リトアニア独立どくりつ革命かくめい

リトアニア独立どくりつ革命かくめい（リトアニアどくりつかくめい）は、20世紀せいき後期こうきにソビエト連邦れんぽうの支配しはい下かにあったリトアニアの独立どくりつ運動うんどうとその実現じつげん。リトアニアの独立どくりつ運動うんどうはバルト三さん国こく全体ぜんたいの独立どくりつ運動うんどうを主導しゅどうし、最終さいしゅう的てきにソビエト連邦れんぽうの崩壊ほうかいに大おおきな役割やくわりを果はたした。

背景はいけい

リトアニアは第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんの後のち、1920年ねんに独立どくりつ共和きょうわ国こくを形成けいせいしていたが、1940年ねんにソ連それんに併合へいごうされ、ソビエト連邦れんぽうを構成こうせいするリトアニア共和きょうわ国こくとなった。共和きょうわ国こくとは名なばかりで、ソ連それん共産党きょうさんとう中央ちゅうおう委員いいん会かいの独裁どくさい・中央ちゅうおう集権しゅうけん体制たいせいに組くみ込こまれ、実質じっしつ的てきには独立どくりつも自治じちもない状態じょうたいであった。

1985年ねん3月がつ、ミハイル・ゴルバチョフがソ連それん共産党きょうさんとう書記しょき長ちょう（実質じっしつ的てきな最高さいこう権力けんりょく者しゃ）になり、ペレストロイカ（改革かいかく）が始はじまると、リトアニアでも自由じゆう化かの機運きうんが生しょうじた。

サユディス結成けっせい

1988年ねん6月3日にち、35人にんの知識ちしき人じん（共産きょうさん党員とういんも非ひ共産きょうさん党員とういんもまじっていた）が民族みんぞく組織そしき「サユディス」（Sąjūdis、「運動うんどう」の意い）の草創そうそうグループを組織そしきした。当初とうしょは独立どくりつは意識いしきせず、ゴルバチョフ政権せいけんのペレストロイカ、グラスノスチ、民主みんしゅ化かを支持しじし、自治じちを求もとめてゆくものであった。この年とし、4月がつにはエストニア、6月がつにはラトビアでそれぞれ人民戦線じんみんせんせんが組織そしきされた。サユディスの議長ぎちょうには音楽おんがく学者がくしゃでリトアニア国立こくりつ音楽おんがく学校がっこう教授きょうじゅのヴィタウタス・ランズベルギスが選出せんしゅつされた。大だい規模きぼ集会しゅうかいが開ひらかれ、地下ちか出版しゅっぱんの新聞しんぶんも多おおく刊行かんこうされた。リトアニア語ごの公用こうよう語ご化か、独どくソ不可侵ふかしん条約じょうやくの秘密ひみつ議定ぎてい書しょ（ドイツとソ連それんによるバルト三さん国こく併合へいごうの合意ごうい）の暴露ばくろなど、民族みんぞく的てきな要求ようきゅうが出だされ、次第しだいに運動うんどうは独立どくりつを志向しこうするようになっていった。

バルトの道みち

リトアニアの独立どくりつ運動うんどうは、ラトビア、エストニアなどと連携れんけいする（歌うたう革命かくめい）。独どくソ不可侵ふかしん条約じょうやく50周年しゅうねんを迎むかえた1989年ねん8月がつ23日にちにはヴィリニュス、リガ、タリンを結むすんで600キロメートルにわたる、200万まん人にんの人間にんげんの鎖くさり（バルトの道みち）が形成けいせいされ、世界せかいに独立どくりつを訴うったえた。

一方いっぽう、アルギルダス・ブラザウスカス第だい一いち書記しょきが主導しゅどうするリトアニア共産党きょうさんとうも12月20日にち、ソ連それん共産党きょうさんとうからの分離ぶんりを宣言せんげん、一いち党とう独裁どくさいを放棄ほうきする。

独立どくりつ宣言せんげん

1990年ねん3月4日にち、リトアニア共和きょうわ国こく最高さいこう会議かいぎ（国会こっかいにあたる）の代議員だいぎいん選挙せんきょが50年ねんぶりに自由じゆうな形かたちで行おこなわれる（1990年ねんリトアニア最高さいこう会議かいぎ選挙せんきょ）。サユディスが選挙せんきょに圧勝あっしょうし、非ひ共産きょうさん党員とういんとしてはじめて共和きょうわ国こく最高さいこう会議かいぎ議長ぎちょうにランズベルギスが就任しゅうにんする。

3月11日にち、リトアニア最高さいこう会議かいぎはソ連それん連邦れんぽう構成こうせい共和きょうわ国こくの中なかでいち早はやく独立どくりつを宣言せんげん。

3月15日にち、ソ連邦それんぽう人民じんみん代議員だいぎいん大会たいかいは独立どくりつ宣言せんげんの撤回てっかいを要求ようきゅう。さらに、ソ連それん政府せいふは4月がつ17日にち、リトアニアに対たいする経済けいざい封鎖ふうさを行おこなった。一方いっぽう、独立どくりつに最低さいていでも5年ねんはかかる連邦れんぽう離脱りだつ法ほうを計画けいかくすることにより、独立どくりつの動うごきを牽制けんせいした。経済けいざい制裁せいさいによりインフレ率りつは100％を記録きろくし、特とくにエネルギー不足ふそくは深刻しんこくであったが、共和きょうわ国こくは独立どくりつ宣言せんげんの撤回てっかいを拒否きょひした。

流血りゅうけつの一いち月がつ

詳細しょうさいは「血ちの日曜日にちようび事件じけん (リトアニア)」を参照さんしょう

分離ぶんり独立どくりつの動うごきを加速かそくするバルト三さん国こくに対たいし、ソ連それん政府せいふは軍事ぐんじ的てき圧力あつりょくをかけるようになる。9月にはラトビアに対たいして軍事ぐんじ介入かいにゅうする。そして、リトアニアへの介入かいにゅうも準備じゅんびされる。

1991年ねん1月がつ8日にち、KGBの特殊とくしゅ部隊ぶたいアルファ部隊ぶたいを含ふくむソ連それん軍ぐんがリトアニアに投入とうにゅうされる。

1月がつ10日とおか、ゴルバチョフはリトアニア最高さいこう会議かいぎに対たいし、ソ連それん憲法けんぽうの回復かいふくと反はん憲法けんぽう的てきな立法りっぽうの撤回てっかいを最後さいご通牒つうちょう的てきに要求ようきゅうする。

1月がつ11日にち、軍事ぐんじ介入かいにゅうが始はじまる。

• 11時じ50分ふん、ヴィリニュスのリトアニア国防省こくぼうしょうを占拠せんきょ。
• 12時じ00分ふん、ヴィリニュス出版しゅっぱんセンターを包囲ほうい・占拠せんきょ。市民しみんに対たいし、実弾じつだんを発砲はっぽうし始はじめる。数すう人にん負傷ふしょう。
• 15時じ00分ふん、リトアニア共産党きょうさんとう中央ちゅうおう委員いいん会かいの建物たてもので記者きしゃ会見かいけん。反はん独立どくりつ派はの共産党きょうさんとうが「リトアニア・ソビエト社会しゃかい主義しゅぎ共和きょうわ国こく国家こっか救済きゅうさい委員いいん会かい」の設立せつりつを宣言せんげんし、自みずからが唯ただ一いち合ごう法的ほうてきな政府せいふであると述のべた。
• 16時じ40分ふん、リトアニア共和きょうわ国こくのサウダルガス外相がいしょう、ソ連それん外務省がいむしょうにソ連それん軍ぐんの暴力ぼうりょく行為こういについて懸念けねんを表明ひょうめい。
• 21時じ00分ふん、テレビ中継ちゅうけい基地きち占拠せんきょ。

1月がつ12日にち

• リトアニア最高さいこう会議かいぎは徹夜てつやで審議しんぎ。ランズベルギス、三さん度どゴルバチョフに電話でんわするが通つうぜず。
• リトアニア全土ぜんどから国民こくみんが集あつまり、最高さいこう会議かいぎビル、ラジオ・テレビ局てれびきょく、テレビ塔てれびとう、主要しゅよう電話でんわ局きょくなどの重要じゅうよう拠点きょてんの守備しゅびに当あたる。

1月がつ13日にち

• 1時じ50分ふん、戦車せんしゃおよび兵士へいしがテレビ塔てれびとうを守備しゅびする市民しみんに発砲はっぽう、また戦車せんしゃが市民しみんの列れつに突入とつにゅう。13人にんが死亡しぼう。ソ連それん軍ぐん兵士へいしの1人ひとりが味方みかたの発砲はっぽうで死亡しぼう。
• 2時じ00分ふん　ラジオ・テレビ局てれびきょくを襲撃しゅうげき。生放送なまほうそう中ちゅうのテレビが中断ちゅうだんされる。最後さいごの映像えいぞうはカメラに向むかってくる兵士へいしの姿すがたであった。
• この2回かいの襲撃しゅうげきが行おこなわれている中なか、独立どくりつを支持しじする大だい群衆ぐんしゅうが最高さいこう会議かいぎビル周囲しゅういに集あつまる。夜よるには2万まん人にん、朝あさには5万まん人にんに達たっした。臨時りんじの礼拝れいはい所しょが最高さいこう会議かいぎビルの内外ないがいに設もうけられ、祈いのりがささげられた。人々ひとびとは独立どくりつのスローガンを叫さけび、民族みんぞくの歌うたを歌うたった。軍用ぐんようトラックや戦車せんしゃの車列しゃれつが近ちかくまで来きたが、攻撃こうげきはしなかった。

この流血りゅうけつの直後ちょくご、リトアニア最高さいこう会議かいぎは全ぜんソビエトと西側にしがわ世界せかいに向むかって、文書ぶんしょで声明せいめいを出だした。それは攻撃こうげきを非難ひなんし、外国がいこく政府せいふに対たいし、ソ連それんが主権しゅけん国家こっかに対たいする侵略しんりゃく行為こういを始はじめたことを認みとめるよう求もとめるものであった。

このニュースに対たいし、ノルウェー政府せいふは国連こくれんに訴うったえを起おこした。また、ポーランド政府せいふはリトアニア国民こくみんとの連帯れんたいを表明ひょうめいし、ソ連それん軍ぐんの行為こういを非難ひなんした。キエフ（キーウ）、タリン、リガなど多おおくの都市としでリトアニア支持しじの集会しゅうかいが開ひらかれた。1月13日にち以後いご、占領せんりょうは続つづいたが、大おおきな衝突しょうとつはなかった。

西側にしがわの報道ほうどうが入はいってくると、ゴルバチョフは厳きびしい立場たちばに立たたされた。2月4日にち、アイスランドがリトアニアの独立どくりつを承認しょうにんし、外交がいこう関係かんけいを樹立じゅりつした。

ゴルバチョフは「労働ろうどう者しゃと知識ちしき人じんがリトアニア最高さいこう会議かいぎに反はんソビエト放送ほうそうへの反対はんたいを訴うったえたところ暴行ぼうこうを受うけたので、彼かれらがソビエト軍ぐんに保護ほごを求もとめた」と釈明しゃくめいし、ゴルバチョフ自身じしんをはじめ、国防省こくぼうしょうも内務省ないむしょうも軍ぐんに武力ぶりょく行使こうしの命令めいれいは出だしていなかったと述のべた。

リトアニアで2月がつ9日にちに行おこなわれた独立どくりつの是非ぜひを問とう住民じゅうみん投票とうひょうでは、9割わりが独立どくりつに賛成さんせいした。

独立どくりつ達成たっせい

8月がつにモスクワで起おきたクーデターの失敗しっぱいにより、ソ連それん共産党きょうさんとうの権威けんいは完全かんぜんに失墜しっついし、ウクライナなどの連邦れんぽう構成こうせい共和きょうわ国こくも相次あいついで独立どくりつを宣言せんげんした。1991年ねん9月2日にち、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくがバルト三さん国こくを承認しょうにん。こうした流ながれに抗こうしきれず、1991年ねん9月6日にち、ソ連それん国家こっか評議ひょうぎ会かいはリトアニア、ラトビア、エストニアの独立どくりつを承認しょうにんした。それらの出来事できごとが、同年どうねん末まつのソビエト連邦れんぽうの崩壊ほうかいへと繋つながって行いく。