbf {B} _{0}}
に垂直 すいちょく にx軸 じく 方向 ほうこう に周期 しゅうき 的 てき に振動 しんどう するRF磁場 じば
B
1
x
(
t
)
=
B
1
x
cos
ω おめが
t
{\displaystyle \mathbf {B} _{1x}(t)=\mathbf {B} _{1x}\cos \omega t}
に対 たい する定常 ていじょう 的 てき な磁化 じか の応答 おうとう を考 かんが える。
B
1
x
(
t
)
{\displaystyle \mathbf {B} _{1x}(t)}
と磁化 じか の応答 おうとう の間 あいだ には線形 せんけい 応答 おうとう 関係 かんけい が成立 せいりつ するものと仮定 かてい する。すると
B
1
x
(
t
)
{\displaystyle \mathbf {B} _{1x}(t)}
によって定常 ていじょう 的 てき に誘 さそえ 起 おこ される磁気 じき モーメント
M
i
n
d
(
t
)
{\displaystyle M_{ind}(t)}
の各 かく 成分 せいぶん は
B
1
x
{\displaystyle B_{1x}}
に比例 ひれい し、比例 ひれい 定数 ていすう は
B
1
x
(
t
)
{\displaystyle \mathbf {B} _{1x}(t)}
と同 どう 位相 いそう の成分 せいぶん と90°遅 おく れた成分 せいぶん で定義 ていぎ できるから、次 つぎ 式 しき のように書 か ける。
M
i
n
d
(
t
)
=
(
χ かい
′
cos
ω おめが
t
+
χ かい
″
sin
ω おめが
t
)
B
1
x
V
{\displaystyle \mathbf {M} _{ind}(t)=(\chi '\cos \omega t+\chi ''\sin \omega t)\mathbf {B} _{1x}V}
この
χ かい
′
,
χ かい
″
{\displaystyle \chi ',\chi ''}
を動 どう 磁化 じか 率 りつ と呼 よ ぶ。動 どう 磁化 じか 率 りつ
χ かい
′
,
χ かい
″
{\displaystyle \chi ',\chi ''}
は2階 かい のテンソル 量 りょう である。ここで複素 ふくそ 磁化 じか 率 りつ
χ かい
∗
=
χ かい
′
−
i
χ かい
″
{\displaystyle \chi ^{*}=\chi '-i\chi ''}
を導入 どうにゅう すると、次 つぎ 式 しき のような簡単 かんたん な形 かたち に書 か ける。
M
i
n
d
(
t
)
=
R
e
{
χ かい
∗
B
1
x
e
i
ω おめが
t
}
V
{\displaystyle \mathbf {M} _{ind}(t)=\mathrm {Re} \{\chi ^{*}\mathbf {B} _{1x}e^{i\omega t}\}V}
NMRでは、振動 しんどう 磁場 じば
B
1
x
(
t
)
{\displaystyle \mathbf {B} _{1x}(t)}
によって誘 さそえ 起 おこ される磁化 じか
M
i
n
d
(
t
)
{\displaystyle \mathbf {M} _{ind}(t)}
のx成分 せいぶん
M
x
(
t
)
=
(
χ かい
x
x
′
cos
ω おめが
t
+
χ かい
x
x
″
sin
ω おめが
t
)
B
1
x
V
(
1
)
{\displaystyle M_{x}(t)=(\chi _{xx}'\cos \omega t+\chi _{xx}''\sin \omega t)B_{1x}V\qquad (1)}
がとくに重要 じゅうよう である。
χ かい
x
x
′
,
χ かい
x
x
″
{\displaystyle \chi _{xx}',\chi _{xx}''}
はただの数 かず である。一般 いっぱん に問題 もんだい になるのはxx成分 せいぶん だけなので以後 いご 、添字 そえじ xxは省略 しょうりゃく することにする。
緩和 かんわ 関数 かんすう を用 もち いた磁化 じか の記述 きじゅつ [ 編集 へんしゅう ]
緩和 かんわ 関数 かんすう
ϕ
(
t
−
t
0
)
{\displaystyle \phi (t-t_{0})}
を
Δ でるた
M
≡
M
(
t
)
−
M
0
=
ϕ
(
t
−
t
0
)
B
1
x
{\displaystyle \Delta \mathbf {M} \equiv \mathbf {M} (t)-\mathbf {M} _{0}=\phi (t-t_{0})\mathbf {B} _{1}x}
ϕ
(
∞
)
=
0
,
M
(
∞
)
=
M
0
{\displaystyle \phi (\infty )=0,\quad \mathbf {M} (\infty )=\mathbf {M} _{0}}
を満 み たすテンソル量 りょう と定義 ていぎ する。すると
B
1
x
{\displaystyle \mathbf {B} _{1x}}
が
−
∞
{\displaystyle -\infty }
からずっとかけられている場合 ばあい の時刻 じこく tでの磁化 じか の期待 きたい 値 ち は、足 た しあわせの原理 げんり により次 つぎ のように書 か ける。
Δ でるた
M
=
ϕ
(
0
)
B
1
x
(
t
)
−
∫
−
∞
t
ϕ
(
t
−
t
′
)
d
B
1
x
(
t
′
)
d
t
′
d
t
′
{\displaystyle \Delta \mathbf {M} =\phi (0)\mathbf {B} _{1x}(t)-\int _{-\infty }^{t}\phi (t-t'){\frac {d\mathbf {B} _{1x}(t')}{dt'}}dt'}
磁化 じか のx成分 せいぶん は次 つぎ 式 しき のように書 か ける。
M
x
(
t
)
=
{
[
ϕ
x
x
(
0
)
−
∫
0
∞
ω おめが
ϕ
x
x
(
t
)
(
τ たう
)
sin
ω おめが
τ たう
d
τ たう
]
cos
ω おめが
t
+
[
∫
0
∞
ω おめが
ϕ
x
x
(
t
)
(
τ たう
)
cos
ω おめが
τ たう
d
τ たう
]
sin
ω おめが
t
}
B
1
x
(
2
)
{\displaystyle M_{x}(t)=\left\{\left[\phi _{xx}(0)-\int _{0}^{\infty }\omega \phi _{xx}(t)(\tau )\sin \omega \tau d\tau \right]\cos \omega t+\left[\int _{0}^{\infty }\omega \phi _{xx}(t)(\tau )\cos \omega \tau d\tau \right]\sin \omega t\right\}B_{1x}\qquad (2)}
動 どう 磁化 じか 率 りつ と緩和 かんわ 関数 かんすう の関係 かんけい [ 編集 へんしゅう ]
(1)式 しき と(2)式 しき を比較 ひかく すると、動 どう 磁化 じか 率 りつ のxx成分 せいぶん と緩和 かんわ 関数 かんすう のxx成分 せいぶん についての関係 かんけい 式 しき が得 え られる。
χ かい
′
=
ϕ
x
x
(
0
)
V
−
ω おめが
V
∫
0
∞
ϕ
x
x
(
t
)
sin
ω おめが
t
d
t
(
3
)
{\displaystyle \chi '={\frac {\phi {xx}(0)}{V}}-{\frac {\omega }{V}}\int _{0}^{\infty }\phi _{xx}(t)\sin \omega tdt\qquad (3)}
χ かい
″
=
ω おめが
V
∫
0
∞
ϕ
x
x
(
t
)
cos
ω おめが
t
d
t
{\displaystyle \chi ''={\frac {\omega }{V}}\int _{0}^{\infty }\phi _{xx}(t)\cos \omega tdt}
したがって緩和 かんわ 関数 かんすう がわかると、その正弦 せいげん あるいは余弦 よげん フーリエ変換 へんかん によって動 どう 磁化 じか 率 りつ
χ かい
′
,
χ かい
″
{\displaystyle \chi ',\chi ''}
が求 もと まることになる。
量子 りょうし 統計 とうけい 力学 りきがく を用 もち いた緩和 かんわ 関数 かんすう の決定 けってい [ 編集 へんしゅう ]
緩和 かんわ 関数 かんすう が求 もと まれば動 どう 磁化 じか 率 りつ が求 もと まる。動 どう 磁化 じか 率 りつ が求 もと まればエネルギー吸収 きゅうしゅう 速度 そくど や吸収 きゅうしゅう 係数 けいすう を求 もと めることが出来 でき る(後述 こうじゅつ )。緩和 かんわ 関数 かんすう の具体 ぐたい 的 てき な中身 なかみ を知 し るには量子 りょうし 統計 とうけい 力学 りきがく が必要 ひつよう である。つまりシュレディンガー方程式 ほうていしき (またはフォン・ノイマン方程式 ほうていしき )を解 と かなければならない。
t
=
−
∞
∼
t
0
{\displaystyle t=-\infty \sim t_{0}}
の間 あいだ の状態 じょうたい は熱 ねつ 平衡 へいこう 状態 じょうたい であったとする.このときの状態 じょうたい は次 つぎ の密度 みつど 行列 ぎょうれつ で記述 きじゅつ される.
ρ ろー
′
=
e
−
β べーた
(
H
^
−
B
1
x
M
)
T
r
[
e
−
β べーた
(
H
^
−
B
1
x
M
)
]
{\displaystyle \rho '={\frac {e^{-\beta ({\hat {H}}-\mathbf {B} _{1x}\mathbf {M} )}}{Tr[e^{-\beta ({\hat {H}}-\mathbf {B} _{1x}\mathbf {M} )}]}}}
この時間 じかん 発展 はってん はフォン・ノイマン方程式 ほうていしき で記述 きじゅつ されるので,時刻 じこく t
t
(
≫
t
0
)
{\displaystyle t(\gg t_{0})}
での磁化 じか の期待 きたい 値 ち は次 つぎ 式 しき のように書 か ける。
M
(
t
)
=
T
r
[
ρ ろー
′
(
t
)
M
]
=
T
r
[
ρ ろー
′
M
(
t
−
t
0
)
]
{\displaystyle \mathbf {M} (t)=Tr[\rho '(t)\mathbf {M} ]=Tr[\rho '\mathbf {M} (t-t_{0})]}
ここで
M
(
t
−
t
0
)
{\displaystyle \mathbf {M} (t-t_{0})}
はハイゼンベルク描像 での磁化 じか である.
H
^
≫
B
1
x
M
{\displaystyle {\hat {H}}\gg \mathbf {B} _{1x}\mathbf {M} }
と近似 きんじ することで次 つぎ 式 しき を得 え る。
M
(
t
)
=
M
0
+
B
1
x
T
r
[
ρ ろー
0
∫
0
β べーた
e
λ らむだ
H
^
M
e
−
λ らむだ
H
^
M
(
t
−
t
0
)
d
λ らむだ
]
−
β べーた
B
1
x
M
0
M
0
{\displaystyle \mathbf {M} (t)=\mathbf {M} _{0}+\mathbf {B} _{1x}Tr\left[\rho _{0}\int _{0}^{\beta }e^{\lambda {\hat {H}}}\mathbf {M} e^{-\lambda {\hat {H}}}\mathbf {M} (t-t_{0})\,d\lambda \right]-\beta \mathbf {B} _{1x}\mathbf {M} _{0}\mathbf {M} _{0}}
緩和 かんわ 関数 かんすう の定義 ていぎ 式 しき と比較 ひかく すると、動 どう 磁化 じか 率 りつ を定量 ていりょう 化 か するために必要 ひつよう な緩和 かんわ 関数 かんすう が次 つぎ 式 しき で得 え られる。
ϕ
(
τ たう
)
=
∫
0
β べーた
T
r
[
ρ ろー
0
M
M
(
τ たう
+
i
ℏ
λ らむだ
)
]
d
λ らむだ
−
β べーた
M
0
M
0
{\displaystyle \phi (\tau )=\int _{0}^{\beta }Tr[\rho _{0}\mathbf {M} \mathbf {M} (\tau +i\hbar \lambda )]d\lambda -\beta \mathbf {M} _{0}\mathbf {M} _{0}}
動 どう 磁化 じか 率 りつ のxx成分 せいぶん を定義 ていぎ するために必要 ひつよう な
ϕ
{\displaystyle \phi }
のxx成分 せいぶん は、
M
0
{\displaystyle \mathbf {M} _{0}}
のx成分 せいぶん はゼロであることから次 つぎ 式 しき のようになる。
ϕ
x
x
(
τ たう
)
=
∫
0
β べーた
⟨
M
x
M
x
(
τ たう
+
i
ℏ
λ らむだ
)
⟩
d
λ らむだ
{\displaystyle \phi _{xx}(\tau )=\int _{0}^{\beta }\langle M_{x}M_{x}(\tau +i\hbar \lambda )\rangle d\lambda }
ただし、
B
1
x
{\displaystyle \mathbf {B} _{1x}}
の無 な い場合 ばあい のオブザーバブル の期待 きたい 値 ち を
⟨
⟩
{\displaystyle \langle \quad \rangle }
と表記 ひょうき した。
これは高温 こうおん 近似 きんじ
β べーた
→
0
{\displaystyle \beta \to 0}
が成立 せいりつ する場合 ばあい は、次 つぎ のような簡単 かんたん な形 かたち に書 か ける。
ϕ
x
x
(
τ たう
)
=
β べーた
⟨
M
x
M
x
(
τ たう
)
⟩
(
4
)
{\displaystyle \phi _{xx}(\tau )=\beta \langle M_{x}M_{x}(\tau )\rangle \qquad (4)}
量子 りょうし 統計 とうけい 力学 りきがく を用 もち いた動 どう 磁化 じか 率 りつ の決定 けってい [ 編集 へんしゅう ]
高温 こうおん 近似 きんじ が成立 せいりつ する場合 ばあい 、(3)式 しき と(4)式 しき より動 どう 磁化 じか 率 りつ
χ かい
′
,
χ かい
″
{\displaystyle \chi ',\chi ''}
のxx成分 せいぶん は
χ かい
′
=
1
k
T
V
[
⟨
M
x
M
x
(
t
)
⟩
−
ω おめが
∫
0
∞
⟨
M
x
M
x
(
t
)
⟩
sin
ω おめが
t
d
t
]
{\displaystyle \chi '={\frac {1}{kTV}}\left[\langle M_{x}M_{x}(t)\rangle -\omega \int _{0}^{\infty }\langle M_{x}M_{x}(t)\rangle \sin \omega tdt\right]}
χ かい
″
=
ω おめが
k
T
V
∫
0
∞
⟨
M
x
M
x
(
t
)
⟩
cos
ω おめが
t
d
t
{\displaystyle \chi ''={\frac {\omega }{kTV}}\int _{0}^{\infty }\langle M_{x}M_{x}(t)\rangle \cos \omega tdt}
相関 そうかん 関数 かんすう の導入 どうにゅう [ 編集 へんしゅう ]
ここで
M
x
{\displaystyle M_{x}}
の相関 そうかん 関数 かんすう
G
(
t
)
{\displaystyle G(t)}
G
(
t
)
=
⟨
M
x
(
τ たう
+
t
)
M
x
(
τ たう
)
⟩
{\displaystyle G(t)=\langle M_{x}(\tau +t)M_{x}(\tau )\rangle }
を,時間 じかん 差 さ tの偶関数 すう として定義 ていぎ する.すると動 どう 磁化 じか 率 りつ の虚 きょ 部 ぶ は次 つぎ のように簡単 かんたん に書 か ける。
χ かい
″
(
ω おめが
)
=
ω おめが
2
k
T
V
∫
−
∞
∞
G
(
t
)
e
−
i
ω おめが
t
d
t
{\displaystyle \chi ''(\omega )={\frac {\omega }{2kTV}}\int _{-\infty }^{\infty }G(t)e^{-i\omega t}dt}
エネルギー吸収 きゅうしゅう 速度 そくど ・吸収 きゅうしゅう 係数 けいすう [ 編集 へんしゅう ]
z軸 じく 方向 ほうこう の静 せい 磁場 じば
B
0
{\displaystyle \mathbf {B} _{0}}
に加 くわ えて振動 しんどう 磁場 じば
B
1
x
(
t
)
{\displaystyle \mathbf {B} _{1x}(t)}
をかけた後 のち 、十分 じゅうぶん に時間 じかん が経過 けいか した後 のち での定常 ていじょう 状態 じょうたい におけるx方向 ほうこう の誘 さそえ 起 おこり 磁化 じか
M
x
(
t
)
{\displaystyle M_{x}(t)}
の時間 じかん 変動 へんどう より得 え られる
χ かい
′
,
χ かい
″
{\displaystyle \chi ',\chi ''}
より、エネルギーの吸収 きゅうしゅう 速度 そくど
Q
(
ω おめが
)
{\displaystyle Q(\omega )}
や吸収 きゅうしゅう 係数 けいすう
A
(
ω おめが
)
{\displaystyle A(\omega )}
(エネルギー散逸 さんいつ 、またはパワーロス)は振動 しんどう 地場 じば の周波数 しゅうはすう
ω おめが
{\displaystyle \omega }
の関数 かんすう として次 つぎ 式 しき で与 あた えられる。
Q
(
ω おめが
)
=
ω おめが
χ かい
′
2
′
(
ω おめが
)
B
1
x
2
{\displaystyle Q(\omega )={\frac {\omega \chi '}{2}}'(\omega )B_{1x}^{2}}
A
(
ω おめが
)
=
ω おめが
2
π ぱい
χ かい
″
(
ω おめが
)
{\displaystyle A(\omega )={\frac {\omega }{2\pi }}\chi ''(\omega )}
よって吸収 きゅうしゅう スペクトルは以下 いか のように相関 そうかん 関数 かんすう のフーリエ変換 へんかん として表 あらわ せる。
A
(
ω おめが
)
=
ω おめが
2
4
π ぱい
k
T
V
∫
−
∞
∞
G
(
t
)
e
−
i
ω おめが
t
d
t
{\displaystyle A(\omega )={\frac {\omega ^{2}}{4\pi kTV}}\int _{-\infty }^{\infty }G(t)e^{-i\omega t}dt}
逆 ぎゃく に相関 そうかん 関数 かんすう は,動 どう 磁化 じか 率 りつ の虚 きょ 部 ぶ
χ かい
″
{\displaystyle \chi ''}
または吸収 きゅうしゅう スペクトル
A
(
ω おめが
)
{\displaystyle A(\omega )}
の逆 ぎゃく フーリエ変換 へんかん として表 あらわ せる。
G
(
t
)
=
k
T
V
π ぱい
∫
−
∞
∞
χ かい
″
(
ω おめが
)
ω おめが
e
i
ω おめが
t
d
ω おめが
{\displaystyle G(t)={\frac {kTV}{\pi }}\int _{-\infty }^{\infty }{\frac {\chi ''(\omega )}{\omega }}e^{i\omega t}d\omega }
G
(
t
)
=
2
k
T
V
∫
−
∞
∞
A
(
ω おめが
)
ω おめが
2
e
i
ω おめが
t
d
ω おめが
{\displaystyle G(t)=2kTV\int _{-\infty }^{\infty }{\frac {A(\omega )}{\omega ^{2}}}e^{i\omega t}d\omega }
G
(
t
)
{\displaystyle G(t)}
を偶関数 すう として定義 ていぎ したので,
χ かい
″
{\displaystyle \chi ''}
は奇 き 関数 かんすう ,
A
(
ω おめが
)
{\displaystyle A(\omega )}
は偶関数 すう である。
FT-NMRの理論 りろん は、線形 せんけい 系 けい に対 たい する一般 いっぱん 原理 げんり 「周波数 しゅうはすう 応答 おうとう 関数 かんすう は系 けい のインパルス応答 おうとう 関数 かんすう とフーリエ変換 へんかん で結 むす ばれる」を基 もと にしている。スピン系 けい では、単一 たんいつ のパルス入力 にゅうりょく についてであればこのことは成立 せいりつ するが、一般 いっぱん の多重 たじゅう パルス、多重 たじゅう 共鳴 きょうめい 法 ほう では系 けい の線形 せんけい 性 せい は成 な りたない。通常 つうじょう 、周波数 しゅうはすう スペクトルと呼 よ んでいるものは、弱 よわ い正弦 せいげん 波 は 入力 にゅうりょく にたいする応答 おうとう である。非線形 ひせんけい な系 けい でも、入力 にゅうりょく が十分 じゅうぶん に弱 よわ ければ、入力 にゅうりょく に対 たい して二 に 次 じ 以上 いじょう の依存 いぞん 性 せい を示 しめ す項 こう (非線形 ひせんけい 項 こう )の存在 そんざい を無視 むし することができて、線形 せんけい 系 けい としての取 と り扱 あつか いが可能 かのう である。しかし強 つよ いラジオ波 は パルスを入力 にゅうりょく した場合 ばあい には、その応答 おうとう は一般 いっぱん に非線形 ひせんけい となる。
^ アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 特許 とっきょ 第 だい 2,561,490号 ごう
^ アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 特許 とっきょ 第 だい 3,287,629号 ごう
^ Yong Zhou (2013-09-03) (English). NMR and EPR Spectroscopy . Elsevier. ISBN 9781483226699
^ リヒャルト・ローベルト・エルンスト, Weston A. Anderson (1966) (English). Application of Fourier transfom spectroscopy to magnetic resonance . 37 . Review of Scientific Instruments. pp. 93-102.
^ アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 特許 とっきょ 第 だい 4,045,723号 ごう "Two-dimensional gyromagnetic resonance spectroscopy"
^ アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 特許 とっきょ 第 だい 4,070,611号 ごう "Gyromagnetic resonance Fourier transfom zeugmatography"
^ アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 特許 とっきょ 第 だい 4,134,058号 ごう "Selective detection of multiple quantum transitions in nuclear magnetic resonance"
^ Ryogo Kubo ; Kazuhisa Tomita (1954-6-26). “A General Theory of Magnetic Resonance Absorption” (English). Journal of the Physical Society of Japan (日本 にっぽん 物理 ぶつり 学会 がっかい ) 1954 (9): 888-919. doi :10.1143/JPSJ.9.888 . http://jpsj.ipap.jp/link?JPSJ/9/888/ .
出典 しゅってん は列挙 れっきょ するだけでなく、脚注 きゃくちゅう などを用 もち いてどの記述 きじゅつ の情報 じょうほう 源 げん であるかを明記 めいき してください。記事 きじ の信頼 しんらい 性 せい 向上 こうじょう にご協力 きょうりょく をお願 ねが いいたします。(2018年 ねん 1月 がつ )