マフィリンド

マフィリンド （英語えいご: Maphilindo）は、マラヤ (Malaya)、フィリピン (Philippines)、インドネシア (Indonesia)の間あいだで協議きょうぎされた連合体れんごうたい構想こうそうである。

結合けつごうしたマレー人じんという概念がいねんに基もとづいた原案げんあんは、ヴェンセスラオ・ビンゾンズ（1910年ねん9月がつ28日にち — 1942年ねん7月がつ15日にち）によりアメリカ統治とうち下かのフィリピンで作つくられた。そこでは、結合けつごうしたマレー人種じんしゅ "Malaya Irredenta"（マフィリンドの別名べつめいだった）が理想りそうとされた。

合意ごういに至いたる経緯けいい

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご、1946年ねんにアメリカからフィリピン、1957年ねんにイギリスからマラヤ連邦れんぽうがそれぞれ独立どくりつした。独立どくりつ前まえの経緯けいいによりマラヤ連邦れんぽうとフィリピンとの間あいだではボルネオ島とうのサバ（かつてのイギリス領りょう北きたボルネオ）を巡めぐる領有りょうゆう権けん問題もんだいがあった。この問題もんだいを解決かいけつするべくフィリピンのディオスダド・マカパガル大統領だいとうりょうは「大だいマラヤ連邦れんぽう」構想こうそうを発表はっぴょうした。その内容ないようはフィリピンとマラヤ連邦れんぽうの国家こっか統合とうごうによりサバ領有りょうゆう権けん問題もんだいの解決かいけつを企図きとする大胆だいたんなものであった。

この頃ころ、マラヤ連邦れんぽうでは旧きゅう宗主そうしゅ国こくであるイギリスの指導しどうのもと、周辺しゅうへんのシンガポールやブルネイを連邦れんぽう制せいのもと併合へいごうするマレーシア連邦れんぽうの発足ほっそくを推進すいしんしていた。これに対たいしては併合へいごう地域ちいきから反対はんたい運動うんどうが起おきている。1962年ねん12月の「アザハリの反乱はんらん（ブルネイ動乱どうらん）」もこの反対はんたい運動うんどうの一ひとつである。この動乱どうらんはブルネイ政府せいふの要請ようせいにより介入かいにゅうしたイギリス軍ぐんにより鎮圧ちんあつされた。この介入かいにゅうはインドネシア政府せいふから反感はんかんを買かい、マレーシア連邦れんぽう案あんを提示ていじしたマラヤ連邦れんぽうは反はん植民しょくみん地ち主義しゅぎではなく、西欧せいおう諸国しょこくに代かわる新あらたな植民しょくみん地ち主義しゅぎであると非難ひなんした。これによりマラヤ連邦れんぽうとインドネシアは対立たいりつすることとなった。

マカパガルはマラヤ連邦れんぽうとインドネシアの対立たいりつ姿勢しせいの表面ひょうめん化かに伴ともない原案げんあんを修正しゅうせいし、新あらたに統合とうごう範囲はんいをインドネシアまで拡大かくだいした「大だいマレーシア連邦れんぽう」構想こうそうを発表はっぴょうし、インドネシアのスカルノ大統領だいとうりょうの協力きょうりょくのもとマラヤ連邦れんぽうに提示ていじした。マフィリンドは、植民しょくみん地ちによる人工じんこう的てきな国境こっきょうで分割ぶんかつされている現状げんじょうから、マレー人種じんしゅを一ひとつにするというホセ・リサールの夢ゆめの実現じつげんとして提案ていあんされた。この提案ていあんを受うけたトゥンク・ラーマンマラヤ連邦れんぽう首相しゅしょうは当初とうしょ、マレーシア連邦れんぽう案あんに対たいし一切いっさい譲歩じょうほしない姿勢しせいを見みせたため実現じつげんは困難こんなんであった。しかし1963年ねん5月、スカルノとラーマンとの会談かいだんで「大だいマレーシア連邦れんぽう」構想こうそうに基もとづいた3か国こくによる地域ちいき協力きょうりょくの合意ごういがなされた。この合意ごういはマカパガルの唱となえたものより緩ゆるやかなものであったがマフィリンドの実現じつげんに向むけた第一歩だいいっぽとなった。

これを受うけて翌よく6月がつマニラで開催かいさいされた当該とうがい国こくの外相がいしょう会談かいだんでマニラ協定きょうていが採択さいたくされた。マニラ協定きょうていはマフィリンドの設立せつりつ宣言せんげんに位置いちづけられ、経済けいざい・社会しゃかい・文化ぶんか協力きょうりょくを明記めいきしていた。7月にはマカパガルを加くわえた3ヵ国かこく首脳しゅのうの会談かいだんが行おこなわれ、共同きょうどう声明せいめいによりマニラ宣言せんげんならびに採択さいたくされていたマニラ協定きょうていの合意ごうい発表はっぴょうがなされた。マニラ宣言せんげんでは民族みんぞく自決じけつの観点かんてんからサバとサラワクにおけるマレーシア連邦れんぽう参加さんかを問とう住民じゅうみんの意思いし確認かくにんを国連こくれんに要請ようせいし実施じっしすること、ならびに機構きこうとなる枠組わくぐみ形成けいせいに向むけての協議きょうぎの継続けいぞくが合意ごういされた。マフィリンドは精神せいしん的てきな一致いっちを基もとにした、共通きょうつうの関心かんしん的てき問題もんだいにアプローチする地域ちいき連合れんごうとして述のべられた。

瓦解がかい

1963年ねん9月がつに国連こくれん調査ちょうさ団だんによってサバとサワラクでマレーシア連邦れんぽう案あんに対たいする住民じゅうみん意思いし調査ちょうさが実施じっしされた。しかし、この調査ちょうさにはフィリピン・インドネシアのオブザーバー参加さんかを認みとめないなど、調査ちょうさの実態じったいは不透明ふとうめいなものであった。更さらにラーマンとマラヤ政府せいふはこの調査ちょうさ結果けっかが発表はっぴょうされる以前いぜんに、サバとサワラクを含ふくめたマレーシア連邦れんぽうの成立せいりつを発表はっぴょうした。この発表はっぴょうはマニラ宣言せんげんの合意ごういを反故ほごにするものであった。そしてマレーシア成立せいりつの僅わずか2日にち後ごである9月がつ17日にちにマレーシア政府せいふはフィリピン・インドネシア両国りょうこくとの断交だんこうを発表はっぴょうした。これによりマフィリンド構想こうそうは崩壊ほうかいした。