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ベール空間くうかん

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学すうがく位相いそう空間くうかんろんにおけるベール空間くうかん(ベールくうかん、えい: Baire space)は、直観ちょっかんてきには非常ひじょうおおきくてあるしゅ極限きょくげん操作そうさおこなうのに「じゅうふんおおくの」てんつような位相いそう空間くうかんである。名称めいしょうはこの概念がいねん導入どうにゅうしたルネ=ルイ・ベール由来ゆらいする。

動機どうき

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勝手かって位相いそう空間くうかんにおいて、うちてんたない集合しゅうごうのクラスはちょうど稠密ちゅうみつひらけ集合しゅうごう境界きょうかいしており、これらの集合しゅうごうはある意味いみで「無視むしできる」。いくつかれいげれば、有限ゆうげん集合しゅうごう平面へいめんないなめらかな曲線きょくせんユークリッド空間くうかんうちしんのアフィン部分ぶぶん空間くうかんなどがそれにあたる。位相いそう空間くうかんベール空間くうかんであるというのは、それが「十分じゅうぶんおおきい」こと、つまりは無視むしできる集合しゅうごう可算かさん合併がっぺいになっていないことを意味いみする。たとえば、さん次元じげんユークリッド空間くうかんはそのなか可算かさんのアフィン平面へいめん合併がっぺいになってはいない。

定義ていぎ

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ベール空間くうかんくわしい定義ていぎは、おもにその時々ときどき支配しはいてきだった需要じゅよう観点かんてん起因きいんして、時代じだいとともにすこしずつ変化へんかしてきた。まずは、よくある現代げんだいてき定義ていぎべ、そのあとベールがあたえたオリジナルの定義ていぎによりちか歴史れきしてき定義ていぎげる。

現代げんだいてき定義ていぎ

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位相いそう空間くうかんベール空間くうかんであるとは、内部ないぶそらであるような集合しゅうごうからなる任意にんい可算かさんぞく合併がっぺいかなら内部ないぶそらになるときにう。

この定義ていぎ以下いかのように同値どうち条件じょうけんでいいかえることもできる。

  • 可算かさん稠密ちゅうみつひらけ集合しゅうごうまじわりはかなら稠密ちゅうみつになる。
  • 可算かさんうと集合しゅうごう合併がっぺい内部ないぶかならそらになる。
  • X可算かさんの閉集合しゅうごう合併がっぺいうちてんかぎつねに、それら閉集合しゅうごうなかうちてんつものがある。

歴史れきしてき定義ていぎ

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ベールのオリジナルの定義ていぎでは、範疇はんちゅう概念がいねん以下いかのように定義ていぎされた。

位相いそう空間くうかん X部分ぶぶん集合しゅうごうが、

  • X においてうとあるいはいたところうと (nowhere dense) であるとは、その閉包へいほう内部ないぶそらであることをう。
  • X においてだい一類いちるい (first category) またはせている (meagre) とは、それが可算かさんうと集合しゅうごうになっていることをう。
  • X においてだいるい (second category) またはせていない (nonmeagre) とは、それが X においてだい一類いちるいでないことをう。

これらの言葉ことばでベール空間くうかん定義ていぎべるとつぎのようになる:「位相いそう空間くうかん X がベール空間くうかんとなるのは、任意にんいそらでないひらく集合しゅうごうX においてだいるいであるときである」。この定義ていぎ先述せんじゅつ現代げんだいてき定義ていぎ同値どうちである。

X部分ぶぶん集合しゅうごう A残留ざんりゅうてき (residual, comeagre) であるとは、その集合しゅうごう XAせていることをう。位相いそう空間くうかん X がベール空間くうかんであるための必要ひつようじゅうふん条件じょうけんは、X任意にんい残留ざんりゅうてき部分ぶぶん空間くうかん稠密ちゅうみつになることである。

  • 実数じっすう全体ぜんたい R通常つうじょう位相いそうかんがえたものはベール空間くうかんであり、したがって自分じぶん自身じしんにおいてだいるいである。有理数ゆうりすう全体ぜんたい QR においてだい一類いちるいであり、無理むりすう全体ぜんたい PR においてだいるいである。
  • カントル集合しゅうごう C はベール空間くうかんであり、したがって自分じぶん自身じしんにおいてだいるいだが、C単位たんい閉区あいだ [0, 1] に通常つうじょう位相いそうれたものにおいてだい一類いちるいである。
  • R においてだいるいかつルベーグ測度そくどが 0 であるようなれいが、
    あたえられる。ただし、{rn}
    n=1
    有理数ゆうりすうすべかぞ数列すうれつとする。
  • 有理数ゆうりすう全体ぜんたい QR からくる通常つうじょう位相いそうれた空間くうかんはベール空間くうかんでない。これは Q可算かさんあるかくてん q対応たいおうする一元いちげん集合しゅうごう {q}(これはうちてんたない閉集合しゅうごうになっている)の合併がっぺいとしてけることによる。

ベールの範疇はんちゅう定理ていり

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ベールの範疇はんちゅう定理ていり位相いそう空間くうかんがベール空間くうかんであるための十分じゅうぶん条件じょうけんあたえるものである。位相いそう空間くうかんろんおよび函数かんすう解析かいせきがく重要じゅうようなツールとなっている。

BCT1以下いか空間くうかんがベール空間くうかんであることをしめす:

  • 実数じっすう全体ぜんたい R通常つうじょう位相いそうれた空間くうかん
  • 無理むりすう全体ぜんたい PR からくる通常つうじょう位相いそうれた空間くうかん
  • カントル集合しゅうごう C
  • 任意にんいポーランド空間くうかん

BCT2任意にんい多様たようたいがベール空間くうかんであることをしめす。これは多様たようたいパラコンパクトでなく、したがって距離きょり可能かのうでない場合ばあいでもつ。たとえばなが直線ちょくせんだいるいである。

性質せいしつ

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  • 任意にんいそらでないベール空間くうかん X は、自分じぶん自身じしんにおいてだいるいである。また、X稠密ちゅうみつひらけ集合しゅうごうからなる任意にんい可算かさんぞくまじわりはそらでない。しかしこれらふたつの主張しゅちょうぎゃくいずれもりたない。なんとなれば、有理数ゆうりすう全体ぜんたい集合しゅうごう Q単位たんい閉区あいだ [0, 1] との位相いそうてき直和なおかずかんがえればわかる。
  • ベール空間くうかん任意にんいひらき部分ぶぶん空間くうかんはまたベール空間くうかんである。
  • 連続れんぞく写像しゃぞうぞく fn: XY とそのかくてん収斂しゅうれん極限きょくげん f: XYあたえられたとき、X がベール空間くうかんならば極限きょくげん写像しゃぞう f連続れんぞくでないてん全体ぜんたいX においてせた集合しゅうごうであり、f連続れんぞくになるてん全体ぜんたいX において稠密ちゅうみつである。このことの特別とくべつ場合ばあい一様いちよう有界ゆうかいせい原理げんりである。

関連かんれん項目こうもく

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参考さんこう文献ぶんけん

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  • Munkres, James, Topology, 2nd edition, Prentice Hall, 2000.
  • Baire, René-Louis (1899), Sur les fonctions de variables réelles, Annali di Mat. Ser. 3 3, 1--123.