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ロタキサン

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ロタキサンのしき

ロタキサン (えい: rotaxane) とは、だい環状かんじょう分子ぶんし(リング)のあな棒状ぼうじょう分子ぶんしじく)が貫通かんつうした構造こうぞう分子ぶんし集合しゅうごうたいである。

概要がいよう

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ロタキサン (えい: rotaxane)は、だい環状かんじょう分子ぶんし棒状ぼうじょう分子ぶんし貫通かんつうし、じくりょう末端まったんかさたか部位ぶい結合けつごうさせることで、立体りったい障害しょうがいでリングがじくからけなくなったものである。そのかさたか部位ぶいは、ストッパーまたはキャップ末端まったんもとばれる。ストッパーがない場合ばあいや、ストッパーがあっても嵩高かさだかさが不十分ふじゅうぶん場合ばあいは、リングとじくかれることがあり、なずらえロタキサン (えい: pseudorotaxane) とばれ、ロタキサンとは区別くべつされる。ロタキサンの名前なまえラテン語らてんごの rota ()と axis (じく)に由来ゆらいする。ちょう分子ぶんし化学かがくあつかわれる分子ぶんしである。環状かんじょう分子ぶんしじくじょう分子ぶんしども有機ゆうき分子ぶんしによって構成こうせいされることが一般いっぱんてきである。また天然てんねんぶつなかにロタキサン構造こうぞうゆうする分子ぶんし存在そんざいすることもわかっている。

一般いっぱんにリング分子ぶんしおよびじく分子ぶんしかず合計ごうけいを "[ ]" のなかれて「[n]ロタキサン」とあらわす。たとえば「[2]ロタキサン」はリング1個いっこじく1個いっこ合計ごうけい2から構成こうせいされていることをしめ[1]。「じく1個いっことリングじゅうすう」など、多数たすう構成こうせい分子ぶんしからロタキサンが形成けいせいされる場合ばあいポリロタキサン (えい: polyrotaxane) とばれる。

環状かんじょう分子ぶんしとしては、シクロデキストリンクラウンエーテルシクロファンカリックスアレーンククルビットウリル、ピラーアレーン、環状かんじょうアミドひとしもちいられる。じく分子ぶんしとしては、ポリエチレングリコールアルキルくさり、アミド、アンモニウムなどがもちいられることがおおい。

合成ごうせい

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人工じんこうのロタキサンは1967ねんにハリソンらによって合成ごうせいされたが[2]、このときは環状かんじょう分子ぶんしなか偶然ぐうぜんじくじょう分子ぶんし貫通かんつうすることを期待きたいして合成ごうせいしたものであり、おさむりつはきわめてひくく、なかなかこの分野ぶんや研究けんきゅう発展はってんしなかった。その合成ごうせい化学かがくちょう分子ぶんし化学かがく、そして分析ぶんせき化学かがくとく質量しつりょう分析ぶんせき)の発展はってんともない、徐々じょじょにロタキサンの効率こうりつてき合成ごうせいほう進歩しんぽしていった。

初期しょきにおいては、環状かんじょう分子ぶんし前駆ぜんくたいじくじょう分子ぶんし前駆ぜんくたい共有きょうゆう結合けつごうによって連結れんけつしておいて、ロタキサン構造こうぞう形成けいせいさせたのちでこれらをはな手法しゅほうがもちいられた。

ロタキサン構造こうぞう形成けいせいは、一般いっぱんエントロピー減少げんしょうして不利ふりである。ロタキサンを形成けいせいさせるためにはリングとじく分子ぶんしあいだなんらかの相互そうご作用さようはたらかせて合成ごうせいする方法ほうほう効率こうりつてきであり、今日きょうではこの分子ぶんしあいだ相互そうご作用さようをもちいる手法しゅほうによって、ほとんどのロタキサンが合成ごうせいされている。棒状ぼうじょう分子ぶんし環状かんじょう分子ぶんしわせによりロタキサン形成けいせいしゅたるドライビングフォースはことなり、よくもちいられる相互そうご作用さようとして、水素すいそ結合けつごうスタッキングはい結合けつごう疎水そすいせい相互そうご作用さようなどがある。

はじめて分子ぶんしあいだ相互そうご作用さようにもとづくロタキサンの合成ごうせいおこなったのは荻野おぎのひろしで、このときはαあるふぁおよびβべーたーシクロデキストリンとメチレンくさりあいだはたら疎水そすいせい相互そうご作用さよう利用りようして、なずらえロタキサンを溶液ようえきちゅう発生はっせいさせたのちじくじょう分子ぶんしりょう末端まったんにコバルト錯体さくたいはいさせて、末端まったん封鎖ふうさする方法ほうほうであった[3]

合成ごうせい戦略せんりゃく発展はってんをつづけており、初期しょきにおいてもちいられた、Threading-followed-by-enda-capping(末端まったんふうとめほう)やクリッピングほうくわえて、近年きんねんでは環状かんじょう分子ぶんしないあな触媒しょくばい反応はんのうをおこなって、ダンベルがた分子ぶんし合成ごうせいする"Active metalほう"も開発かいはつされている。

ククルビットウリルもシクロデキストリンと同様どうよう疎水そすいせいうちあなゆうする環状かんじょう化合かごうぶつであり、Kimoon Kimによって選択せんたくてき合成ごうせいほう開発かいはつされて以来いらいかれらのグループによって飛躍ひやくてき研究けんきゅうすすめられた。ただし、環状かんじょう分子ぶんし修飾しゅうしょく困難こんなんであるという特徴とくちょうもある。 ピラーアレーンは近年きんねん日本人にっぽんじん化学かがくしゃによって開発かいはつされた新規しんきホスト分子ぶんしであり、ロタキサンにもよくもちいられている。

発展はってん応用おうよう

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シクロデキストリンは、疎水そすいせいうちあなゆうする環状かんじょう分子ぶんしであり、水溶すいようなかだちちゅうにおいて疎水そすいせい分子ぶんし性質せいしつ利用りようする。したがって、一般いっぱんてきにシクロデキストリンをもちいるロタキサンの合成ごうせい水溶すいようなかだちちゅうで、疎水そすいせいじく分子ぶんしとおこなう。原田はらだあきららはじく分子ぶんしとして高分子こうぶんし着目ちゃくもくし、シクロデキストリンとポリエチレングリコールとをもちいることで、ポリロタキサン世界せかい先駆さきがけて合成ごうせいした[4]。この研究けんきゅうナノチューブへの展開てんかいもなされている。また、導入どうにゅうする環状かんじょう分子ぶんしとして、シクロデキストリンのりょうからだをもちいたかんどうゲル合成ごうせいが、伊藤いとう耕三こうぞうらを中心ちゅうしんにおこなわれている。かんどうゲルは、その応用おうよう研究けんきゅうすすめられ、携帯けいたい電話でんわ自動車じどうしゃ表面ひょうめん塗装とそうとして実用じつようされるにまでいたっている。 類似るいじのシクロデキストリンとポリエチレングリコールを基盤きばんとするロタキサンおよびポリロタキサンの研究けんきゅうおおい。

クラウンエーテルカチオンせい分子ぶんしをそのうちあな性質せいしつがある。したがってクラウンエーテルはカチオンせいじくじょう分子ぶんしとロタキサンを形成けいせいする傾向けいこうがある。これはイオンせい相互そうご作用さよう利用りようする方法ほうほうであるので、一般いっぱんてきてい極性きょくせい溶媒ようばいちゅう反応はんのうおこなわれる場合ばあいおおい。広範こうはん研究けんきゅうおこなっているのはフレイザー・ストッダートらであり、かれらは24いんたまきのクラウンエーテルが、きゅうアンモニウムしおてい極性きょくせい溶媒ようばいちゅう効率こうりつよくつつみせっすることを利用りようして、この部分ぶぶん構造こうぞうもちいたより高次こうじのロタキサン合成ごうせい達成たっせいしている。代表だいひょうてきおう用例ようれいとして、分子ぶんしエレベーターがある。シクロデキストリンの場合ばあい同様どうよう概念がいねんによって、ゲルの合成ごうせいにも利用りようされている。

現在げんざい報告ほうこくされているもっともちいさなロタキサンは、21いんたまきクラウンエーテルときゅうアンモニウムしおによって形成けいせいされたものである。

シクロファン(環状かんじょう分子ぶんしなか芳香ほうこうたまきゆうする化合かごうぶつ総称そうしょう)で、ロタキサン合成ごうせいによくもちいられるものとしては、パラコートがたばれる、ビスビオロゲン環状かんじょう分子ぶんしがある。この分子ぶんしはおもにπぱいπぱいスタッキングによって、電子でんし不足ふそく芳香ほうこうたまきつつめせっする特徴とくちょうがあるので、これをもちいたロタキサン合成ごうせいがよくおこなわれている。第一人者だいいちにんしゃはストッダートであり、かれはこの分子ぶんしのことをBlue boxとんでいる。代表だいひょうてきおう用例ようれいとして、分子ぶんしシャトル分子ぶんしモーター分子ぶんしバルブ分子ぶんし筋肉きんにくなどがある。カテナンれいではオリンピーダンなどがある。

ロタキサンやカテナンは、構成こうせい分子ぶんし相対そうたいてき位置いち関係かんけいによって複数ふくすう状態じょうたいちうる分子ぶんしであるため、たん分子ぶんしスイッチとして分子ぶんしコンピュータへの応用おうよう期待きたいされている。またドラッグデリバリーシステム分子ぶんしチューブ分子ぶんし筋肉きんにくゲル触媒しょくばい機能きのうせい表面ひょうめん分子ぶんしバルブなどへの応用おうよう研究けんきゅうもなされている。また、棒状ぼうじょう分子ぶんしじょう環状かんじょう分子ぶんし移動いどうできることに着目ちゃくもくした分子ぶんしシャトルがあり、分子ぶんしマシンとして研究けんきゅうされている。分子ぶんしシャトルをはじめて発表はっぴょうしたのはストッダートらであり、1991ねん米国べいこく学会がっかい発表はっぴょうされた[5]。その、1994ねんネイチャーにその制御せいぎょ発表はっぴょうされて以来いらい[6]おおくのグループによって研究けんきゅうすすめられている。はじめての米国べいこく学会がっかい発表はっぴょうされた分子ぶんしシャトルは、じくじょう分子ぶんしうえ環状かんじょう分子ぶんしねつ運動うんどうするだけのものであったが、それが応用おうようされてNature投稿とうこうされたものでは、じくじょう分子ぶんし電気でんき化学かがくてきあるいは化学かがくてき酸化さんか還元かんげん反応はんのう駆動くどうりょくとして、環状かんじょう分子ぶんしじくじょう分子ぶんしたいする位置いち関係かんけい制御せいぎょされている。現在げんざいでは可視かしこう照射しょうしゃすると、ロタキサンのじくじょう分子ぶんしじょう環状かんじょう分子ぶんし左右さゆうにシャトリングしつづける分子ぶんしモーターの研究けんきゅうにまで発展はってんしている。この分子ぶんしモーターは、可視かしこう照射しょうしゃめると環状かんじょう分子ぶんし動的どうてき挙動きょどう停止ていしして、あるステーションじょう環状かんじょう分子ぶんし位置いちするようになる。 これら以外いがいにもおおくの分子ぶんしシャトルが今日きょうでは合成ごうせいされており、それを駆動くどうする外部がいぶ刺激しげきとしては、pH、ひかり照射しょうしゃ電圧でんあつの引加、添加てんかぶつ溶媒ようばい極性きょくせいなど、様々さまざまなものがもちいられている。

参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ 「リング1個いっこじく2」のものや「リング2じく1個いっこ」のものは、ともに[3]ロタキサンである。
  2. ^ Harrison, I. T.; Harrison, S. "Synthesis of a stable complex of a macrocycle and a threaded chain" J. Am. Chem. Soc. 1967, 89, 5723-5724. DOI: 10.1021/ja00998a052
  3. ^ Ogino,H. "Relatively high-yield syntheses of rotaxanes. Syntheses and properties of compounds consisting of cyclodextrins threaded by .alpha, omega-diaminoalkanes coordinated to cobalt(III) complexes" J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 1303-1304. DOI: 10.1021/ja00395a091
  4. ^ Harada, A.; Li, J.; Kamachi, M. Nature 1992, 356(26), 325-327. "The molecular necklace: a rotaxane containing many threaded αあるふぁ-cyclodextrins"
  5. ^ Anelli, P. L.; Spencer, N.; Stoddart, J. F. "A molecular shuttle." J. Am. Chem. Soc. 1991, 113, 5131-3. DOI: 10.1021/ja00013a096
  6. ^ Bissell, R. A.; Cordova, E.; Kaifer A. E.; Stoddart, J. F. "A chemically and electrochemically switchable molecular device". Nature 1994, 369, 133–137.

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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