マドモアゼル モーツァルト

『マドモアゼル モーツァルト』（MADEMOISELLE MOZART）は、1989年ねんから1990年ねんにかけて『コミック・モーニング』に連載れんさいされた福山ふくやま庸治ようじの漫画まんが。神童しんどうモーツァルトは女性じょせいだったという大胆だいたんな設定せっていで、彼かれ（彼女かのじょ）と彼かれを取とり巻まく家族かぞく、彼かれを憎にくみつつも惹ひかれていく宮廷きゅうてい楽長がくちょうサリエリたちとの悲喜劇ひきげきを描えがく。『青春せいしゅんアドベンチャー』でラジオドラマ化かもされている。

あらすじ

1760年ねん、ザルツブルク。次女じじょエリーザが即興そっきょうで弾ひいたクラヴィーア（鍵盤けんばん楽器がっき）に娘むすめの天才てんさいを見みたレオポルト・モーツァルトは「女性じょせいでは有名ゆうめいな音楽家おんがくかになれない」と、エリーザの髪かみを切きり、以後いごは男子だんしとしてエリーザ＝ヴォルフガングに英才えいさい教育きょういくを施ほどこした。

全ぜんヨーロッパに楽らく才ざいをとどろかせた彼女かのじょ＝ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、1780年代ねんだいのウィーンでひっぱりだこの大だい音楽家おんがくかになっていた。女性じょせいファンに追おわれるモーツァルトを、ふとしたいきさつからかばうことになった宮廷きゅうてい楽長がくちょうアントニオ・サリエリは、モーツァルトの柔肌やわはだと蠱惑こわく的てきな唇くちびるに魅みせられ、自分じぶんが同性愛どうせいあい者しゃなのではないかとの疑惑ぎわくに心しんをかき乱みだされていく。やがてモーツァルトは、その名声めいせいを目めをつけた下宿げしゅく先さきの大家たいか、ウェーバー家かの娘むすめコンスタンツェ・ウェーバーと結婚けっこんするが、その初夜しょや、実じつは女性じょせいであることが妻つまコンスタンツェに露顕ろけんしてしまう。心しんに傷きずを負おったコンスタンツェは、弟子でしフランツ・ジュスマイヤーと道みちならぬ恋こいに落おちていく。サリエリは、自分じぶんの心しんを乱みだすモーツァルトの社会しゃかい的てき生命せいめいを抹殺まっさつしようと様々さまざまな妨害ぼうがい工作こうさくを試こころみるが、いずれも不発ふはつに終おわる。

やがて父ちちレオポルトの死しを境さかいに、移うつり気ぎなウィーンの貴族きぞくにモーツァルトの音楽おんがくは飽あきられていき、貧困ひんこんに落おちていく。モーツァルトの落おちぶれた姿すがたを見みてサリエリは「永遠えいえんの愛あい＝毒殺どくさつ」を計画けいかくし、不倫ふりんを重かさねる妻つまコンスタンツェと弟子でしジュスマイヤーも冗談じょうだん半分はんぶんにモーツァルトの毒殺どくさつをほのめかす。

1791年ねん、歌劇かげき「魔ま笛ふえ」が大だいヒットする中なか、すっかり健康けんこうを害がいしたモーツァルトは息いきを引ひき取とる。モーツァルトをめぐる人々ひとびとが思おもい思おもいの回想かいそうにふける……さなかにモーツァルトは突然とつぜん蘇生そせいし、自みずからの生涯しょうがいを題材だいざいにした歌劇かげき「マドモアゼル モーツァルト」作曲さっきょくの計画けいかくを発表はっぴょうして、幕まくが下おりる。

主おもな登場とうじょう人物じんぶつ

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト（エリーザ）

ザルツブルクの音楽家おんがくかレオポルト・モーツァルトの次女じじょ。ナンネルという姉あねがいる。4歳さいの時ときにふざけて弾ひいていたピアノの即興そっきょう演奏えんそうを聴きいた父ちちレオポルトが彼女かのじょの天才てんさいに仰天ぎょうてん、有名ゆうめい音楽家おんがくかに育そだてるために髪かみを切きられ、男性だんせいとして育そだてられる。父ちちの死しの直後ちょくご、エリザベト・マリア・モーツァルトを名乗なのっており、これが本名ほんみょうと思おもわれる。

アントニオ・サリエリ

ウィーンの宮廷きゅうてい音楽家おんがくか。モーツァルトが女性じょせいであると疑うたがっており、彼かれの存在そんざいに心しんを乱みだされている。カテリーナ・カヴァリエリは愛人あいじんだが、モーツァルトの存在そんざいに心こころ乱みだされるあまり、彼女かのじょに同性愛どうせいあい者ものと誤解ごかいされてしまう。

コンスタンツェ・モーツァルト

モーツァルトが下宿げしゅくしていたウェーバー家かの次女じじょ。モーツァルトと結婚けっこんするが、初夜しょやの際さいに夫おっとが女性じょせいであることに気きづき、大おおきなショックを受うける。自みずからの愛情あいじょうが満みたされないことから、弟子でしのジュスマイヤーと不倫ふりんを重かさね、不義ふぎの子こをなす。

レオポルト・モーツァルト

ヴォルフガング（エリーザ）の父ちち。モーツァルトを男性だんせいとして音楽おんがく教育きょういくを施ほどこし、大だい作曲さっきょく家かとして育そだて上あげる。ヴォルフガングとコンスタンツェの結婚けっこんに反対はんたいする。

フランツ・クサヴァ・ジュスマイヤー

モーツァルトの弟子でし兼けんアシスタント。モーツァルトとの邂逅かいこう時じ、頭あたまを何なん度どか強つよく打うったため、記憶きおく障害しょうがいがある。凡庸ぼんような男おとこだが、それゆえにモーツァルトの妻つまコンスタンツェに気きに入いられ、不倫ふりんを重かさねる。モーツァルトの子供こどもたちの父親ちちおや。

カテリーナ・カヴァリエリ

ウィーンで人気にんきのオペラ歌手かしゅで、サリエリの愛人あいじん。モーツァルトに心しんを奪うばわれたサリエリを嫉妬しっとさせようとモーツァルトに近ちかづく。サリエリを同性愛どうせいあい者しゃと誤解ごかいする。

作品さくひんリスト

各かく話はなしのタイトルにはケッヘル番号ばんごうになぞらえてK.1とナンバリングがされている。

• K（ケッヘル）.1　エリーザのためのレクイエム
• K.2 アリア「私わたし（サリエリ）は目覚めざめた」
• K.3 結婚けっこん序曲じょきょく
• K.4 二に人にんのコンスタンツェ
• K.5 招まねかれざる客きゃく
• K.6 そして「後宮こうきゅうよりの誘拐ゆうかい」
• K.7 ベッドは月夜つきよに照てらされて
• K.8 夜毎よごと、月つきは満みち満みちて
• K.9 弟子でしフランツ　
• K.10 愛あいは金貨きんかの輝かがやきに似にて……
• K.11 昇のぼる陽ひ、翳かげる陽ひ
• K.12 ゆらめく炎ほのおとかげ
• K.13 心しんは千々ちじに乱みだれ……
• K.14 小夜曲さよきょく
• K.15 パパが死しんだ
• K.16 これから飛とぶつもり、この蝶々ちょうちょう？
• K.17 赤あかいバラ、黒くろいバラ
• K.18 エリーザのために
• K.19 エリーザ変奏曲へんそうきょく
• K.20 私わたしの魂たましいを引ひき裂さくのは誰だれ？
• K.21 愛あいの贈おくり物もの
• K.22 救すくいの神かみ、エロチックな君きみ
• K.23 誰だれかが毒どくを飲のませてる
• K.24 舌したに死人しにんの味あじがする
• K.25 君くんはパパゲーナ！
• K.26 K.627《マドモアゼル・モーツァルト》

書誌しょし情報じょうほう

福山ふくやま庸治ようじ 『マドモアゼル・モーツァルト 』

• マドモアゼルモーツァルト (モーニングKC)、講談社こうだんしゃ
  1. 1990年ねん4月がつ1日にち、ISBN 978-4063000733
  2. 1990年ねん5月がつ1日にち、ISBN 978-4063000740
  3. 1990年ねん6月がつ1日にち、ISBN 978-4063000764
• マドモアゼル・モーツァルト (福山ふくやま庸治ようじ選集せんしゅう) 弓立ゆだち社しゃ
  1. 1995年ねん8月がつ1日にち、ISBN 978-4896675610
  2. 1995年ねん8月がつ1日にち、ISBN 978-4896675627
  3. 1995年ねん9月がつ1日にち、 ISBN 978-4896675634
• 単行本たんこうぼん（ソフトカバー）、 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ、 2021年ねん10月がつ9日にち、ISBN 978-4309728537

2021年ねんミュージカル上演じょうえんにあわせて新装しんそう版ばんで復刊ふっかん

備考びこう

• モーツァルト毒殺どくさつ説せつを取とり上あげ、サリエリ、ジュスマイヤーの2人ふたりが冗談じょうだんめかしてではあるがモーツァルトの毒殺どくさつを計画けいかくする描写びょうしゃがある。また、健康けんこうを害がいしたモーツァルトが贈おくり主ぬしの分わからないワインを繰くり返かえし口くちにして、さらに衰おとろえていく描写びょうしゃもある。
• レクイエム作曲さっきょくにまつわる灰色はいいろの服ふくを着きた男おとこの逸話いつわはごく簡単かんたんに取とり上あげられているに過すぎない。
• 漫画まんがで描えがかれるサリエリの容貌ようぼうは映画えいが「アマデウス」のF・マーリー・エイブラハムに、皇帝こうていヨーゼフ2世せいの容貌ようぼうはジェフリー・ジョーンズにどことなく似にている。また歌劇かげき「ドン・ジョヴァンニ」の場面ばめんは、指揮しき者しゃヘルベルト・フォン・カラヤンが1987年ねんのザルツブルク音楽おんがく祭さいで上演じょうえんした舞台ぶたいをもとにしていると思おもわれる（騎士きし長ちょう殺害さつがいの場面ばめんやドン・ジョヴァンニ地獄じごく落おちの場面ばめんなど）。
• 作者さくしゃの福山ふくやま庸治ようじはモーツァルト没ぼつ後ご200年ねんにあたる1991年ねんに「モーツァルト没ぼつ後ご200年ねん御免ごめん連載れんさい」として、歌劇かげき「ドン・ジョヴァンニ」を舞台ぶたいを江戸えど時代じだいに移うつしてコミカライズしている。
• 『ユリイカ』1991年ねんの臨時りんじ増刊ぞうかん総そう特集とくしゅう：モーツァルトに、オールカラー8Pのマドモアゼル モーツァルト外伝がいでんが掲載けいさいされている。（本ほん作さくの後日ごじつ談だん的てきな内容ないよう。モーツァルトの息子むすこでサリエリの弟子でし・フランツ・クサヴァー・モーツァルトも登場とうじょう）短たん編集へんしゅう『ニキビよニキビ』にも収録しゅうろくされた。

ミュージカル

• 1991年ねんに音楽おんがく座ざによってミュージカルとして上演じょうえんされ、人気にんきを呼よんだ。ミュージカルでは劇げき中ちゅう音楽おんがくを小室こむろ哲哉てつやが担当たんとうし、小室こむろ名義めいぎの同名どうめいのアルバム『マドモアゼル・モーツァルト』（サウンドトラック）も発売はつばいされた。2005年ねんには「21C：マドモアゼル・モーツァルト」と改題かいだいして大幅おおはばに脚本きゃくほんを改訂かいていしたヴァージョンを上演じょうえんしている。ミュージカル版ばんでは原作げんさくとは異ことなり、サリエリと和解わかいする。

• 2021年ねん10月がつに東京建物とうきょうたてもの Brillia HALLにて再演さいえん。

ラジオドラマ

• 1992年ねん、NHK-FM放送ほうそう『青春せいしゅんアドベンチャー』で放送ほうそう。

上記じょうき、音楽おんがく座ざミュージカル（初演しょえん）のキャストや音楽おんがくを使用しようしている。

関連かんれん項目こうもく

• アマデウス (映画えいが)