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分子ぶんしマシン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
しょう胞体分泌ぶんぴつされるタンパク質たんぱくしつてているリボソーム

分子ぶんしマシン(ぶんしマシン)、もしくは 分子ぶんし機械きかい(ぶんしきかい、えい: molecular machine)は、ミクロスケール、あるいはナノスケールで制御せいぎょされた機械きかいてきうごきをこす分子ぶんし、あるいは分子ぶんしふく合体がったいである。

分子ぶんし機械きかい分類ぶんるいれい[編集へんしゅう]

おおきくけて、生体せいたい分子ぶんし機械きかい合成ごうせい人工じんこう分子ぶんし機械きかいがある。

生体せいたい分子ぶんし機械きかい[編集へんしゅう]

生体せいたい分子ぶんし機械きかい生体せいたいない存在そんざいするタンパク質たんぱくしつで、分子ぶんしモーターともばれる。方向ほうこうせいのあるうごきによってなんらかの機能きのう発現はつげんする。

これらのようにあきらかな方向ほうこうせいち、比較的ひかくてきおおきなうごきをこす分子ぶんしモーターでなくとも、おおくの酵素こうそはそのひろ領域りょういきでのコンホメーション変化へんかこることで機能きのう発現はつげんしている。このことから、一般いっぱん酵素こうそなどのタンパク質たんぱくしつのことを分子ぶんし機械きかいぶこともある。

合成ごうせい分子ぶんし機械きかい[編集へんしゅう]

合成ごうせい分子ぶんし機械きかい有機ゆうき化学かがくてき合成ごうせいされた分子ぶんしマシンであり、ひかりねつpH変化へんか酸化さんか還元かんげんなどの外部がいぶ刺激しげきおうじて分子ぶんし構造こうぞう変化へんかする。ナノテクノロジーなか化学かがくてき領域りょういき一角いっかくめるものとして注目ちゅうもくされている。

  • ロタキサンカテナンといったちょう分子ぶんしてきモチーフをもちい、リングのひもじょう位置いち(ロタキサンの場合ばあい)あるいは、ふたつのリング(カテナンの場合ばあい)の相対そうたいてき位置いち刺激しげきおうじて変化へんかするもの
  • 分子ぶんしない一部分いちぶぶん部分ぶぶんたいして一方向いちほうこう回転かいてんする、あるいは回転かいてんのon/offを制御せいぎょできるもの
  • ゲスト分子ぶんし・イオンにたいする親和しんわせい刺激しげきひかり酸化さんか還元かんげんだいさん物質ぶっしつ添加てんかなど)におうじたホスト分子ぶんし構造こうぞう変化へんかによって変化へんかするもの
  • ゲストとしてとらえたイオンのられた位置いちが、刺激しげきおうじて変化へんかするもの

といったれい実現じつげんされている。

具体ぐたいてきには

  • シャトル
    • ロタキサンもちい、pH変化へんかひかり照射しょうしゃなどによって環状かんじょう部位ぶいがひもじょう部位ぶいうえ前後ぜんごうごく。
  • ギア
  • ピンセット(tweezer)
  • 回転かいてんドア(turnstile)
  • ローター
    • 化学かがく物質ぶっしつ、あるいはひかりねつ刺激しげきによって一方向いちほうこう回転かいてんする「分子ぶんしローター」がつくられている。

そもそも有機ゆうき分子ぶんし多少たしょうなりともコンフォメーション自由じゆうっており、分子ぶんし形状けいじょう(=分子ぶんしないでの原子げんし相対そうたい座標ざひょう)を変化へんかさせることができるため、合成ごうせい分子ぶんし機械きかい定義ていぎづける条件じょうけんさだまりきっていないめんもある。現時点げんじてんでは、

  • 刺激しげき応答おうとうして、明確めいかく方向ほうこうせいうごきをこす。
  • おな動作どうさかえしてこすことができる(2種類しゅるい・あるいはそれ以上いじょう複数ふくすう状態じょうたいあいだ周期しゅうきてき遷移せんいできる)。
  • うごきがなんらかの分光ぶんこうほうによって観測かんそくできる。

という性質せいしつ分子ぶんし分子ぶんし機械きかいぶことがおおい。(たとえば、液体えきたいトルエンいち分子ぶんし場合ばあいメチルもとベンゼンたまきたいして回転かいてんしているはずであるが、一方向いちほうこう回転かいてんさせたり、回転かいてんのon/offを刺激しげき応答おうとうしてえたりというような「意味いみのある」ことをこすことはむずかしいとかんがえられる。このように、分子ぶんしうごきが制御せいぎょできない場合ばあいは、分子ぶんし機械きかいとはべない。[注釈ちゅうしゃく 1]

生体せいたい分子ぶんし人工じんこうてき改変かいへんしたはん人工じんこう分子ぶんし機械きかい[編集へんしゅう]

近年きんねん上記じょうきのATP合成ごうせい酵素こうそ人工じんこうてき改変かいへんくわえ、その機能きのう人工じんこうてき制御せいぎょ利用りようしようとするこころみも報告ほうこくされている[1]

生体せいたい分子ぶんし機械きかい人工じんこう分子ぶんし機械きかい比較ひかく[編集へんしゅう]

生体せいたい分子ぶんし機械きかいは、複雑ふくざつ形作かたちづくられたタンパク質たんぱくしつユニットあいだ相互そうご作用さようによる、高度こうど洗練せんれんされたうごきや生体せいたいないでの機能きのうつものである。それにたいし、人工じんこう分子ぶんし機械きかい有機ゆうき合成ごうせいてきつくられているために比較的ひかくてきシンプルな構造こうぞうっていて、実用じつようてき機能きのうつものはほとんどなく、発展はってん途上とじょう研究けんきゅう分野ぶんやである。コンフォメーションの大域たいいきてき変化へんか複数ふくすうのユニットの協調きょうちょうしたうごきといった、生体せいたい分子ぶんし機械きかい動作どうさ機構きこう特徴とくちょうあきらかになりつつある現在げんざいでは、人工じんこう分子ぶんし機械きかい将来しょうらいせい期待きたいする根拠こんきょとして、生体せいたい分子ぶんし機械きかい洗練せんれんされたこう効率こうりつこう選択せんたくてき機能きのうが、タンパク質たんぱくしつの「機械きかいてきうごき」によってされている、という事実じじつ重要じゅうようとなっている。

駆動くどうげん[編集へんしゅう]

生体せいたい分子ぶんし機械きかい一般いっぱんてきに、ATPをエネルギーげんとしてうごくが、ATP合成ごうせい酵素こうそのようにまく両側りょうがわのプロトン濃度のうど勾配こうばいによるエネルギーを駆動くどうげんとしてぎゃくにATPを合成ごうせいするものなども存在そんざいする。

合成ごうせい分子ぶんし機械きかい駆動くどうするための刺激しげきとしては、ひかりプロトン付加ふかだつはなれ酸化さんか還元かんげん物質ぶっしつとの化学かがく反応はんのうといったものがもちいられている。

代表だいひょうてき研究けんきゅうしゃ[編集へんしゅう]

分子ぶんし機械きかいはカテナン、ロタキサンといった「からった分子ぶんし」をもちいたけいおお研究けんきゅうされていて、その分野ぶんや研究けんきゅうしゃおおい。2016ねんには「分子ぶんしマシンの設計せっけい合成ごうせい」の先駆せんくてき研究けんきゅうおこなった3めい研究けんきゅうしゃノーベル化学かがくしょう授与じゅよされることになった。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ もちろん温度おんどえることで分子ぶんしない回転かいてん速度そくど変化へんかするが、これは分子ぶんしでも一般いっぱんてきられる現象げんしょうなので意味いみのある制御せいぎょとはがたい。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ Itoh, H.; Takahashi, A.; Adachi, K.; Noji, H.; Yasuda, R.; Yoshida, M.; Kinoshita, K., Jr. Nature 2004, 427, 465.(ATP合成ごうせい酵素こうそじょう磁石じしゃく導入どうにゅうし、その機能きのう磁力じりょく制御せいぎょした)

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]