リッピング

リッピング(Ripping)とは、DVDビデオソフトや、音楽おんがくCDなどのデジタルデータをパソコンに取とり込こむことを指さすパソコン用語ようご。

概要がいよう

リッピングは、DVDや音楽おんがくCDなどに記録きろくされているデジタルデータを、そっくりそのままの形かたちまたはイメージファイルとしてパソコンに取とり込こむか、パソコンで扱あつかいやすいデータの形かたちに変換へんかんして、ファイルにすることである。このための変換へんかん用ようソフトウェアも存在そんざいし、リッピングに使用しようするツールをリッパー(Ripper)と呼よぶ。なお同どう語かたりは「切きり取とる、かっぱらう、搾しぼり取とる」等とうを意味いみする英語えいご「Rip」に由来ゆらいする。

この作業さぎょうの結果けっか、作成さくせいしたファイルを用もちいると元もとのメディアを使つかわなくても記録きろくされていた内容ないようを再生さいせいできるので、実質じっしつ的てきに複製ふくせいを制作せいさくする行為こういに当あたる。この複製ふくせい行為こういの是非ぜひに関かんしては後述こうじゅつするが、これを行おこなうことでバックアップとしても利用りようできる一方いっぽうで、より利用りよう方法ほうほうの幅はばが広ひろがることにもなる。

家庭かてい向むけのパソコンにも強力きょうりょくな演算えんざん能力のうりょくを持もつCPUが利用りようされるようになり、また急速きゅうそくにパソコン用よう補助ほじょ記憶きおく装置そうち（ハードディスク）などの大だい容量ようりょう化かがすすんだほか、非常ひじょうにデータサイズを小ちいさくできる優秀ゆうしゅうな非ひ可逆かぎゃく圧縮あっしゅく用ようコーデック（データ圧縮あっしゅく用よう符号ふごう化か処理しょり）が発展はってんした時代じだいより、場所ばしょを取とってかさばるメディアからデータを抜ぬき出だしてパソコンでこれらコンテンツを一元いちげん管理かんりするために利用りようされる。

利用りよう形態けいたい

これらは、ファイルの形かたちで音楽おんがくや映像えいぞう（動画どうが）などといった各種かくしゅ情報じょうほうを扱あつかいやすくするための準備じゅんび段階だんかいであるが、このファイル化かによってさまざまな付加ふか価値かちが発生はっせいする。

1990年代ねんだい中頃なかごろより、パソコンに音楽おんがくをMP3等ひとしに圧縮あっしゅくして保存ほぞんしておき、パソコンやデジタルオーディオプレーヤーから聴きく人ひとが次第しだいに増ふえているが、これらの場合ばあいは音楽おんがくCDが最長さいちょう74分ふん（変則へんそく的てきなものは80分ふん前後ぜんこう）までしか1枚まいのメディアで音楽おんがくを再生さいせいできないのに対たいし、パソコンに蓄たくわえたMP3データは、適切てきせつな連続れんぞく再生さいせい用ようソフトウェアを利用りようすることで、遥はるかに長ながく連続れんぞくした再生さいせいが可能かのうである。またデジタルオーディオプレーヤーでは、小型こがたで携帯けいたい性せいに優すぐれ、また長時間ちょうじかん再生さいせいが可能かのうなプレーヤーも登場とうじょうしているため、やはり便利べんりである。

また法的ほうてきな問題もんだいを別べつにすると、コンピュータのファイルは他たのメディア（CD-RやDVD-Rなど）に書かき込こんだり、コンピュータネットワーク（インターネットなど）を使つかってやり取とりできるため、このファイル化かの利点りてんは広範囲こうはんいに及およぶ。

著作ちょさく権けん上じょうの問題もんだい

リッピングは本来ほんらい、コンピュータへのデータの読よみ込こみを指さす。このため著作ちょさく権けんの上うえでは再生さいせい用よう器機ききへの情報じょうほうの伝達でんたつ（読よみ取とり）とも言いえるほか、従来じゅうらいより著作ちょさく権けん法ほう上じょうでは容認ようにんされていた音楽おんがく・映像えいぞう媒体ばいたいの購入こうにゅう者しゃやレンタルビデオで借かりた側がわの私的してきな複製ふくせいによる利用りようの範疇はんちゅうだとも考かんがえられる 。なおレンタルでも、著作ちょさく使用しよう料りょうはレンタル代金だいきんに含ふくまれ、視聴しちょうや私的してきな複製ふくせいの作成さくせいまでは著作ちょさく使用しよう料りょうの範疇はんちゅうまでは容認ようにんされると解ほぐされる意見いけんと、私的してき複製ふくせいに関かんする部分ぶぶんまでの著作ちょさく使用しよう料りょうは含ふくまれていないとする意見いけんがある。

ただ、この問題もんだいはデジタルデータの複製ふくせいがオリジナルからほとんど劣化れっかさせずに可能かのうである点てんや二に次じ複製ふくせい以降いこうはほぼ無制限むせいげんに同どう一いち情報じょうほうの複製ふくせいが可能かのうであるため、議論ぎろんを呼よんでいる（→デジタル著作ちょさく権けん管理かんり）。また、リッピングに関連かんれんして海賊版かいぞくばん問題もんだいなども発生はっせいしており、これがことさら著作ちょさく権けん団体だんたいなどの反発はんぱつを招まねいている。

権利けんり団体だんたい側がわはリッピングが困難こんなんになるように様々さまざまな工夫くふう（詳くわしくはコピーコントロールCD参照さんしょう）をしているが、いたちごっこの様相ようそうを呈ていしている。このためコピーガード技術ぎじゅつ（プロテクトとも。音楽おんがくCDのSCMSやDVDのCSSなど）の回避かいひも問題もんだい視しされており、企業きぎょうの作つくったコピーガードを外はずす方法ほうほうを技術ぎじゅつ論文ろんぶんとして発表はっぴょうしたケースでは、不法ふほうな多数たすうの海賊版かいぞくばんを生しょうじさせやすくなるとし、ヨーロッパにおいて論文ろんぶんを公開こうかいした人物じんぶつを相手取あいてどり、裁判さいばん沙汰ざたになった。

その一方いっぽうで、コピーコントロール技術ぎじゅつが結果けっか的てきに消費しょうひ者しゃの権利けんりを侵害しんがいしているとして、フランスで消費しょうひ者しゃ団体だんたいがEMI Music Franceを相手取あいてどり訴訟そしょうを起おこしたケースでは、消費しょうひ者しゃ団体だんたいが勝訴しょうそしている。ただし、この裁判さいばんの論点ろんてんは、再生さいせいに関かかわる制限せいげんについて十分じゅうぶんに情報じょうほうを提供ていきょうしないことは、CDの実質じっしつ的てきな品質ひんしつに関かんする欺瞞ぎまんにあたるという点てんにあり、製品せいひんの外そと箱ばこに適切てきせつなラベルを貼はることで問題もんだいは解決かいけつするとされている。

リッピングの原則げんそく違法いほう化か

そもそも1999年ねん6月23日にち公布こうふの著作ちょさく権けん法ほうを改正かいせいする法律ほうりつ（平成へいせい11年ねん法律ほうりつ第だい77号ごう）により、「技術ぎじゅつ的てき保護ほご手段しゅだん」を回避かいひして複製ふくせいを可能かのう化かし、技術ぎじゅつ的てき保護ほご手段しゅだんの回避かいひを行おこなう装置そうちやソフトウェアの公衆こうしゅうへの譲渡じょうと等とうをし、または著作ちょさく物ぶつ等とうに付ふされる権利けんり管理かんり情報じょうほうの除去じょきょ等とうをした場合ばあいに著作ちょさく権けん等とうを侵害しんがいする行為こういとみなされることとなった。（このうち、刑事けいじ罰ばつを伴ともなうのは回避かいひ装置そうち等とうの譲渡じょうと等とうのみ）

上記じょうき改正かいせいにおいては「技術ぎじゅつ的てき保護ほご手段しゅだん」は複製ふくせいを抑止よくしするための手段しゅだんである事ことが要件ようけんであり、DVDに用もちいられるCSSは暗号あんごう化かのみであって複製ふくせい自体じたいは抑止よくししていない事ことから、CSSの暗号あんごう化か解除かいじょ行為こうい自体じたいは著作ちょさく権けん法ほうによって規制きせいされていなかった。つまり私的してき使用しようの目的もくてき上じょう、DVDを改変かいへんせずに複製ふくせいし、複製ふくせいしたものを暗号あんごう化か解除かいじょする事ことにより、実質じっしつ的てきにリッピングが規制きせいされない状態じょうたいが続つづいていた。なお、CSSの暗号あんごう化か鍵かぎは解析かいせきされ市中しちゅうに暗号あんごう化か解除かいじょソフト「DeCSS」等とうが出回でまわっていたが、上記じょうき改正かいせい時点じてんにおいてはDeCSS等とうの譲渡じょうと等とうは合法ごうほうであった。

2012年ねん6月がつ20日はつか成立せいりつの著作ちょさく権けん法ほうを改正かいせいする法律ほうりつにおいては（同年どうねん10月がつ1日にち施行しこう）、上記じょうき「技術ぎじゅつ的てき保護ほご手段しゅだん」の範疇はんちゅうに「特定とくていの変換へんかん」すなわち暗号あんごう化か技術ぎじゅつを含ふくめるように要件ようけんが拡大かくだいされ、これによってDVDのCSSやBlu-rayのAACS等ひとしの暗号あんごう型がた技術ぎじゅつも、著作ちょさく権けん法ほう上じょうの対象たいしょうとなる「技術ぎじゅつ的てき保護ほご手段しゅだん」に追加ついかされた。これに伴ともない、CSS等とうの保護ほご技術ぎじゅつを回避かいひしてのDVDのリッピングは私的してき複製ふくせいの対象たいしょう外がいとなり違法いほう行為こういとなった。

これによって、私的してき使用しようの目的もくてきであっても、DeCSS等とうによりDVDをリッピングする事ことが違法いほうとなるとともに、DeCSS等とうの譲渡じょうと等とうが刑事けいじ罰ばつを伴ともなって規制きせいされることとなった。

2015年ねん8月がつには、「DVD Shrink 日本語にほんご版ばん」をサーバにアップロードし、そのサイトへのリンクを公開こうかいしていた業者ぎょうしゃが著作ちょさく権けん法ほう違反いはんの幇助ほうじょで検挙けんきょされている。

なお、CDのSCMS回避かいひについては1999年ねんの著作ちょさく権けん法ほう改正かいせい以降いこうより議論ぎろんがあるが、SCMS対応たいおう機器ききや対応たいおうソフトウェアの複製ふくせい抑止よくしを回避かいひすると違法いほうであるのはともかく、SCMS非ひ対応たいおうの機器きき・ソフトウェアを用もちいた場合ばあいに違法いほうとする主張しゅちょうは、制度せいど側がわや利害りがい関係かんけい者しゃからは見みられない。

関連かんれん項目こうもく

• 著作ちょさく権けん
• 海賊版かいぞくばん
• コピーガード
• コピーコントロールCD
• DVDリッパー
• 自炊じすい (電子でんし書籍しょせき)