ローラ・インガルス・ワイルダー

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ローラ・インガルス・ワイルダー
Laura Ingalls Wilder
誕生たんじょう ローラ・エリザベス・インガルス
Laura Elisabeth Ingalls
(1867-02-07) 1867ねん2がつ7にち
死没しぼつ (1957-02-10) 1957ねん2がつ10日とおか(90さいぼつ
職業しょくぎょう 作家さっか小学校しょうがっこう教師きょうし
国籍こくせき アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
代表だいひょうさく だい草原そうげんちいさないえ
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ローラ・エリザベス・インガルス・ワイルダー英語えいご: Laura Elisabeth Ingalls Wilder, 1867ねん2がつ7にち - 1957ねん2がつ10日とおか)は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく作家さっか

西部せいぶ開拓かいたくのアメリカできたみずからの生涯しょうがいかえる8へん児童じどう小説しょうせつシリーズでられ、理想りそうされたパイオニアの生活せいかつえがいてアメリカの国民こくみんてき作家さっか一人ひとりされるようになった[1]。この小説しょうせつシリーズはアメリカで『だい草原そうげんちいさないえ』としてTVてれびドラマされ、日本にっぽんふく世界せかい各国かっこく放送ほうそうされ人気にんきあつめた[2]

原語げんごでは「インガルズ」 [ˈɪŋɡəlz]発音はつおんされることがあるが、一般いっぱん「インガルス」 [ˈɪŋɡəls]発音はつおん使つかわれ、TVてれびドラマばんでもこのかた踏襲とうしゅうされている。

来歴らいれき[編集へんしゅう]

誕生たんじょう移住いじゅう生活せいかつ[編集へんしゅう]

ローラはウィスコンシンしゅうしゅう西部せいぶ小村こむらペピン (Pepin) でインガルス夫妻ふさい次女じじょとしてまれた[2]父親ちちおやのチャールズ・インガルス (en) は、1837ねん恐慌きょうこう打撃だげきけ、あたらしい生活せいかつのきっかけをもとめて西部せいぶ移住いじゅうしてきた農家のうか息子むすこだった。母親ははおやキャロラインは、チャールズが移住いじゅうしてきたむら小学校しょうがっこう教師きょうしつとめていた[3]

父親ちちおやのチャールズは正規せいき教育きょういくけたことはなかったが、読書どくしょきで、当時とうじ開拓かいたく農家のうかとしてはめずらしくなんさつ書籍しょせき所有しょゆうしていた[2]音楽おんがく愛好あいこうし、生活せいかつくるしいときでも詩集ししゅうをローラへの誕生たんじょうおくものとしてもとめたという[2]現在げんざいわずかにのこされているかれ書簡しょかんは、おおくがユーモアにあふれ人間味にんげんみちた達意たつい文章ぶんしょうで、むすめたちはこうした素朴そぼく文才ぶんさいや、ほん音楽おんがく愛好あいこうする資質ししつおおくをぐことになった[2]

ローラがまれてからすうねんあいだ、インガルス生活せいかつ安定あんていをもとめてたびたび中西部ちゅうせいぶ移住いじゅうかえしたが、とくにカンザスしゅう先住民せんじゅうみん居住きょじゅうはいったときは、先住民せんじゅうみんのオーセージぞくダコタぞく(スーぞく)とアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく政府せいふぐんとの衝突しょうとつ翻弄ほんろうされるなど、不安定ふあんてい時期じきごした[4]

しかしローラが4さいのとき(1871ねん)にペピンの森林地帯しんりんちたいもどると生活せいかつ安定あんていしはじめ、さらに彼女かのじょが7さいのとき(1874ねん)にミネソタしゅうウォルナット・グローブ近郊きんこう移住いじゅうしてプラム・クリークそばにきょかまえてからは、姉妹しまい小学校しょうがっこう教会きょうかいなど社会しゃかい生活せいかつくわわるようになった[2]。のちにローラがあらわす「ちいさないえ」シリーズ初期しょき物語ものがたりは、おおくがこのころおも題材だいざいとしている[5]

デスメットでの定住ていじゅう[編集へんしゅう]

当時とうじのアメリカでは、成人せいじんした市民しみん西部せいぶ開墾かいこんした土地とち所有しょゆうけんをみとめる「ホームステッドほう」が1862ねん成立せいりつ東部とうぶからの移住いじゅうしゃ急増きゅうぞうしつつあった[4]

1879ねんごろにはローラの父親ちちおやチャールズもこの制度せいど正式せいしき登録とうろく開墾かいこんこころみる場所ばしょとして当時とうじダコタじゅんしゅう現在げんざいサウス・ダコタしゅう)のまちデスメット (De Smet) をえらんで移住いじゅうする[2]移住いじゅう翌年よくねん記録きろくてきさむさとなったふゆきびしさは、彼女かのじょ小説しょうせつながふゆ』で克明こくめいえがかれることになる[1]

移住いじゅう生活せいかつつづくあいだローラは定期ていきてき学校がっこうかようことができなかったが、デスメットでようやく文字もじきの正式せいしき教育きょういくけた[2]。ローラは聡明そうめい少女しょうじょで、15さいになると、みずからも教育きょういくけた小学校しょうがっこう教師きょうしとして教壇きょうだんつようになった。ローラはほかにも洋裁ようさいてんなどで副業ふくぎょうをこなして家計かけいささえている[2]

結婚けっこん[編集へんしゅう]

インガルス一家いっか写真しゃしん手前てまえすわっているのがひだりから母親ははおやキャロライン、父親ちちおやチャールズ、長女ちょうじょメアリー。うしろにっているのはさんじょキャリー、ローラ、よんじょグレース。1894ねん[2]

ローラが18さいのとき、やはりホームステッドほう活用かつようして自力じりき生計せいけいをたてようとしていた28さいのアルマンゾ・ワイルダー (Almanzo James Wilder) とい、結婚けっこんする[3]

はじめアルマンゾの経営けいえいする農場のうじょう順調じゅんちょうで、1ねんにはむすめローズ・ワイルダー・レーン誕生たんじょう結婚けっこんからすうねんあいだ夫婦ふうふ平穏へいおん日々ひびごした。しかし1888ねん、アルマンゾが当時とうじだい流行りゅうこうしたジフテリア感染かんせんして瀕死ひんし状態じょうたいとなる事件じけんきる。アルマンゾは一命いちめいめるがおも後遺症こういしょうのこり、以後いご生涯しょうがいつえをついてごすこととなった[3]

つづいて翌年よくねんには誕生たんじょうしたばかりの息子むすこ死亡しぼう、さらに火災かさいによる住居じゅうきょ焼失しょうしつがつづき、そして1890ねんごろから中西部ちゅうせいぶがきびしい魃期にはいると、農場のうじょうはまったく経営けいえいできない状態じょうたいおちいった[2]

執筆しっぴつ活動かつどう開始かいし[編集へんしゅう]

1894ねん夫妻ふさいのこりの貯金ちょきんをほぼすべてとうじてミズーリしゅうマンスフィールドにあたらしい農場のうじょう購入こうにゅう一家いっかうつんだ。移住いじゅう当初とうしょ夫妻ふさい丸太まるた小屋こやらし蒔をって生活せいかつするなど家計かけいいかめしかったが、アルマンゾの親族しんぞくらからの支援しえんもあり、しだいに経済けいざいてき安定あんているようになっていった[5]移住いじゅうから20ねんには、夫妻ふさい所有しょゆう当初とうしょの40エーカー(やく16ヘクタール)から200エーカー(やく80ヘクタール)まで拡大かくだい酪農らくのう養鶏ようけい果物くだもの栽培さいばいなどもおこなだい規模きぼ農場のうじょう成長せいちょうすることになる[3]

夫妻ふさい地元じもと成功せいこうしゃみとめられ、ローラは農園のうえん経営けいえい家事かじかんする講演こうえん依頼いらいされるようになった[2]

1885ねんふゆ結婚けっこんまもなくのころのローラとアルマンゾ[2]

1911ねん、ローラは地元じもと『ミズーリ・ルーラリスト (MIssouri Ruralist) 』から依頼いらいけてみじか記事きじ寄稿きこう、これが評判ひょうばんんで、彼女かのじょ同紙どうし連載れんさいコラムニストに抜擢ばってきされる。以後いご連載れんさいじゅうすうねんにわたってつづき、ローラは中西部ちゅうせいぶ名士めいしとなってゆく[1]

ちいさないえ[編集へんしゅう]

1929ねん、アメリカでだい恐慌きょうこうきると、ワイルダー家計かけいもふたたびおおきな打撃だげきけた。農場のうじょうはなんとか維持いじできたが、貯蓄ちょちくのほとんどを投資とうしうしなったとされる[3]

このためローラは、農業のうぎょう長年ながねん寄稿きこうしてきた経験けいけんかしてあらたな作品さくひん執筆しっぴつし、家計かけいてることをかんがえるようになる[5]。1924ねんには母親ははおや、1928ねんにはあねメアリーが死去しきょしており、かれらの記憶きおく作品さくひんにとどめたいとかんがえたともわれる[1]。すでに文筆ぶんぴつとして活動かつどうしていたむすめのローズもこのかんがえを応援おうえんし、だい1さくすすめられる。

当初とうしょ、デビューさくは『おばあさんが少女しょうじょだったとき(When Grandma Was a Little Girl)』の題名だいめい構想こうそうされていたが、出版しゅっぱんしゃむすめローズの協力きょうりょく大幅おおはば改編かいへんされ、ニューヨークの大手おおて出版しゅっぱんしゃハーパー&コリンズから、『おおきなもりちいさないえ』として1932ねん刊行かんこうされる[2]

国民こくみんてき作家さっか[編集へんしゅう]

この作品さくひんののち9年間ねんかん発表はっぴょうされた『このたのしき日々ひび』(1943)までの8へん自伝じでんたい小説しょうせつは、発表はっぴょうまもなく「アメリカ児童じどう文学ぶんがく古典こてん」とみなされるようになった[1]

ローラはアメリカの国民こくみんてき作家さっか一人ひとりとなり、翻訳ほんやくつうじてアメリカ国外こくがいでも知名度ちめいどたかめた。以後いご90さいくなるまでのやく25年間ねんかん、「ちいさないえ」シリーズにまつわる講演こうえんなどをおこなってごした[2]

1957ねん、「ちいさないえ」シリーズのすべてを執筆しっぴつしたマンスフィールドでいきり、同地どうちほうむられている[6]

インガルス一家いっか5にん子供こどもうち直系ちょっけい子孫しそんのこしたのはローラだけである[2]。ローラのむすめローズは息子むすこくしたのち離婚りこんして以後いごどもをもうけなかったため、インガルスの家系かけい途絶とだえている。

ちいさないえ」シリーズ[編集へんしゅう]

ども時代じだい姉妹しまいひだりからいもうとキャリー、あねメアリー、ローラ(年代ねんだい不明ふめい)。

ローラの小説しょうせつだい1さくとなった『おおきなもりちいさないえ以後いごおっとアルマンゾの幼少ようしょうえがいた『農場のうじょう少年しょうねん』をふくめ、『このたのしき日々ひび』(1943)までの8へん一般いっぱんに「ちいさないえ」シリーズ (Little House Books) とされている(これに没後ぼつご編纂へんさんされた『はじめのよん年間ねんかん』(1971) をふくめて9へんかぞえることもある)[1]

このシリーズでは、1870年代ねんだい初頭しょとうにウィスコンシンしゅう森林地帯しんりんちたいらしていたローラの幼少ようしょうから、一家いっか中西部ちゅうせいぶたびかえし、小学校しょうがっこう教師きょうしとなったローラがアルマンゾと結婚けっこんしてあたらしい家庭かていきずくまでのやく20年間ねんかんえがいている。

登場とうじょうする地名ちめい人名じんめいはおおむね実在じつざいのもので、ローラ自身じしんふくめ、父親ちちおやチャールズや母親ははおやキャロライン、おっとアルマンゾまで実際じっさい名前なまえがそのまま使つかわれている。物語ものがたり登場とうじょうするエピソード、たとえば『ながふゆ』の記録きろくてき寒波かんぱやバッタの大群たいぐん襲来しゅうらいといった事件じけん史実しじつもとづいている[1]

しかし家族かぞくたびがすべて作品さくひんまれているわけではなく、一家いっか生活せいかつちゆかなくなりいち東部とうぶげた時期じきはまったくれられていない[2]。またローラの伝記でんきてき研究けんきゅうがすすみ、一家いっか極端きょくたん貧困ひんこん疫病えきびょう流行りゅうこうくるしんだ時期じき生活せいかつがカットされていることがかったほか、家族かぞく性格せいかくも、アメリカ先住民せんじゅうみんたいする母親ははおや嫌悪けんおかんなどは実際じっさいよりも大幅おおはば誇張こちょうされているとかんがえられるようになった[2]

そのため現在げんざいでは、「ちいさないえ」シリーズは史実しじつたくみに改変かいへんして開拓かいたく生活せいかつ理想りそうしたフィクションとけとめられている[2]。ローラ自身じしんは、「わたしかたったことは真実しんじつだが、すべてがそのままの真実しんじつ (the whole truth) ではない」とべている[2]

むすめのローズ[編集へんしゅう]

むすめのローズは地元じもとマンスフィールドで高校こうこうたあと、いえ電信でんしん技師ぎしとしてカンザス・シティなどではたらきながら地元じもとみじか記事きじ寄稿きこうするようになった[2]

ローズの記事きじ評判ひょうばんとなり、やがて彼女かのじょ専業せんぎょうのジャーナリストとして活動かつどうするようになる。母親ははおやのローラが『ちいさないえ』シリーズを発表はっぴょうするまで、ローズは中西部ちゅうせいぶもっと有名ゆうめい文筆ぶんぴつ一人ひとりだったともわれる[2]。そのためローラの『ちいさないえ』シリーズは、ローズが事実じじつじょう共同きょうどう編集へんしゅうしゃとして大幅おおはば加筆かひつしているとする有力ゆうりょくせつがある[7][8]

作品さくひん評価ひょうか[編集へんしゅう]

1880ねんごろのサウス・ダコタの街角まちかど再現さいげんした様子ようす。この時代じだいにローラはここで小学校しょうがっこう教師きょうしとしてはたらはじめ、おっとのアルマンゾとった。

ローラの一連いちれん作品さくひんえがかれた、貧困ひんこんなやまされながら、きびしい自然しぜんなか家族かぞく工夫くふうをこらして生活せいかつささえるというテーマは、独立独歩どくりつどっぽ精神せいしんとうとぶアメリカ国民こくみん理想りそうてきかたえがいているとみなされ、一連いちれん作品さくひんは、発表はっぴょう当時とうじから著名ちょめい作家さっか政治せいじらにおおくの愛読あいどくしゃ獲得かくとくした[3]

また、巨大きょだい工業こうぎょうこくへアメリカが変貌へんぼうをとげるなかでうしなわれたふる開拓かいたく時代じだい理想りそうたいするノスタルジアも、アメリカでおおくの読者どくしゃをとらえた[3]

だい大戦たいせんになるとローラの名声めいせいはさらにたかまる[5]。ばらばらの単行本たんこうぼんとして刊行かんこうされていた8へんは、1953ねんにガース・ウィリアムズ(Garth Williams)のイラストをせたシリーズとしてさい出版しゅっぱんされ、これがさらにおおくの読者どくしゃ獲得かくとくした[5]

各地かくち彼女かのじょ名前なまえかんした学校がっこう設立せつりつされ、1954ねんには後述こうじゅつのとおりアメリカ図書館としょかん協会きょうかいはローラの名前なまえかんした児童じどう文学ぶんがくしょう創設そうせつしている[5]

こうした人気にんき背景はいけいとして1974ねんから84ねんまでNBCで製作せいさく放送ほうそうされたTVてれびドラマシリーズ『だい草原そうげんちいさないえ』は、彼女かのじょ人気にんき世界せかい各国かっこくひろげることとなり、この時期じき一連いちれん作品さくひんは20かこく翻訳ほんやくされている[4]

1990年代ねんだいからは文学ぶんがく研究けんきゅう対象たいしょうとしてもさかんにげられるようになり、不明ふめいなことがおおかった自伝じでんてき事実じじつあきらかにされていった[1]。2000ねんにはこれらの研究けんきゅうまえた伝記でんきドキュメンタリー番組ばんぐみがエミーしょう獲得かくとく、2005ねんにはあたらしいTVてれびドラマシリーズも製作せいさくされている[3]

ワイルダーしょう[編集へんしゅう]

NBCのTVてれびドラマ『だい草原そうげんちいさないえ』でローラをえんじたメリッサ・ギルバート(1975ねん)。このドラマはローラの小説しょうせつ世界せかいてき人気にんき作品さくひんげるきっかけとなった。

アメリカ図書館としょかん協会きょうかいはアメリカ文学ぶんがく顕彰けんしょうする目的もくてきおおくの文学ぶんがくしょう選考せんこう授与じゅよしているが[9]、1954ねん児童じどう文学ぶんがく対象たいしょうとするあらたなしょうもうけ、これにローラの名前なまえかんして「ローラ・インガルス・ワイルダーしょう」(Laura Ingalls Wilder Medal)と命名めいめいした[9]だい1かい受賞じゅしょうしゃはローラ自身じしんだった。

アメリカ図書館としょかん協会きょうかいもうけている児童じどう文学ぶんがく対象たいしょう文学ぶんがくしょうには、ほかにかくとしごとのすぐれた児童じどう作品さくひん表彰ひょうしょうする「ニューベリーしょう」があり、ワイルダーしょうは、作家さっか画家がかぜん業績ぎょうせき顕彰けんしょうする目的もくてきとされた[9]。ローラ自身じしんは「ニューベリーしょう」を受賞じゅしょうしたことはなかったが、どうしょう次点じてんとなったことが5かいある。

作品さくひんをめぐる議論ぎろん[編集へんしゅう]

ローラの作品さくひん世界せかい各国かっこくひろしたしまれてきたが[2]、2000年代ねんだいはいるころから、とりわけ作品さくひんえがかれている家父長制かふちょうせいへの批判ひはん信奉しんぽうや、保守ほしゅてき政治せいじかん、アメリカ先住民せんじゅうみんへの差別さべつ当然とうぜんするようにもめる記述きじゅつなどが批判ひはんされるようになった[10][1]

またローラの作品さくひんでは、一貫いっかんして白人はくじん市民しみんだけが自然しぜんりひらく主体しゅたいとしてえがかれるが、実際じっさいにはアメリカ領土りょうど西部せいぶ拡大かくだいはアメリカ先住民せんじゅうみんへの熾烈しれつ迫害はくがいや、黒人こくじんへのはげしい差別さべつ表裏一体ひょうりいったいであり[11]、それが作品さくひんではほぼ無視むしされているとする批判ひはんが、とくにマイノリティの研究けんきゅうしゃからおこなわれるようになった[2][1]

こうした議論ぎろんけ、2018ねんにアメリカ図書館としょかん協会きょうかいは、上述じょうじゅつの「ワイルダーしょう」を「児童じどう文学ぶんがく遺産いさんしょう」(Children's Literature Legacy Award)に改名かいめいすると発表はっぴょうした[12]どう協会きょうかい改名かいめい理由りゆうを、児童じどう文学ぶんがく対象たいしょうとするしょうが「社会しゃかいてき包摂ほうせつ誠実せいじつさ、尊敬そんけい」にもとづくべきだとするどう協会きょうかい価値かちかん反映はんえいさせる措置そちだと説明せつめいしたうえ[12]、ローラの作品さくひん自体じたい今後こんごひろどもにまれる価値かちがあるとべている[5][13]

一方いっぽう文学ぶんがく研究けんきゅうしゃがわからは、当時とうじのアメリカ社会しゃかい存在そんざいした差別さべつ迫害はくがいどもたちへつたえる題材だいざいとして、ローラの作品さくひんいまなお有意義ゆういぎなメッセージをもつとする指摘してきされている[2][14]

作品さくひん[編集へんしゅう]

ウィスコンシンしゅう西部せいぶむらペピンに、ローラの生家せいかして再現さいげんされたログハウス。

ちいさないえ」シリーズ[編集へんしゅう]

1)ローラが存命ぞんめいちゅう執筆しっぴつ出版しゅっぱんされた作品さくひん

  • おおきなもりちいさないえ(Little House in the Big Woods , 1932)
  • 農場のうじょう少年しょうねん』(Farmer Boy , 1933)
    • 恩地おんち三保子みほこやく福音館書店ふくいんかんしょてん、1973 のち文庫ぶんこ
    • こだまともこ,渡辺わたなべ南都なんとやく 講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ、1985 のち講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ
    • あしさわ良子りょうこやく くさえんしゃ 2006
  • だい草原そうげんちいさないえ』(Little House on the Prairie , 1935)
    • 古川ふるかわげんわけしん教育きょういく事業じぎょう協会きょうかい、1950
    • 恩地おんち三保子みほこやく福音館書店ふくいんかんしょてん、1972 のち文庫ぶんこ
    • こだまともこ,渡辺わたなべ南都なんとやく 講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ、1982 のち講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ
    • 中村なかむら凪子なぎこやく角川かどかわ文庫ぶんこ、1988
    • あしさわ良子りょうこやく くさえんしゃ 2005
  • プラム・クリークの土手どて』(On the Banks of Plum Creek , 1937)
    • 恩地おんち三保子みほこやく福音館書店ふくいんかんしょてん、1973 のち文庫ぶんこ
    • 「プラムかわ土手どてで」こだまともこ,渡辺わたなべ南都なんとやく 講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ、1983 のち講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ
    • 中村なかむら凪子なぎこやく角川かどかわ文庫ぶんこ、1989
  • シルバー・レイクの岸辺きしべ』(By the Shores of Silver Lake , 1939)
    • 恩地おんち三保子みほこやく福音館書店ふくいんかんしょてん、1973 のち文庫ぶんこ
    • 「シルバーみずうみのほとりで」こだまともこ,渡辺わたなべ南都なんとやく 講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ、1984 のち講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ
    • 「シルバーみずうみのほとりで」あしさわ良子りょうこやく くさえんしゃ 2006
  • ながふゆ』(The Long Winter , 1940)
  • だい草原そうげんちいさなまち』(Little Town on the Prairie , 1941)
    • 鈴木すずき哲子てつこやく岩波いわなみ少年しょうねん文庫ぶんこ、1957
    • こだまともこ,渡辺わたなべ南都なんとやく 講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ、1986 のち講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ
    • 谷口たにぐち由美子ゆみこやく岩波いわなみ少年しょうねん文庫ぶんこ、2000
    • あしさわ良子りょうこやく くさえんしゃ 2007
  • このたのしき日々ひび』(These Happy Golden Years , 1943)
    • 鈴木すずき哲子てつこやく岩波いわなみ少年しょうねん文庫ぶんこ、1974
    • 「このかがやかしい日々ひび」こだまともこ,渡辺わたなべ南都なんとやく 講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ、1987 のち講談社こうだんしゃ文庫ぶんこ
    • 谷口たにぐち由美子ゆみこやく岩波いわなみ少年しょうねん文庫ぶんこ、2000
    • 「このかがやかしい日々ひびあしさわ良子りょうこやくくさえんしゃ、2008

2)ローラぼつむすめのローズらが遺稿いこう加筆かひつさい編集へんしゅうして出版しゅっぱんしたもの。上記じょうきちいさないえ」の時代じだいえがく。

  • はじめのよん年間ねんかん』(The First Four Years , 1971) 
    • 鈴木すずき哲子てつこやく岩波いわなみ少年しょうねん文庫ぶんこ、1975
    • 谷口たにぐち由美子ゆみこやく岩波いわなみ少年しょうねん文庫ぶんこ、2000

そのほかの作品さくひん[編集へんしゅう]

ちいさないえ」シリーズ以外いがいにローラが執筆しっぴつしたエッセイや日記にっきなど。すべてローラぼつ編纂へんさん

  • On the way home : the diary of a trip from South Dakota to Mansfield, Missouri, in 1894 (Harper Collins, 1976)
  • West from Home (1974, published posthumously), ed. Roger Lea MacBride – Wilder's letters to Almanzo while visiting her daughter Rose Wilder-Lane in 1915 in San Francisco[15]
  • A Little House Traveler: Writings from Laura Ingalls Wilder's Journeys Across America (Hard Collins, Repr., 2011)
    • だい草原そうげんたびはるか』(谷口たにぐち由美子ゆみこやく世界文化社せかいぶんかしゃ、2007)
  • A little house sampler (University of Nebraska Press, 1988)
    • ウィリアム・T・アンダーソンへん谷口たにぐち由美子ゆみこやく)『だい草原そうげんのおくりもの : ローラとローズのメッセージ』(角川書店かどかわしょてん、1990)
  • A little house reader : a collection of writings by Laura Ingalls Wilder (Harper Collins, 1998)
    • ウィリアム・アンダーソンへん谷口たにぐち由美子ゆみこやく)『ローラからのおくりもの』(岩波書店いわなみしょてん、1999)
  • Saving graces : the inspirational writings of Laura Ingalls Wilder (B & H Pub Group, 1997)
    • スティーブン・ハインズへん結城ゆうき絵美子えみこやく)『大切たいせつなものはわずかです。 : ローラ・インガルス29の知恵ちえ』(いのちのことばしゃ、2013)
  • Pioneer girl : the annotated autobiography (South Dakota Historical Society Press, 2018)
    • パメラ・スミス・ヒルへん谷口たにぐち由美子ゆみこやく)『だい草原そうげんのローラ物語ものがたり : パイオニア・ガール』(大修館書店たいしゅうかんしょてん、2018)
  • The Selected Letters of Laura Ingalls Wilder (2016)

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e f g h i j Kort, Carol. "Wilder, Laura Ingalls." A to Z of Women: American Women Writers, Carol Kort, Facts On File, 3rd edition, 2016.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y Caroline Fraser. Prairie Fires: The American Dreams of Laura Ingalls Wilder (Henry Holt, 2017)
  3. ^ a b c d e f g h Lamar, Howard R. "Wilder, Laura Ingalls (1867–1957)." The New Encyclopedia of the American West, edited by Howard R. Lamar, Yale University Press, 1st edition, 1998.
  4. ^ a b c Janet Spaeth. Laura Ingalls Wilder (Boston, MA: Twayne Publishers, 1987)
  5. ^ a b c d e f g "WILDER Laura, Ingalls (1867–1957)." The Oxford Companion to Children's Literature, edited by Daniel Hahn, Oxford University Press, Inc., 2nd edition, 2015.
  6. ^ Laura Elizabeth Ingalls Wilder (1867-1957) - Find...” (英語えいご). www.findagrave.com. 2022ねん4がつ9にち閲覧えつらん
  7. ^ Moore, Rosa Ann. "Laura Ingalls Wilder and Rose Wilder Lane: The chemistry of collaboration," Children's Literature in Education, 11:9, 1980)
  8. ^ William Holtz. The Ghost in the Little House: A Life of Rose Wilder Lane. University of Missouri Press, 1993.
  9. ^ a b c admin (1999ねん11月30にち). “Book & Media Awards” (英語えいご). Association for Library Service to Children (ALSC). 2022ねん4がつ8にち閲覧えつらん
  10. ^ Wilson, Waziyatawin Angela. "Burning Down the House: Laura Ingalls Wilder and American Colonialism," Unlearning the Language of Conquest: Scholars Expose Anti-Indianism in America, ed. by Four Arrows (University of Texas Press, 2006)
  11. ^ Dorris, Michael. "Trusting the Words," (Booklist 89, June, 1993; Paper Trail, 1994)
  12. ^ a b Chokshi, Niraj (2018ねん6がつ26にち). “Prestigious Laura Ingalls Wilder Award Renamed Over Racial Insensitivity” (英語えいご). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2018/06/26/books/laura-ingalls-wilder-book-award.html 2022ねん4がつ8にち閲覧えつらん 
  13. ^ MMORALES (2018ねん6がつ25にち). “ALA, ALSC respond to Wilder Medal name change” (英語えいご). News and Press Center. 2022ねん4がつ8にち閲覧えつらん
  14. ^ Chow, Kat (2018ねん6がつ25にち). “Little House On The Controversy: Laura Ingalls Wilder's Name Removed From Book Award” (英語えいご). NPR. https://www.npr.org/2018/06/25/623184440/little-house-on-the-controversy-laura-ingalls-wilders-name-removed-from-book-awa 2022ねん4がつ8にち閲覧えつらん 
  15. ^ "West From Home: Letters Of Laura Ingalls Wilder, San Francisco, 1915" Archived October 17, 2015, at the Wayback Machine.. Kirkus Reviews. March 1, 1974. Retrieved October 2, 2015.

関連かんれん文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • Fellman, Anita Clair. Little house, long shadow: Laura Ingalls Wilder's impact on American culture (University of Missouri Press, 2008)
  • Fraser, Caroline. Prairie Fires: The American Dreams of Laura Ingalls Wilder (Henry Holt, 2017)
  • Green-Barteet, Miranda A. and  Anne K. Phillips (eds.) Reconsidering Laura Ingalls Wilder: Little house and beyond (University Press of Mississippi, 2019)
  • Hines, Stephen W. A Prairie Girl's Faith: The Spiritual Legacy of Laura Ingalls Wilder (WaterBrook, 2018)(スティーブン・W・ハインズ『だい草原そうげんちいさないえで : ローラ・インガルス・ワイルダーの生涯しょうがい信仰しんこう中嶋なかじま典子のりこやく、いのちのことばしゃ、2021)
  • McDowell, Marta. The World of Laura Ingalls Wilder: the frontier landscapes that inspired the Little House books (Portland, Oregon : Timber Press, 2017)
  • Miller, John E. Laura Ingalls Wilder and Rose Wilder Lane: authorship, place, time, and culture (University of Missouri Press, 2008)
  • Miller, John E. Becoming Laura Ingalls Wilder: the woman behind the legend (University of Missouri Press, 1998)(ジョン・E・ミラー『ローラ・インガルス・ワイルダーでん : 『だい草原そうげんちいさないえ』がまれるまで』とくまつ愛子いとしごやく、リーベル出版しゅっぱん、2001)
  • Romines, Ann. Constructing the Little house: gender, culture, and Laura Ingalls Wilder (University of Massachusetts Press, 1997)
  • Spaeth, Janet. Laura Ingalls Wilder (Boston, MA: Twayne Publishers, 1987)
  • Zochert, Donald. Laura: The Life of Laura Ingalls Wilder, 1977(ドナルド・ゾカート『ローラ・インガルス・ワイルダーの生涯しょうがいじょう下巻げかん、いけもとさえこわけ佐野さの洋子ようこ、パシフィカ 、1979)

邦語ほうご

  • 磯部いそべ孝子たかこ『ローラ・インガルス・ワイルダー』(KTC中央ちゅうおう出版しゅっぱん、2004)
  • ウィリアム・T・アンダーソン(谷口たにぐち由美子ゆみこやく構成こうせい)『だい草原そうげんちいさないえ : ローラのふるさとをたずねて 増補ぞうほ改訂かいていばん』(もとむりゅうどう、2013)
  • NHK取材しゅざいはんほか『ローラ&ローズ : だい草原そうげんちいさないえははむすめ物語ものがたり』(日本にっぽん放送ほうそう出版しゅっぱん協会きょうかい、1993)
  • 服部はっとり奈美なみ『「だい草原そうげんちいさないえ」のたび』(晶文社しょうぶんしゃ、1993)
  • 服部はっとり奈美なみ『「だい草原そうげんちいさないえ」と自然しぜん』(晶文社しょうぶんしゃ、1995)

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]