メトロイドヴァニア

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メトロイドヴァニア英語えいご: Metroidvania)は、サイドビュー(よこ視点してん)の2Dアクションアドベンチャーゲームのサブジャンルの一種いっしゅ俗称ぞくしょうで、公式こうしきには探索たんさくがたアクションなどの正式せいしき名称めいしょうばれているジャンルである。「メトロヴァニア」と呼称こしょうするものもいる。

さらにながれをむジャンルとして、ソウルライク要素ようそしたソウルヴァニアや、ローグライク要素ようそしたローグヴァニアもある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

メトロイド』と『キャッスルヴァニア悪魔あくまじょうドラキュラの欧米おうべいばんタイトルめい)』という2つのコンピュータゲームシリーズの名前なまえわせたかばんである。公式こうしき用語ようごではなくいつのころからか欧米おうべいでユーザーにばれるようになった俗語ぞくごであり、このジャンルのゲームにはりょうシリーズの要素ようそれられている[1][2]ものの、メトロイドの任天堂にんてんどう悪魔あくまじょうドラキュラのコナミもこのメトロイドヴァニアという言葉ことば使用しようしていない。メトロイドや悪魔あくまじょうドラキュラ作品さくひんのゲームの公式こうしきサイトのジャンル表記ひょうきやパッケージばこのジャンル表記ひょうきなど、公式こうしきには「探索たんさくがたアクション」や「マップ探索たんさくがたアクションRPG」などと呼称こしょうされている。

元々もともとは『悪魔あくまじょうドラキュラ』シリーズのなか純粋じゅんすいなアクションゲームのほう区別くべつするため『メトロイド』がたマップ探索たんさくシステムをれたゲームのほうしていた。やがて本家ほんけの『メトロイド』もふくめ2D(よこ視点してん)のマップ探索たんさくがたアクションゲーム全般ぜんぱんおもにインターネットじょうでそう俗称ぞくしょうされるようになった[3]。なお比率ひりつてきにはメトロイドヴァニア作品さくひんは、悪魔あくまじょうドラキュラりのものよりもメトロイドりのもののほう非常ひじょうおお[2]

また、一口ひとくちにメトロイドヴァニアとっても、明確めいかく定義ていぎむずかしい[2]。メトロイドヴァニアのゲームは、通常つうじょう2次元じげんよこスクロールかたプラットフォームゲームで、プレイヤーが探索たんさくできる広大こうだいたがいにつながっているワールドマップが特徴とくちょうで、ゲームない特別とくべつもの道具どうぐ武器ぶき能力のうりょくれないと通過つうかできないドアなどの障害しょうがいぶつがあることがおおい。このような改善かいぜん獲得かくとくすることで、プレイヤーはより困難こんなんてきかしたり、おおくの場合ばあい地図ちずじょう自分じぶん足跡あしあと辿たどることで、近道ちかみち秘密ひみつ場所ばしょつけたりすることができるようになる。このように、メトロイドヴァニアのゲームでは、ストーリー設定せっていとレベル(日本語にほんごではステージやめんのこと)デザインの統合とうごう探索たんさく実験じっけんうながすレベルとキャラクターの操作性そうさせいわる慎重しんちょう設計せっけいロールプレイングゲーム要素ようそによるプレイヤーキャラクターへの数値すうち強化きょうかなどがまれている。なおメトロイドヴァニア作品さくひんにおけるストーリーは、あくまで探索たんさくのための理由りゆう程度ていどで、あまり重要じゅうようではないことがおお[2]

1986ねん発売はつばいされた初代しょだいメトロイド』は、なん反復はんぷくして洗練せんれんするという、非線形ひせんけいプラットフォーマーの原則げんそく確立かくりつし、1994ねんの『スーパーメトロイド』で、メトロイドヴァニアのかくとなるゲームスタイルが完成かんせいしたとみなされている。これらをつくした開発かいはつしゃ坂本さかもといさむである。1997ねん発売はつばいされた『悪魔あくまじょうドラキュラX 月下げっか夜想曲やそうきょく』は、『ゼルダの伝説でんせつ』シリーズのロールプレイングゲーム要素ようそ影響えいきょうけ、『悪魔あくまじょうドラキュラ』シリーズの非線形ひせんけい移動いどう融合ゆうごうした、メトロイドヴァニアの主要しゅよう原理げんり確立かくりつさせた代表だいひょうゲームとされている。それ以降いこうの『悪魔あくまじょうドラキュラ』作品さくひんは、半分はんぶんちかくは『月下げっか夜想曲やそうきょく』のアプローチを踏襲とうしゅうし(のこりの半分はんぶん従来じゅうらいどおりのアクションや3Dアクションなどの作品さくひん)、このジャンルを洗練せんれんしていった。『月下げっか夜想曲やそうきょく』のプロデューサーでありディレクターでもある萩原はぎはらとおるは、『月下げっか夜想曲やそうきょく』まででその悪魔あくまじょうドラキュラ作品さくひんにはたずさわっていないが、アシスタントディレクターをつとめた五十嵐いがらし孝司たかしや、『サークルオブザムーン』でプロデューサーをつとめた堀江ほりえ浩司こうじが、『月下げっか夜想曲やそうきょく悪魔あくまじょうドラキュラ作品さくひんで、メトロイドヴァニアである月下げっか夜想曲やそうきょくタイプのゲームをつづけていった。五十嵐いがらし複数ふくすう作品さくひん月下げっか夜想曲やそうきょくタイプのゲームを踏襲とうしゅうし、メトロイドヴァニアの浸透しんとう貢献こうけんした。2004ねんの『洞窟どうくつ物語ものがたり』は、天谷あまや大輔だいすけ個人こじん制作せいさくしたメトロイドヴァニアけいのフリーゲームで、おおくのインディーゲームに影響えいきょうあたえ、歴史れきしてき位置いちにいる[1]

メトロイドヴァニアはマイナーなジャンルである時期じきつづき、作品さくひんすうすくなかった。しかし、2000年代ねんだい以降いこうからは、たか評価ひょうかける独立どくりつけい小規模しょうきぼ開発かいはつインディーゲームでメトロイドヴァニアけい作品さくひん多数たすうたことで、インディーゲームかいでメトロイドヴァニアというジャンルがわたるようになった。一方いっぽう、ゲームかいのメジャーなだい一線いっせんにはなかなかてこないという状態じょうたいでもある[2]

歴史れきし[編集へんしゅう]

このたね最初さいしょのゲームではないが(たとえば、1985ねん発売はつばいされた『ブレインブレイカー英語えいごばん』を参照さんしょう)、『メトロイド』(1986ねんファミリーコンピュータ)は、メトロイドヴァニアというジャンルにもっと影響えいきょうあたえたゲームであると一般いっぱんなされている[4]任天堂にんてんどうがこのタイトルで目指めざしたのは、当時とうじほかのゲームとは一線いっせんかく非線形ひせんけい一方いっぽう通行つうこうでなく双方向そうほうこう移動いどう)アドベンチャーゲームをつくることであり、のアドベンチャーゲームが一時いちじてき効果こうかしかないパワーアップ提供ていきょうしていたのとは対照たいしょうてきに、永続えいぞくてきなパワーアップを提供ていきょうしながら、プレイヤーに自分じぶんあゆんできたみち辿たどることを要求ようきゅうした[5]坂本さかもといさみそだてたこのシリーズは人気にんきはくし、作品さくひんでは『スーパーメトロイド』(1994ねんスーパーファミコン)のように、ストーリーの要素ようそ追加ついかしながら、探索たんさく手法しゅほうをさらに洗練せんれんしていった。『スーパーメトロイド』は、以前いぜんの『メトロイド』シリーズ作品さくひんをいくつかの側面そくめんからさら進化しんかさせた作品さくひんで、多彩たさいなロケーションとプレイヤーがつけられるおおくの秘密ひみつ用意よういされていた。また、その秘密ひみつ利用りようして、設計せっけいしゃ想定そうていしたゲームをすすめるながれをくずすことができるため、スピードランナー人気にんき作品さくひんとなった[6]。しかし、のちかえってみると、『スーパーメトロイド』は依然いぜんとして完成かんせいたか非線形ひせんけいプラットフォーマーのいちれいとされている。

メトロイドシリーズをした坂本さかもといさむなかでも『スーパーメトロイド』はメトロイドヴァニアの代表だいひょうさくのひとつ。
悪魔あくまじょうドラキュラX 月下げっか夜想曲やそうきょく』のアシスタントディレクターだった五十嵐いがらし孝司たかし。『月下げっか夜想曲やそうきょく』はメトロイドヴァニアの代表だいひょうさくのひとつ。
洞窟どうくつ物語ものがたり』をほぼ一人ひとりつくった天谷あまや大輔だいすけ。『洞窟どうくつ物語ものがたり』はインディーゲームかいにメトロイドヴァニアをひろめた歴史れきしてき作品さくひん

この時期じき、ゴシックホラーをテーマにしたプラットフォーマー『悪魔あくまじょうドラキュラ』シリーズが人気にんきはくしていた。初代しょだい悪魔あくまじょうドラキュラ』(1986ねん、ファミコン)は、バラバラのレベルを順番じゅんばんにクリアしていくものだった。その、『悪魔あくまじょうドラキュラ』(1986ねんMSX2[7][8]、『ドラキュラII のろいの封印ふういん』(1987ねん、ファミコン)と、探索たんさく要素ようそやRPG要素ようそれた、冒険ぼうけんちゅう直線ちょくせんがたのゲームせい志向しこうする作品さくひんつづいたが[9][10]のちにシリーズは初代しょだい悪魔あくまじょうドラキュラ』のような直線ちょくせんてき様式ようしきもどった。当時とうじアシスタントディレクターをつとめた五十嵐いがらし孝司たかしがGDC 2014のパネルディスカッションでかたった内容ないようによると、『悪魔あくまじょうドラキュラX 月下げっか夜想曲やそうきょく』(1997ねん、PlayStation)開発かいはつ当時とうじ、コナミには複数ふくすう制作せいさくスタジオが各地かくちにあり、『月下げっか夜想曲やそうきょく開発かいはつチームとはべつ開発かいはつチームが本筋ほんすじの『悪魔あくまじょうドラキュラ』シリーズを保有ほゆうしているフランチャイズオーナーだとかんがえていたため、こちらは本筋ほんすじではないのだから「なにをやってもかまわない」「あたらしいことを勝手かってにやろう」という雰囲気ふんいき開発かいはつチームにはあったという。また、転落てんらくでのストレスをくしたかったことや、ゲームの寿命じゅみょうながくしたかったこともかたっている[11]

[12]。そして、よりプレイ時間じかんながくなるようなゲームをつくろうとした開発かいはつチーム全員ぜんいんのおりであった『ゼルダの伝説でんせつ』を参考さんこうに、探索たんさくする広大こうだいなマップや、そのマップをできる探索たんさくがたのゲームデザインが『月下げっか夜想曲やそうきょく』に応用おうようされた[13]。また、『月下げっか夜想曲やそうきょく』は『スーパーメトロイド』にも触発しょくはつされており、そのテンプレートをれて悪魔あくまじょうドラキュラのゲームプレイに融合ゆうごうし、RPGのようなレベリングシステムを追加ついか重要じゅうよう物品ぶっぴん入手にゅうしゅしないと特定とくてい区域くいきれないなど、要素ようそとしては『スーパーメトロイド』などの直線ちょくせんプラットフォーマーにすでにあった概念がいねん導入どうにゅうされた[6]。しかし、『月下げっか夜想曲やそうきょく』は、コンピュータRPG要素ようそれ、プレイヤーが経験けいけんによってキャラクターの属性ぞくせい向上こうじょうさせるというてんで、それまでの直線ちょくせんプラットフォーマーとは一線いっせんかくしていた[14][15]。この変更へんこうはプレイヤーに好評こうひょうで、そののシリーズ作品さくひん半分はんぶんちかくがこの方式ほうしき採用さいようした[16][4]

『スーパーメトロイド』と『悪魔あくまじょうドラキュラX 月下げっか夜想曲やそうきょく』の発売はつばい、2さく方式ほうしき現在げんざいメトロイドヴァニアとばれるものの基礎きそとなった。メトロイドヴァニアのゲームスタイルは、3Dゲーム全盛ぜんせいのゲーム業界ぎょうかいにあってむかしながらの2Dゲームもまだ居場所いばしょがあることをしめし、このようなゲームをもとめるプレイヤーもいることを証明しょうめいした[17]りょうシリーズともこの形式けいしきでタイトルを開発かいはつつづけているなか、メトロイドヴァニアの概念がいねんは、のメーカーがおな形式けいしきのゲームを開発かいはつはじめたときに、よりおおきな影響えいきょうおよぼすようになった[4][18]天谷あまや大輔だいすけがメトロイドなどの古典こてんてきなゲームへのオマージュとして開発かいはつした『洞窟どうくつ物語ものがたり』(2004ねん、Microsoft Windows)は、一人ひとり人間にんげんができることの幅広はばひろさをしめし、『メトロイド』や『悪魔あくまじょうドラキュラ』のべつ解釈かいしゃく強調きょうちょうし、2Dプラットフォーマーというジャンルを実行じっこう可能かのうなインディーゲームのフォーマットとして確立かくりつしたとして評価ひょうかされた[19]

2000年代ねんだい初頭しょとうにはなぞきアドベンチャーてき側面そくめんつよい『LA-MULANA(ラ・ムラーナ)』も個人こじん制作せいさくのインディーゲームとしてて、後年こうねんメジャーになっている[2]Chair Entertainment英語えいごばんの『Shadow Complex英語えいごばん』(2009ねんXbox 360)は、『スーパーメトロイド』が「2Dゲームデザインの頂点ちょうてん」であるとの前提ぜんてい開発かいはつされた作品さくひんである。このゲームはたか評価ひょうかており、Xbox 360サービスでもっとれたダウンロードタイトルのひとつとなっている。このようなゲームのおかげで、メトロイドヴァニアというジャンルは、ゲーム会社かいしゃ主導しゅどうのゲーム開発かいはつ独立どくりつけいインディーゲーム開発かいはつ両方りょうほうとくにインディー界隈かいわい流行りゅうこうはじめた。Drinkbox Studios英語えいごばんの『覆面ふくめん闘士とうし』(2013ねん)、Moon Studiosの『オリとくらやみのもり』(2015ねん)、Team Cherryの『Hollow Knight』(2017ねん)などは、現代げんだいのインディーのメトロイドヴァニアとして高評こうひょうているれいである。『Axiom Verge』(2017ねん)は、Thomas Happがほぼ1人ひとりつくっており、IGN USが「最高さいこうのメトロイドヴァニアのひとつである」とひょうしている[1]。コナミを退社たいしゃした五十嵐いがらしもこのジャンルのインディーズでの再興さいこうづかなかったわけではない。2015ねん5がつには、悪魔あくまじょうドラキュラに影響えいきょうけた『ブラッドステインド:リチュアル・オブ・ザ・ナイト』(2019ねん)のKickstarterキャンペーンムービーを公開こうかいし、『月下げっか夜想曲やそうきょく』のしろヒゲドラキュラ伯爵はくしゃく真似まねしながら、大手おおてのメジャーゲーム会社かいしゃがこのジャンルの市場いちば規模きぼひく否定ひていしていることに納得なっとくがいかないとべている[15]

「メトロイドヴァニア」という言葉ことばは、現在げんざい、このジャンルのゲーム、またはこのジャンルの要素ようそつゲームをあらわすのに一般いっぱんてき俗用ぞくようされているが、その言葉ことば自体じたい発祥はっしょうあきらかではないとされる(「ヴァニア」が使つかわれていることからも日本にっぽんではなく欧米おうべい発祥はっしょうした言葉ことばではある)[20]五十嵐いがらしは、この言葉ことば発明はつめいには感謝かんしゃしているものの、自分じぶんがこの言葉ことばつくったわけではないとべている。五十嵐いがらしによると、『月下げっか夜想曲やそうきょく』は見下みおろしがたの『ゼルダの伝説でんせつ方式ほうしきちか探索たんさく目指めざしていたといい、よこスクロール(サイドビュー)という性質せいしつからメトロイドと比較ひかくされて、このようなかばんまれたのだろうと推察すいさつしている[21][22]。また、「キャッスルロイド (Castleroid)」というたようなかばんも、このジャンルをあらわすのに使つかわれることがある。既知きちのすべてのメトロイドヴァニアゲームのカタログこころみたMetroidvania.comという個人こじんサイトを運営うんえいしているビデオゲーム・ジャーナリストのジェレミー・パリッシュ (Jeremy Parish)は[18]、この言葉ことばひろめたのは自分じぶんだが、もともとは1Up.com英語えいごばんでのもと同僚どうりょうであるスコット・シャーキー (Scott Sharkey)が、「メトロイドシリーズの要素ようそれた悪魔あくまじょうドラキュラシリーズちゅうのメトロイドのようなゲーム」を表現ひょうげんするために使つかったことで、この言葉ことばおぼえたのだとみとめている[3]

ゲームプレイの概念がいねん[編集へんしゅう]

「メトロイドヴァニア」という言葉ことばは、一般いっぱんてきには個別こべつ部屋へや区域くいきがある、だい規模きぼ相互そうご接続せつぞくされた単一たんいつのマップを特徴とくちょうとするプラットフォーマーゲームをすことがもっとおおい。最初さいしょからすべての場所ばしょれるわけではなく、武器ぶきかぎなどのアイテムを入手にゅうしゅしたり、あらたなキャラクターの能力のうりょくて、はば障害しょうがいぶつのぞ必要ひつようがある場合ばあいおおい。このアイテムはボスキャラクターまもっていることがおおく、ゲームちゅうにストーリーせいのあるチャレンジが用意よういされている。マップは直線ちょくせんてきではなく、ゲームちゅうなん縦断じゅうだんしなければならないことがおおい。よわいモンスターはレベルのべつ場所ばしょ生息せいそくしており、プレイヤーがその部屋へやもどったときにさい登場とうじょうし、たおすことで体力たいりょく弾薬だんやく経験けいけんることができる[23]

だい規模きぼなゲームでは通常つうじょう、セーブポイントが設置せっちされていたり、マップじょうはなれた場所ばしょにある特定とくてい部屋へやあいだ素早すばや移動いどうできる機能きのうがあったりして、ゲームの後半こうはん面倒めんどうかえしをしなくてもむようになっている。また、あらたな能力のうりょくれることで、移動いどう時間じかん短縮たんしゅくする近道ちかみちができたり、キャラクターの能力のうりょく向上こうじょうさせるための秘密ひみつ発見はっけんしたりすることができる。たとえば、2だんジャンプかべジャンプ能力のうりょくれれば機動きどうりょくし、ちいさな物体ぶったい変身へんしんする能力のうりょくれればせま通路つうろをすりけられるようになる。このように、ひろいワールドマップを探索たんさくし、時間じかんをかけてプレイヤーキャラクターの能力のうりょくたかめていくことに重点じゅうてんいたジャンルである。そのため、メトロイドヴァニアは「プラットフォームアドベンチャーゲーム」とばれることもある[24]

メトロイドヴァニアは、ゲームのレベルやマップが2次元じげんよこスクロールになっていて、プレイヤーキャラクターがレベルない左右さゆう上下じょうげ移動いどうするものが一般いっぱんてきである。これらのゲームは通常つうじょう、2次元じげんグラフィックスを使用しようしてレンダリングされるが、前述ぜんじゅつの『Shadow Complex』や『メトロイド ドレッド』のように、3Dグラフィックスエンジンを使用しようするがプレイヤーのうごきを2次元じげん限定げんていした2.5Dレンダリングのゲームもふくまれる[15]。メトロイドヴァニアの探索たんさくとキャラクター育成いくせいのコンセプトは、のジャンルにも応用おうようできるが、これらのゲームは通常つうじょうメトロイドヴァニアには分類ぶんるいされない[18]たとえば、『メトロイドプライム』3さくは、『メトロイド』とおなじスタイルの探索たんさくプレイをベースにした一人称いちにんしょう視点してんアドベンチャーである。『DARK SOULS』は三人称さんにんしょう視点してんのアクションロールプレイングゲームであるが、メトロイドヴァニアとはことなり、「soft lock[訳語やくご疑問ぎもんてん]」とばれる障害しょうがいぶつ登場とうじょうする。soft lockとは、プレイヤーキャラクターがゲームをはじめたばかりのころは、たおすのがむずかしいが不可能ふかのうではなく、経験けいけん能力のうりょくがるにつれてたおすのが容易よういになる、ボスキャラクターのかたちをした障害しょうがいぶつのことである[4]。また、三人称さんにんしょう視点してんのアクションゲーム『バットマン:アーカム英語えいごばん』シリーズでも、バットマンがあたらしいガジェットをあつめてあたらしいエリアにアクセスするという、メトロイドヴァニアと同様どうようのコンセプトがもちいられている。2017ねん発売はつばいされた『Prey英語えいごばん』は、一人称いちにんしょう視点してん没入ぼつにゅうがたシム英語えいごばんとして開発かいはつされたが、メトロイドヴァニアのレベルデザインのコンセプトをもちいて、プレイヤーが追加ついか道具どうぐ能力のうりょくながら環境かんきょうなん踏破とうはすることをもとめている[25]

五十嵐いがらしは、自身じしんがこのジャンルで重要じゅうよう要素ようそだとしんじていることを説明せつめいした。具体ぐたいてきには、「探索たんさくせい重視じゅうししつつも、ゲームの大筋おおすじ沿ったマップをデザインすること」、「プレイヤーがゲームないのどの位置いちにいるのかをつね把握はあくできるようにすること」などである。こういったことは、ゲームの世界せかい全体ぜんたいのグラフィックテーマ、ゲームの重要じゅうようなポイントとなる視覚しかくじょう特徴とくちょうてきなマイルストーン、全体ぜんたいてきなマップとプレイヤーのステータス情報じょうほう画面がめん、マップない素早すばや移動いどうする手段しゅだんによって実現じつげんできる[12]PolygonのRuss Frushtickは、最近さいきんのメトロイドヴァニアのおおくが、これらの特質とくしつそなえているだけでなく、かならずしもカットシーンや会話かいわたよることなく、世界せかい環境かんきょうつうじて物語ものがたりかた手段しゅだんつけていることを観察かんさつした[26]

2007ねんにParish、Sharkley、WiredのChris Kohlerの3にんが1UP.comでおこなったビデオディスカッションでは、『ドラキュラII のろいの封印ふういん』(1987ねん)、『ドラゴンスレイヤーIV ドラスレファミリー』(1987ねん)、『高橋たかはし名人めいじん冒険ぼうけんとうIV』(1994ねん)など、メトロイドヴァニアに関連かんれんする要素ようそちながら、しんのメトロイドヴァニアとはえないふるいゲームについて議論ぎろんした。このようなゲームは、2Dプラットフォームのゲームせいやパワーアップにもとづく進行しんこうシステムをそなえているものの、当時とうじのゲーム業界ぎょうかいではまだ洗練せんれんされていなかったレベルデザインが不十分ふじゅうぶんであり、『のろいの封印ふういん』の暗号あんごうのようなヒントに代表だいひょうされるように、つぎにどこにけばいいのかをプレイヤーにつたえる情報じょうほうがほとんどないことが原因げんいんであるとしている。また、ゲームが2Dから3Dに移行いこうしたことで、3Dゲームではメトロイドヴァニアのいちめんえなくなり、メトロイドヴァニアの本来ほんらい意味いみうすれてしまったというてんでも、3にん意見いけん一致いっちしていた[27]

分析ぶんせき[編集へんしゅう]

メトロイドヴァニアというジャンルの人気にんきは、プラットフォーマーゲームの学習がくしゅう容易よういであることと、プレイヤーにゲームちゅう成長せいちょうできるキャラクターをあたえられることが関係かんけいしているとわれている[4]独立どくりつけいメトロイドヴァニア作品さくひん開発かいはつしゃおおくは、このジャンルのかくとなる要素ようそとして、探索たんさくがプレイヤーをきつけ、人間にんげん自然しぜん本能ほんのうはたらきかけ、ゲームちゅう発見はっけん自制じせい感覚かんかくをプレイヤーにあたえることをげている。『Shadow Complex』を開発かいはつしたChair EntertainmentのDonald Mustardは、「すぐれたメトロイドヴァニアはプレイヤーがゲームをすすめるうえでのひらめきることができる」とべている。たとえば、最初さいしょたかすぎてとどかないたながあり、プレイヤーが能力のうりょくにつけることで、自力じりきでそのたな到達とうたつする方法ほうほう発見はっけんすることができるのだという[28]

開発かいはつしゃ立場たちばからると、メトロイドヴァニアというジャンルにはメリットがある。このジャンルは、レベルデザインとゲームのストーリーが密接みっせつむすびついており、プレイヤーが没入ぼつにゅうできる世界せかいつく機会きかいあたえてくれる[4]。このようなゲームのレベルデザインは、ゲームのプレイヤーへの挑戦ちょうせん公平こうへいたのしいものであるかどうかを確認かくにんするための挑戦ちょうせんでもあり、この目標もくひょう達成たっせいすることは、開発かいはつしゃにとっての成功せいこうあかしともえる。『オリとくらやみのもり』を開発かいはつしたMoon StudiosのThomas Mahlerは、メトロイドヴァニアでは「プレイヤーがレベルを記憶きおくすることがコアデザインの一部いちぶ」であるため、記憶きおくのこ設定せっていでまとまった世界せかいをデザインすることが重要じゅうようだとべている[18]。このジャンルのだい規模きぼ開発かいはつでは、プレイヤーの能力のうりょくを1つえるだけで、すべてのレベルをとおしてより厳密げんみつにテストする必要ひつようがある。『Ori and the Will of the Wisps』のエグゼクティブプロデューサーであるダニエル・スミスは、「メトロイドヴァニアのゲームをつくることがどれほどむずかしいか、一般いっぱんにはかんがえられていないとおもいます。すべてが相互そうごにつながっていて、ゲームのいちめんえれば、めんにも影響えいきょうおよぼすのは必然ひつぜんなのです」とべている[29]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c IGN USがえらぶベストメトロイドヴァニアのTop 10が公開こうかい!1は『Hollow Knight』で日本にっぽんからは「Bloodstained」、『洞窟どうくつ物語ものがたり』がランクイン”. IGN Japan (2021ねん4がつ7にち). 2021ねん9がつ8にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c d e f 「I Love Metroidvania!」――世界中せかいじゅうのゲーマーをきつける“メトロイドヴァニア”の深奥しんおうなる魅力みりょく”. www.4gamer.net. Aetas (2019ねん12月28にち). 2021ねん9がつ8にち閲覧えつらん
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外部がいぶリンク[編集へんしゅう]