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ヴィッカース・ドラゴン

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
18ポンドほう弾薬だんやく前車ぜんしゃ牽引けんいんするドラゴン Mk.I
60ポンドほう牽引けんいんするなかドラゴン Mk.IV

ヴィッカース・ドラゴン(Vickers Dragon)は、せんあいだイギリスヴィッカース・アームストロングしゃ開発かいはつ製造せいぞうされた、軍用ぐんようそう軌式装甲そうこう牽引けんいんしゃ一群いちぐんである。

「ドラゴン(Dragon)」のは、「ほう牽引けんいん(drag-gun)」に由来ゆらいする。

開発かいはつ

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だいいち世界せかい大戦たいせんでは前線ぜんせん突破とっぱようしん兵器へいきとして戦車せんしゃ開発かいはつされたが、戦車せんしゃ前線ぜんせん突破とっぱしたのちに、野砲やほうなどの火砲かほう戦車せんしゃけないという事態じたい想定そうていされ、ガンキャリアーという、菱形ひしがた戦車せんしゃ部品ぶひん流用りゅうようした、はしほう正確せいかくにはほう運搬うんぱんしゃちかい)が開発かいはつされた。ガンキャリアーでは、車体しゃたい搭載とうさいされたほうろして車輪しゃりんけてもと牽引けんいんほうとして使用しようすることができた。ガンキャリアー自体じたいは、おも補給ほきゅうしゃとして使つかわれ、「はしほうとしては」活躍かつやくする機会きかいはなかったが、そのも、火砲かほう砲兵ほうへい機械きかいはし課題かだいとしてのこされていた。

しかし、そうしきトラクターは、戦場せんじょう過酷かこく地形ちけいにはてきしておらず、ホルトしゃせいトラクターのような従来じゅうらいそう軌式トラクターも低速ていそくなため、最適さいてきではなかった。

火砲かほう砲兵ほうへい機械きかい」において、もとめられていたのは、戦車せんしゃ追従ついしょう可能かのう野外やがい機動きどうせい高速こうそく性能せいのうであった。

それには、戦車せんしゃ車体しゃたい(シャーシ)にじゅんずるそう軌式車体しゃたい(シャーシ)をもちいるのが、もっと最適さいてき方法ほうほうであった。


この「火砲かほう砲兵ほうへい機械きかい」の問題もんだい解決かいけつ方法ほうほうにおいて、2つの方式ほうしき対立たいりつ存在そんざいした。

ひとつは、戦車せんしゃ車体しゃたい(シャーシ)にじゅんずるそう軌式車体しゃたい(シャーシ)に、ほう直接ちょくせつ積載せきさい搭載とうさいする「ほう運搬うんぱんしゃ方式ほうしき」あるいは「はしほう方式ほうしき」、もうひとつは、戦車せんしゃ車体しゃたい(シャーシ)にじゅんずるそう軌式車体しゃたい(シャーシ)をもちいた砲兵ほうへいトラクターによって、火砲かほう牽引けんいんする「ほう牽引けんいん方式ほうしき」である。

そして、後者こうしゃは、車体しゃたい(シャーシ)めん牽引けんいんそなえて、従来じゅうらいうま低速ていそく砲兵ほうへいトラクターにわって、火砲かほう牽引けんいんするだけの、従来じゅうらいのそれらよりは高速こうそくこう機動きどう性能せいのうはしほう方式ほうしきよりは、低速ていそくてい機動きどう性能せいのう、さらに重要じゅうようなことは、移動いどう射撃しゃげき変換へんかんさい手間てま時間じかんがかかるという、はしほう方式ほうしきくらべて運用うんようじょう不利ふりがある)だが、簡易かんい安価あんかとなり、一方いっぽう前者ぜんしゃは、車体しゃたい(シャーシ)をほうわせて大幅おおはば改造かいぞうする必要ひつようがあったために、高性能こうせいのうだが、(戦車せんしゃみに)高価こうかになるという、傾向けいこうがあった。

ほう運搬うんぱんしゃ(Gun Transporter)とはしほう(Self Propelled Gun)のちがいは、ほう車体しゃたい(シャーシ)から分離ぶんりできる(ほう運搬うんぱんしゃ)か、できない(はしほう)か、である。また、ほう運搬うんぱんしゃ車体しゃたいおもほうしたがえはしほう車体しゃたいしたがえほうおも、となる。

ほう運搬うんぱんしゃなかには、たんなる運搬うんぱんではなく、ほうくるまじょう積載せきさいちゅうにも発射はっしゃ可能かのうもの存在そんざいする。そうなると、ほうをいちいちんだりろしたりするよりも、みっぱなしでもよいという発想はっそうになり、車輪しゃりんほうあし不要ふようとなり、さらには、ほうんだままの状態じょうたいで、いかに射撃しゃげきさい利便りべんせいはかるかという発想はっそうになる。一般いっぱんに、ほう運搬うんぱんしゃ車輪しゃりんきのほうをそのまま車台しゃだいじょうむので、俯仰ふぎょうはともかく、ほうによるきわめてかぎられた旋回せんかい角度かくどしかない。ほうの(水平すいへい方向ほうこうの)きをおおきくえるのは、くつたいによって車台しゃだいごときをえるしかない。そこで、はしほうでは、ほうほう)におおきな旋回せんかい能力のうりょくあたえることが課題かだいとなる。そうして、ほう運搬うんぱんしゃはしほうさかい曖昧あいまいとなり(そもそも、最初さいしょはしほうである、ガンキャリアー自体じたい曖昧あいまいである)、やがて、ほう運搬うんぱんしゃはしほうへと発展はってん進化しんかしたのは、自然しぜんながれであったとえる。


1922ねん、2しゃによる「ほう運搬うんぱんしゃ」の競作きょうさくおこなわれ、ヴィッカースしゃは、「18ポンドほう運搬うんぱんしゃ」(Vickers 18-pdr Transporter 1922)とばれる車両しゃりょう開発かいはつ製造せいぞうし、一方いっぽう、アームストロング・ホイットワースしゃは、「ドラゴン」(Dragon)とばれる車両しゃりょう開発かいはつ製造せいぞうした(「ドラゴン」は、元々もともとは、アームストロング・ホイットワースしゃ開発かいはつした兵器へいきであった)。りょうくるまのコンセプトはており、行軍こうぐんちゅうほう車体しゃたい(シャーシ)じょう積載せきさいし、砲兵ほうへいかいって中座ちゅうざした。

なお、車体しゃたい後部こうぶ荷台にだいである「18ポンドほう運搬うんぱんしゃ」の車体しゃたい(シャーシ)からは、フロントエンジン・リアドライブ方式ほうしきヴィッカースけい戦車せんしゃ Mk.I最初さいしょ試作しさくしゃは1922~23ねん開発かいはつ製造せいぞう)が誕生たんじょうし、だいいち世界せかい大戦たいせんがた菱形ひしがた戦車せんしゃから脱却だっきゃくして、だいいち世界せかい大戦たいせん近代きんだいてきイギリス戦車せんしゃとなった。

また、このヴィッカースけい戦車せんしゃ Mk.I車体しゃたい(シャーシ)からは、近代きんだいてきはしほう嚆矢こうしである「バーチガン」(最初さいしょ試作しさくしゃは1923~24ねん開発かいはつ製造せいぞう)が誕生たんじょうすることになった。

一方いっぽう、「ドラゴン」は、「ほう運搬うんぱんしゃ方式ほうしき」を放棄ほうきして「ほう牽引けんいん方式ほうしき」へと、べつみちすすむことになった。


なお、どう時期じきに、ウーリッジ王立おうりつ造兵ぞうへいしょう(ROFW)開発かいはつ製造せいぞうのバーチガンに対抗たいこうしてか、アームストロング・ホイットワースしゃでも、はしほう開発かいはつ製造せいぞうされている。

1924ねん、アームストロング・ホイットワースしゃは、ドラゴン Mk.IIの部品ぶひん流用りゅうようして、「けい砲兵ほうへい運搬うんぱんしゃ」(Light Artillery Transporter)を開発かいはつした。これは、ほうが、シャーシ最前さいぜん固定こてい装備そうびされ、はず不可ふかな、本格ほんかくてきはしほうであった。

  • [1] - けい砲兵ほうへい運搬うんぱんしゃ 左側ひだりがわめん
  • [2] - けい砲兵ほうへい運搬うんぱんしゃ 前面ぜんめん

武装ぶそうには近代きんだいされた「QF 13ポンド(76.2 mm) 9 CWT 高射こうしゃほう」が搭載とうさいされた。しかし、ほう配置はいちから、間接かんせつ射撃しゃげき対空たいくう射撃しゃげきようではなく、地上ちじょう目標もくひょうたいし、直接ちょくせつ射撃しゃげきする(つまり、目標もくひょう接近せっきんしなければならない)ものと推測すいそくされている。ほう後方こうほうのシャーシ中央ちゅうおうには、弾薬だんやく容器ようきがあり、その後方こうほうのシャーシ後部こうぶには、48馬力ばりきのAECエンジンが搭載とうさいされていた。しかし、乗員じょういん弾薬だんやく容器ようき保護ほごする装甲そうこう皆無かいむであり、ぐん却下きゃっかされた。


そして、1920年代ねんだい後半こうはんのイギリス陸軍りくぐんえらんだのは、高性能こうせいのう革新かくしんてき高価こうかな「はしほう方式ほうしき」ではなく、従来じゅうらいうま低速ていそく砲兵ほうへいトラクターの延長線えんちょうせんじょうである、保守ほしゅてき簡易かんい安価あんかな「ほう牽引けんいん方式ほうしき」のほうであった。

ほう牽引けんいん方式ほうしき」の最大さいだい利点りてんは、従来じゅうらいがた火砲かほうを、ゴムタイヤに変更へんこうしサスペンションを追加ついかするなどのしょう改良かいりょうで、ほぼそのまま使用しようできることである。従来じゅうらいがた火砲かほうを、はしほうえるのは、莫大ばくだい費用ひようかるのである。


1927ねん、ヴィッカースしゃとアームストロング・ホイットワースしゃ合併がっぺいして、「ヴィッカース・アームストロングしゃ」となった。

両社りょうしゃ統合とうごうされたのち、「ドラゴン」は「ヴィッカース=アームストロングしゃ」の商品しょうひんとなり、ドラゴン・ファミリーは大量たいりょう生産せいさんされ、輸出ゆしゅつされ、実戦じっせんにも使用しようされた。

ドラゴン Mk.I(Dragon Mk.I)につづき、同様どうようあしまわりだが各部かくぶ改良かいりょうされた、ドラゴン Mk.II(Dragon Mk.II)、ドラゴン Mk.II*(Dragon Mk.II*)、が開発かいはつ製造せいぞうされた。

つぎ車輌しゃりょうも、やはりヴィッカースちゅう戦車せんしゃあしまわりをっていたが、60ポンドほう6インチ榴弾りゅうだんほう牽引けんいんようだった。おそらく、後述こうじゅつけいドラゴンの開発かいはつ計画けいかくてきたため、この形式けいしきから、ちゅうドラゴン Mk.III(Medium Dragon Mk.III)と、クラス名称めいしょうくわえられた(レトロニム)。さかのぼって、ドラゴン Mk.I/II/II*も、ちゅうドラゴン Mk.I/II/II*(Medium Dragon Mk.I/II/II*)と呼称こしょうされるようになった。Mk.IIIは、改良かいりょうがたのMk.IIIBがた、Mk.IIICがた製作せいさくされた。ちゅうドラゴン Mk.I-IIIは、せんあいだ大砲たいほう機械きかい開始かいしに、イギリス陸軍りくぐんによって購入こうにゅうされ、大量たいりょう使用しようされた。

1934ねん登場とうじょうしたちゅうドラゴン Mk.IV(Medium Dragon Mk.IV)はあしまわりが一変いっぺんし、ヴィッカース 6トン戦車せんしゃのものとなった。しかし、ヴィッカース 6トン戦車せんしゃちゅうドラゴン Mk.IVも、イギリス陸軍りくぐんでは採用さいようされなかった。一方いっぽう、ヴィッカース 6トン戦車せんしゃちゅうドラゴン Mk.IVは、外国がいこく輸出ゆしゅつされ、よくれた。


さかのぼって、1928ねん3月、ヴィッカース=アームストロングしゃは、カーデン=ロイド・トラクター(CLT)しゃ吸収きゅうしゅう合併がっぺいした。

3.7インチ榴弾りゅうだんほう牽引けんいんするけいドラゴン Mk.IIC

ちゅうドラゴン系列けいれつ一方いっぽうで、ヴィッカースけい戦車せんしゃカーデン・ロイドまめ戦車せんしゃ発展はってん進化しんかけい)のあしまわりを利用りようして、より小型こがたけいドラゴン(Light Dragon)も開発かいはつされた。けいドラゴン Mk.I(Light Dragon Mk.I)はリーフ・スプリングしきのサスペンションをっていたが、カーデン・ロイドけい戦車せんしゃ系列けいれつ発展はってんともない、けいドラゴン Mk.II(Light Dragon Mk.II)はけい戦車せんしゃMk.II~IIIと同型どうけいのコイル・スプリングしきとなっていた。Mk.IIは1934ねんまでにA~Dの形式けいしきつくられた。けいドラゴンはおもに、2ポンドたい戦車せんしゃほう4.5インチ榴弾りゅうだんほう、その弾薬だんやくしゃ運搬うんぱんおも目的もくてきとしていた。Mk.I、Mk.IIC はベルギー輸出ゆしゅつされ、T-13戦車せんしゃ駆逐くちくしゃのベース車体しゃたいとしても利用りようされた。

1935ねんけいドラゴンとカーデン・ロイドまめ戦車せんしゃ Mk.VI双方そうほう後継こうけいとして、開発かいはつ名称めいしょう「VA D50」(VAはVickers-Armstrongの頭文字かしらもじ)とばれる車輌しゃりょう製作せいさくされた。車体しゃたいおおきさはそれまでのけいドラゴンとカーデン・ロイドまめ戦車せんしゃ中間ちゅうかんで、けいドラゴン Mk.II で片側かたがわ4つだったてんは3つにらされ、車体しゃたいだかはよりひくかった。この「VA D50」をもとにけいドラゴン Mk.III(Light Dragon Mk.III)が製作せいさくされたものの、ほう牽引けんいんにはそう車輌しゃりょうおもとする方針ほうしんとなったため、生産せいさん少数しょうすうわった。しかし、前方ぜんぽう機銃きじゅうを1ちょう装備そうびしたマシンガン・キャリアがたの「VA D50」は、そののブレン・ガン・キャリア、ユニバーサル・キャリアなど、キャリア系列けいれつ直接ちょくせつ祖先そせんとなった。

参考さんこう資料しりょう

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  • David Fletcher, MECHANISED FORCE, HMSO, London 1991
  • Christopher Foss, Peter McKenzie, THE VICKERS TANKS, Patrick Stephens Ltd., 1988

関連かんれん項目こうもく

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